太陽光や地熱など自然を利用した再生エネルギーについて、連載でお届けしています。さまざまな種類がある再生可能エネルギーですが、今回は、水力発電です。水力発電は、前回取り上げた風力発電とともに、太陽光発電に次ぎ、積極的に推進されています。水力発電が脱炭素社会の実現にむけて、いかなる役割を担えるのか見てみましょう。
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<水力発電の仕組み>
◆ 水力発電とは?
水力発電とは、流水や落水といった水の力を利用した発電のことをいいます。具体的には、河川にダムを設置するなどして、水が高いところから低いところに落ちる際に生まれた水の流れる勢い(位置エネルギー)を利用することで、水車を回転させ、そこから得られた動力で発電機を動かし、電気をつくります。水力発電は、言わば、高いところにある水の位置エネルギーを電気エネルギーに変換する発電方法です。。
発電機は、タービンを回転させる火力発電や風力発電と同様、電磁誘導を利用した回転力から電気エネルギーを得る機械です。
電磁誘導とは、コイルなどの導体を貫く磁束 (じそく)(磁場を表現する際に使用される磁力線の束)が変化したときに、その導体に電位差(電圧)が生じる物理現象で、電位差によって流れる電流を誘導電流といいます。
導線につないだコイルの周りで磁石を回転させると、コイルを貫く磁束が変化するため、誘導電流が発生します。発電機はこの仕組みを利用して、回転力を電力に変換しています。
◆ 水力発電の種類
水力発電は、どのように水の落差を作るか、水の利用方法、水車の種類などにより、いくつかに分類することができますが、その種類は大きく、➀ 構造物での分類と ② 運用方法での分類があります。
構造物での分類→ダムの構造などによる分類
運用方法での分類→水の流れをコントロールする方法による分類
➀ 構造物での分類
構造物での分類とは、ダムの構造などによる分類です。水力発電に欠かせない水の流れ、落差の作り方による区分で、水力発電は、構造物により「ダム式」「水路式」「ダム水路式」の3つに分類できます。
ダム式
ダム式の水力発電とは、その名の通りダムを利用した水力発電です。ダムとは、山間部にある大きな川に対して、建てられた人口の壁を指します。これにより、川の流れはせき止められ、人口の貯水池ができあがります。
ダムの場合、山間部で大雨があったとしても川に流れる水の量を調整でき、氾濫を防ぐ役割を果たしています。
ダム式の水力発電は、ダムの付近に発電所を設け、水車を回転させることで発電します。まずダムでせき止めている水を放流します。これにより水の流れを生み出し、ダムのすぐ近くにある発電施設で電気を生み出します。どの程度の水をいつ放流するのかをコントロールできるのがダム式のメリットと言えるでしょう。
水路式
水路式の水力発電は、ダムではなく堰堤(えんてい)を活用した方式です。堰堤とはダムと同じく、山間部にて川の流れをせき止める目的で建設される人工の壁を指します。
堰堤はダムに比べても規模が小さいため、貯水としての役割は薄いのですが、1)川の流れを変えて他の場所に引く、2)川の流れを弱くする、3)土砂が流出するのを防ぐといった機能を持っています。
水路式の水力発電ではまず、堰堤を用いて独自の川の流れをつくります。具体的には、河川の下流に発電所を設置し、上流には取水堰(しゅすいぜき)を設けて流れを分岐させ、ます。その際、本来の河川の流れよりも緩やかな勾配の水路を引き、発電所において急勾配で流水・落水させて水車を回転させ発電したのちに、水は元の河川に戻します。
ダム式に比べて、川の水量、水の流れを生み出す落差も弱いため、中小規模の水力発電として利用されています。
ダム水路式
ダム水路式とは、ダムと水路を用いることで、水車を回転させて発電します。ダムによってせき止められた貯水池を用いて、人工的に水の流れを作り発電を行います。ダムで得られた高低差だけでなく、水路を引くことでさらに高低差を得られる場合に採用されます。
