経済政策:新新三本の矢(減税・物価・成長)

 

<経済政策の提言>

減税しても税収が増える経済成長路線へ!

 

景気対策

減税(消費税だけでなく、所得税・法人税等の引き下げも)

消費税は一律引き下げ(軽減税率とインボイス制度の廃止も実施)

 

物価高対策

物価高の代名詞、コメ価格を下げるために増産へ再転換

再エネ賦課金制度の見直しで、電気代引き下げ

円安対策として金融引締め路線を志向する

ウクライナに対する輸出支援で、世界の穀物市場の供給不足の解消に尽力

 

成長戦略

技術革新(IT・AI)と規制緩和

 

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一言で物価高対策と言っても、いろいろな角度で考える必要があり、また、最低限の経済学の知識がなければわからなくなるので、経済理論を交えながら、政策提言を行う。

 

<日本経済の現況>

 

日本の名目および実質GDPは、2023年度以降、過去最高水準を更新、表面上は成長し、名目上の数字では緩やかなプラス成長となっているが、実態経済は数字ほど良好ではない。その一方、物価水準は、統計上、2022年以降続いた急激なインフレからの緩和の兆しはでているが、消費者感覚では依然、物価高の状況は続いている。さらに、イラン情勢の悪化で原油価格の高騰が今度のインフレが懸念させる。

 

現在のインフレは、景気が良くなって需要が旺盛となって物価が上がるディマンド・プル・インフレではなく、原材料費の高騰などコスト(費用)の上昇によって物価を押し上げるコストプッシュ・インフレである。ということは、日本経済は、景気回復が鈍いなかでのインフレ状況であるので、現状は、どちらかと言えば、スタグフレーション(不況下の物価高)に近いと言える。

 

一方、賃金水準をみれば、名目賃金(現金給与総額)は増加傾向にあるものの、実質賃金(物価変動を調整した賃金)(=名目賃金-物価上昇)は、名目賃金の上昇が物価上昇(インフレ)に追いついていないため、マイナス基調が継続している。これは、実質賃金がプラスに転じれば、物価高も苦ではなくなってくることを意味している。

 

物価高でもそれに見合う賃金(給与)の上昇がともなえば問題ないが、現在、食料品やエネルギー価格を中心とした物価上昇が、賃金の伸びを上回っているため、現在、私たちの多くは、物価高で生活が苦しいと感じている。

 

こうした状況下、スタグフレーション型の経済を立て直すための政策としては、①景気回復を実感できる経済成長を実現すること、②物価高(インフレ)を抑える両方の政策が必要である。

 

 

<主要政党の政策提言>

 

今回2026年の衆院選挙で、各党は、物価高対策として、消費税減税を主張している。ほかにも、社会保険料に引き下げや、「年収の壁」の引き上げなどが訴えられているが、これらの政策は一言でいえば、「可処分所得」を増やす政策である。可処分所得とは、いわはる「手取り」のことで、以下の式で示される。

 

可処分所得=A収入(給与+賞与など)―B(税金+社会保険料)

 

消費税減税や社会保険料の引き下げ、「年収の壁」の引き上げなどの政策は、上式のBを、また現金給付などはAをそれぞれ増やす政策である。可処分所得が増えれば、消費も増えて、成長を促すことにつながるし、前述したように物価が高くても、勤労世帯にとっては、実質的な所得の増加で、物価高に伴う生活苦はある程度、緩和できるであろう。

 

ただし、消費税減税などで物価が下がるかといえば、企業にとって税負担が緩和したとしてもすぐに値下げに転じる可能性は低いと思われる。したがって、これらの物価高(インフレ)対策の多くは、物価そのものを下げるための政策というよりは、現在のインフレ経済に耐えられるための政策である。

 

言わば、緊急対応型の政策と言える。実際、各党の消費減税議論のなかで、食品の消費税をゼロの主張があるのは、食料品だけでも安心して買えるようにという配慮からきている。そのため、各党の主張の多くは、現在の物価高を乗り切ると言う点では、有効かもしれないが、中長期的に「強い日本経済を実現する」という点ではまだ不十分である。

 

そこで、これらをふまえて、次に、私見として、現在のスタグフレーションに近い経済の状況において、(経済成長を実現する)景気対策と(物価そのものを下げる)物価高対策について言及するとともに、強い日本経済を実現するための中・長期的な経済政策について意見を述べてみたい。

 

 

<強い日本経済を実現するために>

 

◆ 消費税を含む幅広い減税を!

