種子法の復活を!

 

『日本の農業  その現実と未来』のテーマで、「農政」、「食料安保」、「食の安全」に区分しながら、日本の農業をさまざまな観点から解説しています(シリーズの他の投稿記事については、末尾の「関連投稿」欄を参照下さい)。

 

前回は、「食料安保」に関して、日本の食料自給率について説明しましたが、仮に食料自給率が100%になったとしても、その種子が国産でなければ意味がありません。日本の食料自給率は40%を下回っていますが、食料の元となるタネの自給率を考慮すれば10%台に落ち込むと試算されています。今回、ある意味、食料安保の根幹ともいえる「種子」についてまとめてみました。

 

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安倍政権は、2018年3月31日、種子法(主要農作物種子法)を廃止しました。この「蛮行」が次世代にいかなる悪影響を与えることになるのかを考えてみたいと思います。

 

<種子法とは?>

 

◆ 種子法が生まれた背景

 

第二次世界大戦中、日本は食糧不足に見舞われ、農家は強制的にコメを供出させられ、種子も政府の統制下にありました。敗戦に至る過程で本土空襲の激化や徴兵による農家の人出減少などを引き起こし、日本の農業生産力を大きく低下させてしまいました。

 

戦後、復興が進み、人々の生活が安定し始め、コメの統制は解除されましたが、日本人の主食であるコメの源となる種子は、国(道府県)が優良な種子を農家に供給しようと、1952年5月、種子法(正式名称は「主要農作物種子法」)が制定されました。なお、主要農作物とは、水稲・麦類(大麦、はだか麦、小麦)・大豆をさしました。

具体的には、国や都道府県が優良な種子の生産や普及に努めることによって、農業生産量の向上をめざしたのです。

 

もし、戦時中の統制を完全に解除して、農家に種子栽培を委ねてしまえば、農家は、農作物の栽培とは別に、種子を採取するために「育成」をしなければなりません。農家が自ら生産した作物から種子を「採取」することもできますが、品質を維持し、品種の改良、優良な種子の「育成」が求められるのです。

 

一つの種子を開発・育成するには、約10年、増殖には約4年かかると言われるなど、膨大な時間と多額な費用が必要です。具体的には、大元の原原種、その子どもの代の原種を経て選別され後、種子となります。

 

そこで、政府は、優良な種子は国民の食糧確保に不可欠であり、とりわけ国民が生きるために欠かせないコメ、麦、大豆の種子を供給するのは国や自治体としての責任であるという理念から、税金を投入してでも守り、主要な農産物の種子を国が管理することを義務づけました。

 

実際、種子法は各自治体と国の連携によって、優良種子の安定供給はもちろん、病害や冷害に強い品種の改良、高付加価値米の開発などに貢献してきました。

 

このように、種子法は、戦後の食糧不足を解消するための国家的な政策として制定されたという経緯があります.

 

◆ 種子法に基づく種子の供給システム

 

この目的遂行のために、政府が予算を確保する役割を担う一方、生産する品種の認定は地方自治体が行います。「原原種→原種→種子」と約3年かけて作られた品種を選別して、種子の保証書を発行します。

 

その後、農家が種子を栽培していきますが、実際に、種子の生産に携わるのは、各都道府県の農業協同組合(JA)、農業試験場などの研究機関です(後者は、原・原種、原種を保持)。それから、その種子を地方自治体が指定する各県の採種農家(種子農家=種づくり農家)が、販売普及用に栽培(委託生産)し、ようやく、各農家に供給されるという体制が敷かれていました。

 

近年はこのシステムに基づいて、各県は、地域の地理や気候条件に適した品種改良が継続的に行われ、地域性や食味の追求で競合し、結果として、新潟県の「コシヒカリ」や北海道の「ユメピリカ」などの「優良銘柄」や、「あきたこまち」などの「奨励品種」のコメを多数誕生させてきました。

 

 

<種子法廃止に動いた安倍政権>

 

◆ なぜ種子法を廃止しないといけなかったのか?

