偏った日本の食品表示規制の現実
前回の 消されていく「遺伝子組み換えでない」表示 の投稿で、2023年4月から、大豆ととうもろこしに関して、意図せざる遺伝子組み換え食品の混入が検出限界値(約0.01〜0.1%)未満でないと『遺伝子組換えでない』と表示できなくなったというニュースを解説しました。今回は、日本の食品表示の制度についてまとめました。
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食品表示には、①遺伝子組み換え原料を使っている場合に「遺伝子組み換え作物を使っている(「遺伝子組換え不分別」)と表示する義務があるものと、②遺伝子組み換え作物は一切使っていません(「遺伝子組換えでない」)ということを積極的に表示する2種類があります。
遺伝子組み換え作物を作る側の表示
これまでの政府の対応は、明らかに、①の遺伝子組み換え原料を使っているメーカーにとっては有利な規制になっています。たとえば、ニュース報道によれば、日本では食品で遺伝子組み換え表示が義務付けられるのは、遺伝子組み換え食品原料が全体の5%超え、かつ使われている上位3位の原料までが対象となる(5%以上使っていても、上位3位に入らないものは書かなくていい)そうです。さらに、上位3位だけ非遺伝子組み換えで、後はすべて遺伝子組み換えであったとしても遺伝子組み換え表示をしなくていいことになっているようです。
遺伝子組み換え作物を作らない側の表示
これに対して、「遺伝子組換えでない」という表示を積極的に行う食品メーカーに対して、不利な状況になっていることの一つが、「遺伝子組換えでない」表示がそもそも少ないということだと指摘されています。そう言われてみれば、「遺伝子組換えでない」と表示された食品は、納豆や豆腐、醤油くらいで意外に少ないのです。もっとも、醬油など一部の表示義務の対象外の食品は、これまで任意で「遺伝子組換えでない」と記載することは可能であった(今回の基準の変更でそれも難しくなると見られている)。
現行制度では、「遺伝子組換え」の表示義務の対象は、大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、菜種、綿実、アルファルファ、テンサイ、パパイヤ、カラシナの9農産物と、これらを原材料とした、味噌やポテトスナックなど33の加工食品群です。なお、今回の表示義務の変更は、大豆ととうもろこしが対象で、これら以外の表示義務のある農作物については、現在も混入率の定めはなく、今後も混入が認められない場合のみ「遺伝子組換えでない」と表示されることになります。
不公平な食品表示規制
「遺伝子組換え」の表示義務の対象食品以外の食品には「遺伝子組換えでない」という表示を政府が許していません。サラダ油、醤油から米や小麦、家畜の飼料に至るまで、表示義務はありません(表示してはならない)。
「遺伝子組換え」の表示義務の対象外の食品の中で、特に問題視されているのが、米や小麦についてです。なぜ、米や小麦について「遺伝子組換えでない」という表示をすることを許していないかと言えば、ニュース報道によれば、日本で流通している米に遺伝子組み換えのものはないから、わざわざ「遺伝子組換えでない」という表示をしてしまうと、あたかもその食品が優良であるかのように消費者に錯覚させる(「優良誤認」という)ことになるとして許さない」のだそうです。
官僚らしい論法であり、①の遺伝子組み換え原料を使っているメーカーが不利になることに対応した処置であることがわかります。今回の基準改定も、「遺伝子組換えでない」という表示をすることによって、遺伝子組み換え原料を使わないように努力している側だけを厳しくするというものだと言えるでしょう。
<参照>
<参考>
「遺伝子組換えでない」の表示が消える!4月からの「遺伝子組み換え食品」見抜き方
(2023/03/29 『女性自身』編集部)
消える?「遺伝子組換えでない」食品表示
(2023年03月11日 OKシードニュース)