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2024年07月09日

両陛下ご訪英、確認された日英の深いつながり

天皇、皇后両陛下は、2024年6月、国賓として英国を(公式)訪問されました(22日〜29日)。天皇が国賓として訪英するのは1971年の昭和天皇、98年の明仁上皇に続き26年ぶり3度目となりました。滞在中、天皇陛下とチャールズ国王は、2日英の最高勲章「大勲位菊花章 頸飾(けいしょく) 」と「ガーター勲章」を贈りあわれました。皇室、王室とも代替わりを経たうえでの親善訪問は、日英両国の絆をさらに深める機会となりました。訪英は当初、エリザベス女王の招待を受けて2020年春に予定されていましたが、新型コロナウイルス禍の影響で延期されていました。今年に入りチャールズ国王から改めて招待があったそうです。

 

今回、両陛下ご訪英において、個人的に関心がでてきたのが、両国君主が贈り合った勲章についてでした。そこで、本HP「レムリア」では、以下の4項目に分けて、日英の栄典制度についてまとめてみました。

 

日本の皇室とイギリスの王室の絆

日本の勲章:菊花章から…旭日章…文化勲章まで

イギリスの勲章:ガーター勲章とガーター騎士団

イギリスの勲章:オーダーとデコレーション

 

 

2024年06月28日

「世界の宗教」最終回、ヒンズー教:多様性と寛容性の民族宗教

「世界の宗教」の中から、今回、主要宗教としては最後になるヒンズー教についてまとめてみました。世界3大宗教と言えば、キリスト教、仏教、イスラム教とされますが、信者の数から言えば(2023年推計)、キリスト教(約25億人)、イスラム教(約21億人)に次いで、ヒンズー教(約12億人)が3位に入ります(仏教は5.2億人)。しかし、ヒンズー教は特定の地域や民族に信仰される民族宗教であるので、3大世界宗教から除外されます(もちろん、世界宗教・民族宗教の枠を外し、信仰されている人口数から、キリスト教、イスラム教、仏教、ヒンズー教を世界4大宗教と呼ぶ場合もある)。今回は、そうした少しわかりにくそうなヒンズー教について、以下の4テーマに分けてまとめてみました。

 

バラモン教:カースト制を生んだカルマと輪廻の宗教

ヴェーダ:バラモン教とヒンズー教の聖典

ヒンズー教:ビシュヌにシバ、創造・破壊・性愛の神

ヒンズー思想:古代インドの六派哲学

 

本HPレムリアの「世界宗教」シリーズは、「ヒンズー教」でいったん完成とします。この後は、これまで内容を加筆、修正、刷新させながら、質の向上に努めたいと思います。これまでの投稿記事については以下のサイトか、トップページ右欄からアクセスして下さい。

「世界の宗教」を学ぶ

 

 

 

2024年05月29日

復活祭だけではない復活祭の典礼

カトリック教会やプロテスタント教会における2024年の復活祭(イースター)(復活の主日)は、3月31日の日曜日に終了しましたが、復活祭に関連する典礼(儀礼・儀式)はその後も継続され、この5月19日(日)の「聖霊降臨の主日(ペンテコステ)」で終了しました。また、復活祭(イースター)の前も、その準備期間として、40日間の「四旬節(レント)」が設けられていました。その間、受難の主日(棕櫚の日曜日)、聖なる過越の3日間において、多くの儀式が挙行され、改めて、キリスト教における復活祭(イースター)の重要性を再認識した次第です。

 

そこで、今回は、復活祭前の「四旬節(レント)」、「復活祭」、その後の「復活節」についてまとめた投稿記事を出しましたので、参照下さい。

受難節と復活節 : レントからペンテコステへ

 

また、イースター(復活祭)についてのさらに知りたいかたは以下のサイトへアクセス下さい。

復活祭(イースター):北欧神話から春の訪れ

 

<関連投稿>

キリスト教の教派

カトリック教会:ローマ教皇とバチカン

プロテスタント教会:ルター発の聖書回帰運動

東方正教会:ギリシャから正統性を継承

 

アメリカのキリスト教:バプティストを筆頭に…

 

キリスト教史

キリスト教史①:イエスの生涯とその教え

キリスト教史②:十二使徒とパウロの伝道

キリスト教史③:東西教会はいかに分裂したか?

