社会保障:安心の生活と老後を保障

 

政策提言

「高負担・中福祉(負担は重く、給付は厚くない)」国にできること

 

年金:賦課方式から積み立て方式へ

生活保護制度:「負の所得税」制度を導入して大改革!

医療:臨床医療 (対象療法) から予防医療 (全人医療・ホリスティック医療) へ

 

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<負担と給付のバランス>

 

社会保険料の引き下げを主張するが…

先の選挙では、現役世代の負担軽減策として、社会保険料の引き下げを訴える政党がいくつかあったが、もしそれが実現すれば、「現役世代の手取りが増える」で終わる話しではない。社会保険料の料率引き下げは必ず、社会保険(医療、年金)、高齢者支援、子育て施策等の「何かを削る」ことと一体であることを忘れてはならない。

 

というのも現状、現役世代の社会保険料を減らすために、1)社会保障給付の削減や、2)高額所得層の社会保険料の引き上げという手段がとられることが想定されるからである。社会保険料の引き下げの恩恵を受けた現役世代にとって、給付の削減はたとえば医療費負担の増大やサービスの質の低下という形で帰ってくる。

 

また、社会保険料の引き下げを埋めるために(いわゆる「財源」として)、公費の投入増加(赤字国債の発行)という選択肢も考えられるが、公費が投入された場合、公費は税金で賄われることから、社会保険料の削減が増税につながり、結局、手取りが増えた恩恵は泡沫のように消えていく恐れがある。

 

国民負担率(=租税負担率+社会保障負担率)についても同様だ。これも負担軽減は、何かが減り、結果的に福祉が削られることを意味する。もちろん、保険料の引き下げ等によって、無駄が省かれて質のいいサービスが提供されるようになるかもしれないが、一般的に負担が軽減して福祉が充実することはない。

 

「高負担・中福祉」の国

負担と給付の関係は、基本的に、北欧のような「高負担・高給付(高福祉)」か、アメリカのような「低負担・低給付(低福祉)」が目安で、日本では長年、その中間の「中負担・中福祉」を目指すと言われてきた。しかし、日本の場合、巨額な財政赤字の影響を考えれば、「高負担・中福祉」(「負担は重く、給付は厚くない」)になると指摘されている。

 

こうした背景下、これからの日本の社会保障制度はどうあるべきかと問われれば、日本は、超高齢社会であるから、福祉国家をめざすべきだと考える。

 

ただ、そうであるなら、現行の社会保障制度の抜本的な改革なくして、保険料の負担を軽減しながら、医療費負担を減らし、年金を増やそうなど考えてはならない。逆に、改革なくして、高福祉を望むなら、さらなる負担を強いられることになる。

 

このように、社会保障政策について語るとき、負担軽減だけを切り取って議論すべきではない。社会保険料の引き下げを、現役世代の負担軽減とか、手取りを増やす手段などと安易に位置付けるのではなく、社会保障制度の抜本的な改革の中で議論する必要がある。

 

 

<社会保障制度改革>

 

では、具体的な社会保障制度改革として、ここでは、年金と医療、公的扶助(生活保護)について言及したい。

 

◆ 年金

賦課方式から積み立て方式へ

 

現在の日本の年金制度は、現役世代が引退した世代(高齢者)を支える賦課制度が中心、つまり主に現役世代が払う年金保険料で高齢者の老後を支えている。

 

この運命共同体的なシステムは、扶助国家・日本らしい、すばらしい制度といえるが、少子化と高齢化で将来的に年金は受け取れないかもしれないという懸念から、現行の年金制度に対する国民の信頼はゼロに近いのかもしれない。この将来(老後)に対する不安は、少子化の根本的な原因の一つでもある。

 

自公政権時代に行った負担と給付の見直し(負担を重くし、給付を軽くする)といった対称療法的な対策では、年金に対する信頼は回復しない。ここは、年金の抜本的な改革が必要だ。

 

理想的な年金システムについては、まだ考えがまとまっていない。しかし、現段階で最低限言える、国民にとって年金の信頼回復とは、収めた年金保険料が、確実に年金給付という形で帰ってくると確信が持てることであろう。

 

そのためには、公的年金制度を現行の修正賦課方式から、高齢化とは無関係に給付が予定される積立方式へ移行させることが望ましい。もとを正せば、年金制度は積立方式で始まったので、元に戻すだけである。

 

ただし、この移行には膨大な費用がかかるとされる。しかし、年金制度は国民にとって死活問題であり、一時的に赤字国債の発行によってでも、ここまで年金制度を形骸化させてきた政府の責任で実行すべきである。

 

最低、保険料を納めた分は確実に返ってくるとわかれば、年金制度に不安があって年金保険料を納めないという未納問題も解決に近づくのではなかろうか?

