国家領域:領海、EEZ、大陸棚から領空まで

 

「学び直しの場」として、「国際法」を学習しています。今回のテーマは、前回学んだ「国家成立の三要件」の一つであった空間秩序としての国家領域です。とりわけ海洋(海域)と空域の理解が求められます。

 

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国家領域 (空間秩序)は、領土・領海・領空に分けられ、それぞれ国家主権の及ぶ土地・海域・空域をいいます。

 

<海域(海洋)>

 

◆ 領海

 

領海とは、原則として*基線(通常は海岸の低潮線)から、最大12*海里(約22.2km)までの範囲で国家が設定した水域で、沿岸国の所有となります。

 

☞基線

領海基線とも呼ばれ、通常、海岸の低潮線から領海の幅は測定される。

 

☞カイリ(海里)

1海里=1852メートル

 

なお、領海は内水を含みません。内水とは、基線の陸地側にある海域(陸地に囲まれた内海や湾、河川などの水域)をいい、領海は基線の外側の12海里までの海域に当たります。

 

領海内では、その国の主権が及ぶので、例えば、外国の漁船がその国の許可なくして魚をとることは禁じられています。

 

しかし、沿岸国は、自国領海において他国船舶の無害通航を受け入れなければなりません。無害通航の「無害」とは、「沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない」という意味で、逆に無害でない場合とは次のような場合です。

 

① 武力による威嚇または武力の行使によって、その国の主権や領土などを脅かす行為

② 兵器を用いる訓練または演習

③ 沿岸国の防衛または安全を害することとなるような情報の収集を目的とする行為など

 

なお、軍艦に無害通航権が認められるかどうかについて、明文化した条約はなく各国の決定に委ねられています。近年、「日本の尖閣諸島沖で、中国海警局の船舶が日本の領海に侵入し航行した」というニュースが度々流れますが、これは、中国公船が無害通航ではない領海内通航をした(これを領海侵入または領海侵犯と呼ぶ)と判断しているのです。

 

3海里から12海里へ

18世紀末から1950年代頃にかけて、イギリスやアメリカをはじめとする世界の主要な海洋国家の多くが「領海は3海里」というルールを採用していました。

 

当時の大砲の最大の射程距離が約3海里だったため、大砲の弾が届く範囲(3海里≒約5.5km)だけを、自国が武力で支配・防衛できる海(領海)として、それより外側はすべての国が自由に航行や漁業を行える「公海」とすることが国際的な慣習になりました。

 

しかし、第二次世界大戦後の1945年、アメリカが自国沿岸の海底資源(石油など)を確保するために「12海里」への拡大に近い宣言を行い、これをきっかけに世界中で領海を広げる動きが加速しました。日本は、1977年に、「領海法」により,領海を12海里に広げました。

 

◆ 排他的経済水域(EEZ)

 

伝統的な国際海洋法(国際慣習法)では、海域は領海と公海の二分を基礎として成立していたのに対して、国連海洋法条約によって、沿岸国は、沿岸から200海里(約370km)の排他的経済水域(EEZ)を設定することができるようになりました。

 

排他的経済水域は、領海を含めて沿岸から、正確には沿岸国の領海基線から、200海里までの海を指します(通常、領海部分を除くので、実質的には188カイリ)。EEZによって公海はこれまでより30%狭くなったと試算されています。

 

200海里水域内において、沿岸国は、水産物や海底鉱物などの天然資源を得る権利(探査・開発・保存・管理のための権利を含む)を保持することができます(生物・非生物資源の探査・開発などの主権権利が沿岸国に与えられる)。

 

従って、ほかの国々は、EEZ内での漁業の自由などの資源利用権を失うことになります。日本のEEZ内であれば、外国の漁船が日本の許可なく漁をすることは禁止され、日本の水域内で漁を行う場合、日本の許可を予め得たうえで、入漁料を支払わなければなりません。

 

