<財政における提言>
緊縮財政から積極財政へ
規律あるMMT理論による財政政策
消費税
廃止ではなく、食品0%でもなく一律減税、軽減税率もインボイスも廃止
政府系ファンド(SWF)の創設
「無税国家」日本の第一歩!
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◆ 緊縮財政から積極財政へ
(「規律あるMMT理論」による財政政策)
「景気回復か財政再建か」、「積極財政か緊縮財政か」の選択のなかで、過去30年近く財務省の政治力によって財政再建(緊縮財政)が優位であった。
深刻な財政赤字
その背景には、日本の膨大な財政赤字がある。現在(2025年末現在)、国債や一時的な資金を調達するための借入金、政府短期証券を合わせた「国の借金」が1342兆1720億円となった。
この水準は、国内総生産(GDP)の約2.3倍にも上り、先進国ではイタリア(約1.4倍)やアメリカ(約1.3倍)を大きく上回るなど、日本の財政状況は世界的にみても最悪という。
国の借金(財政赤字)1342兆を、人口で換算すると、国民1人当たり約1090万円の借金を背負っている計算になる。
財務省は、現状の財政構造が続くことは、借金の返済に将来の税収が充てられるため、「将来世代へ負担を先送りしている」として、財政の健全化(緊縮財政)(支出を抑え増税する)の必要性を訴え、実施されてきた。
プライマリーバランス
緊縮財政の象徴的な経済指標がプライマリーバランス(基礎的財政収支)である。プライマリーバランス(PB)とは、利払いなど借金返済に充てる国債費を除く歳出から税収等を差し引いた額のことで、財政健全化の目安とされている。このプライマリーバランスが黒字になれば、国債費以外の歳出を税金で賄えている、つまり、国債等の借金に頼る必要がなく、財政赤字が増えていないことを意味する。
このPB黒字化を政府の財政健全化目標に最初に据えたのが、小泉内閣であった(「骨太の方針2001」で言及)。以来、プライマリーバランスの黒字化を目標に財政運営が行われ、小泉内閣で2012年、安倍内閣で2020年までの黒字化を公約としたが、結果として、公約は達成できず、緊縮財政を始めた1990年代後半から30年たっても財政赤字は減るどころか、過去最大を更新し続けている。
その最大の要因は、毎年増加している社会保障費である。高齢化は今後も続くことから、抜本的な制度改革がなされない限り社会保障費は減らないし、減らせない。そうなれば、今後も財政赤字(国の借金)は増え続けることになる。この増大する社会保障費を賄うために実施されたのが消費税増税(8%⇒10%)であった。
これは、緊縮財政を続けても、社会保障費の増大等から財政赤字は増え続け、増税を強いられるという悪循環に陥っていることを意味する。(歳出を減らし、増税で歳入を増やす)緊縮財政の影響で経済成長が実現しないので、このまま何も対策がとられなければ、この負の連鎖が今後も続くことになり、失われた30年はさらに40年、50年と続く恐れがある。
究極は経済成長!
しかし、最も有効な財政赤字削減策は、緊縮財政ではなく、経済成長である。税収増を実現するための最良の方法は、経済成長にともなう所得の増加である。所得が増えれば消費が増えて経済は成長する。景気拡大に伴う税収の増加こそが、財政赤字削減の最良の処方箋でもある。
もっとも、予算編成を担う財務省からすれば、不確実な経済成長を財源とすることはもちろんできない。財務省が積極財政を受け入れることはない。
ところが、膨大な財政赤字を抱える日本においても、たとえ今以上に国債を発行して借金を膨らませても、国は破綻せず(債務不履行に陥ることなく)、積極財政を可能にする、財政理論がある。それが、MMT理論である。
MMT理論
MMT(現代貨幣理論)は、通貨発行権を持つ政府は、国債が自国通貨建てであれば、国債を発行してもデフォルト(債務不履行)(財政破綻)することはないという理論である。ゆえに、インフレを制御できれば、国債はいくらでも発行することが可能で、積極的に赤字国債の発行を財源として、拡張的な財政政策を可能となる。
現に、政府の債務はほぼすべて円建てのため、日本で債務不履行に陥らないということになる。なぜなら、通貨発行権を持つ国家は、債務返済に充てる貨幣を自在に創出し、政府は最後まで支払いを続けることができるからである。最終的に中央銀行である日銀がその国債を買えば、政府にお金が戻る仕組みになっている。
海外で起こるデフォルト(債務不履行)は、デフォルトした国の債券が自国通貨建てでなく、自国以外の通貨で支払いができない場合である。また、日本の場合、日本国債の外国人保有率は10%程度と、ほぼ国内で消化されているので、壊滅的な投機的投げ売りは想定されない。
