経済政策:新新三本の矢(減税・物価・成長)

 

経済政策の提言

減税しても税収が増える経済成長路線へ!

 

景気対策

減税(消費税だけでなく、所得税・法人税等の引き下げも)

消費税は一律引き下げ(軽減税率とインボイス制度の廃止も実施)

 

物価高対策

物価高の代名詞、コメ価格を下げるために増産へ再転換

再エネ賦課金制度の見直しで、電気代引き下げ

円安対策として金融引締め路線を志向する

ウクライナに対する輸出支援で、世界の穀物市場の供給不足の解消に尽力

 

成長戦略

技術革新(IT・AI)と規制緩和

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

一言で物価高対策と言っても、いろいろな角度で考える必要があり、また、最低限の経済学の知識がなければわからなくなるので、経済理論を交えながら、政策提言を行います。

 

<日本経済の現況>

 

日本の名目および実質GDPは、2023年度以降、過去最高水準を更新、表面上は成長し、名目上の数字では緩やかなプラス成長となっていますが、実態経済は数字ほど良好ではありません。その一方、物価水準は、統計上、2022年以降続いた急激なインフレからの緩和の兆しはでていますが、消費者感覚では依然、物価高の状況は続いています。

 

現在のインフレは、景気が良くなって需要が旺盛となって物価が上がるディマンド・プル・インフレではなく、原材料費の高騰などコスト(費用)の上昇によって物価を押し上げるコストプッシュ・インフレです。ですから、日本経済は、景気回復が鈍いなかでのインフレ状況であるので、現状は、どちらかと言えば、スタグフレーション(不況下の物価高)に近いと言えます。

 

一方、賃金水準をみれば、名目賃金(現金給与総額)は増加傾向にあるものの、実質賃金(物価変動を調整した賃金)(=名目賃金-物価上昇)は、名目賃金の上昇が物価上昇(インフレ)に追いついていないため、マイナス基調が継続しています。これは、実質賃金がプラスに転じれば、物価高も苦ではなくなってくることを意味しています。

 

物価高でもそれに見合う賃金(給与)の上昇がともなえば問題ないのですが、現在、食料品やエネルギー価格を中心とした物価上昇が、賃金の伸びを上回っているため、現在、私たちの多くは、物価高で生活が苦しいと感じているのです。

 

こうした状況下、スタグフレーション型の経済を立て直すための政策としては、①景気回復を実感できる経済成長を実現すること、②物価高(インフレ)を抑える両方の政策が必要です。

 

 

<主要政党の政策提言>

 

今回2026年の衆院選挙で、各党は、物価高対策として、消費税減税を主張しています。ほかもに、社会保険料に引き下げや、「年収の壁」の引き上げなどが訴えられていますが、これらの政策は一言でいえば、「可処分所得」を増やす政策です。可処分所得とは、いわはる「手取り」のことで、以下の式で示されます。

 

可処分所得=A収入(給与+賞与など)―B(税金+社会保険料)

 

消費税減税や社会保険料の引き下げ、「年収の壁」の引き上げなどの政策は、上式のBを、また現金給付などはAをそれぞれ増やす政策です。可処分所得が増えれば、消費も増えて、成長を促すことにつながりますし、前述したように物価が高くても、実質的な所得の増加で、物価高に伴う生活苦は緩和できるでしょう。

 

ただし、消費税減税などで物価が下がるかといえば、企業にとって税負担が緩和したとしてもすぐに値下げに転じる可能性は低いと思われます。したがって、これらの物価高(インフレ)対策の多くは、物価そのものを下げるための政策というよりは、現在のインフレ経済に耐えられるための政策です。

 

言わば、緊急対応型の政策と言えます。実際、各党の消費減税議論のなかで、食品の消費税をゼロの主張があるのは、食料品だけでも安心して買えるようにという配慮からきています。ですので、各党の主張の多くは、現在の物価高を乗り切ると言う点では、有効かもしれませんが、中長期的に「強い日本経済を実現する」という点ではまだ不十分です。

 

そこで、これらをふまえて、次に、私見として、現在のスタグフレーションに近い経済の状況において、(経済成長を実現する)景気対策と(物価そのものを下げる)物価高対策について言及するとともに、強い日本経済を実現するための中・長期的な経済政策について発信します。

 

 

<強い日本経済を実現するために>

 

◆ 消費税を含む幅広い減税を!

 

景気対策の大前提として、不況でデフレにとなる状況のときには、減税や政府支出を増やし、好況でインフレ懸念が高まるような状況では増税や政府支出を削減することです。

 

そこで現在、スタグフレーション(不況下の物価高)型の現況において、景気対策として、求められている政策は、減税であることは間違いありません。ただし、減税は、税体系全体のバランスを考えながら実施すべきで、仮に、10兆円規模の大型減税の場合、選挙の際に有権者受けする消費税減税だけでこれを実施するのではなく、所得税、法人税なども含めての減税を主張します。

 

消費税は廃止しない!