キリスト教史④:修道院運動の盛衰

キリスト教史➄:異端と魔女狩り

正教会のキリスト教史:ギリシャからロシアへ

 

 

 

 

2024年05月05日

「中国の道教を学ぶ」シリーズを投稿しました!

本HP「レムリア」では、「世界の宗教」を紹介していますが、中国の道教について、5本の投稿記事ができました。

 

道教は、儒教、仏教に並ぶ中国三大宗教の一つで、儒教とともに中国漢民族の固有の宗教です。道教というと老子が始めた道家思想のことであると思う人がいるかもしれません。学校教育の場でも、道教の思想的側面が強調されるので、「道教=道家(老荘)思想」と捉えられるかもしれませんが、実際、そうではありません。

 

道教において、修行者は不老不死の神仙となることをめざし、さまざまな術や儀礼を行い、人々も健康や金運など現世利益を求めた結果、多種多様な神々が信仰の対象になりました。道教は、「神々の百貨店」、「中国文化の雑貨店」と言われるぐらい様々な要素を含んでいると評されるほど複雑すぎて、誰も、道教を体系的に一つまとめて説明することはできないとされています。

 

通常、宗教は、教祖がいて、人々が知らない神や世界の真理を説き、人々が集っていきますが、道教の場合は逆に、人々が神々を「創作」し、複雑多岐な信仰の世界を形成していったユニークな宗教です。現在の中国は、無神論であるマルクス主義の国なのですが、中国の人々は極めて宗教的な国民なのかもしれません。そうした、不思議な道教について、いくつかの角度から紐解いていきます。

 

道教1 道教の源流:道教=老荘思想ではない!?

道教2 教団としての道教:五斗米道、上清派、全真教…

道教3 道教:神々の系譜➀ 老子や南極老人も神!

道教4 道教:神々の系譜② 孫悟空や岳飛も神!

道教5 道教の歴史:巫術と神仙から始まった…

 

中国三大宗教の他の儒教と仏教について知りたい方は次のページを参照下さい。

中国の儒教を学ぶ

インドと中国の仏教を学ぶ

 

 

 

 

2024年04月18日

「中国の儒教を学ぶ」シリーズを投稿しました!

本HP「レムリア」では、「世界の宗教」を紹介していますが、中国の儒教について、4本の投稿記事ができました。古代より、儒教は日本にも取り入れられましたが、儒教には、私たちが学校で習わなかった側面がいくつもあります。儒教の真の姿に近づこうと、儒教を多面的にとらえ、その事実を紹介します。

 

儒教➀ 孔子・孟子・荀子・朱子…が教えたこと

儒教② 四書五経:論語だけではない儒教の経典

儒教③ 儒教は宗教か否か?

儒教④ 儒教の歴史:孔子と弟子たちの遺産

 

中国三大宗教の他の道教と仏教について知りたい方は次のページを参照下さい。

中国の道教を学ぶ

インドと中国の仏教を学ぶ

 

 

 

 

2024年04月07日

キリスト教の復活祭、ローマと世界へ!

キリスト教にとって、春の最大行事といえば、復活祭(イースター)です。2024年のイースターは3月31日に行われました(東方正教会は5月5日)。

 

イースターは、イエス・キリストが十字架の死の後、3日後に「復活」されたことをお祝いする礼拝です。この復活があったからこそキリスト教が生まれたと言えるほど、キリスト教にとっては大切な日です。

 

復活祭(イースター)についての詳細やその由来等については

復活祭(イースター):北欧神話から春の訪れ

を参照下さい。

 

