復活祭(イースター):北欧神話から春の訪れ

 

キリスト教徒(クリスチャン)にとって、重要な行事といえば、クリスマスとイースター(復活祭)があげられますが、今回は、イースターについてまとめました。

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  • イースターとは?

 

イースター(Easter)はイエス・キリストの復活を祝う祭で、「復活祭」とも言われます。イエスは、人類が犯した過ちや罪を一身に背負って、十字架にかけられて処刑された後、3日目に復活したと、キリスト教徒の間では信じられています。

 

そして、イエスが蘇ったように、イエスを信じる者は、誰でも罪が許されて天国へ行き、永遠の命を持つと考えられました(信じる者は救われる)。ですから、キリト教において、イースターは、クリスマス(イエス・キリストの降誕祭)と以上に重要な行事となっています。

 

モアイ像で知られる南米のイースター島も、1722年、オランダ海軍がこの島を発見した日がイースターだったため「イースター島」という名をつけたと言われています。

 

 

  • イースターの由来

 

イースターという名前は、北方神話(ゲルマン神話)の春の女神エオストレ(Eoster)や春の月エオストレモナト(Eostremonat)に由来しています。春の女神は太陽とともにやってくると考えられ、イースターは、もともと春(=女神)の到来を喜ぶお祭りでした。ですから、太陽が昇る東を「イースト(East)」と呼ぶようになったとも言われています。

 

そうすると、イースターの祝祭は、本来、キリスト教とは関係のない春のお祭りだったものが、キリスト教の布教の際に、春の祭りとキリスト復活のイメージが結びついて、普及していったと考えられています。イースターとは、キリストの復活と春の到来を祝う祭りなのです。

 

 

  • イースターの日付け

 

イースターは、紀元325年に開かれたニカイア公会議という世界教会会議において、「春分の日の後で、最初の満月の日の次にくる日曜日」と定められました。ですから、2022年のイースターは4月17日でしたが、毎年4月12日がイースターというわけではありません。来年以降のイースターは以下のようになります。

 

2023年4月9日(日)

2024年3月31日(日)

2025年4月20日(日)

 

「日曜日」にイースターを祝うのも、イエス・キリストの復活されたのが日曜日であったからだとされています。

 

このイースターの日付けは、カトリックやプロテスタントなど西方教会の場合で、東方正教会(ギリシャ正教)では異なります。これは、東方正教会がユリウス暦を、西方教会がグレゴリオ暦を基にしているからです。

 

ユリウス暦とは、ローマのユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)が、紀元前46年に制定した太陽暦で、一年を365日とし、4年に一度366日の閏(うるう)年を置きました。

 

ところが、ユリウス暦では約128年につき1日の誤差が生じるという問題点があります。結果として、16世紀後半になると、実際の春分が暦より10日早くなってしまったのです。

 

そこで、ローマ教皇グレゴリウス13世が1582年にグレゴリオ暦を制定して、計算上の工夫を施し誤差を可能な限りなくしました。この結果、日本を含め現在多くの国で使われているグレゴリオ暦では、イースターの日は3月22日から4月25日の間に収まっています。

 

 

  • イースター前の四旬節(レント)

 

復活祭(イースター)そのものは、「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」に行われる一日だけの行事ですが、復活祭前の準備期間として、(日曜日を除く)40日間の「四旬節(レント)」が設けられています。四旬節(レント)は、復活祭の46日前にあたる「灰の水曜日(Ash Wednesday)」と呼ばれる日に始まり、一般的には復活祭の前日(聖土曜日)までを言います。

 

また、四旬節(レント)の最後の1週間(復活祭前の1週間)は、特別に「受難週(聖週間)」と呼びます。「受難の主日」から始まり(2024年は3月24日の日曜日)、主の晩餐の「聖木曜日」、主の受難を記念する「聖金曜日」を経て、復活祭(復活の主日)の前日である「聖土曜日」まで続きます。さらに、この聖週間の聖木曜日・聖金曜日・聖土曜日の3日間を、「聖なる過越の3日間」と呼んで特別に扱います。

 

四旬節(46日間)(2024年)

2/14(水):灰の水曜日(四旬節の始まり)

 

聖週間(復活祭前の1週間)

3/24(日):受難の主日(棕櫚の日曜日)

3/25

3/26

3/27

 

聖なる過越の3日間(「復活」前の3日間)

3/28:聖木曜日

3/29:聖金曜日

3/30:聖土曜日

3/31(日):復活の主日(復活祭)

 

 

  • 復活祭(イースター)(復活の主日)

(聖土曜日の日没から復活祭の日没まで)

 

