日本の食料自給率を考える

 

『日本の農業  その現実と未来』のテーマで、「農政」、「食料安保」、「食の安全」に区分しながら、日本の農業をさまざまな観点から解説しています(シリーズの他の投稿記事については、末尾の「関連投稿」欄を参照下さい)。

 

ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、食料の安定供給の重要性が指摘されるなか、日本の食料自給率の低さが問題視されています。今回は、「食料安保」に関して、日本の食料自給率についてまとめした。

 

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<食料自給率とは?>

 

食料自給率とは、私たちが消費した食料の中で国産がどれくらいかを表す数字です。

 

食料自給率 = 国内で生産された食料÷国内消費仕向量*

(食料の国内消費に対する国産の占める割合)

 

*国内消費仕向量

1年間で国内市場に出回った食料の量を表す数で、「国内生産量+輸入量-輸出量±在庫増減量」によって算出される。

 

なお、日本では、食料の数量を、カロリーベース、金額ベース、重量ベースで算出するかによって、それぞれ、カロリーベースと生産額ベースの総合食料自給率、重量ベースの品目別食料自給率の3種類があります(後述)。

 

 

◆ 日本食料自給率

 

農林水産省によれば、2023年の日本の食料自給率(正式には「総合食料自給率」)は、わずかに38%(カロリーベースによる試算)でしかなく、近年40%を下回った状態が続いています。残りの60%以上は海外からの輸入に頼っている日本の食料事情は極めて心もとない状況です。

 

これに対して、諸外国の食料自給率(カロリーベースで概算)は、以下のように日本よりはるかに高く、日本の食料自給率は主要先進国のなかでも最低の水準です。

 

主要先進国の食料自給率

カナダ233%、豪169%、アメリカ121%、仏131%、独85%、英65%

(2023年・カロリーベース)

 

◆ 真の食料自給率は約10%

 

さらに、「自給率38%」ですら、日本の実態を反映していません。なぜなら、日本は種子、飼料、化学肥料といった資材なども輸入に頼っているものがあり、これらが輸入できなくなれば、肉類、鶏卵、野菜などの国内生産量はもっと減るからです。

 

たとえば、野菜のタネの90%以上が海外から輸入されています。また、飼料自給率は27%(2023年)しかありません。

 

そこで、種子、飼料、肥料等の輸入依存度を考慮して再計算した「真の食料自給率」は、10%程度に過ぎないという試算も出されています。この「真の食料自給率」からも、日本は他国からの食料輸入なしには成り立たない国であることが明白で、食料安全保障の観点から問題視されています。

 

◆ 品目別自給率

 

一方、農水省は、品目別の食料自給率も発表しており、2023年の結果が概算で以下のように結果です。

 

米99%、小麦17%、大豆7%、とうもろこし0%

野菜79%、果物38%、魚介類52%

牛肉40%(12%)、豚肉49%(5%)、鶏肉65%(9%)、鶏卵96%(13%)、

牛乳・乳製品63%(28)%、油脂類13%、砂糖類34%

 

日本で100%自給できている食料といえばコメぐらいしかなく、小麦は約85%、大豆に至っては95%近くを、さらに、食用としてのとうもろこし(コーン)はほぼ100%輸入に依存している現状です。

 

この品目別自給率は、各品目における自給率を重量ベースで算出(分子を国内生産量、分母を国内消費量として計算)したもので、この場合、通常、飼料を海外に依存していたとしても、国内で生産された分は国産として計算されて発表されています。

 

括弧内の数値は、まさに、飼料自給率を考慮した自給率として示されています。たとえば、牛肉の40%は国内で生産されていますが、国産の飼料を食べて純粋に国内で生産された牛肉となると「12%」まで下がります。同様に、豚肉は49%、鶏肉は64%となっていますが、輸入による外国産飼料で育てられたものを省くとそれぞれ6%、8%と著しく低くなるのです。

 

◆ カロリーベースと生産額ベース

 

前述したように、食料自給率の考え方には、熱量で換算する「カロリーベース(供給熱量ベース)」と、金額で換算する「生産額ベース」の2種類があります。

 