ローマ・カトリック教会では、フランシスコ教皇は、その日の午前中、バチカンのサン・ピエトロ(聖ペトロ)広場で、キリストの復活を祝うイースターのミサ(「復活の主日のミサ」)を行った後、同日正午、サンピエトロ大聖堂の中央バルコニー(ロッジア)から、サンピエトロ広場に集まった信者を前に、ローマと全世界に向けた復活祭メッセージと祝福(ウルビ・エト・オルビ)をおくられました。

 

ウルビ・エト・オルビ」は、教皇による祝福(使徒的祝福)の正式な形式で、イースター(復活祭)以外に、通常、クリスマスと新教皇がコンクラーベで選任されたときだけ行われる特別なものです。カトリック教会の信徒にとっては教皇の祝福を受けることは罪の償いの免除(全免償)が与えられる条件の一つを満たすことを意味するそうです。

 

なお、ウルビ・エト・オルビは、ラテン語のUrbi et Orbiの直訳で、「都市と世界へ」という意味ですが、ローマ教会では「ローマと世界へ」と訳されます。

 

 

教皇フランシスコの2024年度の復活祭メッセージ

(バチカンニュースより)。

******************************

親愛なる兄弟姉妹の皆さん、主のご復活おめでとうございます。

 

2千年前、エルサレムから発せられた福音が、今日、全世界に響きます。「十字架につけられたナザレのイエスは、復活しました」(参照 マルコ16,6)。

 

教会は、週の初めの日の明け方早く、墓に行った婦人たちの驚きを再び体験します。イエスの墓は大きな石で塞がれていました。今日もまた、重い岩が、あまりにも重い岩が、人類の希望を塞いでいます。それは、戦争の岩、人道危機の岩、人権侵害の岩、人身取引の岩、そしてその他多くの岩です。わたしたちも、イエスの弟子であった婦人たちのように尋ねます。「だれが墓の入り口からあの石を転がしてくれるでしょうか」(参照 マルコ16,3)と。

 

それに対し、復活の朝に見たものは、これほど大きな石がすでにわきへ転がしてある光景でした。婦人たちの驚きは、わたしたちの驚きです。イエスの墓は開き、空になっていたのです!ここからすべてが始まります。あの空の墓を通して新しい道が開けます。それは神以外の誰も開くことのできない道、死の中のいのちの道、戦争の中の平和の道、憎しみの中の和解の道、対立の中の兄弟愛の道です。

 

兄弟姉妹の皆さん、イエス・キリストは復活されました。そして、イエスだけがいのちに向かう歩みを閉ざす石を転がすことができるのです。いや、むしろ、生ける主ご自身が、いのちと、平和、和解、兄弟愛の道なのです。主は人間では不可能な道を開かれます。なぜなら、主だけが世の罪を除き、わたしたちの罪を赦されるからです。神の赦し無しでは、あの石を動かすことはできません。罪の赦し無しでは、閉鎖や、偏見、疑い合い、自分の罪を常に認めず他者を非難する横暴から脱することはできません。復活されたキリストだけが、わたしたちに罪の赦しを与え、新たにされた世界への道を開くことができるのです。

 

復活されたキリストのみが、いのちの扉を開くことができます。わたしたちはその扉を、世界に広がる戦争のために、閉じ続けています。今日、わたしたちの眼差しは、特にイエスの受難と死と復活の神秘を証しする聖都エルサレムと、聖地のすべてのキリスト教共同体に向かいます。

 

わたしの思いは、イスラエルとパレスチナ、ウクライナをはじめ、世界各地の紛争の犠牲者に向かいます。復活されたキリストが、これらの地域で苦しむ人々のために平和の道を開いてくださいますように。国際法の原則の尊重を呼びかけると共に、ロシアとウクライナ間のすべての捕虜の交換を希望します。

 

また、ガザへの人道支援のアクセスの可能性を保証するよう、改めてアピールすると同時に、昨年10月7日に拉致された人々の即時解放と、同地域での即時停戦を訴えたいと思います。

 