もっとも、MMT理論にしたがって、経済活動(生産能力や商品・サービスの量)が追いつかないまま、国債を発行して、お金の量(通貨量)だけを大幅に増やすと、貨幣の価値が下がり、猛烈なインフレ(物価上昇)を引き起こす可能性がある。
このため、MMT理論が成立する前提に「インフレを制御できれば」が入っている。逆にいえば、インフレになるまでは、赤字国債をいくらでも発行して財政政策を実施することは可能となる。
財務省のうそ
そもそも、国債発行等による国の借金(財政赤字)1342兆について、国民一人当たり約1090万円の借金を抱えているに等しいとして、緊縮財政をとなえる財務省の主張も、よく考えてみれば、「国の借金」は、政府の負債であって、「国民の借金」ではない。それどころか、国債を保有する国民(家計と企業)にとっては資産である。
また、「1人当たりの借金」は、国の債務総額を単純に人口で割った数値で、経済学的に何の意味もなく、国民一人一人が負担したりするものでもなければ、これから返済を求められるものでもない。それをあたかも、「国民一人当たり約1000万円の借金」を背負っていると、個人の借金のごとく定義づけ、私たちに危機感を煽る財務省の手法は、新手の詐欺と同じである。
MMT採用の是非
では、日本はMMT理論を採用して、積極的財政政策を邁進すべきであろうか?個人的には、MMT理論は正しいが、日本で採用された場合、失敗すると思われる。なぜなら、MMT理論を運用する側の政治家は利己的な利害を有し、官僚は省益を追求するため、経済学でいう合理的な資源配分(合理的に行動)できる存在ではないからである。
日本でMMT理論が採用されたら、たとえば、全国に新幹線を導入する、列島中の港湾や河川の再整備を行うなど、予算編成時、各省庁が求める概算要求をすべて飲み込まされる結果となり、財政は肥大化の一途をたどることは想像に難くない。
そうでなかったとしても、MMT理論が成り立つ前提であった「インフレにならない限り」について、政府はインフレを制御できないであろう。インフレは、インフレになってしまうともはや手遅れで、インフレになる前にその芽を絶たなければならないが、現状、合理的に行動できない政府にはそれが不可能であると予想できる。
限定的MMT理論
しかし、それでは、長年続く、緊縮財政を終わらせなければ、成長は見込めない。そこで、「規律ある限定的なMMT理論」の採用を提唱したい。
まず、合理的に行動できない政治家や官僚らの行動を抑えるという意味で、憲法に、平時における財政均衡条項を付加する。憲法に、景気がいいときは財政の規律を守る、つまり歳出は租税ですべて賄うという均衡予算を維持する努力をする旨を規定する。
憲法の縛りがある以上、人気取りのバラマキを行う政治家や、好不況にかかわらず予算編成時には必ず増額請求をして既得権の拡大をはかる官僚らを自制させる。
しかし、バブル崩壊以降、今も続く、平時ではない「緊急事態」においては、MMT理論で積極財政に舵をきる。MMT理論は、理論としては正しい。経済成長に必要であれば、財源がかりに確保できかったとしても赤字国債を財源とした経済政策を実施することに躊躇してはならない。
日銀に期待
一方、MMT理論が採用された場合のインフレ対応については、中央銀行である日銀の役割に期待したい。日銀は、本来政府からの独立が保障されている。日本では中央銀行を政府の下に見る傾向があり、とりわけ安倍政権では、日銀は政権の推進役を果たして失敗した。そこで、物価の番人としての本来の役割を果たせるような新たな制度設計が求められる。
マーケット(債券市場や外為市場)は、財政運営の問題があると見た場合、債券相場の急落(金利の高騰)、または過度な円安という形で反応する。市場の動向を中立的な立場で見極めることができるのは日銀以外にない。
いずれにしても、力強い経済を取り戻すために、MMTを論拠に、財務省主導の緊縮財政から積極財政への転換が必要である。
PB黒字化目標の凍結
ま緊縮財政の象徴であるプライマリーバランス(PB)ゼロ目標を、景気回復が軌道に乗るまで、一時停止すべきである。PBゼロは第一目標ではなく、成長の結果である。「PBゼロ=緊縮」ありきで、進められてきた財政運営は早々に改められなければならない。
積極財政の中身
限定的MMT理論による積極財政において、以下の政策の実施が望まれる。
減税
景気対策として、所得税・消費税・法人税の包括減税
補助金・給付金等
成長産業や教育向けの補助金
年金、生活保護など社会保障改革への財政支出
(子育て支援や低所得者向けの給付金も含む)
公共事業
老朽化した基幹インフラへの継続的な公共投資
(景気対策としてではなく社会政策として計画的・長期的に!)