逆に、外国が次々に排他的経済水域(EEZ)を宣言したので、それまで、インド洋、大西洋、南太平洋、アフリカ近海の国々の200海里水域で漁をしていた日本の遠洋漁業は大きな打撃を受けました。遠洋漁業の漁業生産量は、かつては漁船漁業全体の40%を占めていましたが、90年以降は約10%まで落ち込んでいます。

 

他国は、EEZ内での漁業の自由などの資源利用権を失いますが、航行権・上空飛行・海底電線などの敷設権といった交通通信権は維持されます。

 

◆ 公海

 

公海とは、どの国からも領有されたり、管理を受けたりする(管轄権を行使される)ことなく、各国が自由に使用できる海域で、各国の領海と200海里水域以外の海のことをいいます。「いずれの国の内水や領海,排他的経済水域、群島水域にも含まれない海洋のすべての部分」とも定義づけられます。

 

公海では、全ての国による利用のために開放されているとする「公海自由の原則」が保障されています。

 

この原則の代表的な事例として、航行や上空飛行、海底電線・海底パイプラインの敷設、人工島その他の設備の建設、漁獲、科学的調査などをあげられます。誰もが自由に船で行き来し、各国の漁船も一定のルールを守りながら魚をとることができるのです。

 

公海自由の原則

公海自由の原則は、オランダの法学者グロティウスの主著「海洋自由論」(1609年刊)によって、理論的に基礎づけられ、「海は人類共通の財産であり、どの国も独占してはならない」という国際慣習法(国際慣行)が長らく世界の基本ルールとなりました。

 

なお、「公海自由の原則」の中で、航行や上空飛行、海底電線・海底パイプラインの敷敷などの「交通・通信の自由」に関しては、公海だけでなく、排他的経済水域(EEZ)においても認めています。

 

公海自由の原則に関して、公海とEEZとの主な違いは、「漁業の自由」が適用されるかどうかということになります。EEZには水産資源保護の観点からも「漁業の自由」は認めれていません。

 

◆ 接続水域

 

接続水域とは、領海の外縁にあり、基線(沿岸)から24海里の範囲で沿岸国が設定する水域のことをいいます(実質的には領海から先の12カイリまで)。

 

どの国の主権下にはない公海上にありますが、接続水域では、沿岸国が関税の確保のため、また密輸入や密入国管理など出入国管理上の取締りなどのため必要な規制を行なうことができます。

 

歴史的にも,船舶の船足が速くなるにつれて,狭い領海内では、密入国者の拘束や密輸の差し押さえが困難になってきたために、沿岸国が、接続水域の設定を関係諸国に認めてもらったことが始まりとされています。

 

ただし、日本では、「中国の公船が領海の一歩手前の接続水域を航行した」と、しばしば報じられることがありますが、接続水域は領海侵入にならないための「緩衝地帯」のような役割を果たしています。

 

◆ 大陸棚

 

大陸棚は、「領海の基線からその外側200海里(約370km)の線までの海底とその下」と定義されています。基線から12海里までは領海なので、大陸棚は、実質的に領海を越える188海里の海底とその下ということになります(言わば、排他的経済水域の海底部分)。。

 

地形的には、陸に引き続く、比較的傾斜が緩やかで概ね水深130~200メートル付近まで続く海底の部分を指し、そこには様々な生物や天然資源が存在しています。

 

大陸棚においては,大陸棚の探査や、その天然資源を開発・採取の優先的な権利(主権的権利)が認められています。

 

また、大陸棚は、地質的および地形的条件などによっては、200海里を超えて延長することができます(これを「延長大陸棚」と呼ぶ)。ただし、延長大陸棚は自国で勝手に設定することはできず、国連海洋法条約に基づいて設置された大陸棚限界委員会(CLCS)に申請をし,勧告を受けなくてはなりません。認められれば、延長大陸棚においても、資源の探査・開発は,他国の資源政策に影響されずに実施することができます。

 

☞大陸棚限界委員会(CLCS)

地質学,地球物理学,または水路学の専門家からなる21名の委員により構成されている。

 

◆ 深海底

 