ダムによる貯水能力と発電量のコントロール、水路による落差増大というダム式と水路式を掛け合わせた水力発電方式と言えます。
そのため、水力発電の中でも高い発電能力を持った方式でもあり、国内の大規模な水力発電施設の多くはダム水路式を採用しています。ダム水路式は貯水と発電の場所を別にできるため、立地条件を調整しやすい特徴があります。
②水の利用方法での分類
水の利用方法での分類とは、水の運用方法(コントロールの仕方)による分類です。各方式(ダム式、水路式、ダム水路式)によって得られた水の流れを、どのように利用して発電を行うのかという観点から区分するもので、「流れ込み式(自流式)」、「調整池式」・「貯水池式」、「揚水式」に分類」できます。
流れ込み式(自流式)
流れ込み式(自流式)の水力発電では、流れてきた水をそのまま引き込んで発電に用います。この場合、雨がたくさん降り、川が増水すると発電量は大きくなる一方で、降水量が低く、川全体で渇水気味になると、流れてくる水も少なく発電量も少なくなってしまいます。
流れ込み式は、発電所側で水の流れを操作しないため、発電量を調整できませんが、河川の流れがある限りは定常的に発電できるため、ベース部分の需要を担うことが多く、小規模な水力発電施設で採用されています。また、大きなダムや発電所の建設が必要ないため、発電施設の建設コストが抑えられる利点もあります。
調整池式と貯水池式
調整池式と貯水池式は、発電用水を貯水して発電する手法です。電力需要が少ないときにダムを用いて貯水しておき、電力需要が多くなると溜めた水を多く流すなど、電力需要の変動に対応します。両者の違いはその規模にあります。
調整池式
調整池式の水力発電では、河川から流れてきた水を調整池に貯水して、発電量を調整しますが、基本的には、1日〜1週間分の水を発電用水として貯水する、短期間の電力需要に対応する小規模な発電方法です。
貯水池式
これに対して、貯水池式は、季節間で調整を行うために設置されたダムで作り出された貯水池を利用して水力発電を行う大規模な発電方法です。調整池式と比較して、貯水池式では貯水できる水の量が大きくなります。1日~1週間単位でしか水の放流量を調整できない調整池式と異なり、貯水池では年間を通じて貯水量と放流量(発電量)を調整できます。たとえば、台風や梅雨などの降水量が高い時期に大量の水を貯水し、降水量が少ない時期には、貯めた水を放流して発電を行うといった手法がとられます。
揚水式
揚水式(ようすいしき)とは、川の上流と下流にそれぞれダムを設置し、上のダムから流れてくる水の力を利用して下流にある発電機で発電する方法です。
揚水式では、さらに、電力需要の変動に対応するため、下流にあるダムの水を電気の力で上流まで引き上げ、もう一度上流の水を放出し、下流で発電することが可能になります。両ダム間の水のやり取りで電力需要を調整するのです。
この方法は、基本的に調整池式や貯水池式と同じですが、揚水式がこれらと異なる点は、下流にあるダムの水を電気の力で上流まで引き上げられる点です。下流にある水を上流に引き上げることで、もう一度上流の水を放出し、下流で発電することが可能になります。
揚水式の水力発電設備があれば、電力が余っている時間帯(電力需要の低い低負荷時)には、余剰電気を用いて上流の調整池に水を引き上げ(くみ上げ)ておき、電力需要が高くなり電気が不足していると、その水を放出して発電を行えるようになります。
揚水式は、電力需要の変動に対応するための方式で、水力を用いた一種の蓄電池であるともいえます。
現在日本では、発電量を調節できるのは火力発電のような燃料を燃やして発電する方法に限定されており、様々な方法で発電した電気を長時間・大容量蓄電できません。揚水式の水力発電は、そうした再生可能エネルギーの課題に対応することが可能となります。
