「学び直しの場」として、「国際法」を学習しています。今回のテーマは、国際法の法源(国際法の種類)です。国際法と言っても、憲法や民法のような「国際法」という名の法律があるわけではなく、いろいろな視点から分類されます。
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◆ 国際法の法源とは?
国際法の法源とは、国際法がどのような形式や根拠に基づいて成立し、法的拘束力を持つとされるか、その発生の基礎(源)となる「法の存在形式や根拠」のことをいい、伝統的には、条約、慣習国際法、*法の一般原則に分類されます。
☞法の一般原則
「信義誠実の原則」や「法の下の平等」、「一事不再理」など、主要な法体系(国内法など)に共通して認められる法理の原則で条約や慣習法に規定がない場合の補完的な役割を果たす。
国際法の種類
国際公法と国際私法
国際法は、大きく国際公法と国際私法に分けられ、一般的に「国際法」と言う場合、国際公法を指します。
☞国際公法:国家間の関係や国家と国際機関の関係に適用される法
☞国際私法:貿易取引など国際的な企業活動や国際結婚など生活関係に適用される法
条約国際法と国際慣習法
その国際公法は、成文法である条約国際法と、不文法の国際慣習法に分類することができます(後に詳説)。
☞成文法:文書によって合意が明示されている法規(条約国際法)
☞不文法:国家間の暗黙の合意(国際慣習法)
二国間条約と多国間条約
さらに条約国際法には、二国間の合意で形成される二国間条約と、複数の国家で合意される多数国間条約があります。二国間条約と多国間条約は、それぞれ個別条約と一般条約とも呼ばれます。
☞個別条約:2国間の取り決めた条約(二国間条約)
☞一般条約:多数の国家が参加する普遍的な条約(多国間条約)
戦時国際法と平時国際法
一方、国際公法は、別の視点から、戦時国際法と平時国際法という分類もなされます。
戦時国際法は、戦争状態を前提とし、戦争の開始、占領、交戦法規(戦闘行為や戦争犠牲者の待遇など交戦国間を規律)などに関する国際法規のことで、開戦に関する条約やハーグ陸戦条約など交戦国間の関係を定めた条約をいいます(後に詳説)。
平時国際法は、外交使節や国際紛争の解決など平時に諸国間の関係を規律する国際法規で、さらに細かく人権条約、軍縮・軍備管理条約、法典化条約などに分けられる、戦時以外の国際法と言えます。
☞人権条約:国際人権規約、ジェノサイド条約など
☞軍縮・軍備管理条約:戦略兵器削減条約、包括的核実験禁止条約など
☞法典化条約:分野ごとに法典化した条約で、国連海洋法条約や外交官特権に関するウィーン条約などがある。
では、これらの国際法になかで、慣習国際法、条約国際法、戦時国際法について、詳細に解説します。
◆ 慣習国際法(国際慣習法)
慣習国際法は、明文になっていなくとも、一定期間、国際社会において一般的慣行として守られてきた国家間の暗黙の合意のことで、多数の国家間の共通の慣行が、法的確信をもって行われるときに成立します。条約国際法より先に確立していました。
例えば、国際慣習法上、「他国の主権を尊重し侵害してはならない義務がある」、「国外にいる自国民を保護する権利がある」といった内容は不文律のルールです。また、「外交特権」や、「公海自由の原則」も長く定着していた慣習国際法でした。
ただし、時代の進展とともに、国際慣習法が条約化されるケースも増えてきており、外交特権は「外交関係に関するウィーン条約」で、公海自由の原則は「国連海洋法条約」でそれぞれ明文化されています。
(詳細)外交特権
外交特権とは、外交官などが駐在している国でもつ特権・免除のことで、その国で逮捕されたり、裁判にかけられたりすることはなく、税金も所得税やガソリン税など大半を払わなくてもいいという治外法権 (裁判権,警察権,課税権からの免除)や、私人が大使館に侵入しないよう警護などの措置が講じられる不可侵権 (公館,住居,身体,文書,通信などの不可侵)などがあります。
私たちの日常生活で身近に知っている外交特権に、外交官車両についての特権が知られています。しかし、外交官車両(いわゆる「青ナンバー」車両)であれば、どこに駐車しても駐車違反にならないというのではありません。駐車違反は駐車違反なのですが、一般人であれば、違反金の未納を続ければ財産の差し押さえなど強制執行を受けるおそれがありますが、大使館などで働く外交官は、強制執行の対象にならないという外交特権があるのです。