景気対策としての公共投資の終わり
これまで公共投資は、景気対策の柱として、活用されてきたが、好不況にかかわらず、社会政策として計画的・長期的に行われるべきである。近年、トンネルの崩落や道路の陥没事故などが相次いでいるが、これらのインフラは高度成長期に整備されたものが多く、再整備が必要である。国土形成計画などにおいて、大規模に実施されるべきである。
これはもともと、安倍政権が掲げた「三本の矢」の中の第二の矢「機動的財政政策」の内容であるが、当時は、金融政策に前のめりとなり、ほとんど実施されなかった。今こそ復活の時である。継続的・長期的な基幹インフラの再整備は、結果的には経済成長の基盤となりうる。
◆ 税制(消費税)
そもそも、税金というのは、国民にとっては払いたくないもので、ないことに越したことはないが、政府の「活動資金」として、国民(家計と企業)が幅広く負担することが求められ、憲法にも国民には納税の義務が課されている。そのうえで、税体系は、中立、公平、簡素の3原則を考慮して構築することが望ましい。
消費税は廃止しない
減税議論のなかで消費税そのものの廃止を主張する政党がいくつかあるが、税金というのは「必要悪」であり、消費税は現状、廃止ではなく、食品0%でもなく一律減税を行い、軽減税率もインボイスも廃止すべきである。
現在(2025年)、消費税収入は、個別の税の中で最大の約25兆円(全体の32%を占める)で、これがなくなった場合、租税原則の一つである「中立」(租税は資源配分に歪みを生じさせない中立的な税であるべき)を阻害することになる。
直間比率への影響
もし、間接税の代表である消費税を廃止すれば、現在6:4の直間比率(直接税と間接税の比率)のバランスが崩れ、所得税や法人税など直接税の比率が圧倒的に高まることになる。
直接税と間接税は、それぞれに利点と欠点があって補完し合っている。たとえば、所得税(直接税)は、所得の高い(低い)人ほど負担が重い(軽い)所得格差に対応した累進的な税であるが、職種に応じて税逃れがおきるなど捕捉率に問題がある。
その一方で、消費税は、消費に対して皆等しく課税される公平な税で、所得税や法人税ほど景気に左右されない安定的な税であるが、低所得者ほど負担が重くなる逆進性の問題がある。
ただし、消費税の逆進性の問題は所得税の累進性で補い、所得税の捕捉率の問題にともなう税収の不足は消費税の安定性で補っているという言い方も可能である。
これが、直接税に偏った結果、税体系がいびつになり、「中立」の原則から逸脱してしまうとどうなるかといえば、直間比率で直接税の比率が圧倒的に大きいアメリカをみればよくわかる。
アメリカでは、上位20%の富裕層(世帯)が国の純資産(富)の約70〜80%以上を所有していると言われているなか、富裕層は、違法とはならない税の抜け道を使って、徴税を逃れていると指摘されている(トランプ大統領も所得税を納めていないとも報じられている)。その結果、アメリカでは、全体の富の20〜30%しか保持していない中間層以下の国民が、税負担の主役になってしまっている。
「赤字企業にも課税」は問題か?
消費税に対する批判のなかに、消費税は赤字の企業も負担されられており、応能原則にも反しているという主張がある。
税は、大まかに、税負担を求める対象である所得、消費、資産に基づいて、所得課税、消費課税、資産課税の3つに分類され、消費税は文字通り、消費に対する課税の中核である。
もし、所得課税(所得に課される税)である法人税が赤字企業に課されるなら大問題だが、消費税は消費に対して課される税なので、赤字・黒字企業にかかわらず、負担することが予定されている税目である。ゆえに、赤字の企業に課税されても、消費税の性質上、問題ない。それが不況で、経営が悪化し、納税できないというのであれば、廃止しなくても、減税すれば大きな救済になる。
また、消費税は、税法の分類上、所得税や法人税のように、所得や支払能力に応じて負担する「応能負担の原則」ではなく、所得の多寡に関わらず、消費というサービス(受益)に対して平等な負担を求める「応益負担の原則」に基づいている税金である。
さらに、消費税制において、問題として指摘されている輸出還付金なども、それがために消費税を廃止しなくても、制度上の見直しをすればそれで済むことである。
*輸出還付金
事業者が商品を輸出した際に、輸出取引は消費税が0%(免税)となるため、仕入れ時に支払った消費税が国から返還される制度。大企業が多額の輸出還付金を受け取っていると批判されている。
加えて、何より、財政政策の手段として、消費税は欠かせない。消費税を廃止してしまえば、後の景気対策の選択肢を狭めてしまうことになる。減税が必要なときに消費税がないとなれば、有効な対策を打てなくなる。消費を喚起したいのに、所得税減税では効果がでるのに時間がかかる。
このように、租税原則の中立性の観点から見れば、物品の購入に対する課税がなくなることは、税体系にゆがみを生じさせので、消費課税としての消費税は、廃止すべきではない。繰り返しになるが、税は必要悪である。もし廃止するなら、かつての物品税のような消費課税を、仕組みを簡素にして設けることが求められる。
消費税は一律減税を!
