社会保障制度は、国民の「安心」や生活の「安定」を支えるセーフティネット(安全網)で、子どもから子育て世代、高齢者まで、全ての人々の生活を生涯にわたって支えるものですが、超少子化・超高齢社会の日本では、その存続が危ぶまれています。日本の社会保障制度の実際をみていきます。
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日本の社会保障制度は社会保険、公的扶助、社会福祉、公衆衛生からなります。
<社会保険>
社会保険は、老齢・病気・失業などで生活困難になった場合に最低限度の生活を保障する制度で、年金保険、医療保険、労災保険、雇用保険、公的介護保険があります。
保険者と被保険者
社会保険制度の運営主体を保険者、保険料を納付して給付を受ける者を被保険者という。
(1) 年金保険
◆ 公的年金
年金保険(年金)は、老齢、障害などの理由により生活が苦しくなったときに、所得を保障してくれる制度のことです。年金には、老齢年金・*障害年金・*遺族年金の3つがあり、一般的に年金といえば、老齢年金をさします。
*障害年金:障害をもったときに支給される年金。
*遺族年金:加入者や受給者などが亡くなったときに遺族に支給される年金
年金保険のうち、公的年金は国が管理運営している年金制度で、原則として20歳以上60歳未満の日本に住む人すべてが加入する国民年金と、会社員や公務員が加入する厚生年金の2種類があります。
国民年金(基礎年金)
保険者は政府。受給資格は原則25年。基礎年金は原則として65歳から支給されます。保険料は、1カ月あたり1万7510円(25年度)で、23年度の1万6520円から増加しています。
厚生年金保険
70歳未満の会社員と公務員は、国籍や性別にかかわらず厚生年金保険の被保険者となります。保険料は、所得に応じた定率(年収の18.3%)で、労使折半で負担します。受給資格は段階的に65歳に引き上げられました。
国民皆年金
1961年、国民皆年金体制が実現し、職種によって、自営業者は国民年金、民間被用者(サラリーマン)は厚生年金、公務員や私立学校の教職員は共済年金に分けられ、すべての国民はいずれかの年金に加入することが義務づけられました。
その後、1985年に国民年金法が改正され、基礎年金制度(二階建て制度)が導入されました。
二階建て制度の一階部分が基礎年金(国民年金)で、自営業者、民間被用者、公務員の配偶者、専業主婦、20歳以上の学生を含めた全国民が、形式的ですが共通に、国民年金(基礎年金)に加入することになりました。全国民は、次の1号から3号のどれかに分類されます。
第1号被保険者:20歳以上60歳未満の国内に居住する自営業者、農林漁業者、学生、無職。
第2号被保険者:厚生年金に加入している会社員、公務員。
第3号被保険者:20歳以上60歳未満の第2号被保険者に扶養されている妻(夫)。保険料の自己負担なし。
130万円問題(130万円の壁)
第3号被保険者(会社員や公務員の妻(夫))は、年収130万円が被扶養認定基準で、自らの年収が130万円未満であれば、夫の扶養となり、年金保険料を負担せずとも、第3号被保険者として基礎年金の受給権を得ることができます。
共済年金
一方、二階建て制度の二階部分は、当初、民間被用者(会社員)や公務員に、付加給付(上乗せ)部分として、それぞれ厚生年金と共済年金がありましたが、公務員が加入していた共済年金制度は、2015年10月に厚生年金に一元化されました。結果として、現在、会社員と公務員は、退職後、基礎年金と厚生年金からそれぞれ年金が、原則65歳から給付されます。
国民年金基金
二階部分がなく、厚生年金に加入できない自営業者やフリーランスなどのために、必要に応じて任意加入できる保険として、1991年に、国民年金基金が創設されました。ただし、国民年金基金は分類上、公的年金ではなく私的年金(後述)に入ります。
積立方式と賦課方式
年金制度の財政方式として、積立方式と賦課方式があります。
積立方式は、将来の給付に必要な原資を保険料で事前に積み立てる方式で、自分が保険料として支払ったものを年金として受け取ります。
賦課方式は、給付に必要な費用をその時々の加入者からの保険料で賄う方式で、その年の現役世代が支払った保険料を、引退世代(高齢者)が年金として受け取る方式です。
日本の公的年金制度は、積立方式でスタートしましたが、賦課方式が取り入れられ、現在は賦課方式に近い修正積立方式で運営されています。
公的年金の原資
年金制度は、被保険者が納付する保険料と、国が支出する国庫負担に、積立金(プールしてあった原資の取崩しと運用収入)を加えて運営されています。
国庫負担(国の負担=税金)は、基礎年金の2分の1に相当します(かつての3分の1から引き上げ)。
積立金とは、現役世代が収めた保険料のうち年金の支払いなどに充てられなかった余剰分のことで、2001年から年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が管理・運用しています。
GPIF