子どもたちをはじめ、すでに疲弊した民間人に深刻な影響を与える敵対行為をこれ以上続けることは認められません。彼らの眼差しにどれだけの苦しみを見ることでしょうか。それを見て、わたしたちは尋ねます。なぜ?なぜこれほど多くの死者、破壊が必要なのかと。戦争は常に非道であり、敗北です。ますます強まる戦争の風を、ヨーロッパや地中海に吹かせてはなりません。武装や再武装の論理に陥ってはいけません。平和は決して武器では築けません。手を差し伸べ、心を開くことで築けるのです。

 

長く破壊的な戦争の影響を14年間も被っているシリアを忘れないようにしましょう。無数の死者・行方不明者、多くの貧困と破壊は、国際共同体はもとより、全ての方面からの回答を待っています。

 

わたしの眼差しは今日特にレバノンに向けられます。レバノンは長期間、政治機能の不全と深刻な経済・社会危機に置かれている上、今、国境でイスラエルとの対立にさらされています。復活の主が、愛するレバノン国民を慰め、出会いと共存と多極主義の地としての召命において国全体を支えてくださいますように。

 

わたしは、ヨーロッパ構想において統合への意味ある歩みを進めている、西バルカン地域を思います。民族、文化、宗教の違いが、分裂の原因となることなく、ヨーロッパ全域と全世界を豊かにするための源となりますように。

 

同様に、アルメニアとアゼルバイジャン間の対話を励ましたいと思います。国際社会の支援のもと、対話と、避難民の援助、諸宗教の信仰の場の尊重を推進し、最終的な和平に一刻も早く到達することができますように。

 

復活されたキリストが、世界の様々な地域で、暴力や、紛争、食糧危機、気候変動の影響などを受け苦しむ人々に、希望の道を開いてくださいますように。あらゆる形のテロリズムの犠牲者に慰めをお与えください。命を奪われた人々のために祈り、これらの犯罪の犯人たちの悔い改めと回心を求めましょう。

 

復活の主が、ハイチの人々を見守ってくださいますように。同国が、国内を引き裂き、血で染める暴力をすぐにくい止め、民主主義と兄弟愛の歩みのうちに成長することができますように。

 

重大な人道危機に苦しむロヒンギャの人々に神の慰めがありますように。内戦に引き裂かれたミャンマーに和解の道を開き、あらゆる暴力の論理を手放させてください。

 

アフリカ大陸、特にスーダンとサヘル全域、アフリカの角地方、コンゴ民主共和国・キブ州、モザンビーク・カボデルガド州の苦しむ住民に、平和の道を開いてください。そして、広い地域を覆い、食糧不足と飢えをもたらす、長い旱魃状態を止めてください。

 

復活の主がその光を移民や、経済的困難の中にある人々の上に輝かせ、助けを必要とする彼らに慰めと希望をもたらしてくださいますように。キリストがすべての善意の人々を連帯における一致へと導き、より良い生活と幸福を求める最も貧しい家族たちを脅かす多くの問題に、一緒に立ち向かわせてください。

 

御子の復活においてわたしたちに与えられたいのちを祝うこの日、わたしたち一人ひとりへの神の限りない愛を思い出しましょう。その愛はあらゆる限界、弱さをも超えるものです。それにもかかわらず、尊いいのちの賜物がどれだけしばしば軽んじられていることでしょうか。どれだけの子どもたちが生まれて光を見ることすらできないでいるでしょうか。どれだけの人が飢え死に、基本的なケアも受けられず、搾取と暴力の犠牲となっているでしょうか。どれほどのいのちが売買の対象となり、人身取引を拡大させているでしょうか。

 

キリストがわたしたちを死の隷属から解放してくださったこの日、政治的責任を負う人々に呼びかけたいと思います。人身取引の災いと戦う努力を惜しまず、搾取の構造を解体するために絶えず働き、被害者らに自由をもたらしてください。主が彼らの家族をいたわり、特に愛する人たちの消息を不安のうちに待つ家族に、慰めと希望を与えてくださいますように。

 