カロリーベースの食料自給率は、人が生きていくために必要なエネルギー量に着目してカロリーに換算する方法で、「国民にとって1日に必要なエネルギー量(カロリー)のうち、国産品が占める割合」で示されます。

 

食料自給率(カロリーベース)

=国民一人一日当たり国産供給熱量 ÷ 国民一人一日当たり供給熱量

これに対し、生産額ベースの食料自給率は、経済的な価値に着目して金額に換算する方法で、「国内で消費される食料の金額に対する国産品が占める金額の割合」として計算されます。

 

食料自給率(生産額ベース)

=国内の食料生産額 ÷ 国内で消費される食料の金額 (国内消費仕向額)

日本では「カロリーベース」が採用されていますが、日本以外では、韓国や台湾など一部の国でしか活用されていません。主要先進国は、「生産額ベース」の食料自給率を採用しており、「生産額ベース」の方が、国際標準となっています。

 

では、日本の食料自給率を生産額ベースでみると、2023年に61%と、決して高いとはいえない数字ながら、主要先進国の自給率と比較しても見劣りしていません(イギリスと同水準)。

 

主要先進国の生産額ベースの食料自給率(2023年)

カナダ118%、豪126%、アメリカ90%、仏82%、独64%、英61%

 

そうすると、カロリーベースの自給率の低さを問題にしなくても、多くの国で採用されている生産額ベースの食料自給率を重視すればいいのではないかという主張もありますが、食糧安全保障の観点から言えば、カロリーベースの方が望ましいと見られています。

 

◆ 食料安保と食料自給率

 

では、日本で、カロリーベース(38%)と生産額ベース(61%)とで、算出した食料自給率がこれほど大きく異なるのはなぜでしょうか?

 

カロリーベースの食料自給率は、国民が摂取しているカロリーのうち、どれほどの割合を国産で賄えているかというのに対して、生産額ベースの食料自給率は、それを金額で表示します。

 

そうすると、たとえば、品目別自給率(重量ベース)で示された野菜の自給率は76%ですが、野菜のカロリーは食料全体のうち数%程度に過ぎないため、国産が多くてもカロリーベースの自給率の底上げにはさほど影響しません。

しかし、牛肉の自給率は40%、果物は38%ですが、松阪牛など高級和牛や高品質な山形のサクランボなどの高級品は、高価格であるがために、生産額ベースの自給率の数字を押し上げるのです。

 

食料安全保障の観点で、食料自給率を語るとき大事なことは、いざ国民が飢えるかもしれない事態に備え、どれだけ自前で食料を確保できるかということです。いくら付加価値の高い食物を作って、生産額ベースの食料自給率を高めても、それで国民のお腹を満たすことができなければ意味がなくなります。

 

これが、食料安全保障上、生産額ベースよりもカロリーベースで食料自給率を考える方が有用である理由です。

 

◆ 食料国産率という統計

 

なお、(総合)食料自給率には、輸入された飼料で育った牛や豚や鶏などは国内で育てられたものでも、計算式の国内生産量(国産)に算入されません。

 

これに対して、消費者からは、たとえば肉類は国産の商品がスーパーにたくさん並んでおり、統計は実感にそぐわないとか、需要に応じて増産に取り組んでいる国内の畜産農家の努力が反映されないといった声がでていました。

 

そこで、農林水産省では、2020年に策定した「食料・農業・農村基本計画から、飼料が国産か輸入かにかかわらず、国内で生産された畜産物であれば国産として計算する「食料国産率」という指標を、(総合)食料自給率と併せて公表しています。

 

そうすると、カロリーベースの食料国産率(2023年)は、47%(←38%)、生産額ベースの食料国産率は67%(←61%)にそれぞれ増加します(括弧の数値は食料自給率)。ただし、この食料国産率統計も、食料安保の観点からいえば、飼料を輸入できない状況になったら、畜産物を育てることができなくなるので、重要度は薄れてしまいます。

 

 

<食料自給率の推移と対策>

 