一方、消費税減税そのものについても、自民党をはじめ政党のなかには食品だけ0%にする方向で進めているが、これも、租税原則である「公平」と「簡素」に反する。
たとえば、食品の消費税ゼロで、飲食店など不益を被る人々がでてくる一方で、食品を扱う業界は大儲けすことができる。また、食品の消費税を0%にすることは、食品等に対する現行の8%軽減税率をさらに引き下げる「軽減税率の拡大・強化」政策といえ、そうなると、経理事務がさらに複雑になる。
ゆえに、消費税を減税するのであれば、一律減税であるべきである。そうすれば、より多くの人が公平にその恩恵を受けることができ、かつ、軽減税率の導入によって採用された非常に不明瞭なインボイス制度も廃止することができる。
その意味で、現状、消費税を現行の10%から、軽減税率(インボイス制度)の導入以前の5%へ減税することを求めたい。
◆ 政府系ファンド(SWF)の創設
政府系ファンド(SWF)の創設によって、税外収入を増やすことは、強い経済を実現するに当たって必要なことである。ファンドの財源は、外為特会を含む、特別会計の剰余金、すなわち「令和の埋蔵金」を生かすことができる。
最近、政党の中にも政府系ファンドを謳うところがでてきていることはいい兆候であるが、SWFについての私の発想の原点は、経営の神様といわれたパナソニック(旧松下電器産業)の松下幸之助(敬称略)が持論としていた「無税国家構想」である。
「無税国家構想」はまさにユートピア的であるが、この理想に向けて、今から一歩でも二歩でも踏み出す価値はある。それが、政府系ファンド(SWF)の創設である。今回は松下幸之助の無税国家構想について紹介したい。
無税国家の理想
「無税国家構想」とは、日本を、税金を納めなくてもいい国にするという理想である。
現在の一般会計予算は、年間100兆円を超え、その規模は基本的に右肩上がりで増加している。予算規模とは要は歳出の額である。この歳出は実に無駄が多いことが昔から指摘されている。
歳出の肥大化を引き起こしている制度的な原因の一つが、予算単年度主義である。これは予算を1年単位で作成するという原則のことで、予算の無駄遣いにつながっているとの批判が根強い。年度内に予算を使い切っていない場合、来年度以降の予算を減らされることを恐れて、たとえば、「余らせるくらいならば、使い切ってしまおう」という判断から、年度末になると、全国で道路工事が増えるといった現象がみられる。各省庁とも使い切った上で、毎年、省益のために増額を要求するから、予算規模が増えるのである。
そこで「無税国家構想」によれば、単年度主義の予算を、各省庁が余らせてもよい制度、むしろ多く余らせた省庁が評価される制度(予算を余らせることが省益となるような仕組み)を構築し、剰余金を積み立て政府が運用して、運用利益を稼ぎ出すのである。多く余らせた省庁が評価されれば、各省が競って無駄を省くであろう。
当時、幸之助氏は、21世紀末には、無税国家になると述べたという。つまり、運用利益を歳入に充てることで、国民から課税しなくてもよくなるというのだ。さらには、歳入を上回る運用益を出せば、その分を国民に配る、収益分配国家になれるとさえ主張した。
この松下幸之助の「無税国家論」は、現代においても示唆に富む。まずは、各省庁が予算を余らせた資金で政府系ファンドをつくり、予算の剰余金を運用、その収益で、国債の償還費用にあてる。財政赤字は縮小し、ゆくゆくは黒字化することができる。その後、あらゆる税金の税率を徐々に下げていくことができる。
このように、ユートピア的な世界ではあるが、究極的に、日本は国民が税金を払わなくてもいい国になる!そうしたら、MMT理論も不要で、消費税という税金も必要悪から「無用の長物」に代わる。そう考えただけでも楽しくならないであろうか?
無税国家の理想にむけて、運用に成功するように、金融のノウハウを蓄積する必要がある。日本の金融立国化という新たな課題もみえてくる。めざそう、無税国家日本!そのために、まずは政府系ファンド(SWF)の立ち上げである。
(投稿日:2025.4.24、最終投稿日 2026.3.15)