運用資産額(21年度)は約196.6兆円にも上り、世界の年金基金の中でも最大規模となっています。市場運用を開始した当初は、国内債券・外国債券・国内株式・外国株式のうち、国内債券(約6〜7割)と国内株式(約2割)に割り当てられるなど、国内に比重を置いたポートフォリオで運用されていましたが、14年から外国の債券・株式への配分を増加し、現在の資産構成割合は、4資産がそれぞれ25%です。
年金受給
年金の受給額は、2004年までは物価スライド、2005年から現在までマクロ経済スライドによって調整されています。
物価スライドは、物価の変動に合わせて年金も調整する制度であったのに対して、現在のマクロ経済スライドは、物価上昇、賃金上昇、平均寿命の伸びなど社会情勢に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する制度です。
また、受給要件として、以前は保険料納付期間が25年以上であったが、2017年8月以降は「10年以上」の納付期間があれば受け取れるようになりました。
加えて、老齢年金は、65歳から支給が始まりますが、60歳以後であれば希望する時点から繰上げ受給することができ、逆に、66歳から70歳になるまでの希望する時点から繰下げ受給することもできます。
年金受給額
2024年度の年金の受給額は、以下のように、2年連続の増額となりました。
国民年金(老齢基礎年金):約6万8000円(前年度比約1750円増)
厚生年金:23万483円(同6001円増)
(老齢)基礎年金の数字は、20歳から60歳まで40年間保険料を納めた場合(満額)の金額で、厚生年金は夫婦2人のモデル世帯で、(老齢)基礎年金を含む標準的な年金額です。
◆ 私的年金
2階建てである公的年金を補完する年金制度として、3階部分に該当する私的年金があります。これは、企業年金や個人年金など個人で積み立てていく年金のことをいいます。
企業年金は、従業員の退職後の生活保障のために福利厚生の一環として、企業が独自(任意)に導入する年金制度で、公的年金の厚生年金に上乗せする形で運営します。
個人年金は、個人が資産形成として、任意に加入するもので、民間の保険会社などが取扱いをしている年金商品です。
確定給付型と確定拠出型
私的年金は、運用方法によって、確定給付型と確定拠出型に分類できます。
確定給付型は、あらかじめ将来受け取る年金受給額を決め、その確定した給付額を賄うのに必要な*掛金を企業が拠出するタイプの年金です(企業の拠出額が変動する)。
*掛金:事業主や加入者が定期的に納める拠出金(負担金)のこと
私的年金における確定給付年金には、「厚生年金基金」と「確定給付企業年金」の2種類がありました。
厚生年金基金
厚生年金基金は、企業自らが運用する確定給付型の企業年金制度で、厚生年金の老齢給付の一部を国に代わって支給する「代行部分」と、それぞれ独自の年金を加算して給付する「加算部分」に分けられていました。
しかし、1966年に始まった厚生年金基金は、経済情勢の変化などから制度破綻をきたし、「代行割れ」(代行部分の給付に必要な額がまかなえない)状態の基金が続出したことから、2014年4月以降に実質廃止となりました。基金を解散して、確定給付年金または確定拠出年金に移行するか、国が引き継ぐかなどの措置が求められており、厚生年金基金の新設は認められていません。
一方、確定拠出型は、企業が拠出する掛金額は、従業員(年金加入者)ごとに確定しており(企業の拠出額は一定)、従業員自ら運用コースを選択し、運用を行い、運用成績に応じて、従業員ごとに年金受給(給付)額が変動して決まるタイプの年金です。掛け金の拠出額だけが決まっていて、給付額は運用によって変動し、そのリスクは加入者が負う仕組みです。
私的年金における確定拠出年金には、「企業型確定拠出年金」と、個人型確定拠出年金((iDeCoイデコ)」の2種類があります。
iDeCo(イデコ)
個人が任意で加入して掛金を支払い、自分で選択した方法で運用し、原則60歳以降に受け取ります。証券会社や銀行、保険会社などさまざまな金融機関が取り扱っています。2017年1月からは、加入対象が公務員や企業年金に加入している会社員、専業主婦などまで広がり、ほとんどの人が加入できるようになりました。
日本版401kプラン
確定拠出年金は、アメリカの確定拠出個人年金制度の一つです。(アメリカの内国歳入法の401条k項に基づいた)「401k」に由来し、制度設計されたことから、別名「日本版401k」と呼ばれています。日本でも、確定拠出年金法を根拠に、2001年10月から導入されました。
(2) 医療保険
◆ 医療保険制度の仕組み
医療保険は、病気やケガをして病院にかかるとき、少しの自己負担(現役世代は原則3割)で、医療サービスを受けることができる公的制度のことで、自己負担額以外は医療保険から支払われます。
医療保険は、医療サービスを受けることができるので、現金給付ではなく、*現物給付です。
*現物給付
現金が給付されるのではなく、医療保険の場合、窓口で自己負担分の医療費を支払うことにより、私たちが診察や、手術・投薬などの医療行為を受けられることを指します。
◆ 国民皆保険制度
