経産省のホワイトハッカー・チーム新設とWinny事件
◆ 国もサイバーセキュリティー強化へ
企業や自治体などへの不正アクセスの被害が相次ぐなか、経済産業省は、10月23日、独立行政法人「情報処理推進機構(IPA)」に、サイバーセキュリティーに詳しい専門家からなるホワイトハッカーの専門チームを11月中に新設すると発表しました。
チームにはサイバー攻撃と防御に精通した技術者を集め、企業のシステムに模擬的な攻撃を仕掛ける「ペネトレーションテスト」を実施、攻撃者より先に弱点を発見し被害を防ぐ狙いです。
赤沢大臣は、攻撃者がAIを悪用して脆弱性を探している可能性を指摘し、防御側もAIを活用して先手を打つ必要性を強調、今後も国家サイバー統括室と連携しながら、事業者に迅速かつ適切な対応を促していくと述べました。
しかし、7年前のWinny事件を引き合いに、「日本の天才を潰しておいて今さらなにを?」など冷めた声も聞かれ、政府主導の専門チームの実効性には疑問が呈されています
◆ Winny事件とその影響
Winny事件とは、ファイル共有ソフト「Winny(ウィニー)」をめぐり、開発者である金子勇氏が著作権法違反の幇助(ほうじょ)の罪に問われ、最終的に無罪が確定した一連の刑事裁判および社会問題のことです。
事件の経緯
2002年:天才プログラマーと呼ばれた、当時東京大学の大学院特任助手だった金子勇氏(ネット上では「47氏」と呼ばれる)が、P2P(ピア・ツー・ピア)方式を用いたファイル共有ソフト「Winny」を匿名掲示板「2ちゃんねる」に無料公開する。
2003年:Winnyを通じて映画や音楽などを違法にアップロードした利用者が相次いで摘発される。
2004年5月:京都府警が、ソフトを開発・公開したことが著作権侵害を助長したとして、金子氏を著作権法違反幇助の容疑で逮捕・起訴する。
2006年:京都地裁で金子氏に有罪判決(罰金150万円)が言い渡される。
2009年:大阪高裁で一審が破棄され、逆転無罪となる。
2011年12月:最高裁判所が検察側の上告を棄却し、金子氏の無罪が確定する。
著作権侵害の被害と国家安保上のリスク
Winnyの公開によって、Winnyのネットワーク上では「Antinny」などのワーム(暴露ウイルス)が流行し、たとえば、Winnyによる映画、音楽、アニメ、ゲーム、ビジネスソフトなどの違法アップロード・ダウンロードが行われ、コンテンツ産業に何百億円、何千億円規模とも言われる大打撃を与えていました。
また、Winnyを通じて自衛隊、警察、官公庁、医療機関などの極秘情報や個人情報がウイルス(Antinny等)によって次々とネット上に暴露される事態が多発しました。これは単なる著作権の問題を超え、国家の安全保障や重大なプライバシー侵害の脅威となっていきました。
しかし、Winny事件が「日本のIT技術や産業の発展を遅らせた」という批判については、多くのIT技術者、法学者、起業家、そしてメディアの間で「概ね当たっている(多大な悪影響を与えた)」というのが共通した見解となっていると言われています。
P2P技術の主導権喪失
Winnyが採用していた「P2P(ピア・ツー・ピア)」という分散型の通信技術は、その後のブロックチェーン(暗号資産)や、Skype、LINEなどの通信インフラ、動画配信(Netflix等)のベースとなる非常に重要な技術でした。
金子勇氏は当時世界トップクラスのP2P技術を持っていましたが、裁判によって約7年半もの間、開発現場の第一線から引き離されました。結果として、日本がこの分野で世界をリードする機会を失ったと指摘されています。
技術者の萎縮と投資家や企業のIT忌避
開発者の逮捕によって、「技術者の萎縮を招き、日本のIT産業の進化を遅らせた」と強い批判と議論を呼びました。実際、国内の技術者が「画期的なソフトを作ると捕まるかもしれない」と恐れ、イノベーションを躊躇する環境が生まれました。
加えて、刑事事件に発展したことで、日本のベンチャーキャピタルや大企業が、先進的でリスクのあるITスタートアップへの投資や支援に極めて消極的になりました。これが米国のシリコンバレーのようなダイナミックなITエコシステムが日本で育たなかった一因とされています。
最高裁で、金子氏の無罪が確定した際にも、判決文の中で「価値中立的な技術の開発そのものを処罰することには慎重であるべき」という趣旨が示されました。
Winny事件は、コンテンツ保護や治安維持という当時の目的はあったにせよ、汎用的な技術やソフトを開発しただけで、悪用したユーザーではなく、一人の天才技術者を、悪用されたことの責任を問う形で逮捕・起訴した社会的コスト(日本のIT競争力の喪失)はあまりにも大きすぎたというのが、現在の歴史的な評価として広く定着しています。
◆将来を見据えたIT・AI立国へ
いずれにしても、AI技術の悪用による、個人情報の保護や国家安全保障に甚大な被害をもたらすことを考えれば、日本も遅ればせながら、IT・AI技術者の養成を急がなければならないでしょう。
政府は、Winny事件の反省と謝罪を込めて、経産省のホワイトハッカーの専門チームの技術者のトップに金子勇氏を招聘するぐらいの意気込みと誠意を示すべきです。
日本が、民間に埋もれた天才たちを見い出し、IT・AI先進国の地位を築くことは、究極的には、武器を持たない日本の核抑止力にもつながります。
(参照)
「トップガン人材を集める」赤沢経産大臣 ホワイトハッカーチームの11月中立ち上げを発表 攻撃者よりも先に脆弱性発見し対処へ
(2026年10月23日、FNNニュース
経産省のホワイトハッカー新設に「日本の天才を潰しておいて今さら?」「日本のIT技術を衰退させたのは誰だよ」SNSで賛否
(2026年10月25日 mataiku)など
最近のコメ価格下落と備蓄米買戻しを考える
2024年夏頃から2025年にかけておきた「令和の米騒動」で、スーパーからコメが消え、価格高騰が社会問題になったが、2026年に入ると、一転して「米余り」が鮮明になり、価格の下落が起きている。
背景には、供給増と在庫の積み上がりがある。2026年産米の生産量は当初見通しから増加し、新米の流通も本格化した上、前年産米は大量に在庫として残っている状況である。
ある県では、2026年産の新米が5キロ2700~2900円程度で販売される一方、2025年産の古米が3200円程度で売られる逆転現象が起きていると報じられている。これは、前年に高値で仕入れた古米を値下げすれば、卸売業者や集荷業者に損失が発生するためとされている。
そうした中、当時の鈴木農林水産大臣は、2026年9月、政府備蓄米21万トンの買い戻し手続きを開始すると発表した。簗前大臣も、政府備蓄米の追加の買い戻し時期について、「適時適切かつ迅速に対応していく」と発言し、政府は米価の下落を防ぐ構えだ。
マスコミによる最近の米価の下落報道にみられる違和感と、政府備蓄米買戻しの目的について、考えてみたい。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
◆ インフレの時代にコメ価格の急落
農家には厳しいとの報道
最近の米価下落について、マスコミの大半は、「消費者にとっては歓迎すべきニュースだが、農家には厳しい」を繰返して報じている。農家にとってはどれほど厳しいのかといえば、今年に入り、コメ価格の大幅下落に加えて、物価高騰の影響で、農業機械を動かす軽油やガソリンなどの原料、輸入原料に頼る肥料も包装資材、さらには人件費まで、何もかも 価格が上昇しているため、コメ作りをやめる農家が続出するという主張だ。
さらに、JA農協は、収穫時に農家に前払いする26年産米の概算金(玄米60kg)を、前年のバブル的な高値から前年比3〜4割も一気に引き下げた。概算金引き下げの理由は、ここでも、コメの在庫が積み上がっているからで、銘柄によってはほぼ半値となったとも報じられている。これによって、苗年比での「急激な収入減」が経営を直撃し、コメ作りを止める農家が増え、農家が離農するとコメが食べられなくなると、危機感が煽られる形となった。
しかし、コメ価格の低下と、概算金の大幅安で、マスコミや農協などが警鐘を鳴らすように、コメ農家が廃業せざるをえないほどの事態を引き起こすのであろうか?
米価急落と言っても、23年より高水準
たしかに、これまで報道されている26年産新米の各県の概算金は、1万7000円から2万円のレンジのものが多く、高騰した25年産比で3~4割の減少となったが、「令和のコメ騒動」前の23年産米の概算金1万5000円より高水準を維持している。これは、出荷業者と卸売業者との間で決まる相対価格や、精米価格、店頭価格をみても同様である。
概算金
(JAなどの集荷業者がコメの販売前に生産者へ支払う仮払金)
23年産1万2700円
24年産1万9100円
25年産2万8200円。
26年産1万8000円
相対取引価格
(JAグループなどの出荷業者と卸売業者との間で、主食用米を売買する際の契約価格)
23年産1万5300円
24年産2万4800円
25年産3万6900円。
26年産2万3000円
精米価格
精米5キログラムのコメの値段(2026年度産)は、3000円をやや下回るという予想もあるようだが、それでも、2023年まで2000円を切っていたことを考えれば、昨今の米価下落が、農家をつぶすほどの危機的な状況なのかは疑問だ。令和のコメ騒動以前、今のような「農家が潰れる…」といった悲鳴は聞かれていなかった。
店頭価格(スーパー)
2025年には5kgあたり4,000円台まで高騰していたが、2026年に入り下落基調へ転じ、直近(2026年9月)には5kg平均が2,971円と、約2年ぶりに3,000円を割り込んでいる。しかし、2023年当時の店頭価格(5kgあたり)は3,000円を大幅に割り込み、一般的な白米(5kg)の全国平均価格は約2,000円〜2,400円前後で推移していた。
このように、日本のマスコミは、3~4割の価格低下だけを強調して、農家の経営は悪化し、離農者が続出すると報道しているが、「暴落・下落が深刻」と言われているのは、あくまでピーク時の異常値からの比較であって、令和のコメ騒動(2024年夏)が起きる前の平時と比べると、高止まりしているのが実態である。
コメの需要が伸びないのは、消費者から見れば「下がったと言われても、昔に比べればまだ1.5倍近く高くて家計に響いている」のである。
たしかに、円安や世界情勢の影響で、肥料、燃料、農薬、人件費などの生産コストが以前より大幅に上昇していることから、農家の経営を圧迫している。実際、農水省が算出した現在のコスト指標(基準)は玄米60kgあたり2万437円とされているが、騒動前の1万2,000円といった水準まで価格が戻ってしまうと、農家は赤字に陥りと警戒されている。
しかし、専門家によれば、「これら(肥料・農薬や石油代)は、農家が生産資材に払った物財費(コスト)の3割、全算入生産費の2割」なのだそうで、仮に5割上昇しても生産費の増加は10~15%程度だとの指摘もなされている。
むしろ、農家や流通から見れば「ピークから急転直下で下落し、在庫がダブついてこの先暴落したら経営がもたない」 という恐怖があり、その「下がり方の勢いと在庫の急増」を問題視しているのかもしれない。それでも、農家経営は良好とは言わないにしろ、危機的という表現には誇張があるように思われる。現に、令和のコメ騒動前、農業経営が危機的状況を迎えていなかった。
政府と農協の深慮
では、なぜ、「まだ高い」のに「下がって大変だ」と騒いでいるのか? なにより、マスコミは、「まだ高い」の事実を伝えようとしないのか? それは、政府や農協は、コメ騒動前に水準には戻したくないからである。
よく思い出してみよう。令和のコメ騒動でコメが急騰するなか、消費者の負担が指摘されると同時に、(高騰した)米価が下がると、農家も大変なんだという論調が支配的となった。中には「農家の時給は10円」なんていう主張も飛び出し、当時、消費者も、コメの上がり過ぎは困るが、一定の高い米価も受け入れなければ…と思うようになった。メディアもその論調を当然の帰結のように繰り返した。
農水省や農協は、生産者も消費者も納得する適正価格が必要というようになった。彼らがいう適正価格とは、令和のコメ騒動で高くなりすぎると、消費者のコメ離れが加速するので困るが、コメ騒動の前の価格帯よりも高く水準である。一定のコメの高値維持を既成事実化させたいという思惑があるように思う。
したがって、2026年以降の米価の下落については、「農家がつぶれる!」を全面に押し出して、マスコミも、農水省と農協の主張通りの報道をしている。このまま米価が下がって、コメ騒動前の価格までは戻ることは絶対に許さないであろう。その一つの「対策」が、備蓄米の買戻しである。
◆ 備蓄米買戻し
鈴木農林水産大臣(当時)は、2026年9月、政府備蓄用米として、2025年産米21万トンの買い戻し手続きを開始すると表明した。2025年度に米価の高騰や品薄に対応するために、備蓄米59万トンを、買戻し条件付きで放出した。そのため、約100万トンあった備蓄が現在では、約32万トンまで大幅に減少したことから、食料安全保障の観点から「令和のコメ騒動」で減少した備蓄量を標準とする約100万トンへ計画的に戻す必要があると農水省は説明している。
しかし、今なぜ、多額の国家予算をつぎ込んで、政府備蓄米を買い戻さなければならないのか?
このタイミングで買い戻しを決めた理由について鈴木農水相は「今年のコメの作柄は近年の平均を上回る見込み」となり、「コメの供給量は十分以上に確保される身通しがたった」からだとした。実際、8月末に農水省が発表した今年のコメの作柄は、8月15日時点で新潟県や北海道など24道府県で例年の平均を「やや上回る」、秋田県や宮城県など19都県で「平年並み」となっている。
米価の下支え
しかし、買い戻しの本当の理由は、政府備蓄米の制度を正常に戻すためというよりは、米価の下支えとJA農協の支援である。前述したように、コメの価格は、2026年に入って、コメの民間在庫が過去最多となっていることから、急落し、このまま新米が本格的に流通し始めれば、販売価格が暴落しかねないことが懸念されている。
米価維持のために備蓄米の買い入れを使うのは、古くからの常套手段で、今回も、令和のコメ騒動でせっかく上がった米価を維持するための措置との見方が支配的だ。
令和のコメ騒動時、2025年2月に政府備蓄米が放出された際の平均落札価格は、取引される米の指標となる玄米60kgあたり、2万2477円であった。農水省の「米穀の取引に関する報告」によると、当時、2024年産の玄米60キログラムの相対取引価格は、2万5179円に上昇し、2025年に入ると価格はさらに2万7000円台に乗せ、当時の史上最高値を記録していた。これを受けて、政府(農林水産省)は備蓄米の放出を余儀なくされ、2025年2月に21万トン(最終的に累計約59万トン)の市場放出を実施した。
では、これに対して、今回の備蓄米の買戻しの対象とされる2025年産米の価格はどう推移しているのか?