カロリーベースか生産額ベースか、飼料自給率を考慮するか否かなどの議論はありますが、国内の食料自給率が38%という数字は、いくつもの戦争の勃発や異常気象などを受けて、ようやく、危機感を持って受け止められるようになりました。

 

これまでも、2010年に当時の民主党政権が、2020年度までに食料自給率を50%に回復させるという目標を立てましたが、自民党に政権が戻った後の2015年3月に「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定して、目標値自体を「2030年度までに45%」に引き下げられました。

 

それから、10年たった現在も、農水省は、目標達成期限を2030年度までとして、カロリーベースの食料自給率を45%に高める目標を継続させていますが、実際は、日本の食料自給率は、逆に年々ズルズルと減少しているのが現状です。

 

歴史的にみても、日本の食料自給率(カロリーベース=供給熱量ベース)は、戦時中の食料不足にあえいだ後、戦後の農地解放もあって食料自給率を急速に回復し、1960年に79%を記録するなど80%近くにまで伸ばしていました。

 

しかし、この1960年をピークに、ほぼ一貫して下がり続けています。1985年には60%、平成になった1989年に50%を割り、2000年度以降は40%前後でほぼ横ばいに推移しました。そして、令和になって2020年には、過去最低の37.17%を記録しました。

 

さらに、アメリカとの貿易交渉も含めて、今後、経済連携協定(EPA)等により、参加国間での関税が撤廃され、海外産の農産物などが輸入しやすくなることが、食料自給率のさらなる低下につながる可能性も指摘されています。

 

たとえば、日本は、2020年1月にアメリカと日米貿易協定(日米FTA)を発効させ、アメリカから入ってくる関税率が引き下げられたことで、専門家は、牛肉の食料自給率は現在の35〜40%ですが、2035年くらいになると16%にまで下がると試算しています。

 

 

<日本の食料自給率が低い理由>

 

では、日本の食料自給率が他の先進国に比べて、著しく低い理由、また、日本の食料自給率が上がらない理由とはなんでしょうか?

 

◆ 食生活の変化

 

日本の食料自給率がここまで下がってしまった、一般的な要因として、まず考えられているのが、急激な食生活の変化です。

かつて、日本人の主食といえばコメでしたが、戦後の復興に伴い、国が次第に豊かになっていくと食生活が欧米風に変化していきました。この結果、コメの消費が減る一方、肉やパンの需要が急激に増えていきました。

また、食料自給率が好転しない構造的な問題として、高齢化による農業人口の減少、それに伴う耕作放棄地の増加(農地面積の減少)、さらには減反政策などによる生産力の低下といった、農業そのものの衰退があげられています。

 

◆ 農業生産者の減少

 

農家の人口減少は止まらず、2023年の基幹的農業従事者(ふだん仕事として主に自営農業に従事している者)は、約116万人と、2000年の約240万人と比べると約52%(半数以上)減少しました。政府が統計を取り始めた1960年の約1175万人からは約10分の1近く減っています。

 

また、日本の農家を専業農家と兼業農家の2種類に分類した場合、専業農家の割合は約30%、兼業農家は約70%となっています。

 

◆ 農地面積の減少

 

日本の食料自給率の低さと関連づけられているのが、農地面積の少なさです。日本と先進国の農地面積を比較してみると、日本は約450万ヘクタールでしかなく、ほかの国に比べて桁違いに少ないことがわかります。

 

米・豪:約4億万ヘクタール

仏:約3000万ヘクタール
独・英:約 1800万ヘクタール

また、一人当たりの農地面積では、日本はわずか3.5ヘクタールで、オーストラリアの約400分の1、アメリカの約40分の1、イギリスの約8分の1の農地面積しかありません。

 

農家一戸当たりの農地面積を見ても、EUは日本の7倍、アメリカは約100倍、オーストラリアは1500倍を超えるというデータもあります。

 

日本には、1961年の段階で、609万ヘクタールの農地がありました。その後、公共事業などで159万ヘクタールの農地を造成したので、768万ヘクタールの農地があるはずでした。しかし、現在(2022年)、432万ヘクタールの農地しか残っていません。336万ヘクタールの農地は、転用と耕作放棄で喪失したのです。

 