1959年1月施行の国民健康保険法を受けて、全国民が加入しなければならない国民皆保険制度が61年に確立されました。
医療保険には、自営業者、農業者とその家族などを対象とした国民健康保険(保険者は市町村・都道府県または国民健康保険組合)や、サラリーマンなどの一般被用者とその家族を対象とした健康保険、公務員、私立学校の教職員とその家族などを対象とした共済組合(保険者は共済保険組合)、75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療制度に大別されます。
健康保険
健康保険には、主に大企業の社員とその家族を対象とした「組合健保(組合管掌健康保険)」と、中小企業の社員対象とした、かつての*政府管掌健康保険、現在の「協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)」に区分されます。
組合健保の保険者は企業が単独で持つ健康保険組合、協会けんぽの場合は、全国健康保険協会が保険者である。協会けんぽは、組合健保を設立しない企業の会社員を対象とした健康保険です。なお、全国健康保険協会は船員とその扶養者が対象の「船員保険」も運営しています。
*政府管掌健康保険
かつての政府管掌健康保険は、厚生労働省の外局である社会保険庁の管轄でしたが、社保庁の解体によって、2008年10月から全国健康保険協会が保険者となり、「協会けんぽ」が運営されている。
健康保険の保険料は、被保険者の月収と賞与に保険料率を掛けて計算し、その金額を会社と被保険者(会社員)で半分ずつ負担します(労使折半)。保険料は年収によって増減します。家族の扶養に入る場合は、年金と同様に、自らの年収が130万円未満であれば、健康保険料を負担せずとも、夫(妻・親)の勤務先の健康保険に加入することができます(「130万円の壁」)。
退職後は、➀健康保険組合を抜けて国民健康保険に加入するか、②本人の希望で、退職した後も保険料を納付することによって、健康保険組合の加入期間を継続します(任意継続)。ただし加入期限は退職後2年間で、保険料は全額負担。③親族が加入する保険の扶養に入る、という選択があります。
共済組合
共済組合も、原則、健康保険と同様の仕組みです(任意継続も含む)。保険者である共済組合も、国家公務員が対象の「国家公務員共済組合」、地方公務員が対象の「地方公務員共済組合」、さらに私立学校の職員が対象の「私立学校教職員共済」に大別されます。
共済組合と健康保険
共済年金は厚生年金に一元化されて以降、共済組合も、被用者保険として健康保険に含めて説明されることが多くなり、その場合、日本の公的医療保険制度には、「(被用者)健康保険」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」の3種類となる。
国民健康保険
国民健康保険(国保)は、個人事業主(自営業)、アーティスト・フリーランス・スポーツ選手・タレント・無業者など、ほかの医療保険の加入条件に該当しない全ての人々を対象とした医療保険制度です。
国保には、被用者健康保険にある扶養者の概念がなく、夫(妻)に扶養されている妻(夫)であっても国保に加入しなければなりません。従って、保険料も世帯ごとに収入や資産額、世帯の加入者数などによって支払い金額が増減し、世帯主が負担します。
また、保険料率も、自治体(道府県)(市町村)の療養の給付にかかる費用によって算定されるので、住むところによって金額が異なります。
当初、国民健康保険の保険者は市町村でしたが、18年度以降、広域化による財政基盤の立て直しを目的として、都道府県も保険者となりました。より正確に言えば、国保の財政運営の責任主体を都道府県に移し、市町村が住民の窓口となるという制度に代わっています。
なお、国民健康保険制度は、ここまで説明してきた国保、すなわち全国の都道府県及び市町村が保険者となる市町村国保(地域医療保険)に加えて、建設・医師・美容・料飲・衣料など業種ごとに組織される国民健康保険組合(国保組合)の2つに分けられます(国保組合は職別国民健康保険(職別国保)という言い方もある)。
後期高齢者医療制度
高齢者保健については、2005年の医療制度改革を受けて、それまでの老人保健制度が廃止され、2008年4月以降「後期高齢者医療制度(長寿医療制度)」が始まりました。同制度は、原則75歳以上の高齢者を対象に新たに創出された保険制度です。
老人保健制度では、国保や健保などの医療保険に加入しながら、医療を受けていて、保険料も加入する医療保険に払っていました。
これに対して、後期高齢者医療制度では、国保や健保などの医療保険から脱会し、後期医療保険制度に移行、決められた保険料を被保険者が負担することになりました。保険料は都道府県によって異なり、75歳以上の高齢者が負担する保険料は、原則、年金から天引きされます。
後期高齢者医療制度の保険者は、都道府県の区域ごとに設置され、すべての市町村が加入する後期高齢者医療広域連合で、保険料の徴収および窓口業務は市町村が行います。
後期高齢者医療制度を運用するための財源は、1割を高齢者の保険料でまかない、公費負担は5割(内訳は国:都道府県:市町村=4:1:1)、そのほかは国保や健保などからの支援金(後期高齢者支援金)で賄います。