復活の光がわたしたちの精神を照らし、心を回心させ、受け入れ、守り、愛するべき、すべての人のいのちの価値を認めさせてくださいますように。

皆様に、主のご復活のお喜びを申し上げます。

******************************

 

<参照>

キリスト教(世界の宗教)

復活祭(イースター):北欧神話から春の訪れ

 

 

<参照>

バチカンニュース

コトバンク

Wikipediaなど

 

 

 

 

 

2024年03月31日

イスラエル・パレスチナ情勢の理解のために

終わりの見えないイスラエル・ガザ戦争、深まる一方の憎しみの連鎖から抜け出せる方法を見つけるために、まずはイスラエルとパレスチナを正しく知ることが必要でしょう。混迷きわまる中東情勢について、幾つかのテーマ毎にまとめました。

 

イスラエル: 「ダビデの星」の国の基礎知識

パレスチナの最終的地位問題:解決への3つの論点

エルサレム:「シオンの丘」に立つ聖なる神の都

イスラエル史➀:シオニズム運動の結実とその代償

イスラエル史②:オスロ合意からガザ戦争まで

 

パレスチナ:ヨルダン川西岸・ガザ・東エルサレム

PLO:アラファトのファタハ、その闘争の変遷

ハマス:イスラム主義と自爆テロの果て

パレスチナからみた中東史➀:中東戦争の敗北とPLOの粘り

パレスチナからみた中東史②:オスロ合意とハマスの抵抗

 

 

 

2024年01月12日

ローマ教皇の年頭メッセージからわかる世界の諸問題

教皇フランシスコは、2014年1月8日(月)、好例の駐バチカン外交団に対して新年の挨拶を送られました。その中で、世界情勢の展望や平和の問題などについて言及されています。世界平和を常に求められるローマ教皇の見解は、アメリカ寄りでも、ロシア寄りでも、中国寄りでもなく、まさに、世界で何が起こり、何に注目しなければならない内容であると思われます。

 

バチカンニュースの記事を抜粋して、お伝えします(太字は筆者による)。全文については以下から確認して下さい。

https://www.vaticannews.va/ja/pope/news/2024-01/il-papa-discorso-nuovo-anno-corpo-diplomatico.html

 

★☆★☆★☆

教皇、平和への強い思い、バチカン外交団への新年の挨拶で

(2024.1.8バチカンニュース)

 

‥‥教皇は現在イスラエルとパレスチナで起きていることに憂慮を表明。昨年10月7日のハマスによるテロ攻撃の残忍さ、多くの人々を人質にとった行為を厳しく非難された。…こうした行為がイスラエル軍のガザ地区への強い反撃を招き、子どもや若者を含む、数万の民間人の死をもたらし…重大な人道危機を引き起こした、と語られた。

 

教皇は紛争のすべての当事者に、レバノンを含むすべての前線での停戦と、ガザで拘束されている人質の即時解放、そしてパレスチナの人々への人道支援、病院・学校・宗教施設の保護をアピールされた。

 

ガザにおける紛争が、以前からの脆弱で緊張した状態にさらなる不安定をもたらした地域として、教皇は特にシリアを挙げ、安定しない政治・経済に加え、昨年2月の地震でさらに状況が悪化した同国で暮らす国民、そしていまだヨルダンやレバノンにいる多くのシリア難民たちのために寄り添いを示された。

 

また、レバノンの社会・経済情勢を心にかける教皇は、同国が政治的停滞から脱し、早く大統領の空位を埋められるよう望まれた。

 

教皇は、「二国家解決」とエルサレムの国際法的に保証された特別な地位の実現に向け、決意をもって努力することを国際共同体に願われた。

 

次に教皇は…アジアに目を向け、ミャンマー情勢に言及。同国民に希望を、若者に未来を与えられるよう、またロヒンギャの人々の人道危機を忘れないよう、国際社会の関心を喚起された。

 

ロシアとウクライナ間の戦争からもうすぐ2年が経過しようとしているにも関わらず、待たれる平和はいまだ訪れず、多数の犠牲者と膨大な破壊をもたらしている状況に、教皇は…国際法の尊重のもと、交渉を通してこの悲劇に終止符を打つことが必要と述べた。