農地の転用

農地の転用が増えた背景には、戦後の農地改革があります。農地改革によって、地主の土地が小作人に分配され、自作農が大量に生まれました。

 

しかし、地主と言っても、所有地が2千ヘクタールに及ぶような大地主は極めて少なく、現在の農家の規模よりも小さい3ヘクタール未満の零細地主が7割以上を占めていました。農地改革によって、ただ同然で農地を取り上げられた中小地主の一部は、困窮を極め、農地を売らざるをえなくなりました。

 

また、自作農になったかつての小作人の中には、農地を転用して莫大な利益をえる農家もでてきました。

 

耕作放棄地

一方、日本の耕作放棄地は、2020年には約42万3千haに達し、これは東京都の面積の約10倍に相当します。1985年頃までは13万ha程度で横ばいでしたが、平成に入って1990年以降増加に転じ、傾斜農地など中山間地域を中心に、特に2005年以降増加が加速しています。

 

農地が減少していることに対して非難されるのは、農地を転用または放棄した農家というよりは、むしろ、農地を真剣に守ろうとしなかった農水省にあるともいえます。現在、現在、農地を毎年0.9万ヘクタール造成しているのに対して、3.7万ヘクタールを失っているという試算もあり、今後も農地の減少が懸念されます。

 

耕作利用率

さらに、耕作利用率も低下しており、これが農地面積の実質的な減少につながっています。1960年、135%程度だった耕地利用率は、現在、約90%です。これは、二毛作を行う農家が減ったことや、減反で利用されない水田が増加したことなどが背景としてあげられます。

 

二毛作は、主に稲作(春から夏)の後に麦作(秋から冬)を行う農法ですが、コメ農家の兼業化によって、田植え時期が6月から5月に変更されたことなどから、裏作の麦がほぼ消滅してしまいました。兼業農家は本業の仕事との兼ね合いで、田植えをより早く終わらせる必要があり、また、麦の収穫時期と本業の繁忙期が重なるため、麦を栽培する余裕がなくなったのです。

 

この結果、1960年頃まで、400万トンもあった麦類の国内生産は、現在は100万トン程度しかありません(これが麦類の自給率の低さの要因の一つ)。

 

そのため、現在の日本の農地430万ヘクタールは、耕地利用率などを考慮すると、実質290万ヘクタールしかないとみられています。

 

◆ アメリカの深慮

 

アメリカへの食料依存

日本の食料自給率が低く、回復できない、根本的な理由の一つとして厳然するのが、アメリカの存在です。日本が自給率を上げることをアメリカが許さないからです。

 

食料の60%以上を海外からの輸入に頼る日本とって、アメリカは最も依存している相手国で、日本の農産物輸入の25%近くを占めます(金額ベース)。アメリカに次ぐ第2位が中国ですが10%とアメリカの半分以下でしかありません。米中に続き、カナダ、豪州、タイとなりますが、それぞれ6%程度です。

 

農産物を個別にみても、日本は小麦の80%以上を輸入に頼っていますが、アメリカに約45%依存し、トウモロコシに至っては、ほぼ100%を海外に依存しており、アメリカからの輸入が約75%を占めます。自給率が10%以下の大豆も、75%がアメリカからの買い付けです。牛肉については、アメリカが40%強を占め、自給率およそ50%の豚肉もアメリカが27%と最も多くなっています。

 

戦後の混乱期から

こうしたアメリカ依存の食料供給体制は、戦後から始まり、1954年のMSA協定を経て、1960年の新日米安全保障条約で決定的となりました。

 

第2次大戦中から、アメリカは国家を挙げて食料(特に小麦)の増産体制に入りました。それは、米国民のための食料備蓄対策というよりは、大戦中の連合国への兵食用であり、また、予想された冷戦構造のなかで、欧州への復興支援として食料援助であるマーシャル・プラン)(1948〜51)を実施するための食料増産でした。

 

しかし、第二次世界大戦が終結したため、兵食として送っていた小麦の輸出が止まり、また、マーシャル・プランの後、欧州でも独自で食料が供給できるようになった結果、大量の余剰在庫を抱えてしまいました(一説には3000万トンの在庫が眠っていたと言われる)。

