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2023年04月14日

偏った日本の食品表示規制の現実

前回の 消されていく「遺伝子組み換えでない」表示 の投稿で、2023年4月から、大豆ととうもろこしに関して、意図せざる遺伝子組み換え食品の混入が検出限界値(約0.01〜0.1%)未満でないと『遺伝子組換えでない』と表示できなくなったというニュースを解説しました。今回は、日本の食品表示の制度についてまとめました。

 

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食品表示には、①遺伝子組み換え原料を使っている場合に「遺伝子組み換え作物を使っている(「遺伝子組換え不分別」)と表示する義務があるものと、②遺伝子組み換え作物は一切使っていません(「遺伝子組換えでない」)ということを積極的に表示する2種類があります。

 

 

遺伝子組み換え作物を作る側の表示

これまでの政府の対応は、明らかに、①の遺伝子組み換え原料を使っているメーカーにとっては有利な規制になっています。たとえば、ニュース報道によれば、日本では食品で遺伝子組み換え表示が義務付けられるのは、遺伝子組み換え食品原料が全体の5%超え、かつ使われている上位3位の原料までが対象となる(5%以上使っていても、上位3位に入らないものは書かなくていい)そうです。さらに、上位3位だけ非遺伝子組み換えで、後はすべて遺伝子組み換えであったとしても遺伝子組み換え表示をしなくていいことになっているようです。

 

 

遺伝子組み換え作物を作らない側の表示

これに対して、「遺伝子組換えでない」という表示を積極的に行う食品メーカーに対して、不利な状況になっていることの一つが、「遺伝子組換えでない」表示がそもそも少ないということだと指摘されています。そう言われてみれば、「遺伝子組換えでない」と表示された食品は、納豆や豆腐、醤油くらいで意外に少ないのです。もっとも、醬油など一部の表示義務の対象外の食品は、これまで任意で「遺伝子組換えでない」と記載することは可能であった(今回の基準の変更でそれも難しくなると見られている)。

 

現行制度では、「遺伝子組換え」の表示義務の対象は、大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、菜種、綿実、アルファルファ、テンサイ、パパイヤ、カラシナの9農産物と、これらを原材料とした、味噌やポテトスナックなど33の加工食品群です。なお、今回の表示義務の変更は、大豆ととうもろこしが対象で、これら以外の表示義務のある農作物については、現在も混入率の定めはなく、今後も混入が認められない場合のみ「遺伝子組換えでない」と表示されることになります。

 

 

不公平な食品表示規制

「遺伝子組換え」の表示義務の対象食品以外の食品には「遺伝子組換えでない」という表示を政府が許していません。サラダ油、醤油から米や小麦、家畜の飼料に至るまで、表示義務はありません(表示してはならない)。

 

「遺伝子組換え」の表示義務の対象外の食品の中で、特に問題視されているのが、米や小麦についてです。なぜ、米や小麦について「遺伝子組換えでない」という表示をすることを許していないかと言えば、ニュース報道によれば、日本で流通している米に遺伝子組み換えのものはないから、わざわざ「遺伝子組換えでない」という表示をしてしまうと、あたかもその食品が優良であるかのように消費者に錯覚させる(「優良誤認」という)ことになるとして許さない」のだそうです。

 

官僚らしい論法であり、①の遺伝子組み換え原料を使っているメーカーが不利になることに対応した処置であることがわかります。今回の基準改定も、「遺伝子組換えでない」という表示をすることによって、遺伝子組み換え原料を使わないように努力している側だけを厳しくするというものだと言えるでしょう。

 

 

<参照>

消されていく「遺伝子組み換えでない」表示

「無添加・不使用」の表示が消える!?

 

<参考>

「遺伝子組換えでない」の表示が消える!4月からの「遺伝子組み換え食品」見抜き方

(2023/03/29 『女性自身』編集部)

消える?「遺伝子組換えでない」食品表示

(2023年03月11日 OKシードニュース)

 

 

2023年04月13日

消されていく「遺伝子組み換えでない」表示

日本の食品から「遺伝子組換えでない」という表示が、2023年4月以降、ほぼ消えることになってしまうかもしれません。これまで、大豆やとうもろこしを原料とした食品を製造するとき、意図せざる遺伝子組み換え食品の混入が5%未満であれば『遺伝子組換えでない』と表示できました。

 

しかし今年の4月からは、検出限界値(約0.01〜0.1%)未満でないと『遺伝子組換えでない』と表示できなくなりました。基準の数値が厳しくなるのならいいのではないかと思われがちですが、、逆に、遺伝子組み換えでないものを求めることがより難しくなってしまったのです。どういうことでしょうか?