支援金は、現在、加入者の平均所得に応じて決める全面総報酬割で決定されるようになり、健保(組合健保)の負担が重くなっています。
患者(後期高齢者)の医療費の自己負担割合は原則1割、現役並み所得者は3割で、現在では新たに「一定以上の所得者2割」が追加されています。高齢者の医療費自己負担は、1973年に無料化されたが、82年に一部自己負担するようになり、現在に至っています。
(参考)前期高齢者医療制度
75歳以上の後期高齢者に対して、65歳~74歳の高齢者を前期高齢者と呼び、この前期高 齢者のために前期高齢者医療制度がありますが、後期高齢者医療制度のように独立した保険制度ではなく、制度間の医療費負担の不均衡の調整」を行うための枠組みとして設けられた制度です。
前期高齢者になっても75歳に達するまでの間は、これまで通り、加入している医療保険から療養の給付や高額療養費等の保険給付を受けることになっています。前期高齢者の窓口自己負担は、原則2割で、現役世代なみの所得がある人は3割となります。
(3) 介護保険
◆ 介護サービスの仕組み
2000年から始まった介護保険は、40歳以上の国民が全員加入する公的制度で、介護が必要になったときに、その費用を給付してくれる公的保険です。
保険者(運営主体)は、全国の市町村と特別区(広域連合を設置している場合は広域連合)です。財源は税金(公費)(=国、都道府県、市町村)と保険料で、半分ずつ負担しています。
40歳になると介護保険に加入が義務付けられ、保険料を支払うことになるが、加入者には第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40歳から64歳までで医療保険の加入者)の分類があります。
保険料は、第1号被保険者が年金から、第2被保険者が医療保険からそれぞれ天引きされます。後者の場合、給与に介護保険料率を掛けて算出され、事業主がその半分を負担します(労使折半)。
また、第2号被保険者は、末期がん、関節リウマチ、脳血管疾患など老化に起因する疾病(特定疾病)により介護認定を受けた場合に限りサービス受給の対象となります。第1号被保険者に制限はありません。
◆ 介護サービスの運用
介護保険のサービスを利用できるためには、本人または家族が、市町村に申請し、介護認定審査会で、要介護認定が必要となります。要支援が出た場合は、地域包括支援センターに、要介護が出た場合は*ケアマネジャーにそれぞれ相談し、介護サービスがスタートします。
*地域包括支援センター
地域包括支援センターとは、介護・医療・保健・福祉などの側面から高齢者を支える「総合相談窓口」で、専門知識を持った職員が、介護サービスや介護予防サービス、保健福祉サービス、日常生活支援などの相談に応じています。
各市町村が設置主体ですが、運営については、自治体の直営の場合と、自治体から委託された社会福祉法人や医療法人、民間企業が行う場合があります(後者が多い)。
1つの地域包括支援センターは、人口2~3万人の日常生活圏域(一般的に中学校区域)を担当できるように設置されており、全国に約5350施設あります。
*ケアマネジャー(介護支援専門員)
介護認定を受けた人の介護の計画書である「ケアプラン」の作成やサービス事業者との調整を行う介護支援のスペシャリストのこと。
◆ 介護保険サービス
現行制度では、介護認定は「要介護1~5、要支援1・2、自立」の8つの等級に分けられ、等級に応じたサービスを受けることができます。当初、「要介護1~5」だけの等級(認定)でしたが、介護保険制度の利用者急増で、2005年に「予防介護」の概念が導入され、現行制度となりました。介護認定で、要支援は、要介護よりも介護度が軽い場合なので、身体機能の低下を予防して要介護にならないために、予防給付というサービスが加えられました。
介護保険は原則として現物給付で、在宅ケアや施設ケアなどを受けることができます。
➀ 在宅ケア(居宅サービス)は、自宅に住む人のためのサービスで、訪問型(*ホームヘルプ、*訪問看護等)・通所型(*デイサービス、*デイケア等)・短期滞在型(*ショートステイ)のサービスを受けることができます(別枠で認知症対応型のサービスもある)。
*ホームヘルプ(訪問介護)
生活援助(掃除や洗濯、買い物や調理など)や身体介護(入浴や排せつのお世話)など
*訪問看護
看護師が健康チェックや、療養上の世話などを行う
*デイサービス(通所介護)
日中、施設で介護を受けること。
*デイケア
施設や病院などで、理学療法士や作業療法士などがリハビリを行う。
*ショートステイ(短期滞在)
数日間、介護施設に滞在すること。その際、施設における食費などは全額自己負担。
② 施設ケア(施設サービス)は、施設に入居するサービスで、特別養護老人ホームや、介護老人保健施設などの施設があります。
そのほか、福祉用具に関するサービス(介護ベッド、車イスなどのレンタル)や、住宅改修のサービス(手すりの設置などバリアフリー化の工事費用に補助金)も利用可能です。
③ 地域密着型サービス