農林水産省が直近(2026年9月)に公表した最新データ(8月取引分)では、約3万1,556円 / 玄米60kgで、前年秋のピーク時(3万7,058円)からは約5,500円値下がりしているものの、年間平均では過去最高の3万5,330円を記録した歴史的高値の年産米となっている。この価格で買い戻すとなると、売却価格との差額は約450億円近くになる計算されている。
しかし、足元では民間在庫が回復し、2026年産の生産量も増える見通しで、コメ余りの今年、まだ価格が高い時期に21万トンを急いで買い戻す必要はない。しかも、買戻しの期限は「5年以内」と猶予が設けられているので、せめて落札価格の水準に下がるまで待つべきだったとの指摘もなされている。
しかも、高値で備蓄米を買い戻せば、大幅な財政負担が生じ、買い戻し費用を最終的に負担するのは私たち納税者となる。逆に、高値での買い戻しによって利益を受けるのは主にJA農協である。
JA支援の実態
21万トンの買戻しの対象は、2025年このほとんどを落札したJA農協である(農協の過去3回の落札率はいずれも9割超)ことからもわかるように、史上最高のバブル米価となった25年産米で買い戻すことは、JA農協の救済策にほかならない。
まず前提として、農協は農家から委託を受けてコメを販売する。最終的な販売価格は翌年秋にならないと分からないが、農協はこの金額を予測して、集荷の際に概算金という仮払金を農家に払う。こうした仕組みの中で、農協は「令和のコメ騒動」を受け、他業者との集荷競争に負けないためという名目で、高い概算金を払った。
その後、販売価格が下がれば、農協は農家に支払った概算金の一部を、払い戻してほしいと要求することになるが、「農家のために」要求せず、結果、在庫を増やして流通量を絞り、計画的に高い小売価格を実現させた。
しかし、結果的に、大量の在庫を抱え、そのコスト負担を強いられるなか、政府が備蓄米を買い戻してくれるとなれば、農協の在庫は消滅する。農協からすれば、高い概算金を支払ったことで生じるリスクを、政府による備蓄米の買い戻しによって解消できるのである。
現在、2025年産が高止まり、2026年度産の価格は急落する市場環境下、市場での処分を余儀なくされれば、大きな損失が出る可能性もあったが、2025年産米を買い上げてくれるとなると、JA農協は、在庫の損失を出すことなく処理できる。
随意契約による買戻し
今回の政府による備蓄米の買戻しは、その目的もそうだが、買戻しの方法にも問題がある。
国の会計法では競争入札が原則である。これによって、国が財産を売るときは最も高く、買うときは最も安く、入札した業者が落札できる。しかし、今回の買い戻しは一般競争入札ではなく、買い戻し特約付きで、備蓄米を落札した事業者から見積もりを取り、価格を決める随意契約で行われる。
今回の契約相手は、これまでの落札実績からみてJA農協であることは明白である。そうすると随意契約の真意は、本格的に新米の集荷が始まる前に、買い戻し特約を利用して、JA農協が積み上げた在庫を政府が肩代わりするということになる。
*コメの随意契約
国が競争入札を行わずに、販売先や販売価格を自ら任意に決定して政府備蓄米を卸す仕組みのこと。
変わらぬ農政
高市政権は、当初、物価対策に逆行するとして難色を示していたそうだが、「米価が暴落して農家経営に重大な影響を与える」という鈴木農水大臣やJA農協、さらには自民党農林族議員の圧力に抗しえなかったと言われている。
簗 前農水大臣も、放出した備蓄米の追加買い戻しについて、国の責務だとし「食糧安全保障でもあるので、できる限り早期に、備蓄水準回復に努めたい」と意欲を示していた。
今回の政府による備蓄米の買戻しは、食料安全保障表向きの理由で、JA農協をはじめとする集荷業者への救済策、すなわち、高騰で積み上がったJAの在庫を政府が肩代わりし、コメ価格の下落を防ぐ政策であることは明らかである。
<関連投稿>
農政全般については、農業政策にまとめていますので、参照下さい。
<参照>
コメ5キロ2971円、2年ぶり3000円割れ:「不足」から一転「コメ余り」は誰のせい?
(2026.09.19 アゴラ言論プラットフォーム)
高いコメを買わされ、年4000億円の税金がかかる…鈴木農水大臣とNHKが無視した「既得権を守る農政のコスト」
(2026/9/17, PRESIDENT Online)
コメ価格を下げるためでも農家救済でもない…鈴木農水相が「JAが9割超落札した備蓄米」を1年半で買い戻す理由
(2026/9/2 PRESIDENT Online)
新米が安くなっても日本のコメには暗雲…高市内閣の”過剰な市場コントロール”が消費者と農家に払わせるツケ
(2026/09/03、PRESIDENT Online)
簗農相、コメ政策は「鈴木前農相の路線を継承」 就任会見
(2026/9/18, 毎日新聞)
《豊作でもコメ価格がそこまで安くならない本当の理由》「農家を守る」と言いつつ「米価を守る」自民党農政と農水省の勘違い そして消費者は高いコメを買わされる
(2026.08.16 マネーポストWEB)
人知れず改正食糧法
国旗損壊罪、皇室典範改正、副首都法案などメディアに注目される法案審議が多かった第221回国会(特別国会)において、「人知れず」通過した重要法案があります。それは、2026年7月に成立した改正食糧法です。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
<改正食糧法の成立と背景>
食糧法(「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」)は、2024年夏から翌2025年にかけて起きた「令和の米騒動」(米不足と価格高騰)を踏まえ、コメの価格安定と需給調整(コメの安定調達)をめざして、改正されました。
令和の米騒動は、農水省(政府)が、コメ流通の目詰まりの実態(米が市場のどこで、どれだけ滞留しているか)を的確に把握しきれず、需給を見誤ったことが要因であったとされています。
このため、極端な品薄によってスーパーの棚からコメが消えた後も、備蓄米の放出判断が遅れ、米価が急騰、放出後も、入札手続きなどで流通が滞り、店頭に並ぶまでに時間がかかりました。
今回の改正のポイントは、農水省の後手に回った対応が混乱を広げたという反省から、コメの流通円滑化と流通実態の把握に努めるべく規定された、「需要に応じた生産」、「業者の報告義務」、「民間備蓄」の3点です。
◆ 農家の「需要に応じた生産」
政府(農林水産省)によれば、「需要に応じた生産」は、過剰生産による価格の暴落を防ぐと同時に、実需者のニーズ(業務用や加工用など)を的確に把握して安定供給を図るための基本方針です。しかも、改正法では、政府の役割だった「生産調整の推進」という記述が消え、「需要に応じた生産」が明記されました。
これまで食糧法には、「生産調整方針の認定」に関する規定(需要減少を前提とした、国による生産抑制の手続き)が長年残っていましたが、この規定が完全に廃止されました。しかし、これで、実質的な減反政策が終了したというわけではありません。簡単に言えば、国が生産量を割り当てる「生産調整」をやめる代わりに、コメの需給安定に向け、農家が主体的に「需要に応じた生産」に取り組むことが責務とされたのです。
具体的には、農林水産省は、毎年「米の基本指針」を公表します。これは、新たに義務化される(後述)加工・外食業者等からの定期報告データを元に、「来年はどれだけの主食用米の需要があるか」「輸出用や加工用の需要がどれだけ伸びているか」などを弾き出した「精度の高い需給見通し(データ)」が示されます。この需給見通しが、民間市場の大きな目安(基準)となり、農家は、自らの経営判断で作付計画を立てることになります。
◆ 業者の報告義務
これまで、国(農林水産省)は、一定(年間20トン以上)のコメを扱う集荷業者、卸売業者、小売業者に対して、事前に事業者としての登録を求め(届出義務があった)、これらの業者への任意の「意向調査」や「統計調査」によって民間在庫を大まかに推計していました。
これに対して、改正法は、流通実態をより正確に把握するため、出荷業者(農協)や卸売業者(問屋)、小売業者(スーパー・コンビニ)だけでなく、加工業者(酒蔵、米菓メーカー、製粉会社)や、中食業者(弁当・惣菜)、外食業者(外食チェーン)など年間300トン以上扱う約7,000の事業者に対して、在庫量、仕入れ量、出荷・販売量、さらに取引価格や精米加工量などの定期的な報告を義務づけました。
なお、集荷業者・卸売業者・第一種小売(米屋など)は、毎月の報告義務で、その他のスーパー・加工業者・外食チェーンなどは、年1回の報告義務 となります。
これによって、どこにどれだけコメがあり、いくらで動いたかがほぼリアルタイムでわかるようになることから、農水省は、コメの需要や、多様化した流通実態をより正確に把握でき、かつ詳細な需給見通しを策定できます。
一方、虚偽の報告や拒否(未報告)をした場合には罰金が科されます。さらに、民間備蓄を放出する際に「利幅が大きすぎる(不当に高く売っている)」と疑われた場合、国は立ち入り検査を行う権限を持っています。
◆ 民間備蓄体制の構築
備蓄制度も見直し、政府備蓄に加え、コメ販売業者(大手の集荷・卸売業者・小売業者など事業者)に、一定(計20万トン程度)の在庫保有を義務づける「民間備蓄」制度も創設されます。これは、政府備蓄とは別枠で民間事業者に一定量の保有を義務付ける制度で、「令和の米騒動」のような深刻なコメ不足や流通の混乱を未然に防ぎ、官民一体となった(官民連携の)備蓄体制の構築が目指されています。
政府が持つ備蓄米は、放出の決定や入札、精米・流通までに数週間〜数ヶ月の時間がかかり、「令和のコメ騒動」においても、深刻な店頭の品薄に対して「遅すぎる」という批判を浴びました。そこで、民間備蓄制度の創設によって、最初から卸売業者や小売店などの倉庫にあるコメの一部を「備蓄」と義務付けることで、いざという時に国の指示で1〜2日以内に普段の流通ルートへ流せるようにしました。
これによって、災害や不作による急激な米不足が起きた際に、市場へ速やかに米を放出して価格や供給を安定させる(=価格の乱高下や異常な高騰を抑える)ためのセーフティーネットとして機能することが期待されています。つまり、民間備蓄制度の目的は、「いざという時にすぐ市場に出して、異常な高騰やパニックを防ぐ」ことにあります。
このように、今回の食糧法の改正は、「令和のコメ騒動」のような事態が起こらないようにするために、当時の流通と備蓄制度の改革ということが言えます。
ここまでは改正食糧法の表面的な概要です。
この改正法の問題点や課題については、法改正の詳説とともに、別投稿
でお届けでします。また、過去の投稿記事
も参照下さい。
初めて改正された皇室典範、男系の継承は続く
1947年の制定から約79年間一度も変わっていなかった皇室の基本ルールが初めて本格的に変更されることになりました。各方面からさまざまな批判の声がでていますが、ここでは、すでに公布された皇室典範の改正による事実のみをまとめました。
<皇室典範の改正>
国会は、2026年7月17日、皇族数の確保に向けた皇室典範改正案を可決・成立させました。政府は同月24日、改正皇室典範を公布、3カ月後の10月24日に施行されます。
「女性皇族が結婚後も皇室に残り、皇族の身分を維持できるようにすること」と、「旧11宮家出身の男系男子を養子縁組によって皇族とすること(皇族と旧宮家出身男子の養子縁組の容認)」が改正の骨子で、後者については、さらに踏み込んで、「養子のもとに生まれた男子に皇位継承の資格を認める」という規定も盛り込まれました。
戦後の象徴天皇制に伴い制定された皇室典範の本格的改正(本則の改正)は、連合軍占領下の1947年5月3日、日本国憲法と同時に施行されて以来、初めてのことで、日本の皇室制度にとって数十年来の大改革となります。
今回の改正は、減少する皇族数の確保を目的としていました。その意味では、「女性皇族の身分保持」は皇族数を「減らさない」ための案であり、「旧宮家出身男子の養子縁組」が皇族数を「増やす」ための案と言え、それぞれ法制化されました。
皇室の公務を担う皇族の数が減っており、このまま手当てをしないと活動に支障が生じることが懸念されてきました。国際親善や地方の訪問、被災地のお見舞いなど、公室の役割は多岐にわたっていますが、将来的に皇族の人数が減りこうした活動が続けられなくなる恐れが出てきたのです。
皇室の現状
戦後、旧宮家に皇室離脱もあり、皇室の規模が縮小、皇族間の結婚はなくなり、結婚しても皇室に残るのは男性のみとなりました。さらに、1965年の秋篠宮さまの誕生後、9人連続で女子が生まれ、皇族の数は、1994年の26人をピークに、女性皇族の結婚や皇族の逝去によって減少を続けています。2000年代に入っても、結婚による離脱も相次ぎました。
現在の皇室には、天皇・皇后両陛下、上皇・上皇后両陛下と、12名の皇族の方々(計16人)がいらっしゃいます。このうち、未婚の女性皇族は5人、男性皇族は1人しかおらず、皇族数確保の方策が喫緊の課題となっていました。
未婚の女性皇族
(天皇家) 愛子さま
秋篠宮家 佳子さま
三笠宮家 彬子さま、瑶子さま
高円宮家 承子さま
未婚の男性皇族
秋篠宮家 悠仁さま
このように、今回の改正は、減少する皇族数の確保を目的とするものですが、その一方で男系男子による皇位継承が色濃く反映された内容で、皇位継承資格を男系男子に限るという現行の原則は維持され、女性天皇や女系天皇を認める制度改正は盛り込まれませんでした。
これは、事実上、女性天皇の即位は否定されたものとなり、愛子さまは、皇位継承の資格をもたないままです(愛子さまの即位の可能性は議論されなかった)。
もっとも、今回の改正では、安定的な皇位継承のあり方についての議論が先送りされ、改正皇室典範の付帯決議では「安定的な皇位継承を確保するための方策」について「引き続き、検討する」と明記されています。野党はこの決議を踏まえ、女性・女系天皇を含めた検討の早期着手を求めており、今後、男系か女系かの議論が再燃する可能もあります。
そこで、今回の改正の骨子である「女性皇族の婚姻後の身分保持」と「旧宮家出身男子の養子縁組」の中身をさらに検証することによって、今後の皇位継承のあり方について考えるきっかけにしたいと思います。
<改正皇室典範にともなう変更>
◆ 女性皇族の身分保持
皇室典範改正前
戦後の旧皇室典範では、女性皇族(内親王・女王)は、これまで(皇族以外の)一般国民男性と結婚をしたら必ず皇籍離脱しなければなりませんでした(第12条)。すなわち、婚姻後、皇族という身分を放棄、皇室を離れて一般国民になりました。
2021年に大学時代の恋人と結婚した当時の秋篠宮眞子さまも、まさにそうした措置が取られました。
なお、男性皇族と婚姻した場合は、皇族身分を保持することになりますが、現在、未婚の男性皇族は悠仁親王しかおられません。
一方、結婚しなかった場合、皇籍を保持することになります。皇室に残っておられる内親王・女王5名の方々は、現在、この選択をとっていることになります。
また、皇室典範上、 婚姻せずに、皇籍を離脱するという選択肢もあります。皇室典範には、「女性皇族は、婚姻しないまま、皇籍を離脱したいときは、皇室会議の議を経て、皇籍を離脱することが可能」(第11条第1項)との規定があります(皇籍会議で認められることが必要)。
なお、この規定は、結婚の有無に関わらず(結婚していなくても)、本人が「皇族を離れたい」と希望し、皇室会議の承認を得れば、皇族の身分を離れることが(離脱)できます。
