「カタール」ってこんな国!

 

カタールは、アラビア半島の東、産油国が集中する中東ペルシャ湾に突き出たカタール半島にある首長国で、半島のつけ根はサウジアラビアと国境を接し、アラブ首長国連邦のドバイの対岸、クウェートの南東に位置しています。

 

<国の概観>

◆ 国名:カタール国(カタール)

◆ 国旗

カタールの国旗は右側がえび茶色、左側が白色で9つの山がついたギザギザの線で区切られている。白は平和を、えび茶色は戦争で流した血を、そして9つのギザギザは1916年にイギリスと保護条約を交わした湾岸首長国(カタールとバーレーンとアラブ首長国連邦の7首長国)の数を表している(血はつながっている、仲間であるの意)。

 

◆ 面積

11,427平方キロメートル(1万1,427km2)(約1.2万㎢)で、秋田県よりもやや狭いくらいの大きさです。

 

カタールにはいくつかの島もありますが、国土の大部分は平坦な砂地(砂漠)で、植生も乏しくで、耕地面積は国土の0.6%しかありません。国土は、全土が海抜100m以下の標高にあります。

 

◆ 人口

約300万人(2023年3月)(外国人居住者を含む)

このうち、カタール国籍を持つ純粋なカタール人は10%程度の約30万人で、そのほかは、豊かな国家財政を背景にして、南アジア諸国等から集まった外国人労働者で、人口の9割を占めています。

 

国内の労働力を外国人労働者に大きく依存している現状を打開するために、政府はホワイトカラーの自国民化を掲げ、エネルギー・工業分野の国営企業において、2005年末までに従業員の50%をカタール人とする目標を達成しています。

 

◆ 首都:ドーハ
人口約300万人の半数以上は首都ドーハに住んでいます。

 

◆ 民族:アラブ人

◆ 言語:アラビア語(公用語)

カタールは 、欧米諸国の中ではイギリスの影響を強く受けた中東の国と言われています。そのこともあり、今でもカタールはアラビア語に続いて英語が第2公用語となっています。

 

◆ 宗教:イスラム教(国教)

カタール人は、人口のほとんどがイスラム教徒(大半がスンニ派)で、しかも、サウジアラビアと同じワッハーブ派を国教としています(国の法律もシャリーア(イスラム法)と一般法が併用されている)。

 

ただし、在留外国人の中には、イスラム教徒のほか、ヒンズー教徒やキリスト教徒等もいるので、宗教ごとに比率は以下のようになります。

イスラーム65%、ヒンドゥー教16%、キリスト教14%

 

 

<政治体制>

 

◆ 政体:首長制(絶対君主制の一種)

1971年9月、イギリスから独立

 

◆ 元首 (首長):タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニ

1980年6月生まれのタミム首長は、現在(25/4)、世界の君主の中では最年少君主。

 

カタールの支配権は、カタールが1868年に独立国としての地位をイギリスから認められて以来、サーニー家が独占しています。途中、カタールは、オスマン帝国の支配を経て、イギリスの保護領となりましたが、1971年にサーニー家を君主とする首長国として独立しました。

 

首長(アミール、amīr)とはイスラム世界の君主の称号の一つで、首長国とは「首長」が統治する国家のことをさします。なお、現在のバーレーンやサウジアラビアは王政国家で、同じ君主制でも、君主が「王(国王)」の称号を帯びていれば、王国と呼ばれるます。

 

独立後の歴代首長(アミール)

アフマド・ビン・アリー・アール=サーニー

(在位1971年9月~1972年2月)、クーデタにより退位

ハリーファ・ビン・ハマド・アール=サーニー

(在位1972年2月~1995年6月)、クーデタにより退位

ハマド・ビン・ハリーファ・アール=サーニー

(在位1995年6月~2013年6月)、退位

タミーム・ビン・ハマド・アール=サーニー

(在位2013年6月~)

 

なお、1971年以前は、いわゆる世襲制君主国家で、君主の称号は「ハキーム(賢者の意)」でした。

 

サーニー家

カタール土着の部族で、1868年のカタール独立以来、首長のポストを独占しています。以前は、内閣の閣僚も半数以上がサーニー家でしたが、タミーム首長になってからその割合は減少しています。サーニー家以外にもカタールには、アティーヤ家、ミスナド家、カマル家など有力家族がいて、政府の要職についています。

 

◆ 憲法(カタール憲法)

現在のカタール憲法は、2003年4月、70年制定の暫定憲法を改正し、恒久憲法として制定されました。三権分立の立場を取り、民主主義、女性参政権の保障、議会の公選制の導入などが謳われました。

 

ただし、首長(アミール)は、行政・立法のほぼすべての権限を持ち、司法も支配するなど、首長が全権を握っており(サーニー家に実権が集中)運用面において、民主主義的な憲法とは言い難い状況です。

 

たとえば、この2003年の憲法改正で決まった、議会(諮問評議会)の公選制は、選挙により家族や部族間で「争い」が起きていることを理由に、2024年11月の憲法改正で廃止され、首長が全議員を指名する任命制に戻されたりしています。

 

◆ 政府

憲法で三権分立が採用しているので、行政権は首長および内閣が担当し、首相職があります。

 

◆ 議会

カタールでは、諮問評議会が立法機関の役割を有し、諮問評議会は、内閣提出法案の承認権、予算承認権、閣僚の信任投票権などを保持しています。当初、計45名のメンバーは、国政選挙により選出された30名と首長が指名する15名で構成されていましたが、現在では、首長が全員を指名しています。

 

◆ メディア:国営衛星テレビ局アルジャジーラ

アルジャジーラは、カタールのドーハに拠点を置く、中東初の国営衛星放送のテレビ局で、中東の報道チャンネルとしてスタートし、世界各国の主要メディアに対し中東のニュースを24時間提供しています。現在では、世界中の70カ所以上に支局や取材拠点を持つ、アラブ系最大のメディアとして「中東のCNN」と表現されることもあります。

 

アルジャジーラについては、次の投稿記事で詳細に説明しています。

日本も見習いたいカタールの仲介外交!

