日本の国会と選挙制度②:55年体制と二大政党制

 

日本の国会と選挙制度について、2回に分けて解説していますが、今回は後半の選挙制度についてです。日本の選挙制度の理解のために、55年体制と呼ばれた時代の知識が必要となるので、当時の政治史から入って、選挙制度について解説していきます。

 

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55年体制の成立と崩壊>

 

◆ 55年体制と金権政治

 

1955年、革新政党として、それまで分裂していた左派社会党と右派社会党が統一され日本社会党(社会党)が誕生しました。これを受けて、保守政党でも、吉田茂の自由党と鳩山一郎の日本民主党が合併して自由民主党(自民党)が結成されました。これを「保守合同」といいます。

 

こうして、自民党と社会党の二大政党が政権獲得を目指しましたが、実際には「保守合同」以後、93年の衆議院選挙で過半数を割るまでの38年間、自民党が一貫して政権党でした。55年から93年まで自民党が継続して与党で、社会党が野党第一党であったこの政党システムを「55年体制」と呼びます。

 

二大政党制とは、二大政党が互いに第一党になって政権を獲得し合う場合に使われます。ところが、日本の場合には、55年から92年まで自民党が政権を担い、社会党は「万年野党」と揶されました。

 

ゆえに、当時の日本の政党制度は「二大政党制」ではなく、「一党優位制」、と呼ばれました。また、社会党の議席数は自民党の約半分ぐらいでしかなかったことから、「1と1/2政党制」という言い方もありました。

 

自民党(自由民主党)が一党優位体制を続けられた背景は、同党が、特定の階層や社会的グループを代表するのではなく、あらゆる階層の国民を代表する包括政党(キャッチ・オール・パーティー)であったことや、当時の大政党に有利な中選挙区制という選挙制度(次項で詳細)にあったとされます。

 

一方、55年体制下においては、途中から、*派閥政治や金権政治が批判されるようになりました。実際、*ロッキード事件や*リクルート事件など金にまつわるスキャンダルが後を絶ちませんでした。選挙においても、一つの選挙区から2~5名を選出する中選挙区制(後述)では、自民党候補が複数擁立されます。その自民党内の複数候補というのが各々派閥から選出された候補者となることから、派閥間の資金獲得競争が、選挙時だけでなく日々の政治活動においても激化していきました。

 

*派閥

党の複数の有力者の下に党員が集まってできた党内グループ。派閥の資金力が中選挙区制で多くの議席を獲得する原動力となった。

 

*ロッキード事件

76年、アメリカ航空大手ロッキード社の旅客機受注をめぐって明るみになった汚職事件。田中角栄元首相の逮捕にまで発展した。

 

*リクルート事件

88年、リクルート社から、関連会社リクルート・コスモス社の未公開株を賄賂として受け取った政治家や官僚が逮捕された汚職事件。

 

そこで、金のかからないクリーンな政治を実現するための政治改革の必要性が叫ばれるようになります。また、自民党の「一党支配」にくさびを打つために、社会党に代わる政党の出現が期待され、日本にも米英のような二大政党制を志向する政界再編の機運が高まっていきました。

 

こうした背景下、時の宮沢政権(91年11月成立)は、公約に選挙制度の改革を掲げ、小選挙区制を採用することを目指しました。しかし、その導入の是非をめぐり自民党内が分裂、政治改革関連法案が廃案となり、宮沢内閣へ内閣不信任案が可決されました。これを受け、宮沢首相は解散総選挙に打って出ましたが、自民党は過半数割れで宮沢内閣は総辞職し、日本新党の細川護熙(もりひろ)を首相とする非自民連立政権が誕生しまそた。自民党は55年の結党以来、初めて野党に回ることになったのです(55年体制の終焉)。

 

 

◆ 細川政権による政治改革

 

細川政権は、94年に選挙制度改革関連法案を成立させました。公職選挙法は改正され、衆議院議員選挙で中選挙区制を廃止、小選挙区比例代表並立制(後述)が採用されることになりました。

 

また、公職選挙法以外に、金権政治を改める、お金のかからないクリーンな政治を実現する、以下のような法律の制定や改正がなされました。

 

政党助成法の制定

政党助成法は、選挙資金の一部を国が助成することになった法律で、公的資金(交付金=税金)が政党名に配分されるようになりました。交付金は、国勢調査人口に250円をかけた額(約309億円)です。これを議員数と得票数とに応じて各政党に交付されます。