しかし、過去にこの選択をとって皇籍を離脱した事例はありません。未婚のまま「自分の意思だけで皇室を去る(11条)」という選択は、世論やメディアから「皇室内の人間関係に問題があるのではないか」「公務の放棄ではないか」といった過度な憶測や批判を招きやすく、皇族方にとって心理的負担が大きすぎることなどがその理由としてあげられます。
そうすると、戦後の旧典範のもとでの女性皇族は、事実上、①婚姻して皇籍を離脱するか、②婚姻せずに皇籍を保持するかの2つの選択しかなかったと言えます。
*皇室会議
皇位継承順位の変更や男性皇族の婚姻、皇族の身分の離脱など、皇室に関する重要事項を合議し決定する国の機関で、内閣総理大臣が議長を務め、以下の計10名の議員で組織される。
皇族 2名
衆議院・参議院の議長および副議長 4名
内閣総理大臣 1名、
宮内庁長官 1名
最高裁判所長官およびその他の裁判官 2名
皇室典範の改正後
女性皇族の未婚の5名(内親王2名・女王3名)は、改正後はどうなるのでしょうか?想定されるシナリオは6つです。
① 一般国民男性と婚姻して、皇籍を保持する
改正典範では、皇族の女性が一般人と結婚した場合も、皇族の身分を保持し(皇籍にとどまり)、結婚後も、基本的に皇室に残ります(皇籍を離脱しない)。これについては、皇室会議にかける必要もありません。
このことは、将来の女性皇族は一般男性と結婚した時点で、本人の意志とは関係なく、自動的に皇族の身分が維持されることを意味します。つまり、皇室に「残る」ことが義務的な前提で、「残ることができるか、残らなくてもいいか」という選択肢が最初から用意されているわけではありません。
改正前の皇室典範12条には「女性皇族は、天皇・皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」という規定がありましたが、今回の改正では、この規定そのものが削除されました。そのため、結婚しても自動的に一般人になるというこれまでの仕組みはなくなり、法律上、結婚してもそのまま皇族であり続けることが標準的な原則となったのです。
今回の法改正の最大の目的は、婚姻による離脱で皇族が急減する危機に歯止めをかけることなので、「女性皇族に結婚後も皇室に残ってもらい、引き続き公務などの皇室活動を支えてもらうこと」が大前提となっています。
一方、一般男性との結婚後の女性皇族(女性皇族の「身分事項」)は、皇室の戸籍にあたり宮内庁が管理する「皇統譜」に登録され(残り)、選挙権・被選挙権はない等、皇族としての地位はそれまでと何ら変わりません。女性皇族に名字はないままの状態も継続されます。
しかし、当該女性皇族には、一般の国民と同じように「住民基本台帳法」が適用され、住民票には女性皇族のお名前が記載されます。この措置は、住宅ローンや携帯電話の家族割など、結婚生活において家族関係を証明する必要があるときに備えてのこととされています。
また、結婚後の皇族費については、現在の宮家の当主たちの男性皇族と同額に引き上げられます。
女性皇族の夫子の身分
女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案において、その配偶者(夫)や子に皇族の身分を付与するかどうかは、法案成立時点では決定されず、将来の議論に委ねる方針となっています。したがって、改正法には、夫や子どもについても皇族になる規定を設けられていません。
ただし、改正案では夫や子に合わせ、女性皇族も住民基本台帳に登録されることから、夫や子は一般人のままとすることが前提とされた仕組みと解されています。
また、女性皇族は結婚後も皇室の「皇統譜」に登録されるのに対して、夫と子は一般の戸籍に記載される(女性皇族と夫子の戸籍自体は別)ことも、皇族の身分が与えられないことが想定されています。
さらに、夫と子は皇宮警察の護衛対象とはなりませんが、女性皇族と一緒に御用地などに居住され、状況に応じて公務に臨み、公費から旅費を支給することになると見られています。
② 一般国民男性と婚姻して、皇籍を離脱する
これは、改正前の典範12条で廃止された「女性皇族は結婚後、皇籍を離脱する」(結婚による離脱規定)を改正後も実行することになります。
改正法では、女性皇族は、結婚してもそのまま皇族であり続けることが原則ですが、結婚するからといって強制的に皇室に縛り付けられるわけではなく、前述した皇室典範11条1項の「自発的な離脱手続き」を活用して、皇室を離れる選択肢も残されています。
もっとも、一度婚姻によって皇族として残ることが確定したのち、皇籍から離脱したい場合(結婚を理由に皇室を離れるためには)、「本人が自ら離脱を願い出て、皇室会議の承認を得る」という手続きが必要になります。
経過措置
しかし、改正典範では、天皇家の長女愛子さま、秋篠宮家の次女佳子さまら未婚の女性皇族5人(については)、経過措置として、一般国民と婚姻した場合、自らの意思で、皇籍を離脱することも可能です(附則第2条)。この場合、皇室会議の議を経る必要はありません。
これは、法改正にともなう環境の激変(現行典範のもとでは婚姻したら皇籍を離脱することとなる前提で、これまで人生を歩まれてきたこと)に配慮し、結婚時に「皇室に残るか、離脱するか」を本人の意思で自由に選択できる「経過措置」が設けられたものです。
逆に言えば、改正典範が施行された後に誕生する女性皇族(内親王・女王)はこの「経過措置」は適用されません。
③ 旧宮家男性と婚姻して、皇籍を保持する
改正典範のもとで、旧宮家出身の男性が養子として皇族になることが認められたため、今後、養子として迎え入れられた男性皇族が皇室の一員になる可能性があります。女性皇族が、その養子となった皇族と婚姻すると、原則として皇族の身分を保持することとなります。この場合は、皇室会議で認められる必要があります(第10条)。
なお、養子となった皇族との間でうまれた子は皇族となり、男子の場合は皇位継承資格を有する皇族となります(第1条・第2条)。
④ 旧宮家男性を養子にして、皇籍を保持する
改正典範のもとで、1947年に皇籍離脱した旧宮家の子孫の男性(15歳以上で、配偶者や子がいない男性)と養子縁組ができるようになります(この場合も、皇室会議で認められる必要はある)。
養親となる資格は、法律上は、すべての親王、親王妃、内親王、王、王妃、女王の各皇族個人に認められています(第38条第1項)。
ただし、成立した改正皇室典範では、旧宮家の男系男子を養子に迎えることができる「養親(親となる側)」の範囲から、天皇・皇后両陛下、上皇ご夫妻、秋篠宮ご夫妻(皇嗣・皇嗣妃)の皇族方は、養親になれない皇族として除外されています。
これは、直系で皇位を継承していく立場にある方々やその直接の配偶者は、人為的な養子縁組によって皇統や継承順位に混乱が生じるのを防ぐためです。
そうすると、制度上、養親となれる可能性がある皇族は、直系皇族および未成年(15歳未満など)の皇族を除く「一般皇族」(未婚・既婚問わず)のみが対象となります。
実際に養親となれる可能性がある皇族として期待されているのは、絶えかけている高齢の4宮家です。改正法も、現在次の世代(子供)がいない宮家の「一般皇族」が、宮家を存続させるために旧宮家から養子を迎えるケースを主に想定しています。
養子の受け入れ先として期待される4宮家の構成員(計7名)
常陸宮家(常陸宮さま、華子さま)
寛仁親王妃家(信子さま)
三笠宮家(彬子さま、瑶子さま)
高円宮家(久子さま、承子さま)
天皇陛下のご長女の愛子さまや秋篠宮家の佳子さまも制度上、養親になる資格がありますが、お二人については、自ら「養親」になるよりも、「旧宮家出身の男系男子とご結婚される(お相手として迎える)」という形での皇族確保の可能性の方が、議論や世論の関心としては高く持たれています。
なお、未婚の女性皇族が、養親になられた場合、養子縁組をすると法律上・制度上の関係は必ず「親」と「子」になるので、迎えられた男性は、「子(長男など)」の扱いになります。
もちろん、ご自身の結婚やその後の人生設計を控えているが、あえて未婚の段階(あるいは結婚直後)から、血縁のない旧宮家の男性を「自分の子供(養子)」として引き受ける決断をする動機や必要性は薄いとみられています。
➄ 婚姻せずに、皇籍を保持する
戦後の旧典範と同様、これまで通り、婚姻せずに、皇族として残り続ける選択をすることもできます。
⑥ 皇籍を自由意思で離脱する
戦後の旧典範と同様、女性皇族は、婚姻をしてもしなくても、また養子縁組をしてもしなくても、皇籍を離脱したいときは、皇室会議の議を経て、皇籍を離脱することが可能です。これは前述した、皇室典範11条1項の「自発的な離脱手続き」を活用する方法です。
◆ 旧宮家男子との養子縁組
皇族はこれまで養子縁組が一律に禁止されていましたが、今回の改正で、一般国民のうち、皇籍を離れた旧宮家出身の男系男子の子孫との間で養子縁組をすることができることになりました。
男系男子の養子の対象者は、現憲法施行の1947年に皇籍離脱した旧11宮家51人の男系子孫のうち、配偶者と子がいない15歳以上で、現在の宮家の養子に迎え入れられることによって、皇族となります。皇族となれば、天皇に代わって摂政を務める資格すら持ちえます。
前述したように、受け入れ先となる可能性があるのは、常陸宮家、三笠宮家、高円宮家、寛仁親王妃家の4宮家で、天皇、皇后両陛下と上皇ご夫妻、秋篠宮ご夫妻は対象外です。養子本人には、皇位継承権は生じませんが、「養子に男子が生まれた場合、皇位継承権を有することになります。
日本の皇室は、初代・神武天皇から現在の天皇に至るまで、父方の血筋によって連綿と受け継がれてきた(男系)、世界的にも稀有な「万世一系」の皇統で、その系譜は2600年以上続いていると考えられています。
現在、皇位継承順位1位は天皇陛下の弟の秋篠宮文仁さまで、秋篠宮さまの息子の悠仁さま(19)が同2位です。同3位が、陛下の叔父の常陸宮正仁さまで、皇位継承資格を持つ最後の人物です。
戦後これまで続いていた皇室典範では、典範が改正されなければ、悠仁さまに男子が誕生しない場合、皇位継承は途絶える可能性もありました。
皇族に男性の世継ぎがいないことについては、長らく懸念されてきました。そうしたなか、女性・女系の皇位継承を認めるべきかの議論も起きていました。
しかし、自民党・保守派の政治指導者らは、「万世一系」という歴史的伝統を重要視し、皇位継承は男性に限定すべきだと主張。それが皇室の正統性にとって重要だと訴え、今回の皇室典範改正につなげました。
今回の改正に伴い、養子の子が男子なら皇位継承資格を持つことになり、次世代の唯一の皇位継承者である秋篠宮家の長男悠仁さまが将来、結婚後に男子に恵まれなかったとしても、男系で皇位は継承されます。ただし、その場合、旧宮家の男系子孫に皇統(天皇の血筋・系統)が移ることになります。
<男系でつないだ歴史>
皇室典範第1条は、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定めています。
「皇統に属する」というのは現在や過去の天皇の血を引いていることで、このうち、「男系」とは、父方を通じて天皇の血統を受け継いでいることをさします。
皇位が男系で継承される制度のもと、明治時代以降は、女性皇族は天皇や皇族の男性以外と結婚すると、皇族でなくなるとされてきました。このため皇室に生まれる子どもは全員が「男系」です。
天皇、皇后両陛下の長女愛子さまは、天皇の父を持ち、秋篠宮ご夫妻の次女佳子さまは祖父上皇さまと父秋篠宮さまを通じて血縁がつながるため、ともに男系の女性皇族となります。
一方、「女系」とは母方を通じて、天皇の血統を受け継いでいることをさします。2018年に結婚で皇室を離れた高円宮家の三女、守谷絢子さんの長男は、母絢子さんを通じて大正天皇の血筋を受け継いでいるため女系の男子となり、皇族ではありません。
日本の皇室は、古代から現代まで、約2600年の間、一度も途切れることなく、男系で1本の鎖のようにつながってきました(歴代天皇は全て男系)。
推古天皇や持統天皇など、10代8人の女性天皇は存在しましたが、その全員が「父親をたどると天皇に行き着く」という男系の女性天皇で、女性天皇の子供が天皇になった例(女系継承)は一度もありません。
かりに愛子さまが天皇になられた場合は、男系の女性天皇となりますが、愛子さまが結婚されて男の子が生まれて、皇位を継承された場合は、女系の男性天皇となります。
女系天皇を認めると、その時点で古代の天皇から続いてきた、「万世一系」の皇統、父系の血統が途切れてしまいます。
歴史上、天皇の直系(親から子)で引き継げず、皇位継承が途絶えそうになった際の先例として、古代、武烈天皇の系譜が途切れたおり、父の父の父の父まで遡り、その子孫である継体天皇(在507~531)に継いでもらいました。
また、近世末期の光格天皇(在位1780年 〜 1817年)は、傍系(本家から分かれた親戚の宮家)から、男系の血を引く男子として養子に迎えられて皇位を継がれました。
今回の皇室典範改正によって認められた「旧宮家からの養子縁組」も、まさにこの「男系の血筋(皇統)」を引く男性を皇室に戻すことで、皇統が途絶えるのを防ぐための政策です。
今後、両陛下のなさりようを間近で見て育った愛子さまが結婚されて皇室に残り、男の子を出産されたとしても「女系の男子」となるため、同じく皇位を継承できず、そのお子さまは一般人です。
一方、“これから皇族です”と、国民の前に現れ、新たに養子として皇室入りした方のお子さまは皇族であり、男子であれば、皇位継承の資格を持ち、将来天皇として即位する可能性もあります。
この現実について、いろいろ思うことがある人も多いでしょうが、これが男系でつなぐという歴史と伝統のなす業です。
(参考)
(参照)
皇室典範、象徴天皇制下で初の改正 養子子孫に皇統移る可能性も
(2026年07月17日、時事通信)
日本、皇位継承の規定を緩める 女性天皇を認めないことは変わらず
(2026年7月17日、BBC)
養子受け入れで注目の「男系」「女系」とは 皇室典範改正案が成立
(2026年7月17日、朝日新聞)
「多数決で変えてはいけない伝統がある」旧宮家「男系男子」養子として迎え入れる意味 皇室典範改正
(2026.7.18 ABEMA Prime)
皇室典範改正 女性皇族の選択肢はこれだけ広がる
(2026年7月15日 Note)
「改正皇室典範」国連が見解 「女性の力 発揮される政策を」過去には女性天皇に言及
(2026年7月19日、テレ朝NEWS)
改正皇室典範を公布 先送りされた「女性・女系天皇」政府は消極的
(2026年7月24日、朝日)
「東日本大震災から15年」で思うこと…やはり原発はいらない
東日本大震災から15年が経ちました。この日を迎えるに当たって毎年、思うことは、「原発はゼロでなければならない」ということです。
福島第一原発事故の「「教訓=天の声」とは、「もっとしっかり対策を」ではなく、「原発は止めなさい」であったと今も思います。
高市・自民党政権は、安倍政権時の決定を引き継ぎ、原発再稼働に前のめり、また、脱原発のリーダーであったEUも、原発政策の見直しを発表するなど、世界は間違った方向に逆戻りしているようです。
「自然の力の前に、人間の力などあまりにも無力である」と思い出させられることがないことを願う。
四方拝から孝明天皇祭まで…多忙な睦月の皇室行事
1月は年の初めとあって、以下のように、年間を通して最も多くの皇室行事が行われた月となりました。
1月1日 四方拝:元旦早朝の神秘な儀式
1月1日 歳旦祭:四方拝に続く陛下の初詣
1月1日 新年祝賀の儀:総理、国会議長、知事、大使らからの祝賀
1月2日 新年一般参賀:国民からの祝賀
1月3日 元始祭:天孫降臨と皇位を祝う!
