政治・行政改革 : 新たな官邸主導と省庁再編

 

<政治(国会)改革の提言>

 

◆ 参議院:業界・労働団体、学界、地方代表からなる諮問機関的議院へ

 

参議院はもともと「良識の府」といわれ、解散のない任期6年で、身分保障され、政局に左右されず、中長期な政策についても議論される場とされている。衆議院の「数の力」による強引な決定に対し、成熟した議論と慎重な審議を行い、衆議院チェックする役割も期待されている。

 

しかし、実際は、任期と選出方法が違うだけで、国会での役割や活動はなんら衆議院と変わらず、「良識の府」たる期待に応えていないと批判されている。

 

権限上、議決上「衆議院の優越」が与えられてはいるが、法律案においては、政権与党が2/3を超えなければ、再可決できないので、その場合、参院で野党が多数党となる「ねじれ」現象が起きていれば、参議院の力で法案を廃案に持ち込みことができる。実際、かつて、参院の力によって、国会が混乱し、政局に大きな影響を与えたこともあった。

 

そこで、参院改革として、衆議院と差別化が図られ、本来期待される「良識の府」として機能する制度改革が必要である

 

参院改革案

現行の選挙区選挙&比例代表制において、公選の比例全国1区はそのままで、都道府県の選挙区選挙は廃止し、より専門的な知識や経験を持った業界・労働団体、学界の代表者と、地方議会の代表者などからなる合議体とする。衆議院との差別化で、参議院はより諮問機関的な役割を果たす。

 

業界・労働団体、学界の代表は、推薦制または組織内選挙によって選ばれ、地方代表は、公選ではなく、各都道府県議会が、地方議員から選出する(参議院との兼任は認める)。選出者については、衆議院がこれを承認する(場合によっては、選出を拒否することも可)。

 

参議院の議決上の権限については、法律案と予算の議決に関して、「衆議院の決定に対し修正を求めることができ、衆議院もこれを尊重する」旨の規定を設けることを提案したい。

 

◆ 衆議院:比例重複を認めない、非拘束名簿方式に変更

 

衆議院は、従来通り、小選挙区比例代表並立制とするが、重複立候補を認めず(復活当選なし)、比例は非拘束名簿方式に変更する。

 

小選挙区制において、これまで採用されていた比例復活の制度は、1選挙区から一人選ばれるとする小選挙区制の原則に反する。敗れたらそれで終わりの真剣勝負とする。そうでなければ、小選挙区制から中選挙区制に戻すべきである。

 

また、比例代表に関しても、国民代表をしっかりと反映させるために、党の都合で選ばれる拘束名簿方式ではなく、有権者の意思が反映される非拘束名簿方式を採用する。

 

◆ 衆議院の優越:法律案の「再可決」制度の廃止

 

「衆議院の優越」の法律案の議決について、再可決の制度を廃し、他の項目と同様に、参議院が異なる議決をした場合(または一定期間、参議院が議決しなかった場合)、「衆議院の議決が国会の議決となる」に改正する。これまで可能であった参議院によって法案が廃案となることはない。

 

◆ 7条解散の廃止

 

衆議院議員の任期は固定(4年)の原則解散なしとする。総理の意思で解散が可能な、任期途中の7条解散は廃止し、解散は不信任決議にともなう69条解散のみとする。これで選挙後、政治家(議員)は、任期が終わるまで、国民のために集中して仕事をすることができる。

 

◆ 総理大臣は衆議院議員から選出

 

衆院選(総選挙)は、政権選択選挙であるので、総理大臣は、衆議院議員から選出されると定めるべきである(現行は、憲法には「国会議員」と規定されている)。参議院議員は、総理以外の国務大臣には選出されうる。

 

 

<行政改革の提言>

 

◆ 日本の政治は今なお官僚支配、さらなる官邸主導の体制を!

 

日本の官僚は、世界的にも優れた存在で、戦後の復興。高度成長期から現在に至るまで、日本の安定に重要な役割を果たしてきた。

 

理想的な政治家と官僚の関係は、「政治家が政策を決定し、官僚はそれを迅速かつ効率的に執行する」というものだが、政治家に政策立案能力が不足しているため、代わりに官僚が政策立案の役割も担ってきた。

 

自民党の長期政権によって、官僚制度は、自民党のシンクタンクと言われるようになった。ただし、その「シンクタンク」が、政策を実質的に決定しており、このような状況はかつて「官僚支配」と批判された。

 

こうした官僚の力は、たとえば、自民党が消費税減税を打ち出そうとしても、財務省の役人に説得されて、減税路線を修正するだけでなく、党重鎮に「消費税を守り抜く」とまで言わしめるほど、官僚は政策決定に影響力を持っている。

 

官僚の問題点

ただし、その優秀な官僚の本質は前例踏襲で、新しいことはやらない(先例を作りたくない)、とりわけ、自分たちの既得権が侵害されるような改革はやらずに潰してくる。

 

官僚制度においては、一度方向が決まると、止めるという判断を下すことが難しくなる構造ができていると言われる。各省庁において、担当者はたいがい2、3年で交代するので、自分の担当時に「見直す」という逆向きの政策判断はしようとしない。これが、現状を変えずに、政策が継続される要因と分析されている。