<水力発電の特徴>
◆ 日本に適した水力発電
今みてきたように、水力発電を行うためには、一般的に、降水量や山の傾斜が必要となり、実施できる場所は限られていますが、日本は、山が多い地形で、水資源も豊富です。日本の降水量は世界平均の2倍で、日本は世界的にも降水量が多い国です。また、山岳地帯を流れてくる河川によって、水力発電に必要な水の流れも生まれます。
水力発電の歴史自体は古く、明治時代初期から火力発電と同様に日本の主要発電方法の一つとして利用されてきました。
水力発電が国内でよく利用されているのは、年間降水・降雪量が2000mm程度を記録する北陸地方(富山県・新潟県)や中部地方(長野県・岐阜県)で、主に山岳地帯のダムや貯水池がある場所に中〜大規模の水力発電設備が設置されています。最近では河川を利用した小規模水力発電設備も整備され始めています(後述)。
このように、日本は、水力発電の条件を満たした場所が多く、水力発電に適した国と言われています。これは、他の再エネ発電と比べても言えることです。
たとえば、太陽光発電の場合、大規模発電を行おうとすれば、大量の太陽光パネルを設置できるほどの土地が必要となりますが、山岳地帯が多い日本には、これに必要な平地は多くありません。
◆ 水力発電のメリット
安定した供給源
水力発電は、他の再エネと比較してみれば、天候や季節の影響を受けにくく、発電量が安定しています。一般的に、自然由来の再生可能エネルギーは、発電量が天候に左右されます。水力発電も降水量の影響を大きく受けることになりますが、風力発電や太陽光発電に比べると、天候の影響は小さく、電力の安定供給性にすぐれています。
たとえば、太陽光発電は、太陽が出ている昼間は問題なく発電できても、夜間の発電量は落ち込み、夜間の電力供給には適していません。風力発電についても、偏西風のように、確実な風力を確保できるとは限らないことが不安要因です。
これらに比べて、調整池や貯水池が設けられた水力発電施設では、水を貯めておくことで電力需要の多い時期・時間帯に合わせて発電をすることができるなど、近隣の電力需要を踏まえて安定、かつ柔軟に発電が行えます。
エネルギー変換効率が高い
再生可能エネルギーの中で最も高いエネルギー*変換効率を持つのが水力発電で、風力発電や太陽光発電のエネルギー効率が10%から40%であるのに対して、水力発電は約80%程度あります。
水力発電 80%
火力発電(LNG)55%
ガスタービン 35%
原子力発電 33%
風力発電 25%
太陽光発電 15〜20%
地熱発電 8%
バイオマス発電 1%
*変換効率
元のエネルギーの総量に対してどれだけ効率的に目的のエネルギーに変わったかを示す割合のことをいう。
CO2の排出が少ない
水力発電は、再生可能エネルギーであるため、発電時にCO2を排出しません。発電時に石炭や石油を燃焼するため、大量のCO2を排出する火力発電とは対照的です。
発電時のCO2排出量
石炭864g/kWh、石油695g/kWh、天然ガス476g/kWh、水力など再エネ0g
ただし、発電設備等の建設・燃料輸送・精製・運用・保守等のために、多少のCO2(二酸化炭素)の排出はありますが(キロワット当たり11g)、次のように、他の再生可能エネルギーと比べても下回っています。
設備の設置や運用時等のCO2排出量
太陽光38g/kWh、風力26g/kWh、地熱13g/kWh、水力11g/kWh
その意味では、水力発電は、いわば、もっともCO2を出さない発電エネルギーです。
出典:中国電力 環境問題について考えてみよう
発電コストや管理コストが安価
水力発電は、ダム建設などの初期費用(初期投資)が非常に高額ですが、一度建設してしまえば、水を動力源とするため、化石燃料(石油、石炭など)のような燃料費がかかりません。また、原子力発電や火力発電と比べ、発電所の管理・維持にかかるコストが比較的安価です。そのため、長期的な運用でコストを回収できます。