 

ただし、すべての政党が対象ではなく、政党助成金の交付対象政党と認められるには、国会議員が5人以上いるか、直近(前回)の国政選挙で2%以上の得票率を得ていることが必要になります。

 

政治資金規正法の改正

政治家個人への企業・団体献金が禁止されました。ただし、資金管理団体を通じての献金は可能となっています。

 

資金管理団体は、政治家1人につき1つ認められる団体で、現在、資金管理団体への企業・団体献金は、全面禁止され、個人から一資金管理団体へ年間150万円以内で献金が可能になっています。

 

政治家個人への献金が禁止された企業・団体は、政治資金団体を通じて、政党へ献金できます。

 

政治資金団体は、政党への資金援助受け入れのための窓口で、企業・団体は、自民党であれば、同党の政治資金団体である一般財団法人「国民政治協会」へ寄付できます。また、企業は、政党の指定する政治資金団体以外への寄付が禁止されています。なお、個人は年間2000万円まで政治資金団体への献金が可能です。

 

55年体制後の政治

なお、55年体制を崩壊させた非自民の連立政権(共産党を除く)は、細川首相が、佐川急便グループからの借入金処理問題で、1年も満たずに退陣し、後を引き継いだ羽田内閣も、社会党が離脱したことから空中分解しました。

 

94年からは、その社会党が自民党と連立を組んで、自民党は与党に復帰しました。村山社会党政権の後、橋本自民党政権が誕生し、自民党は名実ともに政権党に返り咲きました。ただし、55年体制時のように、一党で単独過半数を保持することはできず、他の政党と連立を組んでの政権運営となっています。

 

では、次に、こうした第二次世界大戦後や冷戦後の政変をへながら生まれた、日本の選挙制度についてみていきましょう。

 

 

<選挙制度の分類>

 

選挙制度は大きく分けると、選挙区制と比例代表制に分けられ、選挙区制も、一選挙区の当選者数を基準に小選挙区制と大選挙区制に分類されます。小選挙区制は1選挙区から1名を選出される制度で、大選挙区制は1選挙区から2名以上選出されます。

 

ただし、日本ではかつて、中選挙区制が採用されていました。中選挙区制は大選挙区制の一種で、1選挙区から2~5名程度選出されます。したがって、日本で大選挙区制というと1選挙区から5名以上選出される制度となります。。

 

なお、戦後初の総選挙は大選挙区制で実施され、日本国憲法制定後、初の総選挙以降、1994年まで中選挙区制で、現在、小選挙区比例代表並立制が採用されています。戦前は1925年から中選挙区制でした。

 

◆ 小選挙区制

 

小選挙区制においては、多数党(大政党)が有利になります。たとえば、中選挙区制で1区3人が選出される選挙区が、小選挙区制に変わり3区1人の選挙区となると、各区の候補者は、派閥の代表者ではなく、党を代表する公認候補者が立てられ、人員や資金など組織力がある大政党が全議席を獲得できる場合が出てきます。

 

そうすると、小選挙区制を採用すれば、二大政党制に近づき、政局は安定し、かつ派閥の力も弱くなり、金のかからない政治が期待されます。

 

逆に、少数党が議席を得られないということは民意が反映されないという欠点にもなり、結果的に死票(投票したのにその候補者が落選してしまった場合の票)が多くなります。一選挙区で1人しか当選しないため、それ以外の候補者に投票した票はすべて「無意味」になってしまうからです。また、小選挙区制の場合、ゲリマンダーが起きるという独特の問題も指摘される。

 

ゲリマンダーとは、与党(政権党)が自党に有利な選挙区割りを行う(選挙区境界線を引く)ことをいいます。例えば、与党が前の選挙区で、僅差で敗れた選挙区があったとすると、次の選挙では、与党支持者が多い圧勝した選挙区の地域の一部を、惜敗した選挙区に組み込んで、勝利を目論むといった行為が該当します。

 

◆ 大選挙区制(中選挙区制)

 

これに対して、大(中)選挙区制の場合は、複数候補が当選するので、それだけ死票(しにひょう)は少なくなり、少数政党も代表を選出できて民意が反映されます、また、派閥間の戦いにもなる選挙戦では「同士討ちの危険」がある…など、小選挙区制と逆のことがおきます。