 

しかし、安倍政権は、このシステムを止めて、政府や自治体が長年担ってきたコメの種子開発と供給を民間企業に任せようと、種子法の廃止をめざしたのでした。しかも、この戦後の日本の食と農を支えてきた種子法が、わずか半年の議論で、2018年3月31日に、廃止されてしまったのです。

 

種子法を突如廃止した理由として、安倍政権は、「都道府県が開発しているコメ、麦、大豆の品種(種子)の販売価格は安すぎる。これでは、民間企業が種子開発事業に参入できない」、「国や自治体などの公的機関が、公的支援をふくめ、種子の生産に深く関わることで、民間企業の参入が難しくしていた」と、種子の販売価格が不当に安く、民間企業が参入できないことを問題視しました。

 

その一方で、肥料、農薬、機械、飼料など生産資材価格が高いので、これを低減させる、とも主張しました。通常、種子を作るためにかかる生産資材の価格が下がれば、その分、種子の価格は下がる余地がでてくるので、安倍政権がいう「不当に安い」種子価格を自らさらに下げることになってしまいます。

 

ということは種子価格や資材価格が高い安いは余り問題ではなく、安倍政権の目的が民間企業を参入させることが主眼であることが透けて見えます。民間企業と連携して、より効率的な種子の生産体制を構築させるために、種子法を廃止したのです。

 

農林水産省も、「税金で種子の生産コストをまかなえる都道府県と、自己資金を投資しなければいけない民間企業の競争条件は対等になっておらず、公的機関の開発品種が独占的になっている」ことを種子法廃止の理由の一つにしていますが、これも民間企業を参入させると言っていることに等しいですね。

 

これまで自治体は、種子法によって種子の安定供給や新品種開発が義務付けられていましたが、種子法が廃止されたことによって、その義務がなくなりました。そのため、今後、自治体の裁量で種子にかける予算を自由に変更させることができるので、各地域で生み出されてきた独自品種の開発や保全、供給の放棄につながる可能性もあります。

 

 

◆ 知的財産を売り渡す農業競争力支援化法

 

また、民間企業による種子の開発、流通、販売への参入については、種子法廃止以前に、安倍政権が成立させた、農業競争力支援化法に、すでにその趣旨が色濃く打ち出されていました。

 

農業競争力支援化は、「良質で低廉な農業資材の供給」や「農産物流通等の合理化」といった構造的な問題を解決することを目的として、2017年5月に制定されました。種子に関しても、同法8条の4項に次のような恐るべき規定があります。

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種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること。

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これは、民間企業が種子の市場に参入できるように、彼らを支援するだけでなく、公的機関が長年培ってきた種子開発・生産に関するノウハウを民間企業に渡せと言っているのです。

 

農業競争力強化法は、まさに、自治体や独立行政法人が持つ種子生産の知見を民間企業に提供することを促進しています。そのため、農業競争力強化法には、国や自治体が担ってきた役割をこれまで以上に民間に託す政府の姿勢がうかがえます。

 

2018年2月に開催された韓国のピョンチャン五輪の際に、日本のイチゴの苗が勝手に使われていたことが発覚して大騒ぎになりましたが、コメの種子は「企業に提供しなさい」とわざわざ法律まで作った命令する徹底ぶりです。

 

前述したように、現在、良質なコメの種子からできたおいしいおコメが各地域で生産されて、私たちの食卓を賑わせています。つまり、すでに適切な競争がなされている種子市場に、国の支援で、民間企業を強引に参入させようとしている観が否めません。しかも、公的機関の蓄積した知的財産まで譲れと民間企業側に肩入れまでしています。

 

さらに問題なことは、民間企業の参入といっても、参入したがっている民間企業は、グローバル種子メーカーなど大手企業です。現在、世界の種子市場は、米モンサントを買収した独バイエル、米ダウ・デュポン、そして中国化工集団に買収された世界最大のスイスの農薬会社シンジェンタの3社に握られています(3社の市場占有率は7割)。グローバル種子メーカーが、安倍政権の後押しで、参入してきたら、日本の種子もやがてこうした多国籍企業に押さえられ、日本の食料が彼らに支配されることになることが懸念されます。

 

◆ 種子法廃止の背後にいた人々

 

このように、種子法が廃止される前に、農業競争力支援化法が制定され、その道筋が敷かれていたといえます。さらにそれ以前の2016年10月、規制改革推進会議農業ワーキング・グループと、竹中平蔵氏などをメンバーとする未来投資会議の合同会合の場で、種子法廃止が提起されたと言われています。もちろん、種子法が「民間の品種開発意欲を阻害している」ことを問題視したのです。

 

加えて、この背後には、ウォール街の金融投資家、グローバル種子メーカー・製薬企業などの要求をうけた「アメリカ政府」の力が働いていたと見られています。

 