 

景気対策の大前提として、不況でデフレにとなる状況のときには、減税や政府支出を増やし、好況でインフレ懸念が高まるような状況では増税や政府支出を削減することである。

 

そこで現在、スタグフレーション(不況下の物価高)型の現況において、景気対策として、求められている政策は、減税であることは間違いない。ただし、減税は、税体系全体のバランスを考えながら実施すべきで、仮に、数兆円規模の大型減税を行う場合、消費税減税だけでこれを実施するのではなく、所得税、法人税なども含めての減税を主張する。

 

消費税は廃止しない!

減税議論のなかで消費税そのものの廃止を主張する政党がいくつかあるが、消費税は、景気対策として減税するものの、廃止せず、むしろ、問題として指摘されている輸出還付金など、消費税の制度上の見直しがなされるべきだと考える。

 

また、消費税を廃止してしまえば、後の景気対策の選択肢を狭めてしまうことも問題である。減税が必要なときに下げる税目(消費税)がないとなれば、有効な対策を打てなくなる(消費を喚起したいのに、所得税減税では効果がでるのに時間がかかる)。

 

消費税は一律減税を!

一方、消費税減税そのものについても、自民党をはじめ政党のなかには食品だけ0%にするとの主張もありますが、そうした場合、たとえば、食品の消費税ゼロで、飲食店など不益を被る人々がでてくる一方で、食品を扱う業界は大儲けすることができるなど、不公平感が否めない。

 

このため、消費税を減税するのであれば、一律減税であるべきだ。私は、消費税を現行の10%から5%へ一律減税することを主張したい。そうすれば、より多くの人が公平にその恩恵を受けることができ、かつ、軽減税率の導入によって採用された非常に不明瞭なインボイス制度も廃止することができる。

 

消費税については、「財政」を参照

 

 

◆ インフレ(物価高)対策

(物価そのものを下げる政策)

 

日本でインフレ(物価高)が進行している要因としては、主に、世界的な食品やエネルギー価格の高騰と円安があげられる。とりわけ、アメリカとイスラエルがイランへ仕掛けた戦争によって、今後、原油高に対するさらなる対策も必要になってくる。

 

ウクライナへの穀物輸出支援

近年の世界の物価高(インフレ)は、ロシアによるウクライナ侵攻で、小麦を中心としたウクライナの穀物、ロシア産の穀物・エネルギーが世界市場から消えたことが大きな背景である。したがって、この戦争が終わらないことには物価高(インフレ)の芽を摘むことはできない。

 

ただし、日本としてできることは、外交面で、現在少しずつ復活しているウクライナの穀物輸出を、他の国々とともに支援、強化し、世界の穀物市場にある供給不安の解消に尽力することである。

 

金融引締め

また、日本の場合は、これに加えて、円安による輸入物価の高騰が、物価高に拍車をかけている。円安は、遡れば、失敗に終わったアベノミクスによる経済政策で実施された異常なまでの金融緩和政策(低金利)が遠因である。その後、コロナ禍が過ぎ、日米金利差の拡大が、現在の円安の直接的な原因と言える(金利の高い米国へ日本からお金が動く、このとき円売/ドル買が活発となる)。

 

インフレ懸念の高まりからアメリカの金融当局(FRB)が利上げを開始したのが、2022年3月でしあった。主要各国も金融引締めに動くのなか、当時の黒田日銀総裁は、アベノミクスに固執し、超低金利のスタンスを変えなかった。この「異次元の金融緩和政策」の実行役であっ黒田総裁が2023年4月に退任し、後任の植田総裁は利上げにかじを切ったのは、2024年4月のことであった。

 

円安対策として、今後、日銀が、インフレの状況に対応して、積極的な利上げ路線をとることが期待される。アベノミクスからの金融環境は、ゼロ金利はおろかマイナス金利政策まで実施されるなど異常な低金利状態であった。これをまず正常な状態に戻さなければならない。金利水準が正常な状態に戻ることなく、躍動的な経済成長は実現できないと考える(好況で資金需要が高まって金利が上昇する)。

 

日銀の使命は「物価の安定」である(日銀法2条)。利上げで景気回復の腰を折るとの懸念もあるかもしれないが、逆に、減税等の景気対策によって、景気が回復し、需要増によってインフレ(物価高)がさらに加速することに備えることも求められる。

 

もっとも、通貨発行権を含む金融政策は日銀の専権で、政府に権限はない。ただし、日銀は政府からの独立性が保障されているが、政府との密接な協力関係や意思疎通も求められているので、政府としては、できるだけ早い金融の正常化を望んでいるとの意向を、日銀に示しておくべきである。

 

では、政府は、物価そのものを下げるための政策を講じえないのかというと、そうではなく、家計にとって切実な問題である食料品と電気代を下げる手立てはある。

 

コメの増産

食料品の高騰といえば、まずにあげられるのが米価で、現在もコメ価格は高水準にある。石破政権のときあれだけ騒いでいたマスコミも、高市政権になって報道しなくなったが、コメの価格を下げることが、政府のできる最も効果的な物価対策になる。

