食品添加物の「無添加・不使用」表示が消える!?

 

『日本の農業  その現実と未来』をテーマに、「農政」「食料安保」「食の安全」の3つの観点から、日本の農業について説明していますが(シリーズの他の投稿記事については、末尾の「関連投稿」欄を参照下さい)。

 

「食の安全」に関して、前回、食品添加物の問題を取り上げました。今回は、食品添加物の食品表示制度について、問題点なども含め改めて、詳しく解説します(なお、本稿は、過去の投稿記事を加筆・修正したものです)。

 

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<食品添加物表示制度>

 

消費者庁は、2022年3月、「食品添加物表示制度(食品添加物の不使用表示に関するガイドライン)」の改正を発表しました。このガイドラインによって、食品添加物の表示ルールが変更され、パッケージの切り替えなど企業に与えられた2年間の猶予期間を経て、2024年4月から本格適用されています。

 

従来の「無添加」表示は消費者の誤解を招くケースが多かったとされ、新ガイドラインによって、食品パッケージの表記方法に大きな変化が生まれました。

 

◆ 制度変更の背景

 

食品添加物には、保存料、甘味料、着色料など多数がありますが、食品表示法では、加工食品に保存料や着色料などの添加物を使った場合、使用したすべての添加物を商品のパッケージに明記することを義務づけています。

 

逆に、たとえば、添加物を使っていないことの表示(「無添加・不使用」表示)に関しては、これまで特にルールを定めず、「○○無添加」「○○不使用」と書くかどうかは食品会社に任せるなど、これについての規制は曖昧でした。

 

消費者庁は、「国が認めた添加物は安全」という前提に立っています。添加物の安全性についても、内閣府の食品安全委員会や厚生労働省が、さまざまな検査結果などを通じて慎重にチェックした上で、国が安全性を認めたものだけが使われ、「添加物を入れた食品も、添加物を使用しない食品と同じくらい安全」というのが国の見解です。

 

さらに、食品添加物の使用量も、目的のための最低限にとどめ、健康に影響を及ぼすことがない量に定められているとしています。

 

これに対して、一部メーカーが、「無添加・不使用」を強調する表示によって、「無添加」や「不使用」を全面的に打ち出すことを、消費者庁は快く思うはずはありません。何より、無添加・不使用を強調表示する一部メーカーによって、消費者が「添加物を使わない(無添加)食品は安全で健康的」、反対に「添加物を使っている食品は危険」と考えてしまうことに懸念を示していました。

 

実際、不使用表示のある商品を購入する理由として、「安全で体によさそうだから」と考える消費者が70%以上いることが調査結果などから明らかになっています。

 

多数の添加物を使用する大手食品メーカーからも、これまでに、他社の「○○不使用」という表記にクレームがつけられていたそうです。大手製パン会社は、「無添加・不使用」表示について、例えば、イーストフードや乳化剤と同じような物質を使用していながら、「イーストフード・乳化剤不使用」と表示するなど、「消費者を欺いている」と問題提起が行われていました。

 

その一方で、「不使用」と書いてあっても何が不使用かよく分からないケースもあるようです。もっとも、「無添加・不使用」表示をするメーカーすべてが「欺いている」わけではなく、その正確な実態が明らかにされたわけではありません。

 

いずれにしても、消費者庁は、食品添加物に対する(消費者庁から見れば)「誤認」をなくすために、あいまいで混乱していた表示を厳格化する今回のガイドライン策定に踏み切りました。

 

◆ 制度変更のポイント

 

主なルール変更は、商品包装の際、「無添加」や「不使用」と記載するルールの厳格化と、「人工」「合成」という用語の削除とです。

 

「○○無添加・△△不使用」表示のルールの厳格化

商品を選ぶ際、商品包装に「無添加」と「〇〇不使用」の表示があるかを基準にしている人が多いと思いますが、消費者庁は、食品メーカーが今後、商品パッケージに「着色料不使用」など「○○不使用」の文言や、「無添加」の表記を自由に使用することを禁止しました。

 

これまで、「無添加」という言葉だけで表示されることが多く、「〇〇無添加」、「○○不使用」といった表示を使いつつも、実際には類似の添加物が使われているケースもあり、何の添加物が使われていないのかがあいまいなままでした。たとえば、「合成着色料不使用」と書かれていても、実際には天然由来の着色料が使用されているケースがあり、消費者が誤解する可能性があったのです。

 

従来の表記だと消費者が本当に無添加かどうかを判断できないため、新ガイドラインでは、例えば以下のように、具体的な添加物名(成分名)を示すことが必須になりました。

 

禁止される表見

「無添加」、「添加物不使用」

適切な表現

「保存料(ソルビン酸)不使用」、「着色料(タール系色素)不使用」など

 

「人工」「合成」「化学」という用語の削除

食品添加物について、「人工甘味料」「合成保存料」などで見られる「人工」や「合成」「化学」という用語の使用が禁止されました。

 