 

アルメニアとアゼルバイジャンの緊張状態にも憂慮を示された教皇は、双方が平和条約にこぎつけることができるように願われた。

 

アフリカ情勢をめぐり、教皇はサブサハラ諸国のテロや、社会・政治的問題、気候危機などを原因とする様々な人道危機、中でもエチオピアやスーダンの内戦、カメルーンやモザンビーク、コンゴ民主共和国、南スーダンの避難民の状況に触れた。

 

中南米に関し、教皇はベネズエラとガイアナ間の強い緊張、ペルーにおける分極化、ニカラグアの社会状況に懸念を表した。特にニカラグアの危機がカトリック教会に与えている痛ましい影響について、教皇は外交対話へと招き続ける教皇庁の立場を改めて示された。

 

平和問題について、戦争の継続を可能にしているのは豊富な武器のおかげであると言う教皇は、軍縮政策を続けることの大切さを説く中で、特に「核兵器の製造と保有は倫理に反する」と、今一度訴えられた。

 

一方で、平和の追求のためには、…飢餓をはじめとする、戦争の原因となるものを取り除く必要を指摘。

 

さらに、教皇は、環境危機や、気候変動が紛争に与える影響を指摘しつつ、昨年ドバイで開催された国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の実りが、エコロジー的移行を促すことを期待された。

 

教皇は、平和のために、国際共同体・政治・社会・諸宗教など、様々なレベルでの対話の必要を改めて強調。また、移民現象、生命保護、人権、ジェンダー理論、教育、人工知能、反ユダヤ主義増加、キリスト教徒迫害などのテーマにも言及された。

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こうして見ると、ローマ教皇は、日本ではメディアがあまり取り上げない地域やテーマについてグローバルに俯瞰されていることがわかります。バチカンの全方位外交は、不確実な世界における日本外交のとるべき戦略について、何らかのヒントを教えてくれそうな気がします。

 

本サイト「レムリア」でも、今年は、ローマ教皇のいわば年頭メッセージにでてきた地域やテーマについて、歴史的なアプローチとともに取り上げていきたいと思います。

 

<参考>

ローマ教皇やバチカンについてさらに知りたい方は以下の投稿も参照下さい。

カトリック教会:ローマ教皇とバチカン

 

 

 

 

2023年12月28日

回想 ヘンリー・キッシンジャー

アメリカ外交に史上最も影響力を与えた人物と評されたヘンリー・キッシンジャー氏(以下敬称略)が、2013年11月29日、コネティカット州の自宅で亡くなりました(100歳で、死因は不明)。

 

キッシンジャーと言えば、大国の現実的なパワーバランスによってのみ世界秩序が決まるという勢力の均衡(バランス・オブ・パワー)の考え方に徹し、米中和解、ベトナム戦争終結、ソ連との緊張緩和(デタント)など八面六臂の活躍をし、ノーベル平和賞も受賞するなど、輝かしい外交実績を残しました。

 

その一方で、キッシンジャー外交は、現実主義(リアリズム)の立場からアメリカの戦略的利益を追求するあまり、独裁体制を容認したり支持したりすることも厭わず、明らかに道徳的・理想主義的ではありませんでした。そのため、キッシンジャーは人権や民主主義を軽視した冷血漢と一部で批判されました。実際、大国やとう弄された小国の国民に多くの犠牲を出したことから、「戦争犯罪人」とまで呼ぶ人たちもいます。

 

このように、常に毀誉褒貶(きよほうへん)がつきまとったキッシンジャーの外交の足跡を追ってみましょう。

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以下、本文の内容にご関心の方は、次のサイトで閲覧できます。

アメリカ外交の巨星、キッシンジャーの功罪

 

 

では、この投稿では、拙著「日本人が知らなかったアメリカの謎」で紹介したキッシンジャーについての記事を、今回特別に全文紹介したいと思います。

 

