受難節と復活節 : レントからペンテコステまで

 

復活祭(イースター)は、福音書に書かれた、イエス・キリストが十字架の上で亡くなった後,三日目に復活したことを記念する礼拝日です。キリスト教徒にとって、復活祭は、ある意味クリスマスよりも重要だと言われています。実際、復活祭そのものは、「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」の一日だけの行事ですが、復活祭前の準備期間として、40日間の「四旬節(レント)」が設けられています。また、復活祭が終わっても、「主の昇天」や「聖霊降臨(ペンテコステ)」など復活祭の典礼(行事)が50日間(約7週間)続き(この期間を「復活節」と呼ぶ)、キリストの復活が祝われます。

 

今回は、復活祭の前後に行われる四旬節と復活節を紹介します。なお、本投稿ではカトリック教会の典礼に基づいて解説しますが、東方正教会や、多くのプロテスタント教会でも用語は異なるにしても同様の行事が行われています。

 

また、復活祭(イースター)そのものについての詳細は、「復活祭(イースター):北欧神話から春の」を参照下さい。

 

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四旬節 (レント)>

カトリック教会においては、イースター(復活祭)の前に「四旬節(レント)」が設けられています。「四旬節」は、イースター前の日曜日を除く40日間(日曜日を含めれば46日間)で、2024年は、2月14日から3月30日まででした。

 

四旬節(しじゅんせつ)は、「受難節(レント)」、「レント大斎節」とも呼ばれ、復活祭のための準備期間です。もともとは、洗礼の準備期間で、復活祭前夜の復活徹夜祭(後述)に 新しく洗礼を受ける洗礼志願者の準備として設けられたそうですが、英語レント(Lent)の語源は、古ドイツ語の「断食」からきています。レントは中世以来,深い悔い改めと断食・祈りの期間とされてきました。

 

それゆえ、四旬節(レント)は、イエス・キリストが「受難(主イエス・キリストが十字架によって苦難を引き受けられたこと)」したことを思い起こして、共に復活にあずかれるように、回心と償いをする期間と位置づけられています。

 

現在もカトリック教会においては、イエスの受難に倣おうと、断食が義務付けられています。もっとも断食といっても、完全に食事を断つというのではなく、十分な食事をひかえることとされていて、大斎(だいさい)と小斎(しょうさい)が定められています。

 

*大斎:1日の食事で、1食だけ充分に食事をし、あとはいつもよりも節制すること(量の節制)。

*小斎:鳥獣の肉を食べないこと(質の節制)。

 

大斎と小斎を守る日は、四旬節(レント)の「灰の水曜日」と「聖金曜日(復活祭直前の金曜日)」、小斎を守る日は祭日を除く毎金曜日です。

 

なお、カトリック圏のカーニバルは、教会行事ではありませんが、40(46)日間続く受難節(レント)前のお祭り騒ぎの名残りだと言われています。

 

なぜ、四旬節(レント)の期間が40日間なのかというと、イエスが宣教生活に入る前に、荒野(砂漠)で40日断食をしたことにならい、40日の祈りと節制をする期間を設けたとされています。日曜日を除くのは、イエスが復活した喜びの祝いの日が日曜日だからだそうです。

 

カトリック教会の典礼暦(教会暦)では、四旬節(レント)は、復活祭の46日前にあたる「灰の水曜日(Ash Wednesday)」と呼ばれる日に始まり、一般的には復活祭の前日(聖土曜日)までを言います。

 

 

  • 灰の水曜日

四旬節の始まりを告げる日(2024年は2月14日)で、この日のミサでは、灰を額に受ける「灰の儀式」が行われます(ゆえに「灰の水曜日」と呼ばれる)。これは、人は神によって創られた塵にすぎないことを自覚し、謙虚さを学ぶためのものとされています。

 

 

【聖週間】

また、四旬節(受難節)(レント)の最後の1週間(復活祭前の1週間)は、特別に「受難週」、「聖週間」と呼びます。「受難の主日」から始まり(2024年は3月24日の日曜日)、主の晩餐の「聖木曜日」、主の受難を記念する「聖金曜日」を経て、復活祭(復活の主日)の前日である「聖土曜日」まで続きます。

 