復活の主日は、十字架上で亡くなり、墓に葬られたイエスが3日目に復活したことを記念する祭日で(カトリック教会の典礼暦では、2024年は3月31日(日))、典礼暦年の中で最高位を占める主日(日曜日)であると位置づけられます。

 

ただし、厳密に言えば、復活の主日(復活祭)は、復活の聖なる徹夜祭から始まります。教会暦とはキリスト教で用いられる暦のことですが、教会暦の区切りは日没頃にあります。従って、教会における復活祭の当日は、一般の暦で言う前日晩の「復活徹夜祭」から始まるのです。

 

 

復活徹夜祭(復活の聖なる徹夜祭)

復活祭前日の「聖土曜日」の深夜から「復活の主日(復活祭の日)」の夜明けまでの間に、主イエス・キリストの復活を待ちつつ祈り、死から生への過ぎ越しを祝う「復活の聖なる徹夜祭(復活徹夜祭)」が行なわれます。古来の伝統に基づき、この夜は神のために守る徹夜とされています。

 

復活の主日のミサ

復活祭(復活の主日)の日の午前中、フランシスコ教皇は、バチカンのサン・ピエトロ(聖ペトロ)広場で、キリストの復活を祝うイースターのミサ(「復活の主日のミサ」)を行います。

 

復活祭メッセージと祝福(ウルビ・エト・オルビ)

また、同日正午、サンピエトロ大聖堂の中央バルコニー(ロッジア)から、広場に集まった信者を前に、ローマと全世界に向けた復活祭メッセージと祝福(ウルビ・エト・オルビ)を贈ります。バチカンの復活祭ミサには、毎年多くの巡礼者や観光客が教皇から祝福を受けるために集まります。

 

ウルビ・エ・オルビは、教皇による祝福(使徒的祝福)の正式な形式で、重要な機会に教皇がローマ市と全世界に授けられます。イースター(復活祭)以外に、通常、クリスマスと新教皇がコンクラーベで選任されたときだけ行われる特別なものです。カトリック教会の信徒にとっては教皇の祝福を受けることは罪の償いの免除(全免償)が与えられる条件の一つを満たすことを意味するそうです。

 

なお、ウルビ・エト・オルビは、ラテン語のUrbi et Orbiの直訳で、「都市と世界へ」という意味ですが、ローマ教会では「ローマと世界へ」と訳されるように、復活祭期間中に希望と平和のメッセージが伝えられます。

 

イースターエッグとイースターバニー

復活祭のミサの後、ミサの中で祝別された「ゆで卵(イースターエッグ)」が会衆に配られるのが慣例です。卵は、新しい命が生まれ出てくるという意味で、生命や復活の象徴し、ウサギは多産であるため、繁栄や豊穣の象徴とされています。

 

 

  • イースター後の復活節

復活祭が終わっても、復活祭の典礼(行事)が50日間(約7週間)続き(この期間を「復活節」と呼ぶ)、キリストの復活が祝われます。具体的には、「復活の主日」後、「主の復活の8日間」(「天使の月曜日」)、復活40日後の「主の昇天」、その10日後の「聖霊降臨(ペンテコステ)」へと続いていきます。

 

復活節(2024年)

3/31(日):復活の主日

 

~主の復活の8日間から

4/1(月):天使の月曜日

 

4/8(月):神のお告げの祭日

5/12(日):主の昇天の主日

5/19(日):聖霊降臨の主日

 

 

イースター(復活祭)前後の四旬節(レント)と復活節の詳細については、次の投稿記事を参照下さい。

受難節と復活節 : レントからペンテコステまで

 

そのほか、キリスト教全般については、以下のサイトからお選び下さい。

キリスト教の教派

カトリック教会:ローマ教皇とバチカン

プロテスタント教会:ルター発の聖書回帰運動

東方正教会:ギリシャから正統性を継承

 

アメリカのキリスト教:バプティストを筆頭に…

 

キリスト教史

キリスト教史①:イエスの生涯とその教え

キリスト教史②:十二使徒とパウロの伝道

キリスト教史③:東西教会はいかに分裂したか?

キリスト教史④:修道院運動の盛衰

キリスト教史➄:異端と魔女狩り

正教会のキリスト教史:ギリシャからロシアへ

 

 

<参考>

「イースター」って何のイベント? いつ、何をすればいいの?

実はクリスマスよりも大事!?「イースター」の意味と楽しみ方!

イースター(復活祭)のミニ知識と由来

キリスト教の復活祭?春になると聞く…けど実はよく知らない「イースター」の豆知識

ことばんく、Wikipedia から

 

 

(2020年6月7日(最終更新日2024年5月29日)