 

なお、大選挙区制は制度上、投票用紙に何人の名前を記すかによって、単記式(1人)、制限連記式(2人以上議員定数未満)、完全連記式(議員定数と同数)に区分されます。

 

◆ 比例代表制

 

比例代表制は、政党の得票数に比例して議席が配分される制度です。少数政党で得票数が少なくても、1、2議席は獲得できる可能性がでてくることから、死票が少なく民意が反映される…など、特徴が大(中)選挙区制と類似していることが多くあります。

 

比例代表制は、単記移譲式と名簿式に分類され、日本は名簿式を採用しています。

 

名簿式とは、選挙人に、政党があらかじめ作成した候補者名簿に対して投票させる制度で、絶対拘束名簿式(拘束式)、単純拘束名簿式(非拘束式)などに分けられます。

 

単記移譲式では、各有権者はすべての候補者に優先順位をつけて投票します。すべての票はまず一位の候補者へ集計され、開票の結果、第一順位の候補者の得票数が予め設定された当選基数(当選するために必要な得票数)以上に達していれば当選となります。基数以上の票(剰余票と落選者の票)を次位の候補者に順次移譲し、当選者を決定していきます。

 

比例代表制の当選者の決定方法には、ドント式とサン=ラグ(サンラゲ)式とがあります。日本においてドント式が採用され、各党の得票数を整数1→2→3→4……で割っていってその答え(商)の値が大きい順に議席が決定されます。サン・ラグ式は、各党の得票数を奇数(1→3→5)で割り算していく方法で、中小政党に有利な方法と言われています。

 

多数代表制と少数代表制

多数代表制とは、各選挙区で多数票を獲得した候補者のみを当選とする仕組みをいい、小選挙区制が該当します。これに対して、少数派にもある程度の議席を得ることができる選挙制度を少数代表制といい、大(中)選挙制や比例代表制が該当します。ただし、厳密に言えば、大選挙区制の完全連記制は多数代表制であるとする見方もあります。

 

 

<衆議院の選挙制度>

 

衆議院の選挙では、小選挙区比例代表並立制(定数465人:小選挙区289人、比例代表176人)が採用されており、有権者は選挙区の候補者と比例代表の候補者に投票します(1人2票制)。(制度の開始時は小選挙区300人、比例代表200人)

 

候補者は、小選挙区と比例代表の両方で重複立候補が可能で、小選挙区で落選しても比例代表で復活当選することができます。その場合、比例代表での名簿記載順位と小選挙区での惜敗率(小選挙区での落選者の得票数を当選者の得票数で割り算した値)によって決まります。ただし、*供託金が没収されるほど得票数が少ない場合、具体的には、得票数が有効投票総数の10分の1未満の復活当選は認められていません。

 

*供託金

冷やかしや売名行為などによる候補者の乱立を防ぐために、選挙に立候補する際に一時的に納めるおカネ。金額は衆議院の小選挙区と参議院の選挙区で300万円、比例代表は600万円。一定の得票に達すれば返ってくるが、それ以下だと没収される。

 

衆議院の比例代表については、全国を11ブロックに分け、ブロックごとに人口比例で定められた定数をドント式で各政党に比例配分されます。その投票方式は、拘束名簿式が採用され、各党は比例候補者を当選させたい順にリストアップして、名簿を作成しておきます。これに対して、有権者は政党名だけを書いて投票します(候補者名を書いたらその票は無効になる)。当選者は名簿の順に確定していきます。

 

アダムズ方式の採用

2016年の衆院選挙改革関連法によって、小選挙区の都道府県別、比例代表のブロック別の議席配分に関して、アダムズ方式が導入されました。

 

アダムズ方式とは、アメリカの第6代大統領アダムズが提唱したとされることから命名され、人口比が正確に反映されやすく、「1票の格差」問題の是正に有効な制度だといわれています。

 

各都道府県の人口を「ある数」で割って出た値の合計が総定数に一致するよう「ある数」を調整しながら、各都道府県の議席数が決まります。

 