つまり、種子法の廃止は、米国の意向(「TPP日米合意文書」)に沿う形で、日本の「規制改革推進会議」を通じて「自主的」に承認されたものであるという見方が根強くあります。実際、京都大学の久野秀二教授は、今回の種子法廃止の背景に、「『公共種子・農民種子』をグローバル企業開発の特許種子に置き換えようとする世界的な種子ビジネスの攻勢がある」と指摘しています。

 

◆ グローバル種子メーカーの思惑

 

これまで、コメと麦と大豆の種子は、種子法によって政府が種子を管理してきたので、国産100%でした。しかも、伝統的な固定種です(固定種とは、親から子、子から孫へと代々同じ形質が受け継がれている種で、味や形が固定されたものが育つ)。

 

一方、モンサント(現バイエル)などのグローバル種子メーカーは、大豆やとうもろこしの遺伝子組み換え(GM)化を世界的に実現してきました。現在、彼らが狙っているのは、コメや小麦という主要食料の種子の遺伝子組み換え(GM)化です。

 

特に日本において、コメ・麦・大豆の市場規模は野菜の7倍あります。彼らが種子法廃止を後押しして狙ったのは、この日本の市場です。しかも、コメや小麦などの種子の大半が固定種なので、これを遺伝子組み換えによって、一代限りの「自殺種(ターミネーター種子)」に置き換えようというのです。

 

自殺種と固定種ではどう違ってくるというと、固定種なら一つの種で栽培して、そこでできた種を使い…式に種を継承させていくことができますが、自殺種の場合、一代雑種と呼ばれるように、購入した種は一度栽培に使用されたら二度と使うことはできません。つまり、農家は必ず種を買い続けなければなりません。

 

このように、海外資本の企業(外資)の参入を許せば、日本から国産の良質なコメ(農産物)が消え、外国産の、しかも遺伝子組み換えの種子に取って代えられることが想定されます。前述したように、コメの種子は、原原種から原種という開発栽培の過程を経て、数年かかえて作られてきました。

 

しかし、種子法廃止で、原原種や原種がなくなり、農家は企業が権利を持つ種子を使わざるを得なくなります。そうすると、私たちは遺伝子組み換えのコメ(農産物)を食べることを強いられることにもなりかねません。

 

東京大学大学院の鈴木宣弘教授も、「グローバルGM種子企業にとって、今回の日本の種子法廃止と種子の関連情報の譲渡命令は「濡れ手で粟」です。「払い下げ」で手に入れた種をベースにGM種子に変え、特許化して独占し、それを買い続けない限り、コメの生産が継続できなくなってしまいます」と指摘しています。

 

さらに、種子市場がこのように寡占化(少数の巨大企業で市場を支配すること)してくると、種子価格も、農薬や機械などの資材価格もつり上げられていくことも必定で、そうなれば、種子法廃止や農業競争力支援化法が、名目上目指したこととは逆の結果になってしまいます。

 

日本は食料自給率が異常に低い国ですが、それでも最後の砦として、米は守られてきましが、種子法の廃止で、主食である米の種子を売り渡してしまえば、例えば、新潟で採れたコメと言っても、種が外国産であれば、もはや国産とは言えなくなります。

 

いざというとき日本がまず確保しなければならないのは、コメ、麦、大豆ですが、その種子供給を民間企業に依存するとなると、私たちの生命の源をグローバル種子企業に握られかねないことなってしまいます。ですから、今回の種子法の廃止は、ある意味、食糧安全保障の観点からも看過できない事態です。

 

グローバル種子企業の世界戦略は、「種を制するものは世界を制する」のスローガンに従って、種子を握ることです。種を独占して、農家は作物を栽培するために、彼から種を買わなければならないような仕組みを作ろうとしています。加えて、その種子を遺伝子組み換え、さらには、F1(一代雑種)化して普及させれば、彼らから買わざるをえない状況は永遠に続きます。グローバル種子メーカーはこうしたビジネスを世界中で広げ、巨万の富を築いています。

 

今回、彼らはそれを日本でやりたいとしているのです。そして、このグローバリストに応えたのが、安倍総理で、2018年3月31日、種子法は廃止されました。

 

 

<国会と地方自治体の抵抗>

 

しかし、こうした重大な問題点の指摘や反対の声を受け、国会では、種子法廃止が可決された際に附帯決議を採択して廃止法案に縛りをかけました。さらに、種子法そのものを復活させる動きもあります。また、条例によって種子法の内容を定めようという自治体もでてきました。