近年は、各国外交官が駐車違反をしても違反金を払わないという事案が問題視されています。各国の外交官車両による駐車違反件数と、駐車違反金を支払わずに5年の消滅時効を迎えた「踏み倒し」の件数(2024年)で、断トツはロシア(1,583件)で、次にエジプト(208件)、中国(194件)と続いています。ちなみに、「紳士の国」イギリスは、踏み倒し件数0件です。
◆ 条約国際法
条約国際法(成文法)は、文書によって国家間の合意が明示されている(国家間の合意によって成立する)もので、文字通り「条約」に代表されます。
国際法は、国内法の法律と違って、国会のような集権的な立法機関が存在しないので、国際法が成立するには、二国間または多国間、さらには国連などの国際機関において、条約を結ぶことによって、国家間で国際的な合意をする必要があります。
その名称は「○○条約」でなくても、憲章、規約、議定書(プロトコール)、協定、協約、規程、決議等の形をとることもあります。例えば、「憲章」には国際連合の設立条約である国連憲章が、「規約」には国際連盟の成立を定めた国際連盟規約や国際人権規約などがあります。これらは、国際合意である限りその名称にかかわらず法的拘束力があり、その効力に区別はありません。
これに対して、宣言や勧告の場合、政治的な拘束力があっても通常、法的拘束力はありません。世界人権宣言や国連総会の「勧告」などがその事例です。
前述したように、国際社会は、国家間の合意によって成立するため、国内と違って、国会のような集権的な立法機関が存在しません。また、国際法は存在するすべての国家を拘束する訳ではなく、締約国だけを拘束し、第三国には効力が及びません。
従って、国際法の違反があっても制裁手段が十分に組織されていないので、拘束力は弱いという現実があります。特に、戦争や武力紛争の際に、国際法が有効に機能しないという問題が生じてしまいます。
条約成立までのプロセス
条約が結ばれる基本的な流れは、「交渉⇒合意⇒署名(採択)⇒批准⇒発効」です。
交渉・合意・署名(採択)
最初に、当事国が「交渉」して、条約の内容に「合意」すると、国の代表者(全権代表)が、二国間条約であれば「署名(条約参加の意思表示)」、多国間条約の場合は「採択(条約内容の決定)」、「署名」します(署名は「調印」ともいう)。
批准
その後、当時国は本国で「批准(正式同意)」」し、条件を満たせば条約が「発効(効力発生)」します。(二国間条約の場合、批准を必要とせず、署名が最終行為となる場合もある)。
「締結」という用語もありますが、これは、署名や承認などの全ての手続きを済ませ、条約参加を確定させる行為を言います。締結方法の一つが批准です(ほかにも、受諾、加入、公文の交換などがある)。
ただし、署名や批准が行われても条約が発効しないという場合もあります。例えば、アメリカは、国際連盟規約に署名しましたが、上院が批准を拒否したので、国際連盟には加入できませんでした。
また、CTBT(包括的核実験禁止条約)は、核保有国を含む44ヶ国が批准していなければならないという発効要件を満たしていないので、多くの国が批准しているにもかかわらず、いまだに未発効の状態です。
国会の承認
加えて、各国とも、条約を締結するために立法府(国会・議会)の承認手続を必要とします。日本では、条約の締結権は内閣にありますが、内閣は条約を結ぶに当たって、「事前または事後に」国会の承認を得なければなりません(憲法73条3)。
通常は事前の承認がなされ、事後の承認は緊急やむを得ない場合に限るのが原則です。国会の事前承認は、通常の批准を要する条約であれば、署名後・批准前の時期に、また署名のみによって効力を発生する条約にあっては、署名前の段階で行われます。
ちなみに、日本では、国会が条約を不承認とした例はありません。
行政協定と国会承認
実は、すべての「条約」に国会の承認が必要かというと、必ずしもそうではなく、政治的に重要なものが対象になります、例えば、条約の一種である「協定」については、両国間の行政レベルにおける協定(行政協定)であれば、国会の承認を求めることなく発効する場合もあります。
