憲法改正:不毛の違憲論争に終止符を!

 

憲法改正の提言

私は、以前はどちらかというと護憲派であったが、今は改憲派である。現代の日本と世界は、戦争・紛争、大規模災害、感染症などパンデミック、食料危機など予期せぬ事態が、いつでも起きかねない「緊急事態」に直面している。この状態は今後、次世代にわたっても続くことが想定される。

 

憲法は国家像を示すものである。日本国憲法も今の時代に沿って改正しなければならないと思う。戦後、実質的にアメリカが書いた日本国憲法は、日本が侵略戦争をしないための憲法であったが、これからの憲法は、平和憲法の根幹を堅持しながら、危機管理の概念を盛り込んだ、国民を守るための憲法であるべきである。もちろん、国家(政府)の暴走を抑える立憲主義にもとづくものであることは言うまでもない。

 

そこで、少なくとも次の内容について、改憲・加憲の必要性を訴えたい。

 

「憲法9条2項」の改正と「自衛隊」の明記

「緊急事態条項」を明記

平時の「財政均衡条項」を明記

「天皇は国家元首」を明記

 

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◆ 「憲法9条2項」の改正と「自衛隊」の明記

 

憲法改正の議論となれば、それは間違いなく憲法9条をどうするかということになるはずであろう。ロシアによるウクライナ侵攻で、私の憲法9条に対する考え方は180度転換した。端的にいえば、「9条を守って国が滅ぶ」ということが起きてはならないということである。平和憲法の象徴である憲法9条2項を守って、国が占領され、国民の命と財産が奪われたら、元も子もない。しっかり、国防についての規定は必要である。

 

もちろん、2項を変えなくても、自衛権は解釈としては認められていると反論されるであろう。しかし、個別的自衛権を行使する事態が発生した場合、自衛隊の活動について、違憲論争が巻き起こることは必至であろう。効果的かつ迅速な対応の妨げになりかねない。はっきりと明文化する必要がある。

 

日本国憲法 第9条

1) 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2) 前項の目的を達成するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 

9条の私的改正案

9条1項は堅持する。「日本は侵略戦争をしない」という戦後の決意は揺らぐことなく、平和憲法の看板は下ろさない。

 

2項については、国民の命と財産が危険にさらされる事態が生じたとき場合、「…戦力は、これを保持する。交戦権は、国と郷土を守るために、これを認める」と改正されるべきだと考える。

 

さらに、防衛戦争は起こりうるなら、その時には同然、軍隊が必要になる。そこで、3項として、「有事の際、自衛隊は国防軍として国民の安全の確保に努める」と、自衛隊は、有事の際、軍隊になりうるという条項を加えることが求められる。

 

そうすると、自衛隊が軍隊という地位になれば、軍法会議の設置が必要になる。自衛隊が軍隊となれば、自衛隊員は軍人になるので、特別の厳しい軍事法規が作られ、それに従わなければならなくなる。したがって、憲法76条2項の「特別裁判所は、これを設置することはできない」の部分の改正も必要となる。軍法会議は軍人だけを対象として特別裁判所だからである。

 

 

◆ 「緊急事態条項」を明記

 

緊急事態条項とは、「国家が非常事態(戦争、テロ、感染症、大規模災害など)に直面した際に、政府が一時的に権限を強化し、国民の生命や安全を守るために、憲法上の制約を緩和または一時的に停止する規定のこと」をいうが、世界の憲法の中には通常、緊急事態条項が規定されており、憲法9条2項の改正の観点からも、憲法に書かれるべき条項である。。

 

緊急事態条項の必要性は、個人的にはコロナ禍で痛感した。コロナ禍で診療所を閉めた開業医が多かったことに対して、開業医を統括している日本医師会に対して批判が高まったが、当時、医師会幹部は、「医師会は任意団体であり、法律でもない限り、医師たちを動員する強制力はない」と釈明していた。この発言は逆に、緊急事態には、強制力のある法律を作っておかなければ、国民の命と健康は守れないということを示した。

 

もちろん、緊急事態条項を憲法に規定しなくても、感染対策特別措置法などの法律で十分だと反論されると思われるが、憲法に書かれていなければ、その法律の運用について、不毛の違憲論争が起き、迅速かつ実効性のある対応の妨げになりかねない。憲法にきちんと明文化すべきと考える。

 

 

◆ 平時の「財政均衡条項」を明記

 

平時の財政均衡条項について、財政を均衡させておくことは、国内外の信頼を得る手段であり、国民に安心して、生活してもらう理想の前提条件である。ただし、平時でない場合は、積極財政も認められることを意味する。詳細については、「財政:無税国家「日本」のすすめ」を参照。

 

 

◆ 「天皇は国家元首」を明記

 

本来、国家の枠組みという点において、これは最初に行うべき項目である。

 

あらゆる主権国家には国家元首が存在し、世界の多くの国では憲法に規定されている。世界の君主国の憲法では、国民と国家の象徴として国王は元首として位置づけらえる。

 

君主国である日本でも「元首は天皇である」ときちんと明記すべきである。国家元首という国の中心的存在が曖昧では、国の理念として、まとまりと求心力を欠いてしまう。どんな組織でも長(トップ)が必要である。原風景として富士山が日本の象徴であるように、多くの日本人にとって、天皇は国民統合の象徴である。

 

日本国憲法第1条

天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

 

この1条の冒頭に、「天皇は国家元首であり、日本国ならびに日本国民統合の象徴であって…」または、「国家元首である天皇は…」と改正すべきと考える。

 

 

参考投稿:知られざる日本国憲法のなりたち

他の政策提言については、こちら☞

 

(投稿日:2016.4.18、最終更新日:2025.5.5)

むらおの歴史情報サイト「レムリア」