地域密着型サービスは、介護が必要になっても住み慣れた地域で生活が継続できるように、地域ぐるみで支援するしくみで、2006年4月に、新たに介護保険のサービスとして創設されました。サービスの基準、介護事業者の指定、介護報酬なども地域の実情に合わせて市区町村が設定するので、時間や回数などに柔軟に対応できます。
たとえば、夜間だけまたは24時間365日切れ目ない随時対応型介護看護や、認知症の利用者だけの介護などのサービスが含まれます。
(4) 雇用保険
雇用保険(失業保険)とは、企業に雇われる労働者の雇用維持や生活の安定、就職の促進を目的とした保険制度のことで、要件を満たす労働者は雇用主を通じて必ず加入しなければなりません。
保険者は国、被保険者は雇用者で、保険料は雇用者と事業主が折半して納付します。給付の窓口はハローワーク(公共職業安定所)となっています。
雇用保険が適用されると、失業給付を受けることができます。失業給付には、求職者給付、就業促進給付(就業促進手当、就職活動支援費)、教育訓練給付、雇用継続給付があります。また、失業給付だけでなく、条件を満たせば育児休業給付も支給されます。
失業給付
求職者給付:一般労働者、高齢者、短期雇用者、日雇労働者向けの失業給付
雇用維持給付:高年齢雇用継続給付、介護休業給付などが含まれる。
教育訓練給付:厚労大臣の指定する講座を受講・修了した場合に、かかった費用の一部を支給される。
また、失業等給付、育児休業給付以外にも雇用保険2事業と呼ばれる雇用安定事業と労働者の能力開発事業も実施されます。求職者への再就職支援や就労支援、職業訓練などの施策がこれに該当します。
(5) 労災保険
労災保険(労働者災害補償保険)は、労働者の業務上(事務所内や現場)または通勤中による労働者の傷病等に対して必要な保険給付(補償)を行うと同時に、被災労働者の社会復帰の促進等の事業を実施する保険制度です。
なお、労災保険は、雇用保険とともに「労働保険」と呼ぶ場合があります。
保険者は国、被保険者は事業主で、保険にかかる費用は、原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれます。1人以上の労働者を使用する事業所は、業種の規模の如何を問わず、強制加入となります。労災保険は、正社員だけでなく、アルバイトやパート、日雇いなどすべての労働者は労災保険の対象となります。
ただし、会社役員、中小企業主、自営業者、一人親方(個人タクシーや大工など1人で事業を行う人)は、原則、労災対象になりません(特別加入制度を利用できる場合もある)。
労災保険の給付
労災給付において、以下のように、職業病として認められている疾病の範囲が拡大され、労災認定されています(労災=職業病)。
➀職場環境の悪化にともなう熱中症や火傷、凍傷、腰痛、呼吸器疾患
②仕事による心理的負荷によるうつ病など精神的な疾病、それを原因とした自殺
③放射線障害、石綿(アスベスト)にさらされる業務などによる疾患等
④通常の経路で自宅と勤務先・就業場所を往復した際に発生した「通勤災害」など
<公的扶助>
公的扶助は、生活貧困者・低所得者を対象に、健康と最低限度の生活を最終的に保障する制度です。当初「救貧制度」としてスタートし、現在でも、憲法で定められた「生存権」を実現するための「最後のセーフティネット(安全網)」として活用され、その施策は大きく「貧困者対策」と「低所得者対策」の二つに分けられます。
◆ 貧困者対策=生活保護制度
貧困者対策としては、生活保護法に基づいて制定された生活保護制度があげられます。
生活保護法で定める保護の種類は、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助、介護扶助の8種類があります。現金給付が原則ですが、医療扶助と介護扶助においては,給付の性格上,現物給付で行われています。
高齢者世帯が増加(生活保護受給者の半分以上が65歳以上)していることを受けて、医療扶助への給付が多くなっています。なお、生活保護は、一種類(単給)だけでなく、必要に応じて二つ以上の種類の扶助を受けること(併給)ができます。
公的扶助の財源は、保険料ではなく税金(公費)によって賄われ、国が75%、地方が25%の割合で費用を負担します。受給権者(国民)に拠出義務はありません。
公的扶助制度の運営主体は国で、保護基準などの枠組みが決められ、保護の認定、支給や調査などの実務的なことを地方公共団体の福祉事務所が担当します。
ケースワーカーによる資力調査
生活保護は、全ての国民が受けられますが、福祉事務所で申請すると、後日ケースワーカー(社会福祉主事)が*ミーンズ・テスト(資力調査 ) を行い、給付要件を満たすか確認されます。その結果、就労による所得、年金、預貯金、不動産、親族による援助などを含めた世帯の収入が、保護基準によって定められたその世帯の最低生活費を満たしていない場合に,その不足分を扶助費として給付されます。
生活保護の受給中は毎月収入の状況を申告しなければならず、ケースワーカーによる、年に数回の訪問調査も行われます。
*ミーンズ・テストの内容