さらに、カトリック教会をはじめとする多くのキリスト教会では、この聖週間の聖木曜日・聖金曜日・聖土曜日の3日間を、「聖なる過越の3日間」と呼んで特別に扱います。死から生へと移るキリストの過越の神秘を祝うこの3日間は、教会の典礼(キリスト教の教会が行う公の礼拝・儀式・式典)では最重要な期間とされています。

 

より正確には、聖木曜日の「主の晩さんの夕べのミサ」から始まり、聖土曜日の復活徹夜祭を経て、復活主日(復活祭)の晩の祈りまでの過程をさし、受難と十字架を通して、死から生命へ移る(十字架につけられ、葬られ、復活された)キリストの過越の神秘を祝う3日間です。

 

2024年の聖週間と復活祭

3/24(日):受難の主日(枝の主日)(棕櫚の日曜日)

3/25

3/26

3/27

~聖なる過越の3日間~

3/28:聖木曜日

3/29:聖金曜日

3/30:聖土曜日

3/31(日):復活の主日(復活祭)

*「主日」とは日曜日のこと

 

 

  • 受難の主日枝の主日

 

「聖週間」の初日の「受難の主日」は、イエスのエルサレム入城とイエスの受難の始まりを同時に記念する日です。聖週間の初日をなぜ受難の主日とも呼ばれるかは、この日から受難の1週間(聖週間)が始まるからです。

 

主のエルサレム入城の記念では、棕梠(しゅろ)(棕櫚とはヤシ科の樹木の総称)やオリーブの枝の祝福式と、その祝別された枝を掲げての宗教行列がミサの前に行われます。これは、子ロバに乗ってイエスがエルサレムに入城する際(「旧約聖書の預言が成就された」とされる)、イエスを、ユダヤの王として認め、「支配から解放するもの」と期待したイエスを大勢のユダヤ人たちは、各自、棕梠の枝を持ち、声を合せ、「ダビデの子にホザンナ! 主の名によって来られる方に賛美!」などと叫んで歓迎の意を表わし、ロバの歩く道には、自分の衣服や棕櫚の枝を切ってきて敷いたというエピソードにちなんだものです。この典礼の起源は古く、すでに4世紀後半のエルサレムで行われていたと言われています。

 

なお、「ホサナ」は、現在も、ユダヤ教とキリスト教で礼拝やミサの間に唱えられる「神をたたえよ」という呼びかけ語です。

 

このように、民衆が棕櫚(しゅろ)の枝を手に持って、イエスを喜び迎えたことから、受難の主日を「枝(えだ)の主日」、「棕櫚の日曜日」とも呼びます。現在、信者は、棕櫚(しゅろ)の枝をいただいて持ち帰り、翌年の四旬節の前に教会に返却します。「灰の水曜日」に額に受ける灰は、返却された枝を灰にしたものだそうです。

 

 

  • 聖木曜日

(「聖なる過越の3日間」のうち水曜の日没から木曜日の日没まで)

 

聖木曜日は、キリスト教教会暦における復活祭前の木曜日をいい、十字架の死の前の晩、イエスと使徒たちとの「最後の晩餐」を記念しています。この日、ミサ聖祭・聖体・司祭職がそれぞれ制定されたとされ、午前中「聖香油のミサ」、日没後に「主の晩餐のミサ」が行われます。

 

聖書には、「最後の晩餐」の様子が、「コリントの信徒への手紙」の中で、次のように書かれてています。

―――――――

イエスは、弟子たちとの最後の食事のとき、パンとぶどう酒の杯を取り、感謝の祈りを捧げてから弟子に与えました。その際、まず、パンを裂き、「これは、あなたがたのためのわたしのからだである。わたしの記念としてこのように行いなさい」と言いました。また、食事の後で、ぶどう酒の杯をとって、「これは、私の血の杯、あなたがたと多くの人のために流されて、罪のゆるしとなる新しい永遠の契約の血である。これを私の記念として行いなさい」と述べました。

―――――――

 