 

MSA協定

そこで、アメリカの余剰農産物の買い手として標的にされたのが、当時食糧難であった日本で、アメリカは、1954年3月、MSA協定(正式名称「日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定」)を日本に半強制的に結ばせました。

 

MSA協定は、その名の通り、日本の防衛力強化を具体的に進めるための枠組みとして、日本の安全保障体制の確立に貢献した協定として知られていますが、この協定には、経済協定(農産物購入協定)なども含まれていました。

 

内容は、日本に食糧援助するから、それで得た経済的な利益で軍備強化を図るというものですが、アメリカの本来の目的は、アメリカ小麦の余剰在庫を早急に売りさばくこと、さらに今後日本の食文化として根付かせ、購入を続けさせることでした。

 

PL480

さらに、MSA協定を具体化させるために、アメリカは、同年(1954年)7月、PL480(正式名称「農業貿易開発援助法」)(別名「フード・フォー・ピース計画」)という法律を成立させました。

 

PL480は、アメリカの対外食糧援助プログラムで、貧国に対し好条件を与え、長期的にかつ安定的に継続してアメリカ農産物を購入させるものです。この一環として、戦後の日本に全国規模で本格的に設置された学校給食において、アメリカがそれまで日本人には馴染みのなかったパンと牛乳を普及させたことは有名な話しです。

 

こうして、アメリカによる小麦戦略は、見事に日本に適用され、アメリカは余剰小麦を日本に押し込むことができたのです。

 

一方、高度経済成長を目指した日本にとっても、アメリカから穀物を買い付けたほうが当時は合理的でした。その後、日本は、国力が回復し、国産食糧も安定してきましたが、MSA協定とPL480によって、アメリカ農産物を継続して購入しなければなりませんでした。

 

日米新安保条約

さらに、1961年1月に改定された日米(新)安保条約においても、安全保障の面だけでなく、両国の経済協力条項も新たに盛り込まれ、日米間の経済協力が安全保障協力と同様に重要視されることが謳われました。

 

MSA協定とPL480 と違って、具体的な穀物購入に関する規定が条約本文に明記されているわけではありませんが、これによって、アメリカは、日本の工業製品を自国の市場に受け入れる一方、日本はアメリカから安価な小麦やとうもろこし、飼料穀物などの農産物を輸入することとなりました。

 

結果として、日本は輸出主導型の高度成長を実現した一方、アメリカ依存の体質が出来上がってしまい、以後、食料自給率が低下していくことなるのです。

 

実際、前述したように、農地解放もあって戦後で、80%近くまで回復させた食料自給率は、この1960年をピーク(79%)として、着実に右肩下がりで低下をして、現在40%を割り込んでいます。

 

日本は、農業大国アメリカの市場として、戦後から、アメリカの食糧戦略に組み込まれています。そんな日本が食料自給率を上げる努力をするということは、アメリカからの輸入が減るということを意味します。アメリカにとっては、自国の農業にとって日本は欠くことのできない、そして重要かつ確実で便利な市場である日本を、失うせるはずがありません。

 

逆に、アメリカは、事あるごとに、自国の農産品を買い取らせてきました。1991年、牛肉と柑橘類の輸入自由化を受け入れさせ、2019年には、中国との貿易戦争で、売れ残って余剰となったトウモロコシ約250万トンを日本に引きうけさせました。

 

「核の傘」と「食の傘」

こうした状態を、日本が安全保障の面で、アメリカの「核の傘」の下にあることと同じように、日本はアメリカの「食の傘」の下にあると指摘する識者もいます。しかも、「食の傘」は、かつての植民地のように、今も機能し、日本は、食料自給率の向上はおろか、アメリカの食料依存体制の強化によって、骨抜きにされてしまっているのです。これが「日米同盟」のもう一つの側面であることを忘れてはならないでしょう。

 

そして、このことを重々承知している農水省は、食料自給率を上げる気はなく、同省が自給率向上を謳うのは予算獲得のためだけであるという批判はたえません。

 