1月4日 奏事始:伊勢からの報告
1月7日 昭和天皇祭:先帝祭として厳かに
1月9日 講書始の儀:学界第一人者からの講義
1月14日 歌会始の儀:古式ゆかしき宮中行事
1月30日 孝明天皇祭:「先帝以前三代の例祭」の一つ
以下に各皇室行事について概観します。なお、各行事の詳細については、次のサイトを参照下さい。
四方拝(しほうはい)
2026(令和8)年を迎え、天皇陛下は、毎年恒例の1月1日早朝から宮中祭祀に取り組まれました。皇居・*宮中三殿に付属する神嘉殿(しんかでん)の前庭で「四方拝(しほうはい)」に臨まれ、皇祖神の天照大御神をまつる伊勢神宮、歴代天皇の眠る山陵、四方の神々に向かってご拝礼されました。陛下は、今年の五穀豊穣と国の安寧、国民の幸せを祈願されます。
歳旦祭(さいたんさい)
四方拝の後、陛下はすぐに宮中三殿に移動され、「歳旦祭(さいたんさい)」に臨まれました。歳旦祭は、賢所、皇霊殿、神殿の宮中三殿にそれぞれ祀られている皇祖・天照大御神、八百万の神々(天神地祇)、歴代天皇・皇后・皇族の霊(皇霊)に対し拝礼する祭祀です。
なお、今年の歌会始(後述)において、天皇陛下は、この歳旦祭に臨まれる際に、輝く金星をご覧になった感動や新年の平安を祈った気持ちを詠まれた。
*宮中三殿
皇居内にある、皇祖天照大御神がまつられている賢所(かしこどころ)、歴代天皇・皇族の御霊がまつられている皇霊殿(こうれいでん)、国中の神々がまつられています神殿(しんでん)の総称
新年祝賀の儀
その後、陛下は皇后さまとともに、皇居・宮殿で皇族方や三権の長らから新年のお祝いを受ける「新年祝賀の儀」に臨まれました。
宮殿「松の間」で、秋篠宮ご夫妻をはじめとする皇族方からお祝いのあいさつを受けた後、皇族方とともに部屋を移動され、三権の長(内閣総理大臣、最高裁判所長官、衆参両院議長)や、国会の各会派の代表者、各省庁の事務次官、都道府県の知事・議会議長、各国の外交使節団の長らから祝賀を受けられました。
なお、昨年成年式を終えた秋篠宮家の長男、悠仁さまは初めて参加されました。
一般参賀
新年恒例の一般参賀が2日、皇居・宮殿の東庭で行われ、計5回で6万140人が訪れました。新年一般参賀は、天皇皇后両陛下が皇族方とご一緒に、随時宮殿・長和殿のベランダにお出ましになり、直接国民から祝賀をお受けになる行事です。
皇族方は、秋篠宮ご夫妻、上皇ご夫妻、両陛下の長女の敬宮(としのみや)愛子さま、秋篠宮ご夫妻の次女の佳子さま、常陸宮妃華子(はなこ)(正仁親王妃華子)さま、寬仁(ともひと)親王妃信子さま、三笠宮家の彬子さま、高円宮妃久子さま、長女の承子(つぐこ)さまが並ばれました。秋篠宮ご夫妻の長男の悠仁さまも今回、初めて参列されました。
元始祭(げんしさい)
陛下は3日、宮中三殿(賢所・皇霊殿・神殿)で「元始祭」に臨まれました。元始祭は、年始にあたり、「皇位の大本と由来」とを祝すとともに、国と国民の繁栄を願われる宮中祭祀です。
「皇位の大本と由来」とは、日本の神話による天孫降臨のことをさします。記紀(古事記と日本書記)によれば、天照大神の孫であるニニギノミコト(邇邇芸命または瓊瓊杵尊)が、葦原中国(日本)の統治のために高天原から降臨した(これを「天孫降臨」という)とされています。元始祭では、この天孫降臨とそれによって天皇の位が始まったことが祝われます。
奏事始(そうじはじめ)
4日は、宮殿の鳳凰の間で、宮中祭祀をつかさどる掌典長(しょうてんちょうから、伊勢神宮と宮中の祭事について、それぞれの祭祀が滞りなく執り行われたという報告を受ける「奏事始」に臨まれました。
前年の祭祀報告は、神霊を祭る祭祀でも祭儀ではありませんが、祭祀・祭儀に必要な行事だとみなされています。というのも、皇祖神を祀る伊勢神宮では、毎年数十種以上、年間何百回もの祭典が行われ、また、皇室においても、宮中三殿や勅祭社、各地にある陵墓などを含めれば、さまざまなみ祭が何10種も実施されているからです。
昭和天皇祭
昭和天皇の命日に当たる7日、陛下は宮中三殿の皇霊殿で、昭和天皇祭、「皇霊殿の儀(昭和天皇祭皇霊殿の儀)」に臨まれました。秋篠宮ご夫妻もご拝礼。愛子さまをはじめとする皇族方も参列されました。
合わせて、東京都八王子市の昭和天皇陵「武蔵野陵(むさしののみささぎ)」においても同日、祭典(「山陵に奉幣の儀」)が営まれました。勅使が差遣、幣帛(へいはく)を奉(たてまつ)っての拝礼がなされます。皇族方では、佳子さまが参列されました。
また、その日の夜には、皇霊殿で御神楽(みかぐら)(昭和天皇祭御神楽の儀)も行われ、陛下と秋篠宮ご夫妻は夕方から行われた「御神楽(みかぐら)の儀」にも臨まれた。
講書始の儀(こうしょはじめのぎ)
(読書始の儀(どくしょはじめのぎ)」
天皇、皇后両陛下は、9日、皇居・宮殿「松の間」で、年頭に学術分野の第一人者から講義を受けられる恒例の「講書始の儀」に臨まれました。皇嗣殿下をはじめ皇族方が列席され、文部科学大臣、日本学士院会員、日本芸術院会員などが陪聴します。秋篠宮家の悠仁さまが初めて出席されました。
講書始の儀は、学問奨励と新年の恒例行事として、毎年1月、皇居において、天皇陛下が皇后陛下とご一緒に、人文科学・社会科学・自然科学の分野における学問の権威者から説明をお聴きになる儀式で、学問を重んじる日本の伝統を示しています。
今年の進講者とテーマは、嵯峨美術大の佐々木正子名誉教授の「江戸時代の日本絵画」、東大の御厨(みくりや)貴名誉教授の「オーラル・ヒストリーとは何か」、国立天文台の家正則名誉教授の「観測天文学最前線と日本の活躍」でした。進講時間は3分野を約15分ずつの計約45分で行われました。
歌会始の儀(うたかいはじめのぎ)
新年恒例の宮中行事「歌会始の儀」が、2026年1月14日、皇居・宮殿「松の間」で開かれました。儀式には両陛下や秋篠宮さまら皇族方が出席され、秋篠宮家の長男、悠仁さまは初めて出席し、お題に沿った歌を寄せられました。また、一般応募の1万4600首から選ばれた入選者も招かれ、それぞれの歌(五・七・五・七・七の短歌)が朗詠されました。
「歌会」(うたかい)とは、人々が集まって共通の題で歌を詠み,その歌を発表する会をいいますが、天皇陛下が年の始めに正月行事としてお催しになる歌会を「歌会始」といい、600年以上の長い歴史を持ち、国民参加の文化行事となって現在に至っています。
歌会始の儀では、天皇皇后両陛下の御前で、一般から詠進して選に預かった歌、選者の歌、召人(めしうど)の歌、皇族殿下のお歌、皇后陛下の御歌(みうた)と続き、最後に陛下の*御製(ぎょせい)が披講(ひこう)されます。
*詠進:詩歌をよんで差し出す(贈る、奉る)こと
*選者:一般からの応募作品(詠進歌)を選考する5人の歌人
*召人(めしうど):陛下から特別に要請されて歌を披露する人
*御製(ぎょせい):天皇陛下が詠まれた歌
*御歌〈みうた〉:天皇陛下以外の皇族の方が詠まれた歌
今年のお題は「明」で、天皇陛下は新年の平安を祈る気持ちを詠まれた。
お歌(御製)
「天空に かがやく明星 眺めつつ 新たなる年の 平安祈る」
(てんくうに かがやくみょうじょう ながめつつ あらたなるとしの へいあんいのる)
元日の夜明け前、歳旦祭に際して賢所の回廊から輝く「明けの明星」(金星)をご覧になり、その美しさに感じ入るとともに、新しい年の国家と国民の平安を願われたお気持ちを表現されました。
孝明天皇祭
孝明天皇の命日に当たる30日、陛下は、皇居・皇霊殿にで、皇族方とともに参列され、御霊を祀る祭典、「孝明天皇例祭の儀(孝明天皇例祭)」に臨まれました。皇后さまは、ご欠席され、御所にて、ご遙拝・お慎みなされました(御所で慎み深く過ごされた)。
皇族方からは、秋篠宮ご夫妻、佳子内親王殿下、三笠宮瑶子(ようこ)女王殿下
高円宮久子妃殿下、高円宮承子(つぐこ)女王殿下が参列されました。
また、合わせて、京都市伏見区の孝明天皇陵「後月輪東山陵(のちのつきのわのひがしのみささぎ)」においても、同日、「孝明天皇山陵例祭の儀」が営まれ、例年皇族方が参向されます。本年は、三笠宮彬子(あきこ)女王殿下が参列されました。
天覧相撲
これらのほかにも、皇室行事ではありませんが、天皇陛下は、18 日、皇后さまと長女愛子さまとともに、大相撲初場所の8日目を観戦されました。天覧相撲は2020年の初場所以来6年ぶりで、令和に入って2回目となりました。なお、国技館での「天覧相撲」は、昭和には40回、平成には23回行われました。
国技館に「天皇皇后両陛下、並びに愛子内親王殿下にはご退場になります」というアナウンスが流れると、観客は総立ちになって、貴賓席の方を向き、拍手や手を振って見送られました。これに、御一家は、穏やかな笑みを浮かべ手を振られ、さらに退場する際には三方に頭を下げられ、背を向けていた2階席のファンにも手を振られ、退場されました。
ご退場の際、私は、陛下よりさりげなく一歩遅れて動かれる皇后さま、皇后さまより自然に一歩遅れて動かれる愛子さまのお姿の美しさ、「これぞ、女性の奥ゆかしい所作」と感動しました。
(参考)
天皇陛下のお正月:四方拝から奏事始まで
(参照)
天皇皇后両陛下が講書始の儀に 悠仁さま初出席、天文学などテーマ
(2026年1月9日、日経)
皇居で「講書始の儀」、悠仁さまが初めてご参列 東大の御厨貴名誉教授ら3人
(2026/1/9 、産経)
皇居で歌会始 天皇陛下は新年の平安、皇后さまは手話での交流詠む
(2026年1月14日 、日経)
皇居で新年一般参賀 天皇陛下「穏やかで良い年に」、悠仁さま初参加
(2026年1月2日、日経)
皇居で新年祝賀の儀 天皇陛下「国民の幸せと国の発展祈る」
(2026年1月1日、日経)
再生可能エネルギーを考える…
「日本のエネルギー政策を考える」と題して、これから、火力発電、原発、再エネを含めたエネルギー事情について投稿していきます。政策を考えるためにはもまずは、その制度や成り立ち、現状、問題点などを知っておく必要があります。
今回、はじめに、再生可能エネルギーについてまとめました。
<トピック>
鈴木農相、減反への巧妙な言い分と「おこめ券」のわな
コメ価格が高止まりを続けています。高市政権になり、新しい農林水産大臣には、自民党の鈴木憲和衆院議員が就任しました。新大臣の就任会見、その後の発言を聞くと、コメ価格は下がらないまま、日本の農業はますます衰退、高市政権の経済運営にも影響を及ぼすことが懸念されます。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
◆ 鈴木大臣ってどんな人?
鈴木大臣は、2005年に農水省に入省、2012年に退官した後、同年の衆院選で初当選しました。選挙区は コメどころの山形県(本人は東京都出身)で、農協の全面的バックアップを受けて議員となった自民党農水族です。
「農政のトライアングル」という用語があります。これは、農林水産省、自民党の農林族議員(省庁に顔の利く国会議員)、JA農協の3者で形成する癒着に近い権力構造のことで、戦後の農政は、この「農政のトライアングル」によって主導されてきました。
鈴木大臣は、一見すれば、農水官僚、自民党農林族、農協の期待を一身に担った農林水産大臣ということになります。
◆ 鈴木大臣の発言を斬る!