・就労による収入の調査(失業の場合の「就労の可否」を含む)
・預貯金、保険、不動産等の資産調査
・扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査
・年金等の社会保障給付等の調査など
生活保護の受給者と受給額
生活保護の受給者は、2005年に100万世帯を突破するなど受給資格者が増加し、15年には164万世帯(約204万人)を記録しましたが、その後は、弱含みながらほぼ横ばいで推移しています。
なお、生活保護は、原則として世帯を単位に給付され、単身者は1ヶ月あたり10〜13万円、夫婦2人世帯は15〜18万円の生活保護費が受給できると試算されています。
◆ 低所得者対策
低所得者対策とは、文字通り、所得が低い国民に対する保障制度で、児童手当・特別障害者手当・障害児福祉手当などの社会手当制度、低所得世帯や障害者,高齢者,失業者世帯などを対象とした*公営住宅制度、母子家庭や高齢者、心身障害者向けなど低所得層を対象にした*生活福祉資金貸付制度等があります。
*公営住宅制度
対象者への住宅を提供、または家賃の低い住宅(低家賃住宅)を貸す制度。
*生活福祉資金貸付制度
対象者に無利子または低利子で,生活に必要な資金を貸し付ける制度。
<社会福祉>
社会福祉は、児童や母子、心身障害者、高齢者など社会的弱者とされる立場の人への援助、施設・サービスの提供や、さらに自立支援を行う制度のことをいいます。
日本の社会福祉制度は、戦後、児童福祉法や身体障害者福祉法など*社会福祉六法と呼ばれる法律にもとづいた行政サービスが行われて、「保育・児童福祉」「母子・寡婦福祉」「高齢者福祉」「障害者福祉」の4項目に分けられます。
*社会福祉六法
児童福祉法(47年施行)
身体障害者福祉法(49年)
生活保護法(50年)
知的障害者福祉法(60年)
老人福祉法(63年)
母子及び寡婦福祉法(64年)
◆ 保育・児童福祉
保育・児童福祉は、児童の保育に関する公的支援のことを指し、具体的には、保育所や児童相談所の設置・運営、子ども会への支援、児童館の整備、放課後児童クラブの育成などの施策が実施されています。また、*子ども手当の支給や、公立高等学校の授業料無償化なども実現しています。
*子ども手当
以前の児童手当には所得制限がありましたが、2010年4月から始まった子ども手当には所得制限がありません。中学校修了までの子供1人につき地域ごとに設定された金額が毎月支給されます。
保育所の設置・運営
保育所(保育園)は、厚生労働省管轄の児童福祉施設で、親の就労や病気などの事情により、家庭で保育することのできない乳幼児を、保護者に代わって保育することを目的とします。そのため、0歳から小学校入学前まで預けることができます。
なお、幼稚園は、幼児教育を目的とした、文部科学省管轄の教育機関で、3歳~小学校入学前の子どもが入園可能となります。保育園と異なり、両親の就労状況が条件になることはありません。
保育所の現状
現在、全国で約23,000か所あり、保育所を利用している児童数は約200万人である。保育所の入所を希望している待機児童数も全国で約2万6000人いると試算されている。
近年、増大する保育需要に対応するために、小規模保育所の設置促進、定員や設置基準の弾力化など、様々な規制緩和が行われています。たとえば、企業が従業員のために設けた事業所内保育施設やベビーホテルなど、認可外保育所といわれる施設の拡大や、「*認定こども園」の制度の運営などが該当します。
*認定こども園
06年10月から内閣府の管轄で運営されている制度で、「幼稚園と保育園の良いところを併せ持つ施設」とされています。0歳から小学校入学前までの子どもが入ることができ、保護者の就労に関わらず、子どもの教育や保育を一体的に行います。
児童相談所
児童相談所は、都道府県、指定都市に設置が義務付けられており、全国で200か所以上設置されています。児童相談所には、ソーシャルワーカー(児童福祉司、相談員)、児童心理司、医師がいて、相談業務、調査・診断・判定、それに基づく指導や、一時保護、児童福祉施設への入所措置などを行っています。
保育・児童福祉に関する政府方針
日本では、90年代半ば以降、少子化対策が推進されてきました。94年に「エンゼルプラン」が発表され、「子育て支援社会」に向けた基本的方向と重点施策が定められました。
その後、エンゼルプラン(95~99年)の後継版として、「新エンゼルプラン」(00~04年)、「子ども・子育て応援プラン」(05~09年)、「*子ども・子育てビジョン」(10〜)がそれぞれ策定されました。
名称こそ異なるにせよ、共通する施策は、子育てと仕事の両立支援や、家庭での子育て支援です。そのための具体策として、男性の育児休暇の取得促進、長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進などがあげられます。
*子ども・子育てビジョン
少子化社会対策基本法(03年7月)に基づく少子化社会対策大綱(04年6月策定)が5年ぶりに見直されたことを受けて、2010年に策定されました。社会全体で子育てを支え、個々人の希望がかなう社会の実現を基本理念としています。