たとえば、国会承認を経なかった日米行政協定は、「(旧)日米安保条約第3条の委任の範囲内のもの」として最高裁も合憲の判断を下した一方、現在の日米地位協定は、国会承認条約として締結されました。
☞署名(調印):条約参加の意思表示
☞採択:条約内容の決定
☞批准:正式同意
☞発効:効力発生
☞締結:「条約に拘束されることについての国の同意の表明」のことで、締結方法に、批准、受諾、加入などがある。
◆ 戦時国際法(国際人道法)
戦時国際法は、戦争状態を前提とし、戦争の開始、占領、交戦法規(戦闘行為や戦争犠牲者の待遇など交戦国間を規律)などに関する国際法規をいいます。
戦争は合法
前述したように、国際法の起源は、「近代国際法の父」と呼ばれたオランダの法学者グロチウスが、30年戦争の惨禍を目のあたりにして『戦争と平和の法』を出版した1625年に遡ることができます。
この中で、戦争時にもルールが必要と考えたグロチウスは、戦争における正当性を自己防衛と財産の回復とした一方、土地を奪う戦争や、意思に反して他人を支配する戦争などを違法な戦争として区別する正戦論を展開しました。
正戦論を基本とした近代国際法は、18世紀半ば以降、主権国家が国際法上の手続きに従って戦争をする限り合法であるという戦時国際法として機能しました。当時は「戦争はやってはいけない」のではなく、戦争は起こりうることを前提としており、戦争そのものも、国際法上の手続き(ルール)に従って行う限り合法でした。戦時国際法は、この性質から「戦争法」または「武力紛争法」とも呼ばれました。
この黎明期の戦時国際法は、明文規定されない慣習法として形成されていきましたが、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、戦時国際法を明文化して条約化(法典化)する動きがでてきました。
その最初の試みが、アメリカの南北戦争中に制定された1864年のジュネーブ条約や、1899年および1907年にオランダのハーグで結ばれた「ハーグ陸戦条約(陸戦の法規慣例に関する条約) 」、ならびに「開戦に関する条約」などでした。
これらの戦時国際法では、戦争状態であってもあらゆる軍事組織が遵守すべき義務を明文化し、戦争が勃発したとしても、武力紛争中にできることとできないことを定め、武器や戦術に制限を設けました。
これによって、非戦闘員である民間人を保護し、虐殺や不要な殺害を抑制し、被害を最小限に制限しようとしたのです。代表的なルールには、民間人など軍事目標以外への攻撃禁止、無差別な破壊・殺戮の禁止、捕虜虐待の禁止など、現代にも通じる規定がありました。
戦争は違法
しかし、その後の第1次世界大戦は、機関銃・戦車・毒ガスなど大量殺害兵器が登場し、戦争は悲惨さが増してくると、戦争を禁止あるいは制限しようとする試みが、国際連盟や国際連合を通じて行われるようになりました。
第一次世界大戦後の1919年、国際連盟規約で「締結国は戦争に訴えざるの義務を受諾する」と規定し、1928年にはパリ不戦条約で「紛争を解決する手段として締約国間での戦争を放棄」と定められ、初めて戦争の禁止が法制化されました。
しかし、これを実行する国際連盟が組織として機能しなかったことから、歯止めにはならず、第2次世界大戦が勃発し、都市部への無差別爆撃が行われ、日本には原爆が投下されるなど凄惨を極めました。
第二次世界大戦後、より強制力を持った国際連合が誕生し、その設立条約である国連憲章で「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を…慎まなければならない」と規定され、ようやく戦争禁止、武力不行使原則が国際法上の義務になりました。
戦時国際法(「戦争法」または「武力紛争法」)も現在では、一般的に「国際人道法」と呼ばれるようなっています。グロチウス以来、武力行使の時に「やっていいこと」と「やってはいけないこと」の区別をしてきましたが、国際人道法は、現在の国際情勢に合わせて、後者の戦闘行為の制限に関する部分をより強調して修正・進化させた国際法です。
次回は、国際人道法に照らして、戦争犯罪について解説します。
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(投稿日:2026/10/22)