そんな鈴木大臣のコメ政策に関する方針としては、就任会見等で明らかにした、➀「需要に応じた生産」、②「価格はマーケットで決まる」、③おコメ券の配布の3点がキーワードになりそうです。大臣の発言を紐解きながら、その真意を探ります。
➀「需要に応じた生産が基本」
就任会見で、鈴木大臣は、コメ政策に関して次のように発言しました。
需要に応じた生産が基本…需要がないのに生産量を増やせば米価が下がる。生産者の設備投資や人件費を考えても、価格の安定が不可欠。無責任に増産を続けるのは難しい…
「(少ない)需要に応じた生産が基本」で「増産を続けるのは難しい」とは、「生産調整」が行われる、つまり実質的な減反政策に後戻りしたことを意味します。現に「無責任」という言葉を使って、前任の石破総理がコメ対策として掲げた増産路線を批判し、事実上、これを撤回した形です。
これは、「農政のトライアングル」の規定路線に戻ったことを意味します。そうすると、鈴木大臣が目指す「価格の安定が不可欠」の「価格の安定」とは、今回のコメ騒動が起こる前の水準での安定ではなく、急騰した「高値での安定」を示唆しています。コメ価格は、令和のコメ騒動以前の5キロ=2000円台はおろか、小泉前農相が目標とした3000円台に下がることはないかもしれません。
そもそも、経済の原則として、価格は、「需要=供給(生産)」で決まります。鈴木農相は「需要がないのに…」と認識していることから、本来、市場(マーケット)に委ねれば、「需要<供給」でコメ価格は下がりますが、「需要に応じた生産」と言って、生産(供給)を落とすことで、現在の高い米価を維持しようとしているのです。
このように、鈴木農相のいう「需要に応じた生産」とは、特定の望ましい価格を実現するために、それに対応する需要量まで、コメを減産すると言っているようなもので、今の高い米価を下げる意思のないことを表明しています。しかも、大臣は、その理由を「価格の安定が不可欠」だからだと言ってごまかしています。
減反政策を継続
近年の主食用米の年間生産量(主食用米の収穫量)は、概ね600万トン台後半から700万トン台前半で推移しています。
2023年産:662万トン
2024年産:679万トン
2025年産:748万トン(予想収穫量)
2026年度:711万トン(生産見通し)
2025年産の主食用米の収穫量は、2024年産を約69万トン上回る748万トンと見込まれていました。これは、「令和のコメ騒動」でコメ価格の高騰により、農家の生産意欲が高まったことや、作付面積の拡大などがあげられています。
しかし、2026年産向けの生産目安は、需給緩和を見越して、711万トンと提示され、2025年産よりも減産となる見通しです。
農水省は、減反政策は既に廃止されたと言いながら、コメの生産目安の設定や助成金を通じた生産調整で、実質的に減反政策を継続させています。しかも今回は、「需要に見合う生産」という原則をたてに推し進めようとしています。
さらに、備蓄米の水準を回復するという名目で、放出した備蓄米59万トンを買い戻し、市場から「隔離」するそうなので、供給量はさらに減少します。結果、コメの値段は下がらないどころか、いっそう上がることも懸念されます。
需要の見積もりは正しいのか?
加えて、鈴木大臣が「需要に応じた生産」と言うときの「需要」は、果たして正しい数値なのかという疑問も生じます。「国の需給計画上の数字」が必ずしも正しい需要を表すとは限りません。実際、「令和のコメ騒動」のさなか、「23~24年の数字は誤りだった」として、国は謝罪しています。この需要の見積もりミスが令和のコメ騒動の一員となりました。
また、鈴木大臣は、会見で「現状では不足感は解消されたと認識している」と断言しましたが、この認識が正しいのでしょうか?
ある識者によれば、集荷業者らは、2025年もコメ不足が解消しないと見て、田植えよりずっと早い3月頃から、集荷競争を繰り広げ、農家との間では秋の新米の契約をかなりの高値で進みだしていたそうです。これが、現在もコメ価格が高い理由の一つです。
また、大臣の会見では、「需給見通しを精度の高いものに」と言っていましたが、かつて、当時食糧庁のある幹部の方は、「国がコメ需給をぴたりと合わそうなどとは、神をも恐れぬ所業である」と言われたことがあるそうです。
そう、需要を正確に把握し、生産に反映させることができるのは、「神」しかいません。ただし、ここでいう神とは、近代経済学の祖、アダム・スミスで有名な「神の見えざる手」、つまり「市場」です。
需要とは、「市場が価格を通じて生産者に知らせる」もので、生産者は市場で形成された価格シグナルを通じて必要な量を知り、生産活動を行います。真の需要は、市場の価格動向等を通じて把握する以外に方法はありません。
いみじくも、鈴木農相は、「価格はマーケットで決まるものだ」と発言しており、このことを理解されているのかと思いましたが、「マーケット(市場)」の使い方を歪曲しているようです。
② 「価格はマーケットで決まるものだ」
適正な価格についての質問に対し鈴木農水大臣は、次のように答えました。
何円台がいいとは言わない、(米価について)私のスタンスとして、高いとか安いとかは申し上げない。価格はマーケットで決まるものだ。
これは、5月から備蓄米放出による価格引き下げを進めてきた政府の方針を改め、今後は価格のコントロールに関与しない姿勢を示したことになります(政府の価格介入を否定)。
また、あるテレビ番組に出演した鈴木農水相は、コメの値段を「せめて(5キロ)4000円台に」という消費者の声に対し、次のようにも回答しています。
…残念ながら価格というのは、私たちにコントロールする権限が全くないし、私たちが管理をしてるものでは…、残念ながらコメは…流通の世界は自由でありますから…
コメの流通市場は自由なので、農水省は米価を管理する権限は全くない(=農水省は米価をコントロールしてはいけない)と述べているのです。
しかし、「価格に関与しない」と言いながら、「需要に応じた生産」と言って、生産抑制(今年産から5%減少)を指示していること自体、米価の高止まりを望む価格への介入です。
マーケットの機能を阻害
そもそも、鈴木大臣が「価格はマーケットで決まるものだ」という時のマーケット(市場)とは、本来、不特定多数の買い手と売り手が集える、公開・公正で、調整機能が十分に発揮されており、さらに行政もそれを側面から支援している市場です。
しかし、適正価格を形成、市場のメカニズムの働きを意図的に阻害し、価格形成に関与しようとして、適切なコメ市場の形成を阻止してきたのが、ほかならぬ、鈴木大臣ご出身の農林水産省とJA農協です。
農政の歴史を振り返ると、「農政のトライアングル」(農水省、JA農協、自民党)は、1960年代から、農家を守るという名目で、減反政策によって、米価を上げてきました。
具体的には、生産者に毎年3500億円ほどの減反補助金を出して、コメ生産を減少させ(農業用地を減らさせる)、コメの値段を市場で決まる価格よりも高くしてきたのです。
「令和のコメ騒動」前の5キロ=2000円台だった米価も、マーケット(の需給関係)の中で決められたのではなく、強力な市場介入の結果で、価格を市場(マーケットの力)に委ねていたら、コメの値段は5キロ=2000円台をさらに下回っていたはずです。
それが「令和のコメ騒動」が発生し、農水省や農協からすれば、米価が上がり出したのはよかったのですが、農水省が需給を読み間違えたことから、騒動前の2倍以上の水準に、上がり過ぎてしまい大問題となってしまいました。これが今回の「騒動」の実態です。
しかし、農水省は、これまで米価をマーケット(市場)に委ねてこなかったどころか、その働きを阻害してきたにもかかわらず、「価格はマーケットが決めるものだから、米価には関与しない」という鈴木大臣の発言は、農水大臣としては「不誠実」であり、もはや「偽善」の域に達しています。
日本にはないコメの自由市場
加えて、コメの流通プロセスにおいて、日本には自由な売買の場である卸売市場のように公的な「取引所」は存在していません。
代わりに、日本では集荷業者(売り手)と卸売業者(買い手)が、直接「話し合い」によって価格を決定する相対(あいたい)取引が取引量の大半を占めています。このため、一般にニュースで報じられる「米価」は、卸売段階の取引価格(相対取引価格)を指す場合が多く、これが日本でのコメの基準価格となっています。
もっとも、政府(農水省)は、かつて、相対取引における、公設の場として、「全国米穀(コメ)取引・価格形成センター」を創設し、コメ取引に市場原理を導入しようとしました。しかし、相対価格を有利に決めたいJA農協が業者の上場(取引所で売買すること)を制限するようになって、結局センターは廃止されてしました。
また、コメの適正価格の形成になくてはならない先物市場も、JA農協の反対運動により「実質的」に認められていません。需給で公正に価格が決定される市場が実現できれば、JA農協は、自分たちにとって適正な相対価格を決めることはできなくなるからです。日本には、各銘柄米の値段を自由な売買で決める市場がJA農協の反対とこれを認めた農水省によって存在していないのです。
このことは裏を返せば、現在の相対価格は、需給で公正に価格が決定される水準ではないということでもあります。実際、相対価格は、JA農協が決定する概算金に大きな影響を受けます。
概算金とは、コメ価格形成に重要かつ独特な価格体系で、JA農協がその年の秋の収穫後に、農家に一時金として、支払われる仮払金をいいます。相対価格は、この概算金に、保管・運送・検査コストなどの流通経費や手数料などを上乗せしたものとなることから、JA農協が決定する概算金が、相対価格の水準をほぼ決定すると言っても過言ではありません。
ちなみに、JA農協が農家に払う概算金は、玄米60キログラム当たり通常の年では約1万2000円水準であるのに対して、2025年度産のコメの概算金は、主力銘柄で1等米60kgあたり2万6000円~3万3000円程度が中心で、前年産比では6~8割高と大幅に引き上げられています。
さらに、JA農協は、この高い米価(概算金)以上の価格を農家に払えない他の流通業者を、コメの集荷事業から排除しながら、市場の独占力を今も保持しています。
したがって、農水省が米価をコントロールできない理由に、鈴木大臣があげた「流通の世界は自由であるから」という主張は事実に反しますし、農水省は、できないどころか、コメの値段をコントロールしています。
日本では、市場メカニズムが機能して適正価格を形成できるマーケットは存在しないので、鈴木農相の「価格はマーケット(市場)で決まるものだ」は、「価格は、JA農協主導の相対取引で決まるものだ」と言っていることに等しいわけです。
コメの流通市場についての詳細については「コメの価格が決まる仕組み」を参照下さい。
元から、コメ価格を下げる気はない
結局、鈴木大臣の「需要に応じた生産が基本」、「価格はマーケットで決まるものだ」という発言は、今後も生産調整を続け、コメの高価格政策を続ける(高い米価を維持していく)と言っているのです。米価5キロ=4000円以上を、既成事実として、消費者に受け入れさせたいという鈴木大臣の真意が透けて見えます。
ただし、それでは、消費が困るというので、高い米価を受け入れてもらう代わりに、農水大臣がコメ高対策として打ち出しているのが、「おこめ券」の配布です。
③「おこめ券」の配布
鈴木農水大臣は、コメの高値が続くなか、「政府に今すぐできることは実際に消費者の皆さんの負担感を和らげる」ことして、おこめ券の配布を、物価高対策として、表明しました。
おこめ券とは?
政府は、自治体向けの「重点支援地方交付金」に2兆円を計上し、うち4000億円を食料品高騰に対応する特別枠として、おこめ券などの活用を促します。支援額は1人当たり3000円程度になる予定です。
農水省は、「おこめ券」の配布を各自治体に推奨していますが、実際に配布するかどうか、また、配布するにしても、誰を対象にするかは各自治体の判断に委ねられています。後者の場合、 たとえば、子育て世帯や低所得者世帯など、特定の対象者に限定して配布する場合もあります。
自治体から配布される「おこめ券」は、金券と同じで、特定のコメとの引換券ではありません。コメ500円/kgとされ、高いおコメを買えば、差額を負担する必要があります。
また、おこめ券以外に電子クーポンやプレミアム商品券、地域ポイントの配布、パン、麺、パスタなどの食料品の現物給付なども選べます(そうなると、おこめ券は石破茂内閣時代に検討された現金給付政策と何ら違いがないとの指摘もなされている)。
では、おこめ券は、本当に消費者の負担が和らぎ、物価対策になるのでしょうか?
おこめ券の効果
鈴木大臣は、おコメ券の配布を「国民の負担を和らげるため」の救済策と述べています。実際、おこめ券が配布され、今、たとえば、コメ500円/kgのおこめ券4枚を持つ消費者にとって、5キログラム当たり4200円のコメが、2200円で買えたことになります。
たしかに、おこめ券でコメを安くで買えて「助かった」と喜ばれるかもしれませんが、そもそも、これまで多額の減反補助金を通して、私たちは高いコメを長年、買わされて(負担を強いられて)きたという事実を忘れてはなりません。今回のおこめ券にかかる費用も財源は税金です。減反もおこめ券も負担するのは国民なのです。
また、おこめ券を使って、5キロ4200円のコメを買う人が増えるということは、需要の増加に伴い価格がさらに上昇し、消費者の負担も増えることにもつながりかねません。
しかも、おこめ券は、原則として1回限りの時限的な措置で、継続される政策ではありませんので、経済効果は限定的で、気休め程度です。したがって、物価高騰対策としてのおこめ券の配布は、一時しのぎになるだけで適切とは言えません。
うがった見方をすれば、国民に安くコメを買えると思わせて、下がらないコメの価格に対する不満を避けるための対策にみえてしまいます。
鈴木大臣と農水省の深慮
逆に、農水省の立場からいえば、おこめ券の配布によって、消費者に安くコメを供給することで、高い米価による需要の減少を抑制できる効果が期待できます。また、現在、高騰した新米は売れずに行き場を失い、JAや中間業者の倉庫は山積みになっていると言われていますが、おこめ券はそれらをさばくための対策になります。
そうすると、物価高対策としてのおこめ券は、米価を下げるのではなく、現在の高いコメの価格を維持しようとする鈴木大臣の目論見ではなかったのかとの疑いももたれます。
おこめ券の配布は、政府がコメを買い上げて配給するのとほぼ同じ構造であり、結果として、米価は高い水準のまま、コメ消費を無理に押し上げ、米価をさらに引き上げることにもなりかねません。
さらに、鈴木農相は、おこめ券に期限をつけると発表しましたが、これは、期限切れ後には市民が割高な米を購入せざるを得なくなるということを意味しています。
一方、おこめ券は、経費率が10%以上と高いことが指摘されています。具体的には、1枚500円のおこめ券では、440円分の コメしか買えず、差額の60円は印刷代、郵送、銀行振込みなどの費用として消えていきます。
大阪府交野市は、この経費率の高さなどを問題視し、おこめ券を「配布しない」と宣言しました。市長は、経費率0%の給食無償化、経費率1%の上下水道基本料金免除に使うとしています。
これに対して、鈴木農相は「おこめ券を使うか、使わないかは自治体の自由だ」とする一方で、「おこめ券の配布を含む食料品価格高騰対策は、市区町村に対応いただきたい『必須項目』として基本的には位置づけをされている」として、市区町村に対し事実上強制して実施してもらう考えを示しています。
今回の重点支援交付金のような交付金は本来、自治体が使い道を自由に決められるもので、国から自治体に交付金の利用を強制する権限はありませんが、全1741市区町村に対して対応を求めています。自身肝いりの「おこめ券」配布に、鈴木大臣の並々ならぬ意気込みが感じられます。
おこめ券の配布は、国民の負担を和らげるためになされると鈴木大臣は言いつつも、国民の負担(税金)で発行され、農家の収入を減らさずに、高い米価を維持するための政策手段となっています。
しかも、その恩恵を一番受けるのは、発行元である全農などの農業団体というカラクリがあります。
実際、「おこめ券」は、JA全農(全国農業協同組合連合会)と全米販(全国米穀販売事業共済協同組合)の2団体(それぞれ集荷業者と卸売業者の全国団体)が発行し、億単位の利益が転がり込むとされ、おこめ券の配布は、これを発行する農業団体への利益誘導との批判が噴出しています。
このように、付け焼き刃的なおこめ券の配布は、コメの高止まりを放置し、結果的に国民負担を増やすだけで、コメ問題の本質的な解決にはなりません。
◆ コメ問題の本質的な解決のために
令和のコメ騒動を含めた、すべてのコメ問題の元凶が、減反政策です。減反政策を止めなければ何も変わらず、コメ騒動は、政府が増産を後押ししなければ収まらないでしょう。
消費者にとっては減反廃止(増産)で、コメの値段が下がり、安い米が届くようになります。また、収穫量が増え、国内消費で余った分は、輸出に回せば、農家の所得を押しあげることができます。
もちろん、短期間に簡単に輸出を大幅に増やせるわけはないので、増産したら農家は潰れてしまうという指摘もあります。そのための対策として、米価下落の影響を受けた主業農家に対しては、財政出動による政府から直接支払いを交付する所得補填政策が最も効果的で確実とされています。
財源はどうする?という問いについては、専門家によれば、主業農家への直接支払いは1500億円と見積もられていますが、これまでの減反政策で、国民は納税者として、減反補助金3500億円を負担しているとされていることから、問題はないどころか、財政を好転させることもできます。
なお、コメ輸出の拡大については、以前の政権からずっと言われ続けた政策ですが、鈴木大臣も、所信表明演説で、コメ需要の拡大へ海外マーケットの開拓に意欲を表明しました。「私たちが認識を改めたほうがいいのは、今まで日本のコメは高くて海外に売ることができなかったという理屈だ」と述べ、日本産米の高付加価値を武器に輸出を拡大できる可能性を強調しました。
しかし、この発言も、高いコメを前提にしているところが問題です。減反政策をやめて、コメの価格が下がれば、もともと付加価値の高い日本の米を、安く海外に販売できるので、輸出を当然増えていきます。
石破政権では、この減反政策を名実ともやめて、増産に転じるという歴史的な決定を下しましたが、高市政権になって鈴木農相がすぐに撤回、減反(生産抑制)に回帰してしまったことはすでに指摘した通りです。
◆ このまま減反政策を続けたら…
では、政府がこのまま増産に舵を切らず、長年の減反政策を実質的に続けたいったらどなるでしょうか?