 

◆ 国会による付帯決議と種子法復活法案

 

国会で採択された付帯決議は以下のような内容です。

 

・種子の品質確保のため、種苗法に基づき、適切な基準を定め、運用する。

・優良な種の安価な供給には、従来通りの都道府県による体制が維持できるように措置をとる。

・都道府県の取り組みの財源となる地方交付税を確保し、都道府県の財政部局をふくめ周知徹底に努める

・都道府県の育種素材を民間に提供するなど連携にあたっては種子の海外流出を防ぐ

・「特定の事業者」が種子を独占し弊害が生じないよう努める。

 

さらに、種子法廃止法案成立後の、2018年4月19日、野党6党は、種子法の復活法案を衆院に提出するまでに至りました(法案は成立しなかった)。

 

◆ 条例制定の動き

 

種子法に基づいて、コメなどの品種改良と種子供給を行ってきた各都道府県は、種子法が廃止されたことで、種子の安定供給を行う義務がなくなりましたが、種子法の廃止等に不安を感じた農家や消費者の働きかけもあって、種子法と同じ内容の条例制定に動き出しました。事業の継続を目指し、従来通り公費での種子生産体制を維持する意思を示したのです。

 

種子法が廃止される直前の2018年3月に、新潟県で初めて種子条例が制定されたのを皮切りに、その動きは全国に広がり、兵庫県、埼玉県、山形県、富山県、北海道と続き、岐阜、長野、福井、宮崎、滋賀、宮城、鳥取など27都道府県が「農作物の種子に関する条例」を制定しています(2021年8月の段階)。

これは、「民間企業の参入を妨げる」という理由で種子法を廃止してしまった安倍内閣に対する「地方の反乱」と言えます。

 

 

<種苗法の改正でとどめか?>

 

◆ 種子の自家採種禁止

 

これに対して、安倍政権(農水省)は、2019年の通常国会で、農家による種子の自家採種を禁止することを付記する種苗法の改正案を提出する構えを見せました(農林水産省は、2004年から自家採種原則禁止を目指していたと言われている)。

 

仮に外資(グローバル種子メーカー)に種子市場を席捲されたとしても、農家が自ら生産した作物から種子を採取する「自家採種」によって、国産の安全な種子を守り抜くことはできます。

 

しかし、農家による種子の自家採種が禁止されると、伝統作物や地方限定の農産物などの生産を継続することが不可能になっていき、ますます企業による農業への介入が進むことが懸念されています。

 

具体的には、農家が自分で種を取って栽培する自家採取が禁止されると、農家はどんな種子も買わなければならなくなります。

 

グローバル種子企業は自社の特許権が侵害されるのを防ぐため、独自の「ポリス」(監視組織)の目を張り巡らせているとされ、その監視網で証拠をつかんで訴えを起こしています。さらに農家への攻撃は様々な手口で進められ、カナダなどでは在来種を栽培していた農家の作物とGMが交雑し、被害を受けたのは農家であったにもかかわらず、「当社の品種を勝手に栽培した」と農家をGM開発企業が特許権侵害で告訴するという問題が実際に起こっています。

 

◆ 種苗法の改正

 

安倍政権は、2019年の通常国会に種苗法改正案の提出を見送りましたが、次の菅内閣の2020年12月、種苗法の一部改正案が2020年12月に成立、2021年に4月(一部は翌22年4月)に施行されました。

 

政府によれば、種苗法が改正された最も大きな理由は、「日本の農業を守るため」だそうです。日本で栽培されたシャインマスカットの苗木が中国に流出、生産・販売され、結果的に、韓国、タイ、マレーシア、ベトナムにまで広く流出した「事件」がありましたが、改正種苗法では、「登録品種は限られた地域でしか栽培できない」と明記し、シャインマスカットのような登録品種の海外への持ち出しを違法として制限できる内容が盛り込まれています。

 

(改正前は、登録品種であっても、種苗業者など正規の販売ルートから入手している場合は、そのあとに当該品種を海外へ持ち出すことは制限できなかった)。

 

しかし、食料安全保障などの観点で、種苗法改正で問題となるのが、「自家増殖(自家採種を含む)の原則禁止」の部分です。

 

「農家が登録品種の自家増殖をする場合にも育成者権の効力が及ぶ。登録品種に限り、農家による増殖は育成者権者の許諾を必要とする」と条文には書かれています。

 