この聖書の記述から、カトリック教会では、ミサ聖祭と聖体を定めました。ミサ聖祭とは、カトリック教会において、ミサ(Mass)を行うこといい、パンとぶどう酒を聖別して、「聖体の秘跡(儀式)」が行われています。「聖体の秘蹟」とは、聖体(パンと葡萄酒)を口にすることで、キリストのいのちをいただき、永遠のいのちの交わりを先取りするという神の恵みをあらわすという典礼(儀礼)です。

 

最後の晩餐の日以来、キリスト教会では、救いをもたらしたキリストの死と復活を想い起こしながら、最後の晩餐の式を、ミサで繰り返し、キリストの愛の献上(キリストが命を捧げたこと)を再現しています。信者はミサの間に、イエスが生きた時代と同じ食卓にあずかり、キリストのからだである聖別されたパン(聖体)を拝領することによって、主イエスに心を合わせて、キリストと一つになるのです。ミサ聖祭はカトリック教会で最も重要な典礼です。

 

また、カトリック教会の伝統では、イエスが弟子たちにこの食事(最後の晩餐)を自分の記念として行うよう命じたことから、この日を「司祭職の制定の日」としており、司教が司祭たちに聖香油を渡す慣習があります。

 

聖香油のミサ(聖木曜日)

 

ローマ教会では、聖木曜日の午前中,各教区のすべての司祭が司教座聖堂に集まり、司教の司式(司教とその司祭団の共同司式)による、聖香油(せいこうゆ)のミサの中で、「司祭叙階時の約束の更新」と、「聖油の祝別」が行われます(バチカンでは教皇が行う)。

 

司祭叙階時の約束の更新

司祭たちは、自分達が叙階された日の(叙階の日に司教と聖なる神の民の前で行った)決意(約束)を新たに(更新)します。その約束とは「独⾝」と「従順」で、神とその⺠に仕えるための独⾝を貫くことと、所属する教区の司教への従順を改めて表明します。

 

聖油の祝別

聖香油は、オリーブ油に香料バルサムを混ぜたものですが、油は教会における聖霊(神の啓示を感じさせるもの)の働きを意味し,様々な秘跡(信徒に神の恩恵を与える儀式)において、聖霊をいただくことのしるしとして、信者は聖香油の塗油を受けます。(聖香油の塗油は聖霊をいただくことのしるし)

 

「聖油の祝別」の儀式(ミサ)では、司教は、司祭たちと共に、以下の三つの油(聖香油=聖油)を、祈りと共に祝別(人や物を聖とするための祈りや儀式のこと)します(より正確には、「聖香油」が聖別され、「洗礼志願者の油」と「病者の油」が祝福される)。

 

  • ⼊信の秘跡の為の聖⾹油(洗礼志願者の油)
  • 病者の秘跡の為の聖⾹油(病者の油)
  • 祝別の為の聖⾹油(堅信等に用いられる聖香油)

 

洗礼志願者の油は、受洗者が神の子として新たに生まれる前に、悪霊の力から開放され、罪を放棄することができるように塗油(とゆ)されるものです。

病者の油は、病気の人が癒され、また罪のゆるしを受けることができるよう、心と体に癒しと力を与えるものです。

 

祝別の為の聖香油は、堅信式、叙階式、幼児洗礼式のとき等に塗油されるものです。

 

この三つの聖油を塗油するということは、福⾳を宣べ伝えることや愛の掟を教えること、また、病気や悪霊に苦しめられている⼈々を助けること、そして、神さまからの祝福を施すことを表し、これらはまさにイエスが弟⼦達に命じられたことです。その後、これら3つの油は、教区内の教会に分配され、1年間、司祭によって各小教区で使われます。

 

 

キリスト教用語➀

*秘跡 (サクラメント)(Sacrament)

キリストによって定められた神の恩恵にあずかる儀式、信徒に神の恩恵を与える儀式

 

*祝福 (Benediction)

「祝福する」とは、人・建物・教会付属の品や信心用具などに神の恵みを願うことをいう。人に対しては神の恵みを願い、また、建物、教会付属の品、信心用具などに対しては、それを使う人に神の恵みがあるように願うためになされる。

 

*聖別(Consecration)/祝別(Benediction)

「聖別する」、「祝別する」とは、そのものを聖なるものとして別にする、人や物を聖とするための祈りや儀式を行うことで、そのためだけに使い、他の目的には使用しないという意味がある。単に祝福するのではなく、別のものにするというニュアンスを含む。聖変化、教会堂の献堂、司教・司祭の叙階、奉献生活者の奉納などの時に行う。

