外国人の土地取得問題についての提言
WTOの「内国民待遇」の原則を「安全保障例外」の適用で乗り越える。
憲法解釈の変更で、財産権の「留保」に「安全保障」条項を加える。
重要土地利用規制法と、対日外国投資委員会(日本版CFIUS)による外資規制、さらに外国人土地法の運用で、中国人など外国人による安全保障上重要な土地の取得を直接規制する。
日本版コラー法の制定と、不動産登記時に「実質的支配者」の開示義務を定める不動産登記法の改正で、中国人など外国人による都市部の不動産や地方のリゾート地の買収を規制する。
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自衛隊基地、米軍基地などの防衛施設や原発、国境離島などの安全保障上重要な土地周辺から、水源地、都心の超一等地や、リゾート地といった日本の不動産が、中国を筆頭とした外国人投資家や資産家に買収され続けており、国土保全や安全保障の観点から問題視されている。
◆ 現状認識①
高まる安全保障上のリスク
外資による安全保障上重要な土地や施設の買収によって、国富の流出や、防衛・監視機能など安全保障への影響、さらには、国境付近の領土の実質的支配、さらに「外国人自治区」のようなエリアが生まれる可能性もでてくる。
こうした実態(事実)になってしまう最大の要因は、日本では、諸外国とは異なり、外国人が自由に日本の土地を売買でき、売却時や相続時の規制が不足していることである。日本には、外国資本による不動産売買を規制するルールがないから、外国資本は〝合法的〟に土地を取得していることになる。
それゆえ、敵対国(反日国)政府の「意図」を受けた、直接的・間接的買収となると、極めて深刻な安全保障の問題と化す。この場合は、「経済侵攻」、「武器を持たない戦争」とも呼ばれる様相を呈する。
外資の土地取得に対する規制法の実情
日本にも、安全保障の観点から、外資の土地取得を規制する法律は存在するが欠陥が多い。
外為法27条
外国人による「株式取得」「事業譲渡」「経営支配」を審査することができるが、土地単体の売買は「投資」ではなく「物権行為」なので対象外となってしまう。
重要土地利用規制法(重要土地等調査法)
外為法で網羅していない「純粋な土地の売買や利用」に対応するために2021年制定された。防衛関係施設(自衛隊基地など)の周辺や国境離島を「注視区域」に指定し、購入者の国籍に関わらず土地の利用状況を調査するもので、土地購入者に国籍など事前届出を義務付け、安全保障を脅かす不適切な利用(電波妨害など)があれば、国が利用の中止を勧告・命令できる。
現状、重要土地等調査法は、日本で土地に直接介入できる唯一の規制法であるが、これは「利用調査」であり、規制権限は勧告・命令止まりで限定的で、外国資本の土地購入そのものを制限していない。
改正外為法
対日外国投資委員会(日本版CFIUS)
政府は、2026年5月、外為法27条の改正と、アメリカの*対米外国投資委員会(CFIUS)をモデルにした、「対日外国投資委員会(日本版CFIUS)」(略称: JFIC(ジェイフィック))を新たに導入した。
「日本版CFIUS」は、安全保障上のリスクが高い投資について、計画の中止や変更を勧告・命令できる権限を持ち、安全保障を脅かす恐れのある外国資本による日本企業の買収や、経済安全保障の観点から重要な先端技術や機微情報の流出を水際で防止しする。
日本版CFIUSの創設で、「日本企業を通じた間接的な土地取得」や「特定の産業への投資」は厳しく制限・抑止できるようになるが、「日本版CFIUS」だけで、外国資本による「土地の取得」そのものを直接制限することはできない。。
この制度は、あくまで「外資による日本企業への投資や買収」を審査する仕組みである。そのため、企業のM&A(株式取得)や技術流出は厳しく審査されるが、外国人が「個人や海外法人として単に日本の不動産を買う行為」(「土地の取得」)は、原則として事前審査・制限の対象外(事後報告のみなど)になってしまう。
なお、米国の本家CFIUSは、日本版CFIUSとは異なり、土地そのものの取引を直接審査・阻止できる。
WTO規定と憲法の壁
日本が土地取得そのものを直接制限できない理由は、WTO(世界貿易機関)の規定と、日本国憲法29条(財戦権)にある。
WTOのGATS協定