さらに、大陸棚の外側のすべての海底区域は「深海底」と定義されています。深海底は、国連海洋法条約において、排他的経済水域(EEZ)とともに採択された新たな制度で、深海底とそこの資源は、「人類共同の財産」として、いずれの国も、深海底の主権や権利を主張できません。

 

ただし、アメリカやイギリスは、深海底開発に関する規定を「主権侵害」として反対しています。

 

国連海洋法条約

国連海洋法条約(UNCLOS)は、国際関係の歴史の中で発展してきた海洋に関する慣習法を法典化したもので、領海から深海底まで、海におけるすべての活動を規制・管理する枠組みであることから、別名「海の憲法」とも呼ばれています。

 

1950年代後半から、条約制定に向けて話し合いが行われ、1982年に、海洋に関する権利・義務などを包括的に規定した多国間条約である国連海洋法条約(「海洋法に関する国際連合条約」)が採択されました。批准手続きに時間がかかったが、1994年11月に発効しました。日本は 1996年6月に批准し、7月20日の海の日から発効となりました。

 

 

<空域>

 

◆ 領空

 

領空とは、国家が領有している領土または領海の上空のことをいいます。領空は、領土に等しく国家主権が及ぶ領域です。20世紀に入り、飛行機の発明と航空技術の発展によって、国家主権と上空の権利の問題が顕在化したことを受けて、1919年のパリ国際航空条約や1944年のシカゴ条約において、領土及び領海上の空域はその国の主権が及ぶとする領空主権が確認されました。

 

外国の航空機は、無害通航権は認められておらず、領域国の許可なしに、その領空を自由に飛行したり,着陸したりすることは、領空侵犯となり、国際法上認められていません。

 

過去には、アメリカの高性能偵察機U2型機が情報収集のため高高度でソ連の領空に侵入し、ウラル山脈上空でソ連によって撃墜された事件(1960年5月のU-2撃墜事件)や、サハリン沖上空で,大韓航空機がソ連上空の領空を侵犯したとして、ソ連軍機に撃墜された事件(1983年9月の大韓航空機撃墜事件)などが発生しています。

 

そこで、領空侵犯を防ぐために、多くの国では、領土から12カイリ(約22㎞)の 領空の外周に、*防空識別圏(ADIZ)と呼ばれる空域を定めています。

 

このように、領空には、領海と異なり、一般的に他国の航空機による無害通航権は認められていませんが、これでは国際交通上非常に不便を来たすので,今日では,国家が2国間または多数国間の条約を結んで,相互に領空の無害航行を認め合うことが一般化しています。

 

一方、領空は領土または領海の上空と規定されていても、近年の超高空飛行の発達、人工衛星が実用化、宇宙開発の進展を受けて、領空に対する主権が無限の高度に及ぶとは考えられていません。一般的には人工衛星の最低軌道が領空の限界とされています。

 

宇宙空間については、1967年の宇宙条約において、宇宙は特定の国家の主権に服さない自由な国際的空間とされ、宇宙空間における国家の領有権は認められていません。

 

◆ 防空識別圏

 

防空識別圏(ADIZ)とは、領空侵犯を防ぐために、各国が領土から12カイリ(約22㎞)の 領空の外周に定めている空域(空の防衛圏)で、事前申告のない航空機が、防空識別圏に進入した場合,管制官は相手の所属の確認,警告,さらには、戦闘機によるスクランブル(緊急発進)の措置が講じられます。

 

ADIZ(英称の頭文字から「アディズ」や「エイディズ」とも呼ばれる)が設定された背景には、他国機が領海上空の領空を侵犯してから領土上空に到達するまで、旅客機でも1分強、超音速機であれば数十秒あれば可能となる中、領空侵犯を確認してから対処するのでは、自国の安全を保障できないという認識が広がったことにあります。

 

領空と防空識別圏は、領海に対する接続水域の関係に近いと言えますが、防空識別圏(ADIZ)は領空のように国際法で一律に定められたものではなく、各国が独自に設定しているものです。

 

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(投稿日:2026/10/22)

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