 

*堅信(けんしん)(Confirmation)

堅信は、信者が洗礼を受けた後、一定の儀礼において聖霊の力(または聖霊の恵み・賜物)を受け、強められることを言います。ローマ・カトリック教会における堅信式(堅信の秘跡)は、洗礼を受けた者に対して、按手(あんしゅ)(手を人の頭に置いて、聖霊の力が与えられるように祈ること)と、聖香油をもって、聖霊とその贈物と受けさせ、完全なキリスト教信者とする式です。

 

 

主の晩餐の夕べのミサ(聖木曜日)

 

また、聖木曜日の日没後に「主の晩餐のミサ」が行われ、ここから、教会の典礼において一年間の頂点で、死から生へと移るキリストの過越の神秘を祝う「聖なる過越の3日間」に入ります。このミサのなかで、聖体拝領、洗足式、聖体安置式があります。

 

聖体拝領 (Communion)

聖体とは、ミサの中で頂くパンと葡萄酒のことで、キリストのからだと血の現存とされています。聖体拝領(せいたいはいりょう)は、ミサの中でその聖体を受けること、またその儀式をいいます。聖餐式とも言います。

 

洗足式

洗足式(せんそくしき)は、最後の晩餐の席で、イエスが跪いて自ら弟子たちの足を洗ったことを再現する典礼(儀礼・儀式)です。それゆえ、聖木曜日を「洗足木曜日」(Maundy Thursday)とも呼びます。イエスが生きていた時代、足を洗う行為は奴隷が主人に行うものでしたが、「主であり、師であるわたしがあなたがたの足を洗ったのだから、あなたがたも互いに足を洗い合わなければならない」(ヨハネの福音書)との記述にもとづき、遜り(へりくだり)の行為として、(任意で)行われています。

 

聖体安置式

聖木曜日の典礼では、最後に「聖体安置式」が行われます。ミサ後に行列を組んで、 いつもは聖堂内の聖櫃に安置されている聖体を、聖堂外の仮の聖櫃(安置所)に運ぶ式です。 これによって、最後の晩さんの後、ユダによって率いられてきた群衆によってイエスが捕らえられたことが象徴されています。

 

キリスト教用語②

*聖餐式(せいさんしき)(Sacrament)

最後の晩餐を記念して教会が行なう、パンと葡萄酒を会衆に分かつ儀式をいいます。聖餐とは、パンと葡萄酒を口にすることです。

 

*聖体(Eucharist)

聖体とは、カトリック教会において、ミサで拝領、礼拝するために聖別された(ミサの中でいただく)パンと葡萄酒のことで、祭儀の中で聖変化によって、キリストのからだと血が現存するとされる。

 

*聖変化(transubstantiation)

カトリック教会のミサにおいて、司教・司祭がパンとぶどう酒を聖別するとき、パンとぶどう酒がそれぞれイエス・キリストのからだとその血の実体に変化すること

 

 

  • 聖金曜日(主の受難の日)

(「聖なる過越の3日間のうち木曜の日没から金曜日の日没まで)

 

「復活祭」の2日前の聖週間の金曜日は、カトリック教会の典礼では「聖金曜日」と呼ばれ、イエス・キリストの磔刑による受難と、十字架上の死を記念する日です(2024年は3月29日)。

 

この聖金曜日と翌日の聖土曜日は、主イエスが死去し、墓に安置された日であるという古来の伝統に基づき、この両日にミサは行われません。しかし、昔から福音書の記述を元に、多くの教会で,イエスの受難を思い起こす特別な典礼(受難日礼拝)がもたれます。J・S・バッハ(1685~1750)の「受難曲」が世界各地で演奏されるのもこの時期です。

 

主の受難の儀式(聖金曜日)

「聖金曜日」の夕刻(午後3時頃)、バチカンをはじめ各カトリック教会では、主の受難と死を記念する「主の受難の儀式」がとり行われます(各教会でも実施)。この祭儀は、ことばの典礼、十字架の崇敬、聖体拝領の3部からなっており、儀式の始めにあたり、教皇は祭壇前で長い沈黙の祈りを捧げ、キリストの死を黙想します。