例えば、総議員定数6議席を、人口30万人と20万人と10万人の3市に割り振る場合、3市の人口を仮に、5万で割ると、商(答え)はそれぞれ6と4と2となり、これを合計すると12となり、定数6を上回ってしまいます。そこで割る数を10万にすれば、商はそれぞれ3と2と1となり、総定数6と一致するので、3県にそれぞれ3議席、2議席、1議席を振り分けることになります。

 

アダムズ方式は、2020年国勢調査の結果に基づき導入されることが、実際の選挙に適用されたのは、2021年の総選挙から採用されています。導入後、衆院選の小選挙区は15都県で「10増10減」、比例代表ブロックも「3増3減」と変更されました。

 

なお、総選挙というときは、衆議院議員選挙をさします(参議院は3年ごとに半数改選なので全員が選挙されない)。

 

一方、日本の小選挙区比例代表並立制以外にも、併用制と連用制と呼ばれる制度があります。

 

小選挙区比例代表併用制                                               

最初に、全議席を比例代表の総得票に応じて各党に配分し、小選挙区の当選者が優先的に議席を得て、残りを比例名簿登載者に割り振られる制度で、ドイツで採用されています。

 

小選挙区比例代表連用制

最初に、小選挙区制部分を開票して当選者を決定した後、比例代表制部分の開票の際に、「小選挙区の当選者プラス1」で順に割り算をしていきます。小選挙区で議席が少なかった政党ほど優先して比例代表の議席が配分されることになります。

 

 

参議院の選挙制度>

 

参議院選挙では、選挙区制と比例代表制(定数248人:選挙区148人、比例代表100人)が採用されています(制度の開始時は、選挙区150人、比例代表100人)。

 

現行制度の骨格は、1983年の公職選挙法改正で定まりました。このとき、参議院議員選挙は、「地方区と全国区」から「選挙区選挙と比例代表制」へ変更されました。

 

選挙区選挙は、各都道府県を選挙区としますが、鳥取県と島根県、徳島県と高知県が統合されて合区となり、全国45選挙区となっています。全区を、人口などを考慮して2、4、6、8、12人区に分けています。ただし、参議院は任期6年で3年ごとに半数改選なので、実際の選挙では1、2、3、4、6人区となります。

 

比例代表制は、全国1ブロックで実施され、その投票方式は2001年以降、非拘束名簿方式(それ以前は拘束名簿方式)です。非拘束名簿方式では、有権者が政党名または候補者名を書いて投票する制度で、以下の手順で選出されます。

 

  • 各政党は、順位をつけない候補者名簿を作成。
  • 投票後、政党毎に候補者名と政党名での投票数を合計し、各政党の獲得議席を決定。
  • 各党において、個人得票数の高い候補者から議席が配分される。

 

特定枠制度の導入

2019年の参院選(比例代表)で初めて導入された。これは、政党があらかじめ「優先的に当選人となるべき候補者」を指定すると、その候補者は、得票数にかかわらず、名簿の上位に位置づけられる制度です。なお、特定枠を活用するか、活用した場合何人に適用するかについては、各政党の判断に委ねられています。

 

比例代表選出議員の身分

政党への投票をもとに選出される衆参の比例代表選出議員が、当選後に所属政党を離党したり除名されたりしても、それだけで直ちに議員の身分を失うわけではありません(無所属の議員として活動できる場合もある)。しかし、当選当時の選挙で競合していた他の(名簿届出)政党に移籍できません。もし移籍した場合は、議員としての身分を失いますが、競合していなかった他の政党への移籍の場合、議員の身分は剥奪されません。

 

 

<選挙・投票に関する諸規定>

 

◆ 選挙運動

・事前運動の禁止(*公示日から投票日までの選挙運動期間の遵守)

・個別訪問の禁止

・有権者は、ウェブサイト等を利用した選挙運動ができるが、電子メールを利用した選挙運動ができない。

・候補者・政党等は、*ウェブサイト等・電子メールを利用した選挙運動ができるが、ホームページや電子メール等を印刷して頒布してはいけない。

 

*公示

公示とは、選挙期日を告知することで、衆議院の総選挙と参議院の通常選挙で使われる。なお、地方選挙などそれ以外の選挙では告示という。

 

*ウェブサイト等とは?