 

コメはほぼ国内で自給できているので、米価も円安や国際情勢に影響を受けることはない。石破内閣が決定した「増産」が実施されれば、確実に下がることが期待できた。しかし、高市政権の鈴木農相は、就任当初から増産の意思は全くなく、実質的な減反路線に戻してしまった。これが現在も米価が高止まっている根本的な理由である。

 

政府がコメの増産の意思を明確に示せば、これまで、高値での利益を狙って、ため込んでいる卸売業者が市場に放出すると見られている。供給が増えれば、コメの値段は下がる(コメの下落で所得が落ちる農家に対しては、かつて民主党政権で実施した個別所得補償を行う)。

 

米価が下がれば、コメを原料にした、餅、せんべい、あられなど米粉製品、日本酒、りん、米酢、みそといった発酵食品、米粉を使ったパンや麺、ビーフン、和菓子、さらには米油や米ぬか漬けなど、多岐のわたる食品の価格が下がるという相乗効果も期待できる。

 

(コメを含む農政についての詳細は、農業政策を参照)

 

再エネ賦課金の見直し

電気代については、天然ガス、石油、石炭などを輸入に頼っているために、国際情勢の影響をまともに受けるという側面はあるが、日本の場合、さらに、再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)が、電気代に加算されているという現実もある。2025年度では1kWhあたり3.98円に達するなど、家庭や企業の負担を増加させている。

 

ですから、極論すれば、 再エネ賦課金制度が廃止されれば、その分、電気代が下がるので家計と企業の負担は大きく解消される。もちろん、再エネ賦課金制度があるから、現在、日本は再生可能エネルギーを増やすことができており、さらにカーボンニュートラルを実現するという国際公約もあるので、廃止とはいかないかもしれない。しかし、インフレなどの緊急時には、賦課金の一時停止や、その比率を下げるといった対策を講じるべきである。

 

このような短期的な対策に加えて、「強い日本経済」を実現させるために、中長期的な観点からの成長政略が必要になる。

 

◆ 成長戦略

 

成長戦略の鍵は、技術革新と規制緩和にある。技術革新によって生産性が高まり、人手不足の解消と同時に高賃金(労働意欲の向上)を実現、企業収益も増加する。また、規制緩和によっても新しい産業が興るだけでなく従来産業も活性化して、雇用を拡大することができる。さらに両者の相互作用で、力強い経済成長が期待できる。

 

技術革新と規制緩和

日本の技術革新といえば、近年では、液晶、リチウムイオン電池、QRコード、ロボットなど多岐にわたりイノベーションを生み出してきたが、これからの時代は、AI・半導体・量子・宇宙・海洋などの先端技術分野への優先的な積極投資が望まれる。

 

規制緩和は、持続的な経済成長と生産性向上を実現するために、とりわけデジタル、エネルギー、労働市場の分野で必要とされている。そのなかで、特筆すべきは、デジタル化・AI社会実現のための規制緩和で、自動運転やドローンが社会でさらに普及することが期待されている。そのために、地方の交通空白地帯や物流での自動運転、配送ドローン導入を加速させる道路交通法や空域利用規制の緩和が求められている。

 

また、エネルギー・GX(グリーントランスフォーメーション)分野でも、再生可能エネルギー参入の促進のために、風力発電(特に洋上風力)、地熱の立地規制見直しや、送電網利用の接続ルール緩和が必要とされている。

 

なお、経済成長の源泉で、自動車、電子機器、エネルギーなど、日本の基幹産業を支えるために不可欠な、レアアースなどレアメタル(希少金属)などの確保や、移民問題とも絡む労働市場の規制緩和については、別投稿でまとめる。

 

財源は経済成長

このように、経済成長こそが、「強い日本経済」を実現させるための大前提になり、これが、減税や補助金など財政支出に対する最大の財源となりえる。経済が成長すれば、政府の税収も増えて、財政赤字も削減され、国民のために使えるお金がどんどん増えるという好循環を実現させることができる。

 

この好循環が実現するまでの間、政策実施のために必要な財源は赤字国債で対応する。これで一時的に財政赤字が増えても、マーケットが過剰に反応することはないと思われる。債券市場が長期債の急落(長期金利の高騰)と言う形で悲観的に反応するのは、財政が悪化の一途をたどる状況しか想定されない時である。

 

効果的な物価対策と景気対策を実施し、さらに成長戦略を示したうえで、赤字国債の発行はあくまで短期的であることを明確にすれば、債券市場は大きく崩れないと思われる。

 

(投稿日2026.2. 11, 最終更新日2026.3. 15)

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