 

ことばの典礼(イエス・キリストの受難の朗読)では「イザヤ書」、「ヘブライ人への手紙」が信徒によって朗読され、「ヨハネ福音書」のイエスの受難と死が3人の助祭によって朗唱されます。

 

十字架の崇敬では、助祭が十字架を手に大聖堂後方から入場し、祭壇に向かって歩を進めながら、十字架を高く顕示すると、会衆は十字架を見つめ、ひざまずいて崇敬を表します。十字架を迎えた教皇は、十字架上のイエス像に接吻し、その後、枢機卿や司教、信徒代表による崇敬が続きます。この十字架の顕示の後に、十字架の勝利を賛美するために、十字架の礼拝式が行われ、前日に聖別された聖体拝領式などが実施されます。

 

 

十字架の道行き(聖金曜日)

また、カトリック教会では四旬節中の金曜日に、イエス・キリストの受難を思い起こす儀式である「十字架の道行き(みちゆき)」を行う習慣があります。

 

カトリック教会には、イエスへの裁判から、イエスが死刑の宣告を受け、十字架を担ってゴルゴタの丘へ向かい、十字架の死に至り、墓に葬られるまでの歩み(出来事)を、14場面に描いた絵画やレリーフなどが聖堂内に並べて掛けてあります(ひとつ一つの出来事は、「留(りゅう)」と呼ばれている)。実際は、イエスが復活する15留までありますが、四旬節中は通常14留までの祈りが捧げられます。

 

「十字架の道行き」の祈りは、これら十字架の道行の14の過程を、ひとつひとつをたどって、イエスの受難の各場面に留まりながら祈り、イエスの苦しみを黙想する儀式です。

 

聖金曜日の夜、ローマのコロセウムでは、厳粛な行列があります。歴代教皇は行列を先導し、自身で十字架を担ぎながら、十字架の道を進み、十字架の祈りを行い、カルバリ(ゴルゴダ)への受難が再現されます。イエスは十字架を背負って総督ピラトの官邸から刑場のあるゴルゴダの丘までの道のりを歩いたとされています。

 

コロセウム周辺には、通常、2万以上の信者が集い、教皇の言葉に聞き入り、その黙想を共に味わいながら、十字架の道行を行います。これは、エルサレムへの巡礼とヴィア・ドロローサ(「苦難の道」、「悲しみの道」の意)を再現したいという願望に由来すると言われています。

 

 

  • 聖土曜日

(「聖なる過越の3日間」のうち金曜の日没から土曜日の日没まで)

 

聖週間の土曜日は、イースター(復活祭)の前夜で、聖土曜日(2024年は3月30日)と呼ばれ、亡くなったイエス・キリストを墓に葬ったことを記念します。

 

この日は、日没までミサは行われず、「聖土曜日」の深夜から「復活の主日(復活祭の日)」の夜明けまでの間に、主イエス・キリストの復活を待ちつつ祈り、死から生への過ぎ越しを祝う「復活の聖なる徹夜祭(復活徹夜祭)」が行なわれます。

 

 

<復活祭>

 

  • 復活徹夜祭(復活の聖なる徹夜祭)

(厳密な意味で「復活祭」の始まり)

 

古来の伝統に基づき、この夜は神のために守る徹夜とされています。「すべての聖なる徹夜祭の母」と呼ばれるこの儀式は、「光の祭儀」「ことばの典礼」「洗礼式」「感謝の典礼」の4部からなり、復活祭の日曜日のイエスの復活を予感させてくれます。

 

光の祭儀(第一部)

光の祭儀(ろうそくの典礼)は、灯(あか)りをともして主の帰りを待つことをあらわすために行われ、バチカンでは、教皇が、新しい火と、復活したキリストの象徴である復活のろうそくを祝別し、復活のろうそくが燭台に立てられます。

 

ことばの祭儀(第二部)

光の祭儀に続く「ことばの祭儀(経典の朗読)」では、豊かな聖書の朗読がなされ、人々は救いの歴史、キリストに結ばれる洗礼の意味、キリストの復活の告知に耳を傾け、神のことばと約束に信頼しつつ徹夜を行います(教皇による説教もなされる)。