しかも、大量に流入してくるアメリカからの輸入食料は、成長ホルモン牛肉や豚肉、遺伝子組換えの農産物など「危険食品」で、食の安全性の観点からも大きな問題があります(この点については別投稿で詳細)。

 

 

<食料自給率を上げるために>

 

では、日本の食料自給率をあげるためには、何をすればいいでしょうか?ここでは、アメリカとの政治的な問題は除いて考えます。

 

減反政策の廃止

まず、減反政策を名実ともに廃止しなければなりません。減反政策は、形式的には2017年に廃止されましたが、水田を畑に変えて麦などを栽培する農家を支援する転作補助金という「事実上の減反政策」が今でも続いています。

 

減反を完全に廃止すれば、中期的にはコメの国内生産が大幅に増加します。コメの自給率は100%に近いとされているので、数字には反映しないのかもしれませんが、令和のコメ騒動のような状況を起こさないためにも、コメのさらなる増産は必要であり、「輸入食料途絶」という食料安全保障上の危機を回避することができます。

 

たとえば、実質的な減反のための補助金を廃止し、すべての水田を主食米の生産に充てれば、全国で1700万トンのコメが増産されると試算されています。国内で消費しきれない分を輸出に回せば、今回のようなコメ不足が起きたときでも、輸出量を減らして対応できる体制を整えておくべきでしょう(最近のコメの消費量は700万t程度ですから、1000万tを輸出できる)。

 

ただし、この数字は極端なケースで、食料自給率向上のためには、すべてをコメの生産に充てるのではなく、コメ以外の穀物を増産させなければなりません。

 

しかし、もともと水を張っていた田んぼで湿気を嫌う小麦や大豆を安定的に生産するには、農地の改良が必要であるとともに作り方のノウハウも見につける必要があると言われています。

 

それでも、これまでの減反政策のなか、転作補助金を受け取り、消費量が減少したコメの代わりに田んぼを活用し、品種開発を行いながら、小麦や大豆を生産する農家がいたことも事実です。あまり目立ちませんが、実際、1998年に9%だった小麦の自給率は、現在17%になり、大豆の自給率も3%から7%に上昇しています。

 

さらに、コメや、コメ以外の穀物増産をしていく過程で、大規模農業やスマート農業を進めていくことで、生産性を向上させれば、さらなる収量の増大も見込まれます。

 

こうした過程で、農家の担い手不足のためには、企業の参入をさらに促し、さらに、新規参入者には、耕作放棄地を利用できるサービスを提供することなどが求められます。

 

農地の確保

また、農地の減少の問題については、使わなくなったゴルフ場や、都会の空き家等を、簡単に農地に転換できるようにするなども必要な政策です。

 

食品ロスの減少

加えて、食品ロスを減らすことも、食料自給率の改善につながります。食べ残しや消費期限切れで食べられずに廃棄された食料(食品ロス)も、自給率を計算するうえで、国内消費量(計算式の分母)に含まれます。年間2000万トンもの食品ロスを減らすことで、現在、政府が目標としている食料自給率45%の目標を実現するという試算もあります(計算式の分母の値が小さくなる)。

 

なお、この食料自給率の問題は、次の食料安全保障の中でもとりあげます。

 

 

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(参照)

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(2025.04.05、現代ビジネス)

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(2022.04.13、現代ビジネス)

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(2023年03月28日、デイリー新潮)

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(2022/05/31、東洋経済:青沼 陽一郎)

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(2021/10/30 東洋経済:岩崎 博充 )

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(2022/08/20、東洋経済:山下 一仁 )

「食料・農業・農村基本法」改正を読み解く 〜急がれる実用的なスマート農業

(2024.5.31 SMART AGRI編集部)

米余剰トウモロコシ輸入決定 日本に“危険食品”大流入危機

(2019/08/27 日経ゲンダイ)

Editor’s Eyes 食料自給率の実態を暴く!〜コロナ禍・ウクライナ危機で露呈した農業の脆弱性

(YUIME Japan編集部 / 2023.01.24)

 

(投稿日:2025.8.26)

むらおの歴史情報サイト「レムリア」