 

また、現在の官僚制の弊害は、民主党政権下、「霞が関文学」で拡大解釈させ、復興予算を、各省庁が復興とは無関係の事業に使おうとしたという事例をみても明らかである。

 

官邸主導

もっとも、自民党も、省庁再編があった2000年頃、小泉内閣以降の内閣で、官僚から官邸主導の制度を構築する努力は行われた。

 

官邸主導とは、首相や官房長官、内閣官房などの、いわゆる「(首相)官邸」が中心となり、官僚機構に頼らず、政策の優先順位を決め、政策決定や人事をトップダウンで、迅速に指揮する政権運営のことをいう。

 

官邸主導の政治によって、各省庁が自らの利害を優先する「省益」を排除し(「縦割り」の打破)、内閣全体としての政策を実現することができる。(なお、官僚主導の場合は、各省庁の縦割りの弊害をともないながら、各省庁が積み上げる形式のボトムアップの意思決定である)

 

官僚を抑え込むには、人事と予算を握ることと言われる。たとえば、安倍政権下の2014年5月、省庁幹部(審議官級以上、約600人)の人事を一元的に行う「内閣人事局」が発足し、首相官邸主導で適材適所の配置や迅速な政策推進を実現させました(ただし、同時に、官邸への「忖度」が生まれるといった弊害も発生した)。

 

それでも、官僚政治が打破されたとは言い難く、官僚の方が、政治家より政策に熟知し、組織力を使って政治家を抑え込んでいる。官僚支配、官僚主導と呼ばれる状況が続く限り、現状維持の「安定」はあるかもしれないが、求められる真の改革や必要な政策を実行できず、日本に明るい未来はない。

 

もっとも、官僚支配の政治体制にあっても、田中角栄のような、官僚に操作されない、人脈とカネと権力を持ち、経験と知識が豊富な政治家が出現すれば、これを打破することもできる。

 

そこで、そうした有能な政治家が出現することに期待しつつ、ここでは、人事権や予算面に加えて、政策立案にあたって、これまで以上の官邸主導の政治が実現するための、省庁再編の制度改革を提言してみたい。

 

なお、官僚制度(公務員制度)改革は、日本の官僚組織を解体するという意味ではない。日本の優秀な官僚制度の弊害を取り除き、より国民のための行政を可能にするための改革である。

 

◆ 省庁再編(省庁組織改革)の提言

 

財務省①

予算編成を担当する財務省主計局の企画立案機能を分離し、内閣府または内閣官房に新設する「内閣予算局」に移管させる。現在、予算方針を決定しているとされる、経済財政諮問会議も内閣予算局に統合する。

 

財務省②

現在、財務省の外局である国税庁を内閣府の外局へ移管させる。これを機に名称も「歳入庁」に変更してもよいかもしれない。

 

農林水産省

米など農産物の自給率をふくむ食料安全保障の分野については、内閣府または内閣官房の直轄機関が担当する。具体的は、農林水産省のなかで、米、麦、大豆などの主食作物の生産・需給調整などの政策を一体的に管理している農産局や、食の安全(食品の安全性、生産段階の衛生管理など)にかかわっている消費・安全局などを分離、新設の「(仮)食料安全保障庁」に統合させる。

 

厚生労働省

医療に関する厚生行政を内閣府または内閣官房の直轄とする。厚生労働省において、日本医師会と密接な調整・連携が必要な主要部局で、医療提供体制、医師の処遇、医療法などを担当する医政局を、「(仮)医政庁」として分離・独立させる。

 

内閣官房

内閣官房の内閣情報調査室を、外務省の故岡崎久彦氏が提唱していた国家情報局へ格上げ、内閣に置かれる機関、首相または内閣官房の直属の機関とする。

 

その他

一方、行政の肥大化を防ぐために、子ども家庭庁のような不要と言われている新機関を温存することがないように、設置から1年または3年後、国会でその存続の是非を問うというシステムを作るべきである。

 

◆ 官僚の天下り対策

 

また、長年の問題である、官僚の天下り問題について、官僚の天下り先としての公益法人、独立行政法人がたくさん温存されている。彼らが理事として、高額な給与を得ながら、数年で、別の法人に移るということを繰り返していく。そのたびに高額な退職金を受け取っている。まさに、シーラカンスのごとく、官僚制度の枠内にいて、行政の肥大化の一因となっている。これまで、どんなに天下り対策を立てても、その抜け穴が利用され続けてきた。

 

その意味で、本来、必要のない公益法人、独立行政法人の整理統合することは、行政の無駄を省くためにも重要だ。さらに、その理事の数を半減…、天下った場合の給与は現職時を超えない…、理事の5年以内の「はしご」は厳禁とするといった制度上の措置をとることが必要である。

 

◆ 公務員の数と処遇

優秀な人材確保のために、現在の賃上げの動きは人事院勧告にしっかりと反映させると同時に、中途採用の枠を増やし、必要な省庁への増員も惜しむべきではない。

 

 

(投稿日:2026. 4. 4)

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