 

洗礼式(第三部)

この後、復活徹夜祭のミサの中で、伝統である「成人の洗礼式」(成人のキリスト教入信式(洗礼、堅信、聖体))が行われます。古代より、キリストの死から復活への過ぎ越しを記念する復活徹夜祭において、洗礼の秘跡(儀式)を授けることは、キリストの復活の神秘に与り、新たな命に生まれ変わるという意味において最もふさわしい出来事と考えられてきました。

 

感謝の祭儀(典礼)(第四部)

感謝の祭儀(秘跡の祝賀)において、復活の日が近づき、閉祭には、洗礼によって生まれた新しい教会の成員とともに、イエスの復活を聖母と寿ぐ(ことほぐ)賛歌「レジナ・チェリ」が歌われます。また、主が死と復活を通して私たちのために(象徴的に)準備された食卓に招かれます。

 

こうして、豊かなキリスト教的シンボルと意味に満ちた「復活徹夜祭」が行われて四旬節が終わり、復活の主日が訪れます。

 

 

  • 復活の主日(復活祭)

(聖土曜日の日没から復活祭の日没まで)

 

復活の主日は、十字架上で亡くなり、墓に葬られたイエスが3日目に復活したことを記念する祭日で(カトリック教会の典礼暦では、2024年は3月31日(日))、典礼暦年の中で最高位を占める主日(日曜日)であると位置づけられます。

 

ただし、厳密に言えば、復活の主日(復活祭)は、復活の聖なる徹夜祭から始まります。教会暦とはキリスト教で用いられる暦のことですが、教会暦の区切りは日没頃にあります。従って、教会における復活祭の当日は、一般の暦で言う前日晩の「復活徹夜祭」から始まるのです。

 

復活祭(復活の主日)の日の午前中、フランシスコ教皇は、バチカンのサン・ピエトロ(聖ペトロ)広場で、キリストの復活を祝うイースターのミサ(「復活の主日のミサ」)を行います。ミサ後には、ミサの中で祝別された「ゆで卵(イースターエッグ)」が会衆に配られるのが慣例です。

 

また、同日正午、サンピエトロ大聖堂の中央バルコニー(ロッジア)から、広場に集まった信者を前に、ローマと全世界に向けた復活祭メッセージと祝福(ウルビ・エト・オルビ)を贈ります。バチカンの復活祭ミサには、毎年多くの巡礼者や観光客が教皇から祝福を受けるために集まります。

 

こうして、聖週間の「過越の聖なる3日間」は、聖木曜日の「主の晩さんの夕べのミサ」に始まり、復活の主日(日曜日)の「復活の主日の晩の祈り」で終わります。

 

 

復活節>

復活祭の典礼(行事)は、復活祭で終わりではなく、「復活の主日」後、「主の復活の8日間」(「天使の月曜日」)、復活40日後の「主の昇天」、その10日後の「聖霊降臨(ペンテコステ)」へと続いていきます。

 

カトリック教会では、復活祭(復活の主日)から「聖霊降臨の主日」(2024年は、5月19日(日))までの50日間(約7週間)を「復活節」といい、キリストの復活を祝います。

 

復活節(2024年)

復活の主日:3月31日(日)

「主の復活の8日間」天使の月曜日

神のお告げの祭日:4月8日(月)

主の昇天の主日(祭日):5月12日(日)

聖霊降臨の主日:5月19日(日)

 

 

  • 復活の月曜日

(「主の復活の8日間」の初日)

 

カトリック教会において、復活節の最初の8日間を「主の復活の8日間」と呼び、この期間内は主日(日曜日)ではない平日でも主の祭日のように祝われます。

 

この間、「復活の主日」の翌日の月曜日(2024年は4月1日)は、「復活の月曜日」と呼ばれ、その記念として、バチカンでは、「正午の祈りの集いが持たれ、教皇フランシスコは、バチカンの広場の巡礼者らと、復活節の聖母賛歌「アレルヤの祈り(レジーナ・チェリ)」を唱えます。

 

 

  • 神のお告げの祭日

 