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ヘンリー・キッシンジャーという人物

―なぜこの人がいつも陰謀論のやり玉にあがる!?―

 

まず、ヘンリー・キッシンジャーの輝かしい経歴を概観してみよう。キッシンジャーは、ユダヤ人亡命者として、ドイツからアメリカに移住し、ハーバード大学で学んだ。ロックフェラー家の支援を受けながら学者としてのキャリアを積んでいった。ネルソン・ロックフェラーが、68年にニクソンと共和党大統領候補を争った時、選挙参謀を務めた後に政界に転身した。

 

キッシンジャーは、ロックフェラーの政敵、ニクソン大統領のもとで、国家安全保障担当の特別国務補佐官、後に国務長官にもなった。次のフォード政権下でも留任し、実質、1970年代のアメリカ外交を握った人物として知られる。71年には、当時国交が回復していなかった中国に接近、北京を秘密裡に訪問する「忍者外交」を行い、翌年のニクソン大統領の訪中を実現させた。

 

73年には、パリでベトナム和平協定に調印し、4年越しのベトナム和平交渉にも成功。この功績が評価されて、キッシンジャーはノーベル平和賞を受賞した。また、ソ連との核ミサイル軍縮交渉も努め、「デタント(緊張緩和)」政策を展開した。

 

また、交友関係も広く、大学時代から面倒をみてもらっていたロックフェラー家だけでなく、欧州ロスチャイルド家などの上級階級、さらにはイギリス王室とも付き合いがあるとされる。

 

キッシンジャーは秘密が大好き!?

 

こうして華々しい成果とは裏腹に、キッシンジャーには常に「陰謀」の影がつきまとった。彼は、中国への「お忍び=忍者」外交を典型とした秘密外交を好んだ。その秘密が外交文書の公開によって徐々に明らかにされてきているのだ。

 

ベトナム戦争の軍事戦略も担ったキッシンジャーは、ベトナムに対する枯れ葉剤の散布や、カンボジアに対する「じゅうたん爆弾」を推進した。枯れ葉剤によって寄形児が生まれているという事実、また非人道的な「じゅうたん爆弾」で結果的に100万人近い農民を大量に虐殺したことの責任は問われないのか?と市民団体などから非難されている。そのキッシンジャーがノーベル平和賞を受賞したのだ!?北ベトナム側のレ・ドゥク・トも同時受賞したが彼は賞を辞退した。

 

また、カンボジア以外でも、ギリシャのキプロス侵攻、インドネシアの東ティモール侵攻、チリのアジェンダ左派政権の転覆などを支持(承認)したとされ、それが結果的に大量虐殺や暗殺などが行われることになってしまった。

 

こうしたことから、「戦争犯罪人」として裁くことを求める声が国際社会の中で高まった。実際、フランスでは、裁判所に戦争犯罪の重要参考人として呼ばれたほどである。 また、日本でも、田中角栄元首相をロッキード事件で政治的に失脚させたのもキッシンジャーが背後にいたといわれている。

 

キッシンジャー・アソシエイツの時代

 

キッシンジャーは70年代末には政治の表舞台から一応離れた後、1982年に「キッシンジャー・アソシエイツ」というコンサルタント会社を設立した。

 

主に、ロックフェラー系企業であるチェース・マンハッタン銀行(現チェースモルガン銀行)やAIG(保険)、アメックス、コカコーラ、化粧品のレブロンと顧問契約を結び、国際的な権益促進させてあげている。また、投資ファンドのブラックストーン・グループ(会長はピーターピーターソンでCFR理事長)とは戦略的同盟関係を結んだ。

 

キッシンジャー・アソシエイツの人脈もすごい。民主・共和党両党にコネを持っていることが伺える。会長だったブレント・スコウクロフトと社長のローレンス・イーグルバーガーは、ブッシュ(父)政権で、スコウクロフトが国家安全保障担当補佐官、イーグルバーガーが国務副長官(後に国務長官)になった。また、スタッフメンバーであったティモシー・ガイトナーはオバマ政権下の財務長官になり、ビル・リチャードソンはクリントン政権の国連大使、ブッシュ政権の時のエネルギー長官になった。