コメ農家が5年以内に全滅する!?
「コメの生産現場は、高齢化し、担い手を失い、困窮しきっている」という農家の疲弊が指摘されて久しいですが、こうなった原因は、今の農政にあります。
農家の平均年齢は70歳とされ、地域によっては「あと5年で米を作る人がいなくなる」と言われており、日本のコメ農家は、5年以内に激減し、多くの農村コミュニティが壊滅しかねません。長年の生産調整で、生産を減らせと言われれば、意欲のある若い担い手も育つわけはありません。
コメの自給率が下がる
このまま、高い米価が維持されれば、消費者のコメ離れすすむか、安い外国産の需要が増え(輸入米が増え)、現在95%近いコメの自給率さえ下げてしまいます。
実際、コメ不足が解消しないなら、輸入米でまかなえばよいという安易な主張がなされ、トランプ関税との絡みで、アメリカ産米の輸入が増えました。これは、稲作農家はさらに追い詰められて、やめる農家が続出することが懸念されます。
食料安全保障に悪影響
コメの自給率の低下は、食料安全保障に深刻な影響を与えます。現在の備蓄はおよそ100万トンとされ、これでは国民が食べられるのは、わずか1.5カ月分しかありません。
令和の米騒動では、日本はアメリカからの輸入米に頼りました。そもそも日本は多くの農産物を海外からの輸入に依存しています。主食である米まで輸入頼みになれば、もし供給が途絶えたとき、国民はたちまち飢えることになります。
安全保障環境が悪化しているなか、いまこそ、少なくともコメの備蓄を増やさないといけない時代背景があるにもかかわらず、目先の利益と既得権の維持に捉われて、減反政策を再び採用しようとしているのが鈴木農政です。
また、何より、農相から農業政策の大きなビジョンが示されていないことも問題です。おこめ券の配布に苦心するよりも、私たちが安心して食生活が営めるための農政の方向性をしっかりと示してもらいたいと思います。
自給率と食糧安保については以下の投稿記事も参照下さい。
◆ 高市政権の経済運営への影響
ここ数年、物価対策が最重要課題だとして、対策が求められていますが、昨今の物価高の象徴が食料品のなかのコメ価格で、消費者を最も苦しめています。
これに対して、鈴木農相はコメの高価格・減反路線を復帰させましたが、米価が下がらなければ、高市政権の物価高対策は、仮に食料品の消費税をゼロにしても、米価が高値を維持する限り、失敗する恐れがあると指摘されています。
そこで、物価高対策として、繰り返しますが、減反を止め、増産に切り替えることが望まれます。その結果、農家の所得が落ち込めば、農家への所得補償(直接払い)という形で、財政出動させるべきです。
高市首相は「積極財政」を掲げ、「日本が今行うべきことは、行き過ぎた緊縮財政により国力を衰退させることではなく、積極財政により国力を強くすることだ」と訴えました。
積極財政で、おカネを回すべきは、ここまで疲弊した農業に対してであり、コメの増産で国力を蓄えなければなりません。
もう何年も、農林水産省は、国民のために仕事をせずに、JA農協をはじめとする農政トライアングル(自民党内の族議員と、自民党の支持母体JA農協)の既得権のために仕事をしていると言われても否定できません。結果的にここまで日本の農業を疲弊させたのは、農水省の農政が間違っていたからです。
高市政権の経済運営の成功は、農政にかかっています。鈴木農政が、高市経済のアキレス腱にならないことを願うばかりです。
(追加)
2025年12月9日、農林水産省がコメ政策について「需要に応じた生産」を法律に盛り込む方針を固めたと報じられました。
これが意味することは、実質的に減反政策への復帰を法律に明記することによって、石破政権でやろうとしたような「コメの増産はさせない」、政権が代わっても減反の原則を転換させないということです。
さらに、「需要に応じた生産」を推進して米価が暴落しないよう調整していくことになるので、現在の高いコメ価格が、この水準で固定化されるということを意味します。
(関連投稿)
以下のサイトで、さまざまな農業問題について扱っています。ご関心があれば参照下さい。
(参照)
コメ、増産路線を修正 価格は市場任せに回帰 鈴木農相が方針
(2025年10月24日、食品新聞)
「米価と洋服は同じ」鈴木農水大臣の発言を食料安全保障の専門家が痛烈批判…「米の備蓄は国防費と同じ」
(2025/11/07 『女性自身』編集部)
高市政権の「農政復古」
(2025年11月12日、国基研ろんだん)
コメ高騰問題 古市憲寿氏「噓というかぎまんというか、ずるい発言」鈴木農相の「価格はマーケットで」発言を一刀両断
(2025/11/09 サンスポ)
お花畑の農業論にモノ申す
(2025年10月31日 Wedge Online)
〈検証〉鈴木憲和新農水大臣のコメ政策“転換”、「需要に応じた生産」「おこめ券」は妥当なのか
(渡辺好明・新潟食料農業大学名誉学長)
「令和の米騒動」が収まらない。国産米が消える日
(2025.10.27、文芸新書)
「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ
(2025/11/30、日刊ゲンダイ)
やっぱり進次郎のほうがマシ…「コメの値下げは無理」と言い張る農水大臣に、高市首相が命じるべき「5つの策」
(2025/11/23 PRESIDENT Online)
進次郎農水大臣のほうがよっぽどマシ…高市政権に潜り込んだ「コメの値段を下げたくない農林族」の正体
(2025/10/25 PRESIDENT Online)
三笠宮家「内紛」の結果・・・
三笠宮家は、2024年11月に三笠宮妃百合子さまが101歳で薨去されてから、当主が不在となっていたなか、2025年9月30日、「*皇室経済会議」(議長・石破茂首相)が、宮内庁の特別会議室で開かれ、以下の2つの決定がなされました。
(1) 空席となっていた三笠宮家の当主について、孫の(あきこ)さま(彬子女王)が継がれること
(2) 彬子さまの母で、百合子さまの長男・寛仁親王妃・信子さまが、三笠宮家を離れ、独立して新たな宮家『三笠宮寛仁親王妃家(みかさのみや・ともひとしんのうひ・け)』を創設し、その宮家の当主となられること
これによって三笠宮家は、母娘で分断した形となりました。なお、彬子さまの妹の瑶子(ようこ)女王(41)は、姉が当主となる三笠宮家にそのまま残られます。
◆ 三笠宮家当主を彬子女王が継承
彬子さまは、三笠宮崇仁 (たかひと) 親王の長男で、「ヒゲの殿下」と親しまれた三笠宮寛仁(ともひと)親王の長女です。大正天皇の曾孫で、現在の天皇から見て「祖父の弟の孫である女王」ということになり、一般人なら「はとこ」「またいとこ」という関係性があります。
女性皇族が当主となるのは、当主を亡くした妃(きさき)が継ぐというのが通例です。実際、戦後の皇室では、高円宮妃だけでなく、秩父宮妃、高松宮妃、高円宮妃、三笠宮妃が、夫の宮さまがお亡くなりになったのち、臨時で当主になられています。
しかし、彬子さまのように、未婚(宮家で夫を亡くした妻以外)の女性皇族が、当主を継承するのは、明治憲法下の1889年に旧皇室典範が制定されて以降、今回は初めてです。
江戸時代にまで遡れば、仁孝天皇(在位1817〜1846)の第三皇女で、桂宮淑子(すみこ)内親王以来163年ぶりのことです。淑子内親王は、桂宮家を継いだ別の弟が亡くなり、当主不在となったことから、1863年に (旧) 桂宮家の第12代当主となりました。
宮家の継承とは祭祀を継ぐことを意味します。宮家当主(一般人でいう「世帯主」)は、法的な概念ではありませんが、その家の代表として祭祀を執り行う役割があります。今回の決定により、彬子女王は、独立生計を営む皇族と認定され、三笠宮家の当主として正式に宮家の名称と、その祭祀を「継承」されました。
もっとも、彬子さまはすでに、三笠宮ご夫妻(崇仁親王と百合子妃)と子の寛仁親王の祭祀を執り行っており、今回の決定で、その立場が法律に明文化された形です。さらに母の信子さまが独立したことで、彬子さまが、名実ともに「三笠宮家」を継ぐ存在となられました。
◆ 信子妃が独立し宮家を創設
今回、三笠宮家から独立した信子さまは、独立生計認定を受け、新たな宮家(三笠宮寛仁親王妃家)の当主となりましたが、信子妃のように結婚により民間から皇室に入った女性(皇族妃)が新たに家を創設するのは、明治時代の旧皇室典範施行(明治22年)以来、これも例のない初めてのことです。しかも、「親王妃家」という、まったく前例のない制度がつくられたわけです。
そもそも「三笠宮寛仁親王」という皇族は、現在存在していません。崇仁親王(三笠宮)の長男、「寛仁(ともひと)親王」は、生前、いずれ「三笠宮家」を継ぐことを考え、「寛仁親王家」という宮家を名乗られていました。したがって、「三笠宮寛仁親王妃家」という名称は、「三笠宮家から出た寛仁親王妃の家」という異例の構成となったのです。
ですから、厳密にいえば、信子妃殿下の新宮家、「三笠宮寛仁親王妃家」は、三笠宮家の分家であり、全く新しい宮家ではありません。新しい宮家であれば、天皇陛下から、秋篠宮や高円宮(たかまどのみや)のように「◯◯宮」という「宮号」を賜わりますが、宮内庁は、宮号はないと明らかにしています。
いずれにしても、新たな宮家ができるのは、1990年に秋篠宮家が創設されて以来35年ぶりのことです。これによって、これまで総数として「4宮家」(秋篠宮、常陸宮、三笠宮、高円宮)といっていたのが、これからは「5宮家」になります。
◆ 増額される皇族費
宮家において、誰が当主になるかは原則、家族の話し合いで決まり、その結論が皇室経済会議に諮られます。皇室経済会議が開かれる理由は、会議で独立生計者(当主)と認定され、宮家の当主になると国(国庫)から支払われる皇族費が増額されるためです。皇族費は身位や「当主かどうか」などに応じて、皇室経済法等に基づいて計算式が定められています。
今回の決定によって年間で支給される皇族費は、以下のように、彬子さまと信子さまは増額され、当主になられなかった瑶子さまは、これまでと同じ支給額となりました。
母・信子親王妃:1525万円⇒3050万円
姉・彬子女王:640.5万円⇒1067.5万円
妹・瑶子女王:640.5万円(変わらず)
もし、三笠宮家だけで存続する場合、すなわち、順当に信子妃が当主に就かれ、彬子さま・瑶子さまがその家の成員となった場合、3人に支払われる皇族費は計4331万円でしたが、今回は新当主が2人誕生することで計4758万円となり、427万円の増額となりました。
皇室経済会議の決定に対する国民の声
今回、7年ぶりに開催された皇室経済会議では、意見や質問はなく10分ほどで終了し、全員一致で、信子さまと彬子さまの独立生計を認定しました。
今回の決定をめぐっては、ご一家のこれまでの事情に鑑みれば、「やむを得なかった」という意見もありますが、「物価高で貧困が増えてるのに皇族に支払われる額は倍増し、国民の負担が増えることに、国民の理解は得られない」、「継がれる当主が決まったのはいいが、ご一家がひとつにまとまるのが通例、そもそも新しい宮家が必要なのか」といった声が聞かれました。
なかには、「親王妃家という前例のない宮家を立てるぐらいなら、信子妃は本来、皇籍離脱するのが筋であろう」、「寬仁親王(2012年死去)の生前から夫婦は事実上、離婚状態にあったのだから、皇族妃という立場を放棄すべきである」との厳しい意見も出されていました。
一連の決定について宮内庁側は、「宮家で話し合われた結果」、「内輪の話。承知していないし、承知したとしても説明を差し控える」と言うのみで、一世代飛ばして信子さまの長女彬子さまが継いだ理由や、信子さまが三笠宮家を離れた、具体的な理由については説明していません。
このように、彬子女王の宮家継承と信子妃の新宮家創設は、明治以降の皇室では前例のない「初めて尽くし」となり、結果的に、三笠宮家は分裂(分断)してしまいました。
こうなってしまった背景には、20年以上にも及ぶ、三笠宮家内における夫婦間の葛藤と、母娘の確執がありました・・・。
三笠宮家内の問題から、今回の決定が与える影響まで、続きは、以下の投稿議事を参照下さい。
悠仁さま、40年ぶりの成年式、成年皇族に!