このように、水力発電は、日本にとって普及しやすい環境と利点があるにもかかわらず、水力発電による発電量の割合は、7.6%(2022年度)と、全体の1割未満でしかありません(普及率等については後述)。水力発電が大きく普及していない背景として、多くの課題が指摘されています。
◆ 水力発電のデメリット
天候の影響
水力発電は、自然エネルギーという性質上、その発電量は降水量に左右されます。極端に雨量が少ない場合には、発電できなくなることも考えられます。
決して発電量は大きくない
たしかに、水力発電は、安定した発電量を誇りますが、発電量そのものは、火力発電と比べてもそう大きくはありません。
資源エネルギー庁が公表している電力調査統計によれば、発電所1基あたりで発電量を換算すると、水力発電の約436万kWhに対して、石炭火力発電の場合、約5億kWh発電しています(2022年4月)。したがって、水力発電で、都心部の電力をまかなうといった利用方法は難しいとされています。
初期費用が膨大
水力発電は、発電や管理にかかるコストは他の再生可能エネルギーと比較しても安価ですが、新たに水力発電所を作る場合、最初に必要となるダム建設には森林の開拓などを含めて、膨大な費用がかかります。このため、新規参入のハードルが高くなります。また、ダムは長い年月とともに底に土砂が蓄積されていくため、定期的に土砂を撤去するメンテナンスが必要となることも考慮しなければなりません。
発電所の設置場所が限定され、送電が非効率
水力発電設備を建設できるのは、大きな河川が流れる場所か、ダムや堰堤付近の場所に限られるため、山間部が最も効果的に発電・運用できます。
しかし、水力は、古くから活用されてきたことから、ダムや発電所に有望な土地の多くがすでに開発済みになっており、新たに(大規模な)土地を見つけるのが困難な状況にありす。
そうすると、現在残されている開発地点は奥地化・小規模化していく傾向にあります。山間部の水力発電施設は、電力需要の高い都心部からも距離が離れているため、水力で発電した電力を需要のある場所へ送電するのに、ある程度の送電ロスが発生するなど非効率となってしまいます。
それが、奥地化により、仮設や進入路の整備費、送電設備整備費等が、一層かさむことなども想定されています。さらに、近隣住民向けに送電しようとしても、発電所付近に住んでいる住民も多くありません。
法規制(多目的ダム法の規制)
多目的ダムは,発電だけでなく、洪水調節,灌漑・水道,工業用水道など2つ以上の目的を持つダムを言います。
特定多目的ダム法は、こうした複数の目的を持つダムを、一貫して計画・建設・管理するダムに関する法律です。同法において、こうしたダムの使用用途は建築段階で決定しておかなければならないと規定されています。
そうすると、場合によっては、たとえ大規模なダムで、水力発電によってある程度の発電量が見込めたとしても、水力発電として利用できないという事態が全国に発生していると指摘されています。
バックアローション問題
バックアローションとは施設建設において、利益を得る者が、建設費用を負担すべきだとする原則で、これを後から参加した利用者に適用する費用負担の原則や実務慣行が適用され問題化しています。
これにより、既にあるダムを利用しようとする場合、水力発電で得た利益を「ダム建設費用」として支払わなければなりません。
電力会社は、せっかく、既存のダムを利用して、ダム建設費用を節約しようとしても、バックアロケーションによって、実質的にダム建設費用を負担することになり、採算の悪化が懸念され、水力発電の事業化が見込めなくなってしまうのです。
住民の反対
日本で水力発電が普及しない理由として、新規のダム建設にしても、多目的ダムの利用(ダムの運用目的変更)にしても、「近隣住民からの反対」が根強くあげられています。