減税議論のなかで消費税そのものの廃止を主張する政党がいくつかあります。現在、消費税収入は、個別の税の中で最大の約25兆円近くありますが、これがなくなった場合、租税原則の一つである「中立」(租税は資源配分に歪みを生じさせない中立的な税であるべき)を阻害することになります(この点について後に詳説)。

 

税は、大まかに、税負担を求める対象である所得、消費、資産に基づいて分類され、消費税は文字通り、消費に対する課税の中核で、物品の購入に対する課税がなくなることは、税体系にゆがみが生じます。

 

政府の立場からいえば、「消費」にともなう税収は必要であり、私たちも国民の義務としての納税において、消費に対する税負担は、仮に1〜3%でも追うべきかと思います。それゆえ、消費税は、景気対策として減税するものの、廃止せず、むしろ、問題として指摘されている輸出還付金など、消費税の制度上の見直しがなされるべきだと考えます。

 

また、消費税を廃止してしまえば、後の景気対策の選択肢を狭めてしまうことも問題です。減税が必要なときに下げる税目(消費税)がないとなれば、有効な対策を打てなくなります(消費を喚起したいのに、所得税減税では効果がでるのに時間がかかる)。

 

*税体系や税政策については別投稿で詳しくまとめます。

 

消費税は一律減税を!

一方、消費税減税そのものについても、自民党をはじめ政党のなかには食品だけ0%にするとの主張もありますが、これも、租税原則である「公平」と「簡素」に反します。

 

たとえば、食品の消費税ゼロで、飲食店など不益を被る人々がでてくる一方で、食品を扱う業界は大儲けすることができます。また、食品の消費税を0%にすることは、食品等に対する現行の8%軽減税率をさらに引き下げる「軽減税率の拡大・強化」政策といえ、そうなると、経理事務がさらに複雑になります。

 

ですから、消費税を減税するのであれば、一律減税であるべきです。そうすれば、より多くの人が公平にその恩恵を受けることができ、かつ、軽減税率の導入によって採用された非常に不明瞭なインボイス制度も廃止することができます。

 

その意味で、景気対策として、私は、消費税を現行の10%から5%へ減税することを主張します。5%は、軽減税率(インボイス制度)の導入以前、かつ地方消費税(当時1%分が地方へ移転)導入時の水準です。また、これまで通り、消費税収の2%分を社会保障へ配分できます。なにより、消費税が半分になることだけでも、家計や企業への心理的インパクトは大きいと思われます。

 

◆ インフレ(物価高)対策

(物価そのものを下げる政策)

 

日本でインフレ(物価高)が進行している要因としては、主に、世界的な食品やエネルギー価格の高騰と円安があげられます。

 

ウクライナへの穀物輸出支援

近年の世界の物価高(インフレ)は、ロシアによるウクライナ侵攻で、小麦を中心としたウクライナの穀物、ロシア産の穀物・エネルギーが世界市場から消えたことが大きな背景にあります。したがって、この戦争が終わらないことには物価高(インフレ)の芽を摘むことはできません。

 

ただし、日本としてできることは、外交面で、現在少しずつ復活しているウクライナの穀物輸出を、他の国々とともに支援、強化し、世界の穀物市場にある供給不安の解消に尽力することです。

 

金融引締め

また、日本の場合は、これに加えて、円安による輸入物価の高騰が、物価高に拍車をかけています。円安は、遡れば、失敗に終わったアベノミクスによる経済政策で実施された異常なまでの金融緩和政策(低金利)が遠因です。その後、コロナ禍が過ぎ、日米金利差の拡大が、現在の円安の直接的な原因と言えます(金利の高い米国へ日本からお金が動く、このとき円売/ドル買が活発となる)。

 

インフレ懸念の高まりからアメリカの金融当局(FRB)が利上げを開始したのが、2022年3月でした。主要各国も金融引締めに動くのなか、当時の黒田日銀総裁は、アベノミクスに固執し、超低金利のスタンスを変えませんでした。この「異次元の金融緩和政策」の実行役であっ黒田総裁が2023年4月に退任し、後任の植田総裁は、わずかでありますが利上げにかじを切ったのは、2024年4月のことでした。

 

円安対策として、今後、日銀が、インフレの状況に対応して、積極的な利上げ路線をとることが期待されます。アベノミクスからの金融環境は、ゼロ金利はおろかマイナス金利政策まで実施されるなど異常な低金利状態でした。これをまず正常な状態に戻さなければなりません。金利水準が正常な状態に戻ることなく、躍動的な経済成長は実現できないと考えます(好況で資金需要が高まって金利が上昇する)。

 

日銀の使命は「物価の安定」です(日銀法2条)。利上げで景気回復の腰を折るとの懸念もあるかもしれませんが、逆に、減税等の景気対策によって、景気が回復し、需要増によってインフレ(物価高)がさらに加速することに備えることも求められます。

 

もっとも、通貨発行権を含む金融政策は日銀の専権で、政府に権限はありません。ただし、日銀は政府からの独立性が保障されていますが、政府との密接な協力関係や意思疎通も求められているので、政府としては、できるだけ早い金融の正常化を望んでいるとの意向を、日銀に示しておくべきではないでしょうか?