秋篠宮家の長男悠仁さまが成年を迎えたことを祝う「成年式」が、2025年9月6日、皇居・宮殿などで行われました。皇室の成年式は、男性皇族が成人したことを祝う慣例儀式で、成年皇族の仲間入りを祝う行事です
筑波大1年生でこの日に19歳となられた悠仁さまは、宮中の伝統を受け継いだ儀式に臨まれました。まず、秋篠宮邸で、成年用の冠を、天陛下の使者から受け取る、「冠(かんむり)を 賜(たま) うの儀」が執り行われ、その後、悠仁さまは、皇居・宮殿で未成年用の冠を成年用の冠に替える、成年式の中心儀式「加冠(かかん)の儀」に臨まれました。さらに、宮中三殿へ拝礼された後、天皇、皇后両陛下にあいさつする「朝見の儀」に出席されました。
成年式の儀式はここまでですが、関連行事はその後も続き、悠仁さまは、皇室の伝統として、8日に三重県の伊勢神宮と奈良県の神武天皇陵を、9日には東京・八王子市にある武蔵陵墓地の昭和天皇陵を参拝され、皇室の祖先に儀式(成年式)の終了を報告されました。10日には、東京 港区の明治記念館で、三権の長ら悠仁さまが通われた小中学校の関係者などおよそ30人を招いたお祝いの昼食会が行われ、一連の儀式や行事を終えられました。
悠仁さまの皇位継承順位は秋篠宮さまに次ぐ2位です。次世代の皇室を担う存在である悠仁さまの今後のご活躍が期待されます。また、こうした宮中祭祀を身近に接するにつれ、一人の国民として、男系による万世一系の皇室の存続と発展を願うばかりです。
なお、成年式についての詳細は、下の投稿記事に書きましたので、ご参照下さい。
また、ほかの宮中祭祀や宮中行事や、皇室についてさらに知りたい場合、以下のサイトにアクセスしてみて下さい。
安保法制の成立から10年! 改めて日本の安保政策を考える
国論を二分した安倍政権による安保法制の成立 (2015年9月安全保障関連法成立)から今月で、ちょうど10年になります。ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルのガザ戦争など、昨今の不確実・不安定な国際情勢において、安保法制の制定は正しい選択だったのか、それとも、あの強引な国会審議は今も非難の対象なのでしょうか?
そうした問題も含めて、今ここで、改めて安保法制について問うとともに、戦後から現在まで、日本の外交・安全保障について、以下のテーマでまとめました。皆様の考える材料になれば幸いです。
総論
各論
トピック
今、改めて、旧モンサント社の功罪を問う
昨日、『日本の農業 その現実と未来』をテーマに、日本の農業についてまとめたものを公表しました。令和のコメ騒動に揺れる日本ですが、コメの供給に頭が一杯で、安全性の議論がなおざりになっているようです。そこで改めて、遺伝子組み換え(GM)種子メーカーの世界最大手、モンサント(現バイエルン)に焦点を当て、
と題して、遺伝子組み換え市場について深堀りすると同時に、旧モンサント社の功罪と、現在の世界のGM市場についてまとめました(上赤字タイトルをクリックしてお読みください)。
なお、今回の投稿は、拙著「日本人が知らなかったアメリカの謎」の中の「モンサント ―遺伝子組み換え種子で、世界を支配!?その目的は何?―」を加筆校正したものです。
日本の農業を考える 「令和のコメ騒動」の背景と今後
「令和の米騒動」に日本中がコメ価格に翻弄されるなか、日本の農業について真剣に考えてみました。そこで、「日本の農業、その現実と未来」と題して、「農政」、「食料安保」、「食の安全」の3テーマ毎に、日本の農業の現状、問題点などを総合的かつ体系的にまとめてみました。
<農政>
<食料安保>
<食の安全>
憲法記念日に、改憲について考えてみた!
昨日、5月3日は憲法記念日。毎年のように、改憲派と護憲派がそれぞれ集会を開き、テレビやネットでは、両派が意見を交わす討論番組が放映されたり、主張動画が配信されたりしていました。
私は護憲派から改憲派に変わりました。憲法記念日をきっかけに、今年は、憲法改正について考えてみました。少なくとも次の内容について、改憲・加憲の必要性を訴えたいと思っています。
天皇は国家元首
あらゆる主権国家には国家元首が当然存在しますが、現憲法に、国家元首についての規定はありません。日本では、疑いもなく天皇です。
憲法9条2項の改正
憲法9条1項は堅持。日本は、侵略戦争はしないという戦後の決意は決して変わらず、平和憲法の看板を下ろしません。しかし、2項については、国民の命と財産が危険にさらされる事態が生じたとき場合、「…戦力は、これを保持する。交戦権は、国と郷土を守るために、これを認める」と改正されるべきだと考えます。さらに、自衛隊は、有事の際、軍隊になるという条項が加えるべきでしょう。
緊急事態条項を明記
これも、世界の憲法の中には通常、規定されている条項です。コロナ禍において、その必要性を痛感しました。
平時の財政均衡条項
財政を均衡させておくことは、国内外の信頼を得る手段であり、国民に安心して、生活してもらう前提条件です。ただし、平時でない時は、積極財政を行うという意味もあります。
この4項目については、憲法改正:不毛の違憲論争に終止符を! で詳細に論じています。
また、日本国憲法は、アメリカの押し付け憲法か自主憲法かという議論がありますが、本レムリアでは、日本国憲法の全条文がどのように作られたかを、「知られざる日本国憲法の成り立ち」と題して、まとめてあります。ご興味があればぜひ、ご参照下さい。
日本国憲法の制定:わずか9日間で書けたわけ
上諭・前文
日本国憲法(上諭・前文):8月革命説と美濃部の抵抗
第1章 天皇
日本国憲法1~8条(天皇):戦前の天皇制はいかに解体されたか?
第2章 戦争放棄
日本国憲法9条(戦争放棄):マッカーサー3原則と芦田修正
第3章 国民の権利及び義務
日本国憲法11・12条(人権の基本原則):米独立宣言と仏人権宣言の写しか?
日本国憲法13条(幸福追求権):出所はアメリカ独立宣言!
日本国憲法14条(法の下の平等):アメリカ独立宣言の賜物?
日本国憲法15条(参政権):ワイマール憲法から世界人権宣言へ
日本国憲法18条(奴隷的拘束からの自由):日本には奴隷はいなかったのに…
日本国憲法20条(信教の自由):ワイマール憲法からの誘い
日本国憲法21条(表現の自由):たたき台はワイマール憲法!?
日本国憲法22条(居住移転の自由):外国移住の権利、日本に必要だった?
日本国憲法23条(学問の自由):ワイマール憲法を起源に!?
日本国憲法24条(婚姻の自由と両性の平等):ソ連からのメッセージ?
日本国憲法25条(生存権):日本人が書いた稀有な条文
日本国憲法27・28条(労働基本権):スターリン憲法が日本へ!?
日本国憲法29条(財産権):GHQによる土地国有化の試み!?
日本国憲法31条(適正手続きの保障):合衆国憲法修正第5条の写し?
日本国憲法33~35条(被疑者の権利):憲法には詳細過ぎる?
日本国憲法36~40条(被告人の権利等):合衆国憲法(英米法)の影響大!
第4章 国会
日本国憲法41~48条(国会の仕組み):GHQは一院制の国会を要求!
日本国憲法49~51条(国会議員の特権):合衆国憲法に書かれていたから
日本国憲法55~58条(国会の権能):合衆国憲法第1章第5条と同じ!
日本国憲法62~64条(国政調査権等):米政府 (SWNCC) の圧力
第5章 内閣
日本国憲法65~73条(内閣):GHQが課した議院内閣制、天皇大権の完全否定
第6章 司法
日本国憲法76条(司法権の独立):特別裁判所は認めない!
日本国憲法77~80条(裁判官の独立):報酬減額不可にこだわったGHQ!?
日本国憲法81条(違憲審査権):議会より司法を信頼したアメリカ製
第7章 財政
日本国憲法83~86条(財政予算):意外と妥協したGHQ!?
日本国憲法88条(皇室経費):妥協を拒否したGHQ!
日本国憲法89条(公金支出の制限):照準は国家神道!
日本国憲法(財政):GHQが消した幻の憲法草案
第8章 地方自治
日本国憲法92~95条(地方自治):GHQの意に反して……?
第9章 改正
日本国憲法96条(改正):改正させないGHQの深慮は働いたか?
第10章 最高法規
日本国憲法97~99条(最高法規):合衆国憲法の精神満載!
こんなにもある宮中祭祀をもっと身近に!
本HP 「むらおの歴史情報サイト『レムリア』」では、皇室についての情報を「日本の皇室」というテーマでお届けしていますが、その中の「宮中祭祀・宮中行事」について、これまで未筆の祭祀がありましたが、本日、一通り完成しました。
天皇陛下は、年間、これだけの祭祀をなされ、私たち国民のために、国の繁栄と世界の安寧の「祈り」を捧げていらっしゃるのですね。ご関心の祭祀があれば、またさらに皇室についてお知りになりたければ、赤字をクリックしてご覧ください。
宮中祭祀
1月1日 四方拝:元旦早朝の神秘な儀式
1月1日 歳旦祭:四方拝に続く陛下の初詣
1月3日 元始祭:天孫降臨と皇位を祝う!
1月4日 奏事始:伊勢からの報告
1月7日 昭和天皇祭:先帝祭として厳かに
1月中頃 歌会始の儀:奥ゆかしき宮中行事
1月30日 孝明天皇例祭:先帝以前三代の例祭の一つ
2月11日 紀元節祭:神武天皇の即位を祝って…
2月17日 祈年祭:五穀豊穣と国民の繁栄を…
2月23日 天長祭:天皇誕生日、かつての天長節
春分の日 春季皇霊祭・春季神殿祭:春分の日の宮中祭祀
4月3日 神武天皇祭・皇霊殿御神楽:皇居と橿原の地にて
6月16日 香淳皇后例祭:昭和天皇の皇后さまを偲んで
6月30日 節折の儀・大祓の儀:陛下と国民のためのお祓いの行事
7月30日 明治天皇例祭:先帝以前三代の例祭の一つ
秋分の日 秋季皇霊祭・秋季神殿祭:秋分の日の宮中祭祀
10月17日 神嘗祭:五穀豊穣を伊勢神宮に向けて感謝
11月23日 新嘗祭:五穀豊穣を宮中にて感謝
12月中旬 神話賢所御神楽:起源は「天の岩戸」神話」
12月25日 大正天皇例祭:先帝以前三代の例祭の一つ
12月31日 節折の儀・大祓の儀:陛下と国民のためのお祓いの行事
(関連サイト)
両陛下ご訪英、確認された日英の深いつながり
天皇、皇后両陛下は、2024年6月、国賓として英国を(公式)訪問されました(22日〜29日)。天皇が国賓として訪英するのは1971年の昭和天皇、98年の明仁上皇に続き26年ぶり3度目となりました。滞在中、天皇陛下とチャールズ国王は、2日英の最高勲章「大勲位菊花章 頸飾(けいしょく) 」と「ガーター勲章」を贈りあわれました。皇室、王室とも代替わりを経たうえでの親善訪問は、日英両国の絆をさらに深める機会となりました。訪英は当初、エリザベス女王の招待を受けて2020年春に予定されていましたが、新型コロナウイルス禍の影響で延期されていました。今年に入りチャールズ国王から改めて招待があったそうです。
今回、両陛下ご訪英において、個人的に関心がでてきたのが、両国君主が贈り合った勲章についてでした。そこで、本HP「レムリア」では、以下の4項目に分けて、日英の栄典制度についてまとめてみました。
佳子さまペルーご訪問 皇室の南米外交を担う秋篠宮家
秋篠宮ご夫妻の次女、佳子さま(佳子内親王/身位は内親王。敬称は殿下)は、2023年11月、日本とペルーの外交関係樹立150周年を記念して、南米のペルーを公式訪問されました。
滞在中は、記念式典で挨拶され、日系人らと交流されたほか、インカ帝国時代の城塞都市遺跡、「空中都市」と呼ばれる世界遺産のマチュピチュ遺跡や、アンデス山脈にある都市クスコを訪問され、インカ帝国時代の太陽神殿コリカンチャなどを視察されました。
佳子さまの外国公式訪問は2019年のオーストリア・ハンガリー以来、4年ぶり2回目となり、また、ペルーは2014年に秋篠宮ご夫妻、19年に長女小室眞子さんが訪れています。
ペルーの国柄、日本や皇室との関係、また、インカ帝国については、以下の投稿記事でまとめています。興味のある方はご一読下さい。
過去10年、秋篠宮家が、ペルーを含む南米の訪問を担っています。秋篠宮ご夫妻は14年にペルーとアルゼンチン、15年にブラジル、17年にはチリをご訪問され、当時の眞子内親王殿下(現小室眞子さん)は、16年にパラグアイ、18年にブラジル、19年にはペルーとボリビアを訪れています。
なぜ、秋篠宮家が南米の国際親善を担っているかについて、「皇室の少子高齢化」の影響が指摘されています。日本から南米までは、長時間のフライトであり、現地での移動も時間がかかります。訪問先は暑いところが多い一方、山間地では気温がぐっと下がるなど過酷な環境の場所が多く、体力が必要なため、若い皇族でなければ、その任に耐えられないと言われています。
こうした背景から、近年、若い秋篠宮家がその役割を担うようになりました。秋篠宮ご夫妻が50代になられた時期からは、最初は眞子内親王殿下、そして、眞子さまご結婚後の現在は佳子さま(佳子内親王殿下)が、南米訪問を任される立場になっている模様です。
<参照>
佳子さまが「エネルギッシュな笑顔」でペルーへ出発 なぜ秋篠宮家が南米の訪問を担うのか (2023/11/02、AERA)
モーゼ・パーク!?に行ってみた
10月23日(月)、仕事で富山に来たので、空いた時間を使って、お隣の石川県の宝達(正確には羽咋郡宝達志水町)まで足を延ばし、「モーゼパーク」を訪れました。このレムリアでも、「日本の神話・伝承」の中で、「モーゼの墓」について紹介しましたが、その時は、聞いたり、調べたりしただけの内容でしたが、実際、フィールドワークして、初めて、日本にある伝承の一つとしてのモーゼ伝説について、自信をもってお伝えできるという気になりました。
さて、宝達山の麓にある「モーゼパーク」のモーゼの墓が、本当にモーゼの墓なのか、どうかとかいうことが問題なのではなく、モーセ伝説を通して、日本という国の懐の深さを感じることができた(異文化でも何でも受け入れてしまう)ことが有意義でした。とくに、モーゼパークもよかったのですが、宝達山そのものが霊山であり、神の山であると思いました。山全体から発せられているオーラのようなものを感じ、まさにパワースポットでした。モーゼパーク内でも「沐浴」できて、リフレッシュできました。また、パーク内のモーゼの墓の場所から見ることができた日本海も美しかったです。
モーゼパークは現在、自治体が管理しているとのことですが、願わくば、公園の整備に予算をもう少し投じていただければ、もっと来訪者が増えると思いました。
翌24日は、「モーゼの墓」の論拠となっている竹内文書と密接な関係のある、御皇城山(呉羽山)の「皇祖皇太神宮」(富山市金屋)に参拝しました。皇祖皇太神宮については、また改めて投稿記事にしてみたいと思います。
モーセ伝説の詳細や竹内文書については既に以下の記事を書いているので読んでみて下さい。
処理水放出をめぐる聞き捨てならぬ中国の日本批判
福島の処理水放出に関して、中国からの言われない政治攻勢がエスカレートしている。かつ、共産党政府によって、「洗脳」された14億の中国国民が、政府の主張を正しいと思い込み、その一部の直情的な中国国民が、日本に対する根拠のない批判とデマを猛烈に沸き上がっている。一人の日本人として、善良な中国の人々に、「事実」を知ってもらいたい。
☆★☆★☆★☆★
国際原子力機関(IAEA)は、福島原発の処理水が「国際安全基準に合致している」という報告書を公表しているにも拘わらず、中国外務省は処理水を「核汚染水」と呼び、「日本政府は国内外の声を無視し、世界の海洋環境と人類の健康を損なうリスクを無視し、放出計画を頑なに進めている」と批判した。また、それ以前にも、中国の報道官は「一方的に福島原発事故の汚染水を海洋放出すると日本が決定したことは、無責任の極みであり、国際社会の公共の健康と安全や周辺諸国の人々の切実な利益を損ねる」と発言した。
- 処理水と汚染水は違う!