さらに、岸田政権は、2023年6月、「異次元の少子化対策」の具体的な中身として、「こども未来戦略方針」を閣議決定し、児童手当や育児休業給付の拡充などの具体策が盛り込まれました。
◆ 母子・寡婦福祉
母子・寡婦福祉は、経済的・社会的・精神的に不安定な母子世帯や寡婦(母子家庭の母だった人)に対して行われる公的援助のことで、児童扶養手当や母子福祉資金貸付制度・母子生活支援施設等があります。
児童扶養手当は、離婚、死別、未婚の母などの理由によって、母親または父親が一人で子どもを育てている「ひとり親家庭」や、父または母が一定程度の障害状態である世帯に対する経済的な支援です。子どもが18歳になる年度まで支給されます。
母子福祉資金貸付制度は、無利子または低金利で、就学支度資金・修学資金・就職支度資金等向けの資金を貸付ける制度です。また、保護を必要とする母子を入所させて生活指導を行う母子福祉施設(母子生活支援施設、母子福祉センター、母子休養ホーム等)もあります。
その他、生活保護制度における母子加算(母子家庭が生活保護を受給すると受けられる加算手当のこと)も財政面から一人親世帯を支えています。
母子世帯の家計
母子世帯の母の8割以上が働いていますが、そのうち常用雇用者は半数以下です。その平均年収は約240万円程度とされ、日本人の平均給与の約440万円と比較すると約半分にしか満たない状況です。全国の母子家庭世帯の平均年収でみても、約370万円と、子どもがいる世帯全体(約815万円)の半分以下の水準にとどまっています。
◆ 高齢者福祉
従来の高齢者サービスは、介護保険制度の導入により、介護保険のサービスとして位置付けられるようになったため、現在の高齢者福祉は、老人クラブ活動への助成や、シルバーハウジング(バリアフリー化され緊急時対応などのサービスのついた公営住宅)や高齢者専用賃貸住宅など高齢者の居住環境整備のような、介護保険の対象とはならない施策が行われています。
高齢者福祉の変遷
戦後の高齢者福祉は、高度成長の下、全ての老人に対する社会保障を担っていた老人福祉法による手厚い福祉が受けられるという体制がとられ、「ばらまき福祉」といわれました。1971年には同法が一部改正され、70歳以上の老人医療費の無料化が行われた。
しかし、その後、財政赤字が膨らんでいったことから、1982年に老人保健法が制定され、高齢者医療事業や保険事業を無料から有料に切り替えられるなど(70歳以上の老人医療費の無料化も廃止)、財政の立て直しが図られましたが、人口の高齢化は更に進んだことから、またもや財政破綻の危機に瀕しました。
そこで、従来、老人福祉法や老人保健法の管轄であった介護部門を別の財源で行うために、1997年に介護保険法が制定されました。
老人保健法は、2008年4月に、高齢者医療確保法とその名称を変更、同日、老人保健制度が廃止され、後期高齢者医療制度が発足しました。また、それ以外の保健事業は、2003年施行の健康増進法へ移行しました。
◆ 障害者福祉
障害者福祉は、障害のある人が自立した生活を目指すための公的支援です。その施策は、*リハビリテーションとノーマライゼーション(共生)の理念を基本とし、障害福祉サービスと、障害者への手当(特別障害者手当・特別児童扶養手当・障害児福祉手当)に区分されます。
*リハビリテーション
障害のある人が自立した生活をできるようになること
*ノーマライゼーション
障害のある人もない人も同じように生活し活動できる社会を目指すこと
障害福祉サービス
2005年成立の障害者自立支援法によって、障害福祉サービス体系が新たに再編され。サービスは「介護給付」、「訓練等給付」、「地域生活支援事業」の3つに区分されました。
介護給付は、ホームヘルプサービスや生活介護などで、介護の支援を受けるものです。
訓練等給付は、自立訓練や就労移行支援など訓練等の支援を受けることができます。
地域生活支援事業は、移動支援や手話通訳等の派遣など、市町村の創意工夫により利用者の状況に応じて柔軟に実施されます。
生涯福祉サービスにおいて、身体、知的、精神障害で別々だったサービスの窓口は一本化されて利用されやすくなりました(実施主体も市町村へ一元化)。
また、サービスの利用料については、当初、原則1割の定率負担とする「応益負担」(利用に応じて負担する)方式が導入されましたが、多くの障害者が低所得世帯に属していることから、相対的に負担が増えました。
これを受け、10年の改正で、「応能負担」(所得に応じた負担)を原則とする利用者負担に見直され、負担額は、利用したサービスの量および所得に着目した負担の仕組み(1割の定率負担と所得に応じた負担上限月額の設定)によって決められています。さらに低所得者には軽減策も講じられています。
障害者への手当
特別障害者手当は、精神または身体に著しく重度の障害を持ち、日常生活において常時特別の介護を必要とする在宅の重度障害者に対して支給されます。
特別児童扶養手当は、20歳未満で精神または身体に障害を持つ児童を家庭で監護、養育している父母等に対して支給されます。
障害児福祉手当は、在宅の重度の障害児で常時介護を必要とする者に支給されます。