日本も加盟している世界貿易機関(WTO)のGATS協定(サービス貿易に関する一般協定)には、外国人を差別しない「内国民待遇(内外無差別)(外国人を差別しないルール))」の原則がある。
米国やスイス、韓国などはこの協定を結ぶ際に「外国人への不動産規制」を例外として留保していたが、日本は加盟時に土地取得を規制する留保条項を入れずに署名した。そのため、今から「外国人だけ」をターゲットにした購入禁止法(国籍を限定した法規制)を作ることは国際法違反になるリスクが高く、政府も慎重になっている。
財産権と「公共の福祉」
日本では憲法29条によって、日本人、外国人を問わず財産権が保障されているため、外国人の土地売買を制限すると、財産権の侵害につながる可能性があるとみなされてきた。
同条には、「公共の福祉」による財産権の制限(留保)を定めることができるが、「安全保障」を取り入れておらず、安全保障を理由に個人の売買を止めることには慎重な姿勢を維持している。
また、日本は戦後一貫して「外資を呼び込んで経済成長する」という方針(対内直接投資の促進)をとってきたため、国籍だけを理由に一律で財産権を制限することを躊躇している。
なお、日本には、大正時代の1925年に制定された、外国人土地法という法律が今もあって、外国人による日本の土地購入を直接制限できる。しかし、この法律も、WTOの内国民待遇に抵触すると解されていることが一因となって、この法律は長く運用されていない。
安全保障上の脅威を防ぐための対策
「安全保障例外」の適用
しかし、日本でも、WTOの「内国民待遇の原則」があったとしても、安全保障の観点から、日本が外国人の土地取得を直接規制できる方法はある。
それは、同じWTOの「内国民待遇」の例外規定である「安全保障例外」を適用すれば、外国人による軍事基地の周辺や主要港湾などの「安全保障上リスクがある場所」の土地取得に対して、差し止めや売却など制限(規制)をかけることができる。
法律論においても、日本でWTO協定の「安全保障例外」を使って外資の土地取得を直接禁止する法律を作ることは可能と解されている。そのため、政府は「安全保障例外を適用させるのは、自国の安全保障(軍事基地や重要インフラの保護)のために必要不可欠な措置である」と国際社会に毅然として主張していく必要がある。
憲法の解釈変更
憲法29条(財産権)と「公共の福祉」について、憲法解釈の変更は可能である。国家の存立や安全保障(防衛・食料・エネルギーの確保)も「公共の福祉」の最重要要素であり、「安全保障のために私有財産の処分(売買)の自由を一部制限することは合憲である」という法解釈を政府(国)として確立しなければならない。
WTOの安全保障の例外が採用され、財産権の問題を解決できれば、「重要土地等調査法」は、土地取得そのものに規制をかけ、売買そのものを審査し、禁止・中止にできる制限規定を設けることができる。
また、日本版CFIUSも、本家アメリカのCFIUSと同様に、外国からの過剰な投資から自国の不動産を守ることができる。さらには、外国人土地法の厳格適用の道も開ける。
◆ 現状認識②
都市部やリゾート地の不動産価格高騰問題
一方、外国人の不動産投資は、防衛施設や重要施設など安全保障に関連する土地以外にも、事業用不動産(オフィス・ホテル・物流施設)、高級住宅・マンション、などにも向かい、とりわけ、東京を中心とした都市部の不動産買収と、これにともなう不動産価格の高騰は看過できない状況である。
さらに、海外資本が短期の転売行っていることも、価格高騰に拍車をかけているとされ、一般の会社員や若い世代が都心部に住むことが難しくなっている現状は、大きな社会問題となっている。
また、地方においても、北海道のニセコや長野県の白馬を代表とするリゾート地の買収も懸案となっている。海外資本がリゾート地の別荘やマンションを買い占めた結果、地価や物価が急騰し、地元住民が住み続けられなくなったり、日本人の転入者が急減したりする問題のへの対応も急がれる。
海外マネーが日本のこうした不動産に集中する理由は、やはり、多くの国が外国人の不動産取得を制限するなか、日本は外国人でも日本人と全く同条件で土地の所有権を取得・保有できるという世界的に規制が緩いからである。
無防備な一般不動産への投資規制