中国は、日本が放出する処理水を「核汚染水」と呼んでいるが、「汚染水」と「処理水」は科学的に違う。原発事故により、高濃度の放射性物質を含んだ『汚染水』が発生したが、その汚染水の放射性物質の濃度を低減する浄化処理を行ったものを『処理水』と呼ぶ。ただし、完全に浄化しきれない放射性物質がトリチウムといわれる物質で、海水で大幅に希釈し、国の定めた安全基準を満たす状態に薄めてから放出される。中国の首相は、G20サミットの場で「核汚染水」と言ったが、この違いをわかっているのかと国際社会ではその常識の有無を疑われるかもしれない。
- 中国が原発から垂れ流す大量の放射性物質
中国は、日本の処理水放出を、「無責任」とか、「世界の海洋環境と人類の健康を損なうリスクを無視している」とか批判するが、中国もまた、原子力施設から出るトリチウムを含んだ水を海洋などに放出していることを、中国14億人のうち何人が知られているのだろうか?しかも、日本は年間最大22兆ベクレルのトリチウムを含んだ処理水を海洋放出していく計画だが、中国では2021年だけで東シナ海に面した秦山原発(浙江省)が218兆ベクレルのトリチウムを海洋放出。福建省の寧徳原発は約102兆ベクレル、南シナ海に面した広東省・陽江原発は約112兆ベクレルを放出しているとされる。しかも、近隣諸国への通告はなされていない。
これは、読売新聞が6月23日、「中国の複数原発がトリチウム放出、福島「処理水」の最大6.5倍……周辺国に説明なしか」と報じたのだが、記事によれば、日本が海洋放出を決定する以前から、国内の4つの原発が日本の年間放出予定量の約4〜7倍のトリチウムを含んだ処理水を、近隣国に説明も承諾も得ずに放出していたという。
先に紹介した中国外務省と報道官の発言をそのまま中国にお返しすれば、「中国政府は国内外に知らせることなく、世界の海洋環境と人類の健康を損なうリスクを無視し、大量の放射性物質を含んだ処理水の放出を行っている」、「中国政府が、一方的に大量の放射性物質を含んだ処理水を海洋放出していることは、無責任の極みであり、国際社会の公共の健康と安全や周辺諸国の人々の切実な利益を損ねる」。
- 日本の水産物に対する輸入禁止措置
また、中国は、福島、宮城、茨城、東京、千葉など日本の10都県からの水産物輸入を禁止しただけでなく、処理水の海洋放出が始まった日には、日本産水産物の全面的な輸入停止に踏み切った。
これに対して言えることは、中国が日本よりはるかに大量のトリチウムを海洋放出しているなら、中国産水産物の全面的な輸入禁止処分を近隣諸国から受けても仕方あるまい。中国の放射性物質にまみれた中国産水産物こそ、規制の対象となるべきである。
今回の記事の中で、中国が大量の放射性物質を含んだ処理水を海洋放出していることを知って、やはり、原発は廃止するべきであるという認識を深めた次第である。
<参考>
<参照>
中国・韓国で沸き上がる日本への根拠ない批判とデマ 一方で中国は日本の20倍の放射性物質放出
(2023.8.7 Newsポストセブン)
中国の原発から福島を大きく上回る放射性物質を含む処理水放出 日本に入ってくる中国産水産物は大丈夫か
(2023.06.29 19:00女性セブン)
迫りくる福島第一原発処理水の海洋放出
近づく福島第一原発の処理水の海洋放出を巡って、大きな議論が巻き起こっている。トリチウムの安全性の問題に加えて、中国や韓国野党の反対意見も根強く、対応を誤れば、被害実態のない「風評被害」によって、東北の農林水産品は打撃を受ける可能性もある。
IAEAからお墨付き
国際原子力機関(IAEA)は2023年7月4日、東京電力福島第一原子力発電所の処理水放出を巡る日本政府の計画について「国際的な安全基準と合致している」との報告書を発表しました。これを受け、政府は8月にも海洋放出を開始する方針です。
政府は2021年、福島第一原発の処理水を海へ放出することを決め、計画の安全性に関する包括的な検証をIAEAに求めていました。今回のIAEAの報告書はこれに対する回答でした。加えて、原子力規制委員会も7月7日付で一連の設備に使用前の検査に「合格」したことを示す終了証を東電に交付した。この結果、政府による放出に向けた安全性の評価作業は全て完了、具体的な放出日程の調整を進める段階に辿り着いた。
日本のメディアは総じて、事故処理を進めざるを得ない状況がある以上、海洋放出を容認する以外の選択肢がないとして、処理水(処理済み汚染水)の海洋放出を進めるのはやむを得ないと肯定的な立場である。
処理水放出計画の内容
処理水(処理済み汚染水)は、福島第一原発にたまった水から、トリチウム以外の放射性物質(ストロンチウムやセシウムなど)を除去している。このトリチウムは自然界にも存在し、基準値以下に濃度を薄めて海に放出することは国際的に認められている。実際に海外の原発でも行われており、日本政府と東電は、海水で希釈してから海底トンネルを通じて沖合に放出することにしている。
具体的には、まず、ALPSと名付けられた多核種除去設備を使い、ストロンチウムやセシウムといった放射性物質の大半を国の規制基準を下回るまで取り除く。技術的に除去が難しいトリチウムの残った処理済みの汚染水は、約2か月かけて、放射性物質が十分に除去されているか確認する工程も設けられている。
そのうえで、処理済み汚染水を希釈施設に移し、この施設では、海水で処理済み汚染水を100倍に薄める。これにより、トリチウムの濃度を1リットルあたり1500ベクレル未満に下げる。この濃度は、世界保健機関(WHO)が定めている飲料水の基準の7分の1程度という。そして、海底トンネルを通じて沖合1キロメートルの海面下12メートル地点に設けた放出口から処理済み汚染水を投棄する。
最後に、処理済み汚染水の放出量にも上限を設けており、1日あたりの最大放出量は500立方メートルに定められている。年換算で、トリチウムの放出量を22兆ベクレル未満に設定してある。濃度を国の規制基準の40分の1、世界保健機関(WHO)の飲料水基準の7分の1に希釈した上で流す計画だ。放出後には海水と混じり、さらに薄まっていく。加えて、放出口の周辺に設置したモニタリングポイントで、海水に含まれるトリチウム濃度を計測し続ける仕組みも構築しているという。
処理水放出の経緯
福島第一原発では原子力事故の結果、1~3号機の原子炉内にある燃料デブリの冷却に使った汚染水のほか、阿武隈山地の地下水脈から流れ込む大量の地下水の汚染もあり、大量の汚染水の発生が続いました。事故から2年あまりが経過した2013年夏、当時の安倍晋三総理は、東電任せにしていた対応を見直し、「国が対応していく」と方針転換を表明した。
ところが、政府が打ち出した具体策は、原発周辺への地下水の流入を防ぐ「凍土遮水壁」を建設するというものだった。建設には巨額の国費が投入されたものの、その効果は十分な検証が行われないままとなっている。結果として、原発の敷地内に設置された1000を超すタンクに汚染水が貯蔵されてきたが、来年中にも貯蔵容量が満杯になるとされている。その処理費用は膨らみ、2019年春に公表された専門家の試算によると、福島第一原発事故の処理に必要な「廃炉・汚染水処理」の費用は51兆円と、その2年前の試算に比べて約20兆円膨張していたことが明らかになった。
そうした中で、凍土壁に代わって、増え続ける汚染水の処理策の切り札として浮上したのが、処理済みの汚染水を希釈して海洋に放出する策だった。
トリチウムの安全性
処理水に含まれるトリチウムは、自然界にも存在し、通常の原発稼働の際にも排出されるものだ。トリチウムの除去は技術的に難しく、海外でも基準値以下に薄めてから海洋や大気中に放出しており、国際的に認められている。実際、処理水水準のごく微量であれば、人体に影響を与えないことで知られている。今回放出される予定の処理水による放射線影響は、自然界で人間が1年間に受ける放射線量2.1ミリシーベルトの10万分の1未満でしかないレベルに薄めたもので、健康への影響はないとされる。
しかし、トリチウムの影響について、政府は「水と同じ性質を持つため、人や生物への濃縮は確認されていない」とも言っているが、次のような内部被ばくのリスクを問題視する専門家も多い。
- トリチウムの半減期は3年で、リスクが相当低くなるまでに100年以上かかる。体内に取り込まれたトリチウムが半分になるまでには10日程度かかるという。しかし、トリチウムが有機化合物中の水素と置き換わり、食物を通して、有機結合型トリチウムなど人体を構成する物質と置き換わったときには体内にとどまる期間が長くなり、近くの細胞に影響を与える。
- 放つエネルギーは非常に低いものの、トリチウムが、体内に存在する間に、DNAを構成する水素と置き換わった場合には被ばくの影響が強くなったり、トリチウムがヘリウムに壊変したときにDNAが破損する(遺伝子を傷つけ続ける)恐れがある
また、他の放射性核種が残存するという問題も指摘されている。タンク水(トリチウム水)89万トンのうち8割強である約75万トンについて、トリチウム以外ににも、残存している主たる核種は、ストロンチウム90、セシウム137、セシウム134、コバルト60、アンチモン125、ルテニウム106、ヨウ素129、テクネチウム99などの核種が残存している。
2018年8月の東電の発表では、トリチウム水に基準を超える(告示濃度比総和で1を上回る)ストロンチウム90やヨウ素129などの放射性核種が含まれていることが発覚した。告示濃度比が最も高かったのはストロンチウム90で最大19,909倍だったという。ヨウ素129(I-129)、ルテニウム106(Ru-106)、テクネチウム99(Tc-99)なども基準値を超えていたと報じられた。東電は海洋放出する場合は二次処理を行い、これらの放射線核種も基準以下にするとしているが、「二次処理」を行ったとしても、放射性物質は残留する。「二次処理」の効果や、残留する放射性物質の最新の総量を示されなければならない。
そもそも、トリチウムの除去は技術的に難しいとして、トリチウムを分離させるという選択肢はないとしているが、実際にトリチウム分離はアメリカなどで行われており、トリチウム分離技術は存在しているらしい。
こうした背景もあってか、今回の日本の処理水放出について、近隣諸国から反対の声が上がっているが、それはそれでまた別の視点から考えなければならない。
執拗に反対する中国
中国政府は、「(日本は)国際社会と十分な協議をしていない。身勝手で傲慢だ」、「日本は核汚染水の放出計画の強行をやめ、責任ある方法で処理するよう改めて強く求める」などと日本政府の計画を批判しただけでなく、「国民の健康と食品の安全を確保するため、海洋環境の監視や輸入水産品などの検査を強化する」と述べ、日本からの農水産物の輸入検査を強化する構えを見せた。
さらに、中国外務省は、国際原子力機関(IAEA)に対しても、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を認めないよう要求し、「核汚染水を海に流すという日本の間違った行為を支持してはいけない」、「核汚染のリスクを世界に転嫁するのは不道徳であり違法だ」とコメントしている。加えて、中国国営メディアも、IAEAの報告書が汚染水を海洋に放出する「許可証」であってはならないと反対の立場を強調した。
こうした度が過ぎた中国の非科学的な批判の繰り返しは、処理水問題を政治利用し、日本のクレディビリティ(信頼性)を貶めようとしている中国の政治的意図がありありと伺える。
それどころか、中国は、自国のトリチウムを含む排水の海洋への大量放出の事実を棚上げして、日本批判を続けていることを国際社会は知るべきであろう。経済産業省によると、秦山第3原発では2021年のトリチウムの海洋放出が143兆ベクレルと、福島第一原発の年間計画22兆ベクレル未満に対して6.5倍のトリチウムを放出している。ほかにも、陽江原発は5倍、紅沿河原発は4倍(90兆ベクレル)である。
このように、中国は、機会があれば日本の弱体化を図ろうとする反日国家と言わざるをえない。「人に厳しく、己に甘い」姿勢は、放出反対のトーンを上げれば上げるほど国際社会の嘲笑の的になる。
原発処理水と地球環境
トリチウムの海洋放出に関しては、中国以外の国をみても、韓国では月城原発が3.2倍、古里原発が2.2倍と試算されている。欧米では、フランスのラ・アーグ再処理施設が454.5倍、カナダのブルースA、B原発は54倍、英国のヘイシャム2原発は14.7倍とけた違いに数字がさらに跳ね上がる。
こうしてみると、原発というのは、地球環境の観点からいえば、ないことに越したことはない。健康に問題ないといっても、海を汚染し続けることは間違いないからだ。原発事故によって生まれた東北の農林水産品に対する「風評被害」という負の連鎖を完全に断ち切るためにも、改めて原発ゼロを問いたい。
<参照>
日本の「処理済み汚染水」海洋放出に猛反発する中国の「ヤバすぎる矛盾」…国際世論が知らない「中国の真実」
(2023.07.11、現代ビジネス)
原発処理水の海洋放出、国際基準に合致とIAEA 岸田首相に報告書
(7月4日 ロイター)
トリチウム放出量、中国では福島第1の6・5倍の原発も 欧米は桁違い
(2023/7/4 産経新聞)
「通常時、韓国は福島第一原発より14倍多いトリチウムを放出」復興副大臣の激しい義憤
(2023.3.9 Diamond Online)
東電が汚染水を海に流してはいけない4つの理由
(2019-07-23 グリーンピース)