これに対して、「自家増殖(自家採種を含む)が制限されるのは登録品種だけ」で、地域で伝統的に生産されてきた「在来種」や、一度も品種登録されたことのない「一般品種」については、これまで通り制限の対象になっていないと政府は説明しています。そのため、在来種や一般品種を栽培してきた農家であれば、今後も同じように自家増殖(自家採種を含む)が可能であると言っています。

 

東京大学大学院の鈴木宣弘教授は、この点について次のように分析しています。

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代々自分の農地で自家採取した種子で栽培していた作物であっても、品種登録していなければ、自分のものではないとされてしまう。その作物を栽培農家より早くに民間企業が登録してしまえば、その農家は特許権に侵害で告訴され、損害賠償を求められることにもなりかねない。

・・・・・・・・・・

 

この主張に対しては、改正種苗法では万一在来種などの既存品種が品種登録されても、速やかに「登録の取消」が行われるそうなのですが‥‥。

 

一方、種苗法の改正に対する反対意見の中には、「農業の根本である種苗を大企業が押さえてしまい利益を独占するための改正ではないか」と懸念する声がありました。これに対しても、政府は、企業などが勝手に品種登録して利益を独占することはできない、また、種苗法改正によって特定品種の利用を強制されることもないと弁明しています。

 

農水省は、改正種苗法の骨子が、あくまでも「登録品種」の自家増殖(自家採種を含む)を制限することで育成者権者や国内農業の利益を守ることであると強調し、安倍政権が同法改正案を提出しようとした際の懸案については問題ないという立場です。

 

種苗法への強い疑念

それでも種苗法改正には、根強い反対の声が上がっています。まずそれは、「自家増殖(自家採種を含む)が制限されるのは登録品種だけ」と言っても、「自家増殖の原則禁止」が改正の本意です。海外では「農家の昔からの権利」として自家増殖(自家採種を含む)を認める考えが普及していると言われ、「自家増殖(自家採種を含む)の原則禁止」は、国際標準から外れており、「農家の権利が侵害される恐れがある」と懸念されているのです。

 

また、ニンジンやほうれん草、モロヘイヤなど、法改正の審議時点では登録品種が1つもない品目まで、自家増殖(自家採種を含む)禁止の対象になっていることに、改正法に疑念の目が向けられています。

 

農水省がいかに国民の納得のいくように説明したとしても、やはり、この法改正には他意があると感じる向きは多くいます。

 

政府は、自らが配した種子法に代わって、種苗法が日本の農業を守ると主張していますが、種苗法は基本的に種苗を開発した企業の知的財産権を守るための法律であり、主要農作物の優良な種子を、国と自治体が安定的に生産・普及させるための種子法とは、本質的な部分で異なります。

 

農業競争力支援化法で国と県がつくったコメの種の情報を企業に譲渡させ、種子法廃止で日本の公共の種子事業をやめさせ、種苗法改定で自家採種は禁止する…、グローバル種子メーカーの影がちらつく、一連の種子をめぐる日本の法整備には大きな問題が内蔵していると言えます。まずは、日本の食と健康を守るために、その中核である種子法を復活・強化させることが必要です。

 

 

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<参照>

種子法廃止は誰のためか──日本の農作物への影響と今後の課題

(2018年12月18日、スマート・アグリ)

安倍政権の種子法廃止に“地方の反乱”拡大…独自に条例制定、国の農業政策に反抗(2019.06.03、ビジネス・ジャーナル)

安倍政権の種子法廃止で、日本の「種子」が外資に乗っ取られる…価格50倍に高騰(2018.12.26、ビジネス・ジャーナル)

すぐにできる、正しい食、間違った食

(2018.6.18、ビジネス・ジャーナル)

安倍政権、日本の農業を根絶せしめる愚行…ひっそり種子法廃止で

(2018.03.15、ビジネス・ジャーナル)

種苗法改正と農業競争力強化法の3点セット「種子法」廃止の真の狙いは

(2019年2月15日、生活クラブ・webレポート )

種子法廃止で起きた農家の不安|自治体の「種子条例」が種もみを守る?

(2024.11.21 minorasu)

誤解の多い「自家増殖(自家採種を含む)の原則禁止」の意義と反対の理由|種苗法改正のポイント

(2021/04/19、minorasu)

 

(投稿日:2025.8.28)

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