たとえば、ダムを水力発電に利用しようとすると、発電量を増やすために、常時貯水する量も増えていきます。この時、台風の接近や大雨が予報されると、降水量増加に備えるため、貯水されている水を放流しなければいけません。
すると、一度に大量の水がダムから放流されることにより、下流の川が増水し、氾濫や洪水に対する懸念がでてきます。実際、過去に放流による被害も起きています。
また、森林を伐採し土地開発を行っている途中、大雨が降り、開発途中の山が崩れ土砂崩れが起こるといった事故も発生しています(本来、森林は地中深くまで根を張り、大量の降水があっても水分を吸収することで、土砂崩れを防いでいる)。
<水力発電普及の現状と今後の展望>
◆ 水力発電の発電量と発電能力
日本の水力発電の理論上の潜在的発電能力は、年間発電量換算で7176億kWhという試算があります。この数値は、現在の技術や地理的・経済的な制約を無視して、日本の水資源をすべて活用した場合ですが(国内に降る雨や雪の持つ位置エネルギーすべてを水力発電に変換した場合を想定)、現在の国内の年間発電電力量(約1兆kWh)の約70%をまかなえる計算になります。
しかし、現実的には、全発電電力量のうち水力発電の占める割合(電源構成)は7.6%(2022年度)でしかなく、これまで7%台でほぼ安定しています。もっとも、水力を含む再生可能エネルギー全体の比率は21.7%であるので、再エネ電源の中では、相対的に高い割合ではあります(再エネの中では太陽光に次いで2位)。
また、2022年までの統計ですが、水力発電の設備容量は約5000万kWで、発電電力量に換算すると800〜850億kWh水準と2000年台からほぼ横ばいで推移しています。近年は再エネで太陽光発電の普及が進み、水力は伸び悩んでいる状況です。
しかし、2030年のエネルギーの見通しを示した「エネルギーミックス」では、水力発電は総発電電力量の約8.8~9.2%(約939~981億kWh程度)を目指すとされ、今後の水力発電の普及は期待できます(実際、水力発電の電源構成は2024年度に9.6%に上昇した)。
この目標に向け、利用可能な水力発電設備が整備されれば、合計年間可能発電電力量(導入ポテンシャル)は約 1360 億kWh (136TWh)となり、将来的には水力発電による発電量は1.5倍程度にまで上昇する見込みです。
*TWh(テラ・ワット・アワー):1TWh=10億kWh
1TWh/yrとは、年間yrに10億kWhの発電電力量を生産すること。
水力発電設備容量及び発電電力量の推移(出典:資源エネルギー庁)
ただし、前述したように、大規模な水力発電所の建設に有望な土地の多くは既に開発されていることが多く、建設コストもかかるため、大規模発電所の新設が難しい状況にあります。実際、2025年現在、日本国内では大規模水力発電所の新設はほとんど行われていません。
そこで、近年では、ダム(大規模構造物)を必要としない、中小水力発電と呼ばれる水力発電の導入が進められています。
◆ 中小水力発電
中小水力発電とは、中水力発電と小水力発電を包含する広い概念のことを指します。国や機関によって基準が異なり、明確な定義はありませんが、中水力と小水力のおおよその基準は次の通りです。
中水力発電
発電量:1万kW以上3万kW未満
利用設備:中規模のダム・河川
小水力発電
発電量:1000kW未満
利用設備:溜池、用水路など
中小水力発電は、流量と落差さえあれば基本的にはどこでも発電できます。たとえば、これまで発電に利用されていなかった河川や農業用水路、上下水道などの水源(水資源)を活用できます。また、老朽化した発電所の建て替え時に水路や取水設備などを改修したり、これまで雪解けや降雨時にダムから放流していた余水を利用したりすることも可能です。
大型ダムによる従来の水力発電と比べ、小川や農業用水路の水流を使う小水力の出力は小さいのですが、設備は小規模ですみます。環境省の調査では、適地は全国に2万所以上あるとされています。