この日は、人間としてこの世に生まれてきたイエス(神のひとり子の受肉)と、それを知らせる天使の言葉を、信仰をもって受け入れ(受諾)、胎内にイエスを宿した母マリアを祝います(聖母マリアを思い起こす祭日)。

 

神のお告げの祭日が、聖週間、または「主の復活の8日間」に重なるなら、復活節第2主日後の月曜日に移動します(2024年は4月8日 )。

 

この祭日は、もともと東方教会を起源とし、従来は聖母の祝日とされていましたが、ローマ典礼暦の改正の際、キリストが処女マリアの胎内に宿ったという出来事を記念するため、主キリストの祝祭日として祝われるようになりました。

 

 

  • 主の昇天 の主日

 

この日は、イエス・キリストの昇天を祝う祭日で、復活後の40日目に祝います(2024年は5月12日(日))。バチカンでは、教皇フランシスコは、アレルヤ(レジーナ・チェリ)の祈りをバチカンの広場の巡礼者と共に唱える集いが行われます。

 

キリスト教では、イエスは、わたしたちの罪を贖うために十字架にかかり、陰府に下り、3日目に復活されその後、40日間をこの世でお過ごしになり、天に帰った(主の昇天)とされています。

 

この昇天の出来事は、復活したイエスが弟子たちに話した後、天に上がったという聖書の記述(マルコ福音書)から、キリストの生涯の完成であるのと同時に、教会活動(使徒活動)の始まりのしるしであると解されています。

 

 

  • 聖霊降臨の主日(ペンテコステ)

 

「聖霊降臨の主日」(2024年は、5月19日(日))は、使徒たちが聖霊を受けることで、神の救いの業が全うされ、教会と宣教活動が始まったことを祝う祭日です。 バチカンでは、教皇フランシスコは、午前中、聖ペトロ大聖堂でサをとり行い、正午には、アレルヤ(レジーナ・チェリ)の祈りをバチカンの広場の巡礼者と共に唱えます。。

 

聖霊は、神の啓示、神の力を感じさせるもので(鳩、光、炎、風に象徴される)、父と子とともに、三位一体の神の一つの位格です。宇宙万物の造り主である「父なる神」と、その父から生まれ人となった「神の子」イエスをつなぎます。

 

典礼暦の上では、聖霊降臨の主日で、復活節が終わり、復活祭に関するすべての典礼(儀礼・儀式)が終了したことになります。キリスト教にとって、復活祭の重要さがわかります。

 

 

<キリスト教に関する投稿>

キリスト教の教派

カトリック教会:ローマ教皇とバチカン

プロテスタント教会:ルター発の聖書回帰運動

東方正教会:ギリシャから正統性を継承

 

アメリカのキリスト教:バプティストを筆頭に…

 

キリスト教史

キリスト教史①:イエスの生涯とその教え

キリスト教史②:十二使徒とパウロの伝道

キリスト教史③:東西教会はいかに分裂したか?

キリスト教史④:修道院運動の盛衰

キリスト教史➄:異端と魔女狩り

正教会のキリスト教史:ギリシャからロシアへ

 

キリスト教の儀式・行事

復活祭(イースター):北欧神話から春の訪れ

 

 

<参考>

聖週間:「受難の主日」バチカンで枝の祝別・行列とミサ

(バチカンニュース 3月24日)

「レント」について

(2024年2月16日、日本基督教団・国立教会HP)

過越の聖なる三日間と復活とは?

(カトリック中央協議会)

ローマ教皇 復活祭のスピーチで紛争犠牲者を悼み 停戦呼びかけ

(2024年4月1日 、NHK)

ガザ即時停戦訴え 復活祭でメッセージ―ローマ教皇

(2024年04月01 時事ドットコム)

復活祭2024:教皇フランシスコによるメッセージと祝福

(2024年3月31日、バチカン・ニュース)

バチカンではイースターはどのように行われるのでしょうか?

(2024/3/30  VnExpress)

聖金曜日(女子パウロ修道会)

(カトリック中央協議会発行「十字架の道行」)

四旬節から、聖週間へ

(カトリック桂教会HP)

「復活祭」の真実をどれだけ知っていますか?

(2016年6月22日, 東洋経済)

コトバンク,  Wikipediaから

 

(2024年5月28日)