それかかわらず、政府は2026年6月、タワーマンションをはじめとする一般不動産について、外国人を対象とした取得規制の導入を当面見送ると発表した。外国人個人を規制しても、日本国内に設立したペーパーカンパニー(法人)や、日本人の代理人を経由して(日本人の名義人(フロント企業)を挟んで)購入された場合、対応できないというのが理由だ。
これらの問題について、政府は現状、誰がどこをどの程度取得しているのかというデータの集積や実態解明を優先する方針をとっている。
登記時の「国籍登録」義務化
2026年10月、不動産登記法の改正(施行)で、不動産取得後、不動産登記を行う際、国籍登録(個人の場合は国籍、法人の場合は役員や主要株主の国籍などの申告)を義務づける運用が開始された。
これにより、国内企業を「隠れみの」にした外資による土地買収の実態を一元管理できるようになったが、土地を購入する法人の「実質的支配者(UBO)」(背後にいる株主や外国政府の存在)を見破ることはできない。
不動産登記制度の改革
そこで、この問題に対応するためには、土地を購入する法人の「実質的支配者」を取引時や登記時に開示・報告することを義務付ける制度の構築が必要となる。これにより、マネーロンダリング対策(AML)と連動して、ダミー会社を使った土地買収をあぶり出すことが可能になりうる。
すでに、土地を購入する法人の実質的支配者(UBO)を「取引時」に開示・報告(確認)することはすでに義務化されているが、「不動産登記時」に直接開示する(不動産登記簿そのものに実質的支配者を直接書かせる)ことを義務付ける制度は存在していない。
不動産登記時の開示の方が、たとえば、土地購入後、転売によって、法人の支配者が変わった際にも「今現在、誰がその土地を支配しているか」を追跡しやすくなるなど、外国人の過剰な土地購入を抑制するためには効果が高い。
そこで、不動産登記時に「実質的支配者」の開示義務を定める法整備が求められる。ただし、「不動産登記時」開示をもってしても、外国人や外国資本による土地所有そのものを防ぐわけではなく、外国人の土地保有の際に抜け穴を塞ぎ、「外国人の土地取得を制限する」抑止力を持ちうるだけである。
日本版コラー法の実現へ
諸外国に目を向ければ、土地の過剰外国化を阻止するために、スイスのコラー法のように、外国の法律には、「居住環境の保護」を目的とした以下のような規定がある。
管轄当局から事前の購入許可取得の義務付け
物件面積や年間許可件数(クォータ)の制限
外国人所有割合の制限
外国人に対する高額な税金の徴収
しかし、日本では、「日本版コラー法」のように外国人を名指しして不動産取得を一律に制限する法律をそのまま制定することは難しいとされてきた。
理由は、やはり、日本版CFIUSの場合と同じように、日本国憲法29条(財産権)と、WTOのGATS(サービス貿易に関する一般協定)の国内外の企業や個人を平等に扱わなければならないという「内国民待遇」の制約である。
そのため「国籍情報の提出を必須にし、怪しい取引や安全保障に関わる土地の売買は国籍問わず国がストップをかける」という形の「日本版コラー法」、すなわち、実質的な外資による土地取得規制”に向けた法整備の骨格作りが進んでいる。
しかし、日本も、「WTOの安全保障例外」という国際ルールを活用し、かつ財産権の公共の福祉による留保項目を安全保障関連も組む入れるという憲法解釈を行えば、諸外国並みの「居住環境の保護」を目的とした規制をかけることができる。
◆ 期待される政府の「意思」
このように、日本政府は、外国人の国土買収の規制を、WTO(GATS)の「内国民待遇」や、憲法(財産権)の制約の関係で、簡単には実現できないと主張しているが、政治の意思で可能であり、それをやろうとしないというのが現実である。
本質的な問題は、日本政府と日本人の領土に対する意識が低いことである。外国資本の土地買収を法律で制限していないのは、アジアでは日本だけだという事実がそのことを物語っている。
今のままでは日本の国土はどんどん外国資本に買いまくられてしまう。政府は、外国人の土地買収を安全保障上の問題と危機感を持って、一刻も早い、(外国資本の「攻勢」に耐えうる)外国資本による不動産買収を制限する法整備(規制法制を整備)と、国際標準の土地管理政策を進めなければならない。
他の政策提言については、こちら☞
(投稿日:2026.9.18)