政府も中小水力発電の普及には力を入れ、*新エネルギー法や*FIT制度(固定価格買取制度)の対象に含めました。
*FIT(固定価格買取制度)
FIT制度は、太陽光をはじめ再生可能エネルギーで発電した電力を、資源エネルギー庁が設定した価格で電力会社が一定期間(10〜20年間)、固定価格で買い取ることを義務付ける制度で、2012年7月から導入された。
*新エネルギー法
「新エネルギー」の開発と導入を促進し、エネルギーの安定供給と地球温暖化対策、資源の自給率向上を目指す法律。
なお、大規模水力発電所は、すでに経済的に成立しており、再エネ普及のための新たな支援策(FITなど)の対象とはされませんでした。
中小水力発電の潜在力(データは2020年度)
日本の中小水力発電の理論的賦存量(*包蔵水力)は、合計で約1705万kWと推計され、内訳は次の通りです。
河川部: 1,655万kW
農業用水路: 32万kW
上下水道・工業用水道: 18万kW
*包蔵水力
水資源の中で、技術的・経済的に水力発電に利用できるエネルギーの総量(資源量)で、「既開発」「工事中」「未開発」の3つに区分され、国内の水力エネルギー資源の発電能力を測る指標のこと。
また、理論的な賦存量から技術的に可能かを示す「導入ポテンシャル」と、経済的な条件等も考慮した「経済性導入ポテンシャル」でみると次のようになります。、
導入ポテンシャル
設備容量:890万kW、年間の発電量換算:537億kWh
経済性導入ポテンシャル
設備容量:約321~412万kW、年間発電量:174〜226億kWh
*発電設備容量
現在、国内に実際に設置され稼働している発電設備の最大出力(kWやMW)の合計で、設備が最大限に稼働した場合の発電能力を示す(「現状」や「実績」を示す数値)。
実際の中小水力発電設備の導入量は順調に増加しており、2030年度の目標値1040万kW(10.4GW)を達成できる見通しです。
日本を取り巻く海洋を使う新技術も実用化が近づいています。代表的なものは波の力や潮流、さらに、深さによる海水の温度差を利用する技術があげられます。日本に打ち寄せる波が持つエネルギーは、原子力発電所36基分にあたる3600万キロワットと試算されており、実用化に向けて期待が高まっています。
また、近年においては、小水力発電よりもさらに、小規模な、発電出力100キロワット以下のマイクロ水力発電の技術開発の進展も注目されています。マイクロ水力発電は、毎日使っている水を送る水道管の水流から「小さな電気」を生み出す新しい仕組みです(水道設備を活用)。
◆ 政府や自治体による協力
このような発電所の小規模化・奥地化が進む状況下、水力発電を普及させていくには、政府や自治体による協力、また地域企業も含む官民一体となった取り組みが不可欠です。
たとえば、水力発電設備を開発する場合、前述したように、地元住民からの理解を得られないケースがあることの対応策として、政府は自治体向けの交付金、「電源立地地域対策交付金」の積極的活用などがあげられます。
*電源立地地域対策交付金
発電用施設の設置や運転を円滑に進め、発電設備などが立地する地方公共団体に交付金を交付するお金で、発電所の周辺地域での道路や医療施設、学校などの公共用施設整備や、福祉対策事業、地域活性化に資する様々な事業に活用される。
(参照)
日本の未来を支える太陽光以外の再エネ達。風力発電と水力発電について知る①
(2025.01.29、APPLE Tree)
水力発電の位置づけ(現状と目標)とメリット・デメリット、日本の事例
(2024-12-26、株式会社プロジェクトデザイン)
水力発電の仕組みや種類、メリットとデメリットをわかりやすく解説
(2025.06.30 Mitsui&Co/Green & Circular)
水力発電とは?仕組みや課題・特徴を紹介!メリット・デメリットはある?日本の普及率・発電量を簡単に解説
(2025.09.25 Spaceship Earth)