ホームページ、ブログ、ツイッターやフェイス ブック等のSNS、動画共有サービス、動画中継サイトなどが含まれる。

 

◆ 連座制

連座制とは、候補者本人のみならず、候補者等の選挙運動に一定の関係をもった人が買収など選挙違反で刑に処せられた場合には、たとえ候補者が選挙違反行為に関わっていなくても、候補者の当選を無効にする制度です。連座制が適用されると、5年間は同じ選挙で、同じ選挙区から立候補できなくなります。

 

◆ 投票

・ネット投票(インターネットを使った投票)は実現していない。

・*電子投票制度は地方選挙に限定して導入されている。

 

*電子投票(電磁的記録式投票

地方自治体が条例で定めれば可能で、有権者は投票所に設置された端末を使って投票する(投票機のオンライン接続は禁止)。

 

成年被後見人の選挙権

成年被後見人(精神上の障害により判断能力を欠くとして、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人)にも選挙権が認められています。

 

◆ 在外選挙制度

国外に居住する日本人のための投票制度で、当初、衆参の比例代表選挙だけでしたが、現在では選挙区の選挙でも投票できるようになっています(対象は補欠選挙を含むすべての国政選挙)。ただし、地方選挙は投票できません。また、在外公館での投票に限定されず、郵便投票も可能になっています。。

 

また、在外選挙期間は、投票できる期間・時間は、原則として選挙の公示日の翌日から選挙期日の6日前(変更あり)までとされています。

 

 

<投票方法>

 

◆ 期日前投票

選挙期日前であっても、選挙期日と同じように、自分が住んでいる市町村で投票(投票用紙を直接投票箱に入れて投票)できる制度で、期日前投票をする理由は問われません。

 

◆ 不在者投票

公示日から投票日までの選挙期間中に、住所地の投票所で投票することができない場合、投票日の前日までに投票する制度です。

 

住所地以外での不在者投票

仕事や旅行など何らかの理由で、住所地にいない有権者が、他の市区町村の選挙管理委員会で投票する制度で、滞在先の市区町村の選挙管理委員会に、住所地の選管から取り寄せた投票用紙を持参して、投票日前日までに不在者投票します。

 

指定病院などでの不在者投票

都道府県の選挙管理委員会が指定する病院や老人ホームなどの指定施設内で不在者投票をする制度です。

 

郵便等による不在者投票

身体の重い障がいや要介護などにより投票に行けない人が利用する制度で、交付された投票用紙を自宅などで記入し、選挙管理委員会に郵送します(郵便投票制度)。

 

郵便等による不在者投票に関して、障害などにより自書できない人は、代理人によって投票に関する記載をしてもらうこともできる代理記載制度が設けられています。

 

また、国外の不在者投票には、洋上投票制度、南極投票制度、在外投票などの制度があります。

 

洋上投票制度

洋上投票は、指定船舶に乗船中の日本人船員の不在者投票制度の一つで、船員(実習生も含む)は、ファクシミリ装置を用いて投票を送信する方法が可能になっています。対象となる選挙は衆参の国政選挙です。

 

南極投票制度

南極投票は、南極観測隊の隊員のための不在者投票制度で、選挙期日の公示の翌日以後、南極の昭和基地からファックスを使って投票できます。対象は衆参の国政選挙です。ファックス投票の場合、ファックスが置かれた通信室が「投票所」となります。

 

自衛官等の国外不在者投票制度

海外派兵の自衛隊員は、「*特定国外派遣隊員」として、「国外における不在者投票」制度を利用することができます。選挙期日の公示・告示の翌日以後、宿営地に設けられ臨時の投票所などで、投票の記載をし、投票用紙を投票用封筒に入れて隊長へ提出します。日程や場所は隊長が定め、隊長は各選挙管理委員会へ投票用封筒を送致します。対象となる選挙は、全ての国政選挙と地方選挙(市長選挙・知事選挙など)です。

 

*特定国外派遣隊員

総務大臣により「特定国外派遣組織」として指定された組織に属する者。特定国外派遣組織として指定されうる組織には、国際平和協力隊、国際緊急援助隊、海賊対処法に基づいて国外に派遣される自衛隊の部隊などが含まれる。

 

 

<関連投稿>

日本の国会と選挙制度➀:国会の立法活動と仕組み

 

<参照>

本稿は、拙著「『なぜ?』がわかる政治・経済」で取り上げた内容を、加筆・修正して、まとめたものです。

 

(投稿日:2025.5.5)

むらおの歴史情報サイト「レムリア」