 

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不可解な食品表示基準の変更

『遺伝子組換え表示制度』については、2017年から消費者庁が『遺伝子組換え表示制度に関する検討会』を開いて議論した結果、実は、2018年に表示基準変更が決定、2019年4月の内閣府令により、今年の4月1日から、5年の経過措置を経て実施となったのでした。

この過程で、日本の消費者団体は、5%以下という甘い基準を海外で多い1%以下というものに変更してほえしいと要望してきたそうです。

 

現在、日本では多くの食材を米国などからの輸入に頼っています。特に、遺伝子組み換え表示の対象となっている大豆やとうもろこしの約9割をアメリカやカナダなど海外から輸入しており、そのほとんどが遺伝子組み換えです(これまで『遺伝子組換えでない』と表示していた大半は輸入原料)。

 

「遺伝子組換えでない」と表示している食品メーカーによれば、船やサイロ、そして製造過程などで、製造ラインを分ける「分別管理」をしても、輸送時に使用する船や大型サイロやパイプは常に洗浄しているわけではないため遺伝子組み換え原料が混入する可能性が完全なゼロにはならず、1%は混入してしまうそうなのです。

 

しかし、逆の言い方をすれば、分別管理によって、意図せざる遺伝子組み換え原料が混入する割合はせいぜい1%程度で、99%遺伝子組み換えでないものが確保できるといえます。

 

ですから、今回の改定で、混入許容割合を、消費者団体の要望通り「1%未満」に設定してくれれば、私たち消費者はこれまで以上に「遺伝子組換えでない」安全な食品を購入できたわけですが、それを、消費者庁は「約0.01〜0.1%未満」と改定したしまったのです。

 

 

「遺伝子組み換えでない」表示ができなくなる… 

「遺伝子組換えでない」食品を提供してきた食品メーカーは、分別管理を行い、ほぼ1%以下の「意図せざる混入率」で管理していた(最大限の企業努力で1%までは可能)のですが、今回、消費者庁から「約0.01〜0.1%未満」を要求され、この検出限界値未満にするのは極めて難しくなってしまいました。これは、「遺伝子組換えでない」という表示を事実上、禁じられたに等しいことを意味します。

 

遺伝子組み換えでない大豆やトウモロコシを確保するためには特別の管理(IPハンドリング)をして費用をかけなければならないため、高いコストがかかるそうです。このような大変な管理を行って非遺伝子組み換え原料で食品を作ったとしても「遺伝子組換えでない」という表示が許されなくなってしまうとなれば、もう「遺伝子組み換えでない」作物をつくることを止める食品メーカーでてくることが懸念されます。

 

 

政治的決定だったか?

こうした食品表示ルールは、「食品表示法」で定められており消費者庁が管轄していますが、その消費者庁は、消費者からあったという〈(混入の基準値は)低ければ低い方がいい〉という意見に従う形で決定したと言っているそうですが、これがどうも詭弁に聞こえてしまいます。

 

世界の消費者が表示に基づき、遺伝子組み換えでない食品を選ぶようになった結果、遺伝子組み換え作物の栽培は2015年を境に拡大が止まったと言われています。そこで、遺伝子組み換え作物を輸出して儲かりたい、世界でわずか数社のタネを独占している遺伝子組み換え企業(穀物メジャー)やそれと密接な食品企業やその国の政府からの圧力があったのではないかと疑われます。

 

消費者庁としては、いつものように外圧に屈しながら、日本の良心的な食品メーカーや消費者団体には、あなた達の(基準を厳しくするという)要求の答えましたと言っているようないやらしさを感じてしまいます。

 

 

私たちに出来ることとは?