 

さらに、ユダヤ人としてADL(ユダヤ名誉毀損防止連盟)と連携しているといわれるキッシンジャーは、主にロックフェラー系の企業のコンサルタントを行い、CFRの「予言書」フォーリンアフェーズに定期的に執筆している…。キッシンジャーが述べる「予測」は、ロックフェラーの世界戦略を実現するための「予定」だと揶揄されているほどだ。

 

キッシンジャーと中国

 

米中和解の立役者としての縁で、キッシンジャーは中国との太いパイプを持ち続けている。キッシンジャー・アソシエイツの会員企業の多くが中国の市場に参入し、キッシンジャーが彼らの商業権益を確保してやっているのである。ブッシュ家が、中国で10兆円の資産を共産党と共同運用しているといわれており、それも、委託管理はキッシンジャーアソシエイツだそうだ。

 

キッシンジャーと中国の蜜月関係から、アメリカは中国と決定的に対立することは予想しずらい。米中がどんなに対立しても、裏ではアメリカと中国はキッシンジャーがパイプ役となって手を組んでいるという陰謀論が頭をもたげている。(了)

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拙著「日本人が知らなかったアメリカの謎」には、ほかにも、キッシンジャーと関係の深い、ロックフェラー家やCFR(外交問題評議会)などについても、雑学のレベルで読み物として紹介しています。ご関心のある方は、お買い求め、またはお近くの図書館でお読み頂ければと思います。

 

 

2023年11月13日

佳子さまペルーご訪問 皇室の南米外交を担う秋篠宮家

秋篠宮ご夫妻の次女、佳子さま(佳子内親王/身位は内親王。敬称は殿下)は、2023年11月、日本とペルーの外交関係樹立150周年を記念して、南米のペルーを公式訪問されました。

 

滞在中は、記念式典で挨拶され、日系人らと交流されたほか、インカ帝国時代の城塞都市遺跡、「空中都市」と呼ばれる世界遺産のマチュピチュ遺跡や、アンデス山脈にある都市クスコを訪問され、インカ帝国時代の太陽神殿コリカンチャなどを視察されました。

 

佳子さまの外国公式訪問は2019年のオーストリア・ハンガリー以来、4年ぶり2回目となり、また、ペルーは2014年に秋篠宮ご夫妻、19年に長女小室眞子さんが訪れています。

 

ペルーの国柄、日本や皇室との関係、また、インカ帝国については、以下の投稿記事でまとめています。興味のある方はご一読下さい。

 

ペルー:かつてのインカ帝国の残影とともに

インカ文明:マチュピチュを生んだ太陽の帝国

 

過去10年、秋篠宮家が、ペルーを含む南米の訪問を担っています。秋篠宮ご夫妻は14年にペルーとアルゼンチン、15年にブラジル、17年にはチリをご訪問され、当時の眞子内親王殿下(現小室眞子さん)は、16年にパラグアイ、18年にブラジル、19年にはペルーとボリビアを訪れています。

 

なぜ、秋篠宮家が南米の国際親善を担っているかについて、「皇室の少子高齢化」の影響が指摘されています。日本から南米までは、長時間のフライトであり、現地での移動も時間がかかります。訪問先は暑いところが多い一方、山間地では気温がぐっと下がるなど過酷な環境の場所が多く、体力が必要なため、若い皇族でなければ、その任に耐えられないと言われています。

 

こうした背景から、近年、若い秋篠宮家がその役割を担うようになりました。秋篠宮ご夫妻が50代になられた時期からは、最初は眞子内親王殿下、そして、眞子さまご結婚後の現在は佳子さま(佳子内親王殿下)が、南米訪問を任される立場になっている模様です。

 

<参照>

佳子さまが「エネルギッシュな笑顔」でペルーへ出発 なぜ秋篠宮家が南米の訪問を担うのか (2023/11/02、AERA)

 

 

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