「学び直しの場」として、「国際法」を学習しています。今回は、前回学んだ、戦時国際法(国際人道法)の内容から、特に戦争犯罪を取り上げます。
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<戦争犯罪の種類>
国際人道法により、国際法に反する戦争犯罪として、「伝統的な戦争犯罪」の概念に加えて、第2次世界大戦以降、「平和に対する罪」、「人道に対する罪」、「ジェノサイド」の4つのカテゴリーが広く認められています(ジェノサイドを人道に対する罪に加える見方もある)。
◆ 伝統的な戦争犯罪
グロチウスの時代から確立していた戦争犯罪で、いわば「戦争のルール」に違反する行為をさします。前述したジュネーブ条約やハーグ陸戦条約(陸戦の法規慣例に関する条約)など戦時国際法が定めた戦闘法規に違反する以下のような行為です。
- 民間人に対する攻撃
非闘員である市民(救命隊員も含む)に対する殺戮・追放・逮捕・虐待行為だけでなく、市民生活の要となる、家屋や学校、病院などの建物、水源や電源施設などのインフラや私船を意図的に標的にしてはなりません。関連して、民間人が避難するための安全な通路や人道支援組織へのアクセスを提供しなければなりません。
- 捕虜に対する非人道的な取扱い
捕虜、投降した兵士、敵の負傷して戦えなくなった兵士・負傷者・病人を、殺傷・虐待してはなりません。彼らは、医療、手当、食糧、水、住居など、必要な援助を受ける権利があります。
- 禁止された武器の使用
「戦争で使用される戦術と武器は、最終的な軍事目標を達成するために、相応かつ必要なものでなければならない」という考え方から、無差別攻撃を目的とした兵器や、悲惨な被害を及ぼす兵器の使用は禁止されます。この中には、核兵器は言うまでもなく、毒ガスなどの化学兵器・生物兵器、対人地雷などが含まれます。
◆ 平和に対する罪
平和に対する罪(侵略犯罪ともいう)とは、国際法(国連憲章)に明白に違反し、不法に戦争を起こす意思決定に関わる行為のことをいい、侵略戦争(侵略の目的で武力を行使して争う戦争)を準備・開始したことに対する責任が問われます。
東京裁判で、戦争犯罪人とされ、A級戦犯と呼ばれた軍人らは、平和に対する罪(a項)に問われました。なお、厳密に言えば、国際法上、侵略戦争という言葉はこの時に生まれました。
◆ 人道に対する罪
人道に対する罪は、戦時中、国家や集団が、故意に、広範で組織的な形で行う一般民衆に対する殺人や強姦、迫害、強制移住などの犯罪行為のことをいいます。ジェノサイド(集団虐殺)も、このカテゴリーに含まれると解されますが、ジェノサイドを独立的に取り上げて、戦争犯罪を4種類に分類する場合もあります。
◆ ジェノサイド(集団殺戮・集団虐殺)
ジェノサイド(集団殺害)とは、「国民的、民族的、人種的または宗教的集団を、絶滅または破壊する意図をもって、その集団を構成する人々を殺害すること」と定義される究極の戦争犯罪です。
「ジェノサイド」という言葉が生まれるきっかけとなったのは、1930年代、ナチスドイツによるユダヤ人へのホロコースト(大量虐殺)で、1945年のニュルンベルク国際軍事裁判では、「人道に対する罪」として告発されました。その起訴状において、初めて「ジェノサイド」という言葉が使われました。
「人道に対する罪」との違いは、ジェノサイドは「集団」が対象であるのに対して、「人道に対する罪」の対象は「個人」である点や、殺害目的に関して、ジェノサイドは「特定の集団の破壊や絶滅」という目的意識がありますが、「人道に対する罪」においてはそれがないことなどがあげられます。
国際法上、「ジェノサイド」と認定するには、特定の集団そのものの破壊を意図しているという証拠が必要となるため、国連がジェノサイドと認定した事例は少なく、ナチス・ドイツによるホロコースト以降、アフリカ東部ルワンダのツチ系住民虐殺と、旧ユーゴスラビアのイスラム系ボスニア人に対する民族浄化の2件だけです。
ルワンダ・ツチ系住民虐殺
部族対立が続いた東アフリカのルワンダで、1994年4月にルワンダと隣国ブルンジの大統領が暗殺されたことに端を発し、フツ系の政府とそれに同調するフツ過激派によって、多数のツチ系住民などが、100日間で80万人を殺害されました。
ルワンダ虐殺については、責任者を訴追するルワンダ国際戦犯法廷が国連安保理決議によって設置され、ジェノサイドと認定されました。この時、複数の軍幹部が人道に対する罪などで有罪となり、無期懲役の判決も出されました。
旧ユーゴスラビア内戦の民族浄化
1990年代初頭、旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で、セルビア人が、イスラム教のボスニア人に対して民族浄化(エスニック・クレンジング)と称してジェノサイド(集団殺戮)を行いました。この時、成人男性と少年8000人を計画的に処刑したとされています。
国際司法裁判所は、1995年7月から始まったボスニアのセルビア人武装勢力による「スレブレニツァの虐殺」をジェノサイド(集団殺害)と認定しました。
ジェノサイド疑惑
現在、中国政府による新疆ウイグル自治区に住むイスラム教少数民族であるウイグル族に対する虐殺行為や、ミャンマーでのイスラム教少数民族・ロヒンギャへの虐殺行為などが、ジェノサイドではないと懸念されています。
<懸案の戦争犯罪>
米軍による無差別空爆・原爆投下
第二次世界大戦中、米軍が日本に行った東京大空襲など無差別都市爆撃や、広島・長崎への原子爆弾投下などは、国際法に照らしてみれば、戦争犯罪であることは明白ですが、戦勝国であるアメリカが裁かれることはなく、責任者も処罰されていません。
ロシアによるウクライナ侵攻
ロシア軍によるウクライナ民間人の殺害、建物・病院・学校への砲撃、ウクライナ人のロシアへの強制移送という行為が、伝統的な戦争犯罪だけでなく、ウクライナ人に対する大量殺戮は「人道に対する罪」、さらには「ジェノサイド」にも当たる可能性が指摘されています。
加えて、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻そのものも、侵略戦争という概念からも戦争犯罪(平和に対する罪)であるとの見方も多くあります。
プーチン大統領とネタニヤフ首相への逮捕状
国際刑事裁判所(ICC)は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相について、(伝統的)戦争犯罪や人道に対する罪の疑いで逮捕状を発付していますが、現時点で裁判による有罪判決(戦争犯罪者としての確定)は下されていません。
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ侵攻にともない、ウクライナ占領地からの児童の不法連去や移送に関与した戦争犯罪の疑いで、2023年3月に、逮捕状が出されました。
イスラエルのネタニヤフ首相は、イスラエル・パレスチナ紛争において、パレスチナ自治区ガザでの戦闘を巡り、住民を飢餓状態に追い込むなどの戦争犯罪や人道に対する罪の疑いで、2024年11月に、逮捕状が出されました。
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(投稿日:2026/10/22)