今後、従来の「遺伝子組換えでない」食品には、「遺伝子組み換え混入防止管理済」、「分別生産流通管理済み」、「IPハンドリング済み」、「IP管理済み」という文言であれば表示することは許容されるそうですので、これらの記載があるものを選ぶことが望まれます。

 

または、国産のものを選ぶか、有機農産物を選ぶことですね。国産品には遺伝子組み換えのものはなく、有機農産物はJAS(日本農林規格)によって「遺伝子組換え技術を使用しない」が認証の条件になっているからです。

 

次回は、食品表示の制度についてもう少し詳細に説明した投稿記事をだしたいと思います。また、今回の食品表示に関する次の関連投稿投稿記事も参照してみてください。

 

 

<参照>

「無添加・不使用」の表示が消える!?

偏った日本の食品表示規制の現実

 

<参考>

「遺伝子組換えでない」の表示が消える!4月からの「遺伝子組み換え食品」見抜き方

(2023/03/29 『女性自身』編集部)

消える?「遺伝子組換えでない」食品表示

(2023年03月11日 OKシードニュース)

 

 

2023年04月06日

プーチンは国際刑事裁判所 (ICC) で裁かれるか?

 国際刑事裁判所(ICC)は、2023年3月17日、戦争犯罪の疑いで、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に逮捕状を出しました。この後、プーチン大統領は逮捕され、国際司法の場で裁かれるのか、逮捕状後の展開を予想してみましょう。ICCはプーチン大統領を戦争犯罪人として裁けるのでしょうか?

 

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プーチン大統領らに逮捕状、ウクライナ侵攻めぐる戦争犯罪容疑 国際刑事裁判所

(2023/3/18、英BBC)(一部抜粋)

オランダ・ハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)は3月17日、ウクライナ侵攻をめぐる戦争犯罪容疑で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領らに逮捕状を出した。 ICCは、ロシアが占領したウクライナの地域から子どもたちをロシアへと不法に移送しており、プーチン氏にこうした戦争犯罪の責任があるとしている。 ロシア政府は、戦争犯罪疑惑を否定し、逮捕状は「言語道断」だとしている。

―――――――

 

ウクライナのイエルマーク大統領府長官は「ロシアによる子供の連行は1万6000件以上が記録され、実数はさらに多い可能性がある」と指摘。「これまでに返還されたのは308人に過ぎない」とし、今後も返還に向けた作業を続けると表明しています。また、米エール大が2月に公表した報告書によると、「少なくとも6000人のウクライナの子供らがロシア国内の43施設に収容された。ウクライナ政府は3月初旬、収容者数が1万6000人を超えた可能性がある」と指摘しています。(2023/3/18、産経新聞より)

 

国際刑事裁判所(ICC)は、ロシアがウクライナに侵攻したことを受け、2022年2月からロシア軍がウクライナで行った戦争犯罪と人道に対する罪についての立件に向けて捜査を開始していました。今回の逮捕状はその結果ということになります。

 

ICCの管轄権

 

ICC(国際刑事裁判所)は2002年に発効したICCローマ規程によって設立され、123の国・地域が加盟していますが、ロシアもウクライナも非加盟で、通常、ICCは事件を管轄できません。

 

しかし、締約国ではない場合でも、事件の発生地の国か容疑者の国籍がある国のどちらかがICCの管轄権を認める(受諾)宣言をすれば、ICCは非加盟国の犯罪も裁くことができます。実際、ウクライナは南部のクリミア半島を一方的にロシアに併合された後の2015年、無期限の形で「戦争犯罪と人道犯罪について管轄権を受諾する」宣言をしています。

 

プーチン大統領は、戦況について側近から事実を知らされていないとの情報もありましたが、ICCの設置法「ローマ規程」には、軍隊の上官だけでなく政府の上層部にも責任は及ぶ「上官責任」の規定があります。実際に犯罪行為を行った「実行行為者」はもちろん、「自らは行っていないが、それを命じた者」も処罰の対象に含まれています。また、直接、命令していなくても、犯罪行為が行われていること(兵士らの行為)を知っていながら、プーチン大統領や軍幹部などが、その犯罪の実行を防止または抑制する措置を取らなかったことが認定されれば責任が問うことができます。

 

プーチンはロシア国内で拘束されない?