 

では、政府は、物価そのものを下げるための政策を講じえないのかというと、そうではなく、家計にとって切実な問題である食料品と電気代を下げる手立ては持っています。

 

コメの増産

食料品の高騰といえば、まずにあげられるのが米価で、現在もコメ価格は高水準にあります。石破政権のときあれだけ騒いでいたマスコミも、高市政権になって報道しなくなりましたが、コメの価格を下げることが、政府のできる最も効果的な物価対策になりえます。

 

コメはほぼ国内で自給できているので、米価も円安や国際情勢に影響を受けることはありません。石破内閣が決定した「増産」が実施されれば、確実に下がることが期待できました。しかし、高市政権の鈴木農相は、就任当初から増産の意思は全くなく、実質的な減反路線に戻しました。これが現在も米価が高止まっている根本的な理由です。

 

政府がコメの増産の意思を明確に示せば、これまで、高値での利益を狙って、ため込んでいる卸売業者が市場に放出すると見られています。供給が増えれば、コメの値段は下がります(コメの下落で所得が落ちる農家に対しては、かつて民主党政権で実施した個別所得補償を行う)。

 

米価が下がれば、コメを原料にした、餅、せんべい、あられなど米粉製品、日本酒、りん、米酢、みそといった発酵食品、米粉を使ったパンや麺、ビーフン、和菓子、さらには米油や米ぬか漬けなど、多岐のわたる食品の価格が下がるという相乗効果も期待できます。

 

(コメを含む農政についての詳細は、農業政策を参照)

 

再エネ賦課金の見直し

電気代については、天然ガス、石油、石炭などを輸入に頼っているために、国際情勢の影響をまともに受けるという側面はありますが、日本の場合、さらに、再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)が、電気代に加算されているという現実があります。2025年度では1kWhあたり3.98円に達するなど、家庭や企業の負担を増加させています。

 

ですから、極論すれば、 再エネ賦課金制度が廃止されれば、その分、電気代が下がるので家計と企業の負担は大きく解消されます。もちろん、再エネ賦課金制度があるから、現在、日本は再生可能エネルギーを増やすことができており、さらにカーボンニュートラルを実現するという国際公約もありますので、廃止とはいかないかもしれません。しかし、インフレなどの緊急時には、賦課金の一時停止や、その比率を下げるといった対策を講じるべきです。

 

このような短期的な対策に加えて、「強い日本経済」を実現させるために、中長期的な観点からの成長政略が必要になります。

 

◆ 成長戦略

 

成長戦略の鍵は、技術革新と規制緩和にあります。技術革新によって生産性が高まり、人手不足の解消と同時に高賃金(労働意欲の向上)を実現、企業収益も増加します。また、規制緩和によっても新しい産業が興るだけでなく従来産業も活性化して、雇用を拡大することができます。さらに両者の相互作用で、力強い経済成長が期待できます。

 

技術革新と規制緩和

日本の技術革新といえば、近年では、液晶、リチウムイオン電池、QRコード、ロボットなど多岐にわたりイノベーションを生み出してきましたが、これからの時代は、AI・半導体・量子・宇宙・海洋などの先端技術分野への優先的な積極投資が望まれます。

 

規制緩和は、持続的な経済成長と生産性向上を実現するために、とりわけデジタル、エネルギー、労働市場の分野で必要とされています。そのなかで、特筆すべきは、デジタル化・AI社会実現のための規制緩和で、自動運転やドローンが社会でさらに普及することが期待されています。そのために、地方の交通空白地帯や物流での自動運転、配送ドローン導入を加速させる道路交通法や空域利用規制の緩和が求められています。

 

また、エネルギー・GX(グリーントランスフォーメーション)分野でも、再生可能エネルギー参入の促進のために、風力発電(特に洋上風力)、地熱の立地規制見直しや、送電網利用の接続ルール緩和が必要とされています。

 

なお、経済成長の源泉で、自動車、電子機器、エネルギーなど、日本の基幹産業を支えるために不可欠な、レアアースなどレアメタル(希少金属)などの確保や、移民問題とも絡む労働市場の規制緩和については、別投稿でまとめます。

 

財源は経済成長

このように、経済成長こそが、「強い日本経済」を実現させるための大前提になり、これが、減税や補助金など財政支出に対する最大の財源となります。経済が成長すれば、政府の税収も増えて、財政赤字も削減され、国民のために使えるお金がどんどん増えるという好循環を実現させることができます。

 

この好循環が実現するまでの間、政策実施のために必要な財源は赤字国債で対応します。これで一時的に財政赤字が増えても、マーケットが過剰に反応することはないと思われます。債券市場が長期債の急落(長期金利の高騰)と言う形で悲観的に反応するのは、財政が悪化の一途をたどる状況しか想定されない時です。

 

効果的な物価対策と景気対策を実施し、さらに成長戦略を示したうえで、赤字国債の発行はあくまで短期的であることを明確にすれば、債券市場は大きく崩れないと思われれます。さらに、憲法に平時の「財政均衡条項」を盛り込めば、念押しになるでしょう。

 

(投稿日2026.2. 11)

むらお政経塾 レムリア