障害者福祉制度の沿革
わが国における障害者への福祉サービスは、戦後、「身体障害者福祉法(49年施行)」や「知的障害者福祉法(60年施行)」といったように、障害の種類別に法的な基盤整備が進められてきましたが、1970年には障害種別を超えた「心身障害者対策基本法」が成立しました。
障害者基本法
その後、1993年には同法の改正により、障害者施策の基本となる「障害者基本法」が制定されました。基本理念として、障害者と健常者との共生(ノーマライゼーション)が打ち出され、その実現に向けて、「バリア・フリー」や「ユニバーサル・デザイン」などの浸透した社会が目指されました。
バリアフリーは、障害のある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去するという意味で、物理的な障壁だけでなく、障害者の社会参加を困難にしている社会的、制度的、心理的なあらゆる障壁を除去するという考え方です。
ユニバーサルデザインは、障害の有無にかかわらず、年齢、性別、人種を超えて多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をあらかじめ設計するという理念です。
措置制度から支援費制度へ
2003年には、障碍者行政において、支援費制度が開始されました。これまで、障害者が利用するサービスについて行政側に決定権があった措置制度から、サービスの利用者が自らの意志で選択し、事業者との契約に基づいて利用する支援費制度に、原則切り替えられたのです。「支援費制度」の考え方が、05年の「障害者自立支援法」制定につながりました。
障害者自立支援法
障害者自立支援法(06年施行)は、障害者の支援について定めた法律で、障害者を行政側が助けるという受動的なスタンスから、障害者も社会の一員として自立してもらうことが目指されています。
同法によって、利用者は、窓口が一元化され利便性が高まった一方、利用したサービスの原則1割を自己負担することとなりました(後に修正)。
また、支給決定の客観的な尺度となる「障害程度区分」が導入されました。これは、障害の種類や程度に応じた客観的な指標で、要支援から要介護5までの6段階の区分が設けられました。ただし、受けられるサービスの制限が生じるという問題が指摘されました。
障害者総合支援法
障害者総合支援法(2012年制定、13年4月施行)は、障害者も他の国民同様に個人として尊重され、社会参加の機会が確保される共生社会を実現するために、総合的に支援を行うことを定めた法律です。障害福祉サービスの充実など、日常生活と社会生活を総合的に支援する制度について定められています。
同法は、障害者自立支援法を改正する形で成立しましたが、法文や骨格は基本的に変わらず、基本理念を新たに定め、「障害者」の定義に難病患者等の追加や、「障害程度区分」に代わる「障害支援区分」の導入等が図られました。これは、障害者が必要とする支援の度合いを総合的に示すもので、一番支援の度合いが低い1段階から6段階に分けられています。障害程度区分の問題を解決する形で規定されました。
一方、国際社会においては、障害者の権利保障に向けた取り組みが進められ、2006年には国連総会で「障害者権利条約」が採択されました。この条約は、さまざまな政策分野において、障害を理由とする差別の禁止と「合理的配慮」(障害者が他の者と平等に全ての人権等を享有・行使するために必要な調整等)を求めています。
翌07年に署名した日本は、条約締結に向けて、障害者虐待防止法(11年公布)、障害者総合支援法(12年公布)、障害者差別解消法(13年)などの国内法の整備を進め、14年に同条約を批准しました。
< 公衆衛生>
社会保障制度における「公衆衛生(保健医療・公衆衛生)」は、国民の健康を向上させる目的して、人々が健康で安全な生活を送るための予防や衛生活動を行うもので、その活動の中心は、各自治体の保健所や保健センターです。
公衆衛生は、国民の健康維持を目的とする対人保健と、生活環境の整備を目的とする環境保健を柱としています。対人保健はさらに、保険事業・母子保健・医療サービス・食品衛生・薬事衛生と細分化されます。
◆ 対人保健
保健事業
伝染病予防・疾病予防、感染症対策としての予防接種の実施、がん検診などの各種健康診断、飼っているペットの保護・管理などの活動を通じて、病気を予防する事業を行います。
母子保健
母性の健康の保持増進と、母子手帳を発行し、子どもの健全な発育をサポートします。
医療サービス
医療機関の開設届の受理や、医療機関への立入検査を行います。
食品衛生
食品の安全性を確保するための検査・指導を行います。
薬事衛生
薬局や医薬品販売業者の手続きに関する業務を行うことで医薬品の安全を確保します。また、薬物乱用防止の啓発も行っています。
◆ 環境保健
公害対策、上下水道整備、浸水被害にあった住宅へ消毒作業など、伝染病対策と環境改善による健康の維持向上を図っています。
<参照>
本稿は、拙著「『なぜ?』がわかる政治・経済」で取り上げた内容を、加筆・修正して、まとめたものです。
(投稿日:2025.5.18)