 

今回、逮捕状が出されたので、プーチン大統領は戦争犯罪容疑者になりましたが、この先、実際にプーチン大統領の身柄が拘束された後、ICCに引き渡され、プーチン大統領がオランダ・ハーグの裁判に出廷する可能性は極めて低いとされています。

 

ICC(国際刑事裁判所)には容疑者を逮捕する権限はなく、ICC捜査官がロシアに行って拘束することはできません(ICCが介入できるのは、国家が捜査や加害者の訴追を行えない、あるいは行おうとしない場合に限定される)。

 

もっとも、ICC非加盟国であるロシアは、捜査・訴追への協力義務も、身柄引き渡しなどの義務は負っていません。仮にロシアが加盟国であっても、ロシア国内で揺るぎない権力を享受しているプーチン大統領を、ロシア政府がICCに引き渡す見込みもありません。プーチン大統領がロシア国内にいれば、主権の壁、つまり、政権トップの場合は免責特権による保護もあります。ですから、プーチン大統領がロシアにとどまる限り、逮捕のリスクはないということになります。もし、プーチン大統領がロシア当局によって拘束されるとしたら、ロシア国内で政変が起きてプーチン大統領が失脚し、特権剥奪に至る場合ぐらいしか想定できません。

 

実際、セルビアのミロシェビッチ元大統領は1990年代のボスニア紛争における戦争犯罪と大量虐殺の罪で起訴され裁判中に獄中死したが、国際法廷がその身柄を拘束できたのは同氏が失脚した後でした。

 

また、リベリアのチャールズ・テイラー元大統領も、リベリアの隣国シエラレオネにおける戦争犯罪と人道に対する罪をほう助したとして2012年、国連の支援を受けたシエラレオネ特別法廷により禁固50年の有罪判決を受けたが、同法廷に引き渡されたのは、自国からの追放と亡命後のことでした。

 

プーチンがロシアを出国した場合

 

一方、プーチン大統領が国外に出た場合は、ICC規程に、締約国に対し、「国際犯罪の責任を負う者に対して自国の刑事裁判権を行使することが、すべての国の義務だ」とあるように、ICC加盟国には、捜査・訴追への協力義務が生じるので、プーチン大統領が入国したら拘束してICCに身柄を引き渡すことが求められます。

 

しかし、これまで、政治的考慮から、この義務を守らない国が多く、特に今回は、大国ロシアと敵対するリスクが生じることから、現実的には難しいとみられています。

 

たとえば、2003年、約30万人の民間人が犠牲となったスーダンの「ダルフール紛争」では、当時のバシル大統領に対して、ICCはダルフールでの戦争犯罪、人道に対する罪、大量虐殺の罪で09年及び10年に起訴したが、その身柄はまだ確保できていないどころか、その後、バシルがアフリカ諸国など他国を訪問しても、その国も拘束しませんでした。

(スーダンのバシル元大統領は19年、政権から追放され汚職の罪で有罪判決を受けたが、スーダンの軍指導部はICCに対する約束にもかかわらず、同氏引き渡しには依然消極的とされる)。

 

プーチンへの逮捕状の意義

 

加えて、ICCには、容疑者不在のまま裁判ができる欠席裁判の制度がないことから(ICCの裁判には被告本人の出席が必要)、「逮捕状止まり」になる可能性が高いことも懸念されています。ですから、今回、プーチン大統領に出された逮捕状によって、今後、プーチン大統領に有罪判決を言い渡して収監することは難しいでしょう。

 

もっとも、「プーチンに逮捕状を出す」ことに意義はあると見る向きも多い。プーチン大統領が外遊しても身柄を拘束されない可能性が高いにしても、ICC加盟国への渡航に慎重にならざるを得なくなり、首脳外交も制限されるかことが予想されます。何より、国際社会での威信が失墜することは間違いありません。

 

 

<資料>

国際司法や戦争犯罪についての基礎知識を学びたい方は、拙著

「なぜ?」がわかる!政治・経済(p225〜238)を参照下さい。

 

<参考>

露、プーチン氏逮捕状に「無意味」と猛反発 国家への攻撃とみなす

(2023/3/18、産経)

プーチン大統領の逮捕が困難な理由 戦争犯罪を認定する意義は?

(2022/04/20 aera)

プーチン氏を罪に問えても「逮捕状止まり」の可能性 「それでも意義はある」と専門家

(2022/04/19 aera)

解説:国際犯罪とウクライナ戦争

(2023/01/19、Swissinfo.ch)

「戦争犯罪」って? プーチン氏逮捕できる? ジェノサイドは

(2022年04月06日、就活ニュースペーパー)