 

<外交・国防>

 

◆ 仲介外交

カタールは、「全方位外交」を標榜しています。「全方位外交」は、特定の国とだけ良好な関係を持つのではなく、色々な国や勢力、西側やグローバルサウスなどと分け隔てなく関係を持つ政策です。

 

実際、カタールは、アメリカだけでなく、アメリカに対立するイランや中国とも関係を保持し、ロシア、ウクライナ双方とも関係を維持しています。さらに、国際的にはテロ組織と呼ばれているような、ハマス、ムスリム同胞団、イスラム主義勢力のタリバン、ISIS(「イスラム国」)、アルカイダといった、非国家組織ともある程度のつながりを持っています。

 

こうしたチャンネルを外交カードとして、うまく交渉に使うことによって、カタールは長らく中東地域の紛争において、仲介外交を展開してきました。

 

カタールの仲介外交については、次の投稿記事で詳細に説明しています。

日本も見習いたいカタールの仲介外交!

 

◆ 米軍

ドーハ郊外に、アメリカの空軍基地、「アルウデイド空軍基地」があります。米軍の中東の拠点としては最大で、イラク戦争やアフガン戦争、最近ではISIS(自称イスラム国)掃討作戦において、出撃拠点となるなど、最前線として機能しています。

 

<経済・産業>

 

◆ 概況

カタールは、1940年代に発見され開発されてきた石油資源によって国づくりを進め、成長を遂げてきました。政府主導型経済であり、国内経済は政府歳出に、政府歳入は石油・天然ガスに大きく依存しています。

 

そこでカタール政府は、エネルギー資源依存型経済からの脱却のために、石油化学等などその他産業の育成を推進しています。たとえば、ポスト石油の国家収入源としてノース・フィールド天然ガス田(世界最大級)開発(LNG・GTL等)などが推進されています。

 

首都ドーハをドバイのような一大リゾート地へと変身させるべく、国を挙げてのリゾート開発が進められています。これまで、雄大な砂漠や歴史的な建造物といった観光資源が実は多くあるにもかかわらず、以前までドーハは「退屈な街」というラベルが貼られていました。

 

直近では、2022年のFIFAワールドカップの開催に合わせて、急ピッチでインフラ整備が進められ、高層ビル群が立ち並び、2019年には全長約40キロにわたる地下鉄が開通しました。

 

◆ 一人当たりGDP

約84,000ドル(2023年/IMF推計)

 

豊富なエネルギー資源を有するカタール経済は20世紀から21世紀にかけて急成長を遂げており、過去には1人あたりのGDP(国民総生産)が世界1位と、「世界で最も裕福な国」と呼ばれたこともある(現在でも世界トップレベル)。国民の医療や教育は無償です。

 

◆ 通貨:カタール=リヤル

為替レートは、ドルペッグ制(固定相場制)で1ドル=3.64カタール・リヤル

 

◆ 産業

カタールの主要産業は、石油や天然ガスなどのエネルギー分野です。

 

天然ガス

確認埋蔵量:約25兆立法メートル(世界シェア:13%)

可採年数:約140年

生産量:約1,700億立方メートル

 

カタールは、世界最大の液化天然ガス(LNG)生産国、輸出国で、天然ガスの埋蔵量は世界3位を誇ります。首都ドーハから約80キロ離れたところにあるラスラファン工業地帯には世界でも有数の液化天然ガスプラントがあり、日本をはじめ世界中に天然ガスを輸出しています。

 

原油

確認埋蔵量:約250億バーレル(世界シェア:1.5%)

可採年数:約38年

生産量:日量約180万バレル

 

カタールは、産油国としては、生産量の世界ランクで15位前後、OPEC加盟国の生産量の2%以下にすぎません。

 

◆ 主要貿易品目

(2022年/カタール開発計画・統計省)

輸出:LNG、石油、石油化学製品

輸入:タービン、自動車、電気機器

 

食料自給率は10%程度で、大部分を輸入に頼っています。

 

◆ 主要貿易相手国

(2022年/カタール開発計画・統計省)

輸出:中国、インド、韓国、日本

輸入:中国、米国、インド、イタリア

 

 

(関連投稿)

カタールの歴史:サーニー家による統治

日本も見習いたいカタールの仲介外交!

 

 

(中近東の国々を学ぶ)

イスラエル

パレスチナ

アラブ首長国連邦(UAE)

 

 

<参照>

カタールの歴史(在カタール日本国大使館)

イスラムの国カタールの歴史(ドーハ日本人学校)

世界一退屈な街?ドーハ(日本貿易会)

カタール基礎データ(外務省)

カタールってどんな国?(Diamond Online )

2022年W杯の開催地!カタールってどんな国?(アセットマネジメントone)

カタールとは?(コトバンク)

カタール(Wikipedia)

アルジャジーラ(Wikipedia)

 

投稿日:2025年4月16日

むらおの歴史情報サイト「レムリア」