 

一方、積立方式へ移行できたとしても、貧困からどうしても年金の保険料を納められず、年金を受けることができない、また年金を受けとれても生活していけるだけの額でない低所得者層が多数いる。

 

こうした人たちのためにあるのが、最後の拠り所(セーフティネット)としての生活保護制度である。

 

◆ 生活保護制度

「負の所得税」制度を導入して大改革!

 

現在、生活保護受給世帯は増加の一途をたどっている。原因は格差社会の進展で貧困層が増えたという面もあるが、いったん生活保護を受けてしまうと中々脱却できないという制度上の問題もある。例えば、仕事をして所得を得ても、その額が生活保護の受給額よりも低ければ、別に働かなくても、生活保護を受けていればいいということになる。これは現行の生活保護制度では、最低所得水準が設定され、その不足分が生活保護として支給される仕組みになっているからだ。

 

そこで、生活保護受給者も勤労意欲を高めることを目指した制度に、「負の所得税」制度である。これは、一定の所得以下の人には、その所得水準に応じた負の所得税(生活保護に相当)が支給されるというものだ。その際、まったく働かない人は最低生活保障水準分の生活保護を受け取るが、少しでも働けば、その分が最低生活保障分に上乗せされて、その人の所得となる。つまり、努力に応じて働けば働いただけ所得が増えていく仕組みだ。

 

「努力した人が報われる社会」をスローガンに、2000年に入って小泉・竹中改革が推進され、労働の規制緩和が進み、競争が促進された。結果的に、弱いものが切り捨てられ格差が拡大し、世の中が暗くなった。

 

そこで、今度は「努力すれば確実に所得が増える社会」をスローガンに、生活保護制度の改革が求められる。働けば、生活保護以上に必ず所得が増えるのだから、生活保護を受けているから働かないという人は大幅に減少することが期待される。仕事をしない生活保護層が、所得を増やすという意欲を持って仕事をしだせば、労働生産性も高まるだろうし、何より労働力不足の緩和にもつながる。

 

ただ、「負の所得税制度」の難点は財政支出が増える(生活保護費が増える)ことである。しかし、年金同様、国民が安心して暮らせる社会を作るのは、政治の原点であり、ここの支出も惜しむべきではない。

 

新しい年金と生活保護制度の2本立てで、すべての日本国民に最低限度の生活が保障される。

 

◆ 医療

診療報酬制度の見直し、予防医療の導入を!

 

日本は、福祉国家の原点のような国民皆年金・皆保険制度を持っており、これを堅持しなければならない。しかし、現行の医療保険制度の問題点は、診療報酬制度の下、国民の医療費が高くつくことである。

 

診療報酬制度を批判的に定義づければ、「医者が医療行為を施せば施すほど、点数が加算され、患者の治療費がかさみ、結果的に医者の所得が増える制度」である。

 

日本医師会のような圧力団体が、政治力(カネと票)を使って、毎年のように診療報酬の単価を引き上げさせてきた。その行動の根底には、病院経営が成り立たないという危機感がある。

これを言い換えれば、現在の医療制度は、病人がいることを前提にした制度で、病人の数が増えれば増えれるほど、病院が儲かり(医者の所得が増え)、私たちが負担する医療費も下がるという非常に矛盾したシステムで成り立っていることを意味する。

 

こうした制度を見直し、たとえば、診療報酬制度が維持されたとしても、同じ病気を治すのに低い点数で済んでいる医者、つまり、入院や手術を勧めず、最低限度の投薬で、治癒できる腕のいい医者が評価され、患者が払う病院代も減るというようなシステムに変える必要がある。

 

しかし、医療費を削減させるための究極の処方箋は、誰もが病気をしなくなればいいのである。病院にかからず、人々が健康であることが最も重要となる。

 

そのためにも、これからの医療は、現在主流の患者の患部を、徒に切ったり貼ったりする対象療法医学だけでなく、食事などの生活習慣から家族構成までも加味しながら総合的に診察する人的医療などの予防医療や、人間の自然治癒力を高め、増強することを治療の基本とするホリスティック医療など、次世代医学を取り入れていくことが望まれる。

 

万病が治癒したり、病気をする人が少なったりすれば、医療保険制度にかかるコストも大幅削減され、年間1兆円ずつ増えるとされている社会保障費の削減に貢献できる。逆説的だが、医師不足も解消されよう。それでは医者の生計が成り立たなくなる場合もでてくるが、人の命をあずかる医者には一定の所得保障を儲けてよいと思う。

 

また、病気を持っていた人も、医療費がかからなくなる分、可処分所得が増える。消費が増え、景気回復に貢献できる。このように、一人一人が健康になることが、経済成長と財政再建の礎となる。

 

 

(投稿日:2026.3.17)

むらお政経塾 「レムリア」