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2022年04月28日

水が危ない!宮城県、全国初、水道運営権を売却

今月(4月)1日、宮城県が、県レベルでは全国で初めて、コンセッション方式による水道事業の民間委託を開始しました。以下にその日の読売新聞の記事を紹介します。

 

なお、水問題について初めて聞いたという方は、以下の記事を最初に読まれると、本投稿の内容がよりわかりやすくなると思いますので参照下さい。

水が危ない!水道法改正の裏側

 

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水道運営権、宮城県が全国初の民間売却…20年間で337億円のコスト削減期待(2022年4月1日、読売新聞)

 

宮城県は1日、水道事業運営の民間委託を開始した。委託期間は20年間で総事業費337億円の削減を見込む。人口減による水需要の減少や老朽化施設の更新などによる水道料金の上昇を抑えられるという。水道事業運営を一括で民間に委ねるのは全国で初めてだ。

 

民間委託の対象は、上水道2事業、下水道4事業、工業用水道3事業の計9事業。水処理大手「メタウォーター」(東京)など10社で構成する特別目的会社「みずむすびマネジメントみやぎ」に売却した。県が所有権を持ったまま、運営権を売却する「コンセッション方式」を導入、民間のノウハウを活用することで経費削減や運営効率化を図る。

 

水道施設は高度経済成長期に整備されたものが多く、耐用年数を超えた管路の更新も必要となる。水道料金の値上げが避けられない状況で、県は7年前から民間委託を検討し、コンセッション方式を可能にする水道法改正を国に働きかけてきた。

 

特別目的会社が管理するのは浄水場などの施設で、水質検査や水道管の維持管理、各家庭への配水は従来通り自治体が担う。3月16日深夜に発生し、最大震度6強を観測した地震では、県内の水道管などに被害が出た。村井嘉浩知事は3月28日の定例記者会見で、「今後の災害でも県がコントロールし、民間事業者任せにはしない」と述べ、従来通り自治体が復旧を担う姿勢を示した。

 

村井知事は「事業効果は300億円以上。県民に少しでも安価な水道を供給するための施策で、日本のモデルになる」と意義を強調した。特別目的会社の酒井雅史社長は「消毒に必要な薬品や電力などを一括購入することでコストが削減できる」と説明している。

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「コンセッション方式」とは、記事の中でも説明されていたように、自治体が、水道管などの所有権を持ったまま、運営権のみを民間企業に売却する方式で、2019年10月に改正された水道法によって、この方式が導入されやすくなりました。

 

これまで浄水場や取水施設あるいは給水管の修繕など、業務の一部が民間委託されている例や、小規模な自治体での包括的な民間運営委託はありましたが、県単位での水道事業運営権の民間事業者への売却は、今回が全国初の事例となりました。対象となったのは、県企業局が所有し仙台市など17市町にまたがる「仙南・仙塩広域水道」など9事業の運営権です。今後、 人口減少、過疎化などによって、水道事業では不採算部門が増加している自治体が多い中、コンセッション方式による水道事業の民間委託が進むのでしょうか?

 

民間委託の問題点は、民間企業が事業を営む以上、採算、利益を重視することにより、水道水の安全性が低下する危険性が懸念されるだけではなく、水道料金が上昇する可能性があることです。

 

実際、 世界に目を向けると、たとえばフランスでは、パリ市の水道事業が民営化され、1985年から2009年の間に水道料金は約3倍に跳ね上がったため、2010年に水道事業を再公営化している。

 

海外ではこのフランス以外にも、1990年以降、世界の多くの国・自治体において「コンセッション方式」を含む民営化を進みましたが、水道価格の高騰などを理由に、30ヵ国以上、270近いの自治体が水道の再公営化を決定しています。

 

しかも、世界の水ビジネスをリードする企業は、「ウォーターバロン」(水男爵)と呼ばれる水メジャーで、フランスのヴェオリア・ウォーター社、同じくフランスのスエズ・エンバイロメント社、イギリスのテムズ・ウォーター・ユーティリティーズ社の3社で、2000年代初めに、世界の上下水道民営化市場におけるシェア7割を誇っています。

 

今回、宮城県の水道事業運営権を獲得した「みずむすびマネジメントみやぎ」の中核企業のメタウォーターは国内企業ですが、仏ヴェオリア・ウォーター社傘下にあたるヴェオリア・ジェネッツ社が議決権株式の51%を保有しているそうです。

 

水道事業のコンセッションと言っても、日本企業はそのノウハウを持たず、上にあげた水メジャー企業のような大手の外資企業に依存せざるを得なくなり、日本の水市場が外資企業の草刈り場にならないことが望まれます。何より、 生活インフラであり住民の命に直結する水道事業を、採算や利益を重視する民間運営とすること事態が大きな問題です。

 

 

<参考>

*解説記事の内容は、<参照>にも記載したJcastさんの会社ウォッチの記事を参考にしました。また、本HPの投稿記事「水が危ない!水道法改正の裏側」も合わせて読んでいただければ、水道事業の問題点をさらに深く理解できると思います。

 

<参照>

宮城県、全国初「水道民営化」も根強い不安…メリットは?値上がり懸念は?

(2021年12月19日、Jcast会社ウォッチ)

水道民営化、日本の水はどうなる? ~EU水戦争から学ぶ~

(目黒区消費者グループ連絡会)

水道運営権、宮城県が全国初の民間売却

(2022年4月1日、読売新聞 )