添加物を使用していない商品を選ぶ消費者の4人に1人が、「『合成』や『人工』の表示があると購入を避ける」と回答しているという調査結果もあるように、一定数の消費者は「人工」「合成」の用語に強い抵抗感を持っていることが明らかになっています。

 

添加物には、例えば、カレー粉に用いるウコンの色素のように天然由来もあれば、化学的に合成されたものもありますが、消費者は、当然、「天然」の方が「人工」「合成」よりも体に優しく、安全と考えます。

 

しかし、消費者庁は、「実際には優劣はない」と主張し、消費者が、「人口」「合成」の添加物よりも「天然」の添加物のほうが安全と「誤解」している、また、「人工」「合成」「化学」といった表現は消費者に過度な不安を与える可能性があるとして、これを正すために、今回の措置をとったのです。

 

たとえば、「化学調味料不使用」という表記は、そもそも「化学調味料」という明確な定義が存在しないため、消費者庁は、科学的に誤解を招く表現と判断し、この表現を禁止しました。以後、次のような表記に変わります。

 

「化学調味料無添加」⇒ 「L-グルタミン酸ナトリウム不使用(調味料)」

「人工甘味料不使用」⇒ 「スクラロース不使用(甘味料)」

「合成着色料なし」⇒ 「タール色素不使用(着色料)」

 

こうした変更により、消費者は「どの成分が使用されていないのか?」を正確に知ることができるようになることが期待されています。

 

 

<新ルールの10類型>

 

消費者庁は、新たな表示ルールに基づいて、食品表示法の禁止事項に該当する恐れがある表示を以下の10類型にまとめています。

 

1.何が不使用なのか書かず、単に「無添加」と表示すること

(今後は具体的に添加物名を表示しなければならい)

 

詳細については、前述した“「○○無添加・△△不使用」表示のルールの厳格化”の内容と合致します。

 

禁止される表見

「無添加」、「添加物不使用」

適切な表現

「保存料(ソルビン酸)不使用」、「着色料(タール系色素)不使用」など

 

2.食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示

 

これまでは「人工」「化学」「天然」といった、法令上定義があいまいな用語を使用して「化学調味料無添加」、「人工甘味料不使用」などと書くことも見受けられました。しかし、新ガイドラインでは、消費者が誤解しないように、正式に規定された用語を用いて表示する必要があります。

 

これについても、前述した“「人工」「合成」「化学」という用語の削除”の内容に該当します。

 

禁止される表敬

「化学調味料無添加」、「人工甘味料不使用」、「合成着色料なし」

 

適切な表現

「アミノ酸系調味料不使用」

「L-グルタミン酸ナトリウム不使用(調味料)」

「スクラロース不使用(甘味料)」

「タール色素不使用(着色料)」

 

3.食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示

 

たとえば清涼飲料水に「ソルビン酸」不使用と表示するなど、特定の食品で、そもそも法令上使用が禁止されている添加物について「あたかも使わなかった」という表示をしていたケースがあります。新ルールでは、使用が認められない添加物を「不使用」と強調することは誤解を与えるため、表示が制限(禁止)されます。

 

禁止される表現

「法令上使用不可の保存料不使用」

適切な表現

そもそも使用が認められない添加物であれば表示しない

 

4.(「〇〇無添加」、「〇〇不使用」と表示しながら)同一機能や類似機能を持つ他の食品添加物を使用している食品への表示

 

これまでは、たとえば次のような問題となる表示がありました。

 

・「保存料不使用(無添加)」と書かれていても、実際には酸化防止剤など、保存効果を持つ別の成分(食品添加物)が使われている。

・「合成保存料不使用」と書いていながら、代わりに、天然保存料(酢酸など)が使用されている。

・「合成甘味料不使用」と表記しながら天然由来の甘味料(ステビアなど)が含まれている。

 

新ガイドラインでは、同様の機能を持つ食品添加物(代替成分)を使っているのに、「無添加」と表示する行為を規制(禁止)しています。「無添加」を過度にアピールする表示は、消費者に誤解を招くおそれがあるからです。

 

禁止される表現

「保存料無添加」、「合成甘味料不使用」

適切な表現

「保存料無添加(ただし酸化防止剤を使用)」

「合成甘味料不使用(ただし天然由来の甘味料ステビアを使用)」

 

5.(「〇〇無添加」、「〇〇不使用」と表示しながら)同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示

 

これまで、食品添加物ではなく天然素材(例:しらこたん白抽出物)を使って保存性を高めながら、「保存料無添加」とだけ書かれていたり、乳化作用を持つ原材料を高度に加工して使用した食品に、乳化剤(レシチン)を使用していない旨が表示されたりする場合がありました。新ガイドラインでは、天然由来でも同等機能を持つ原材料を使用している場合は、その旨を明確に伝えることが求められます。

 

禁止される表現

「保存料無添加」

適切な表現

「保存料無添加(保存効果を持たせるためにしらこたん白抽出物を使用)

 

6.「無添加だから体にいい」など、健康や安全と関連付ける表示

 

消費者庁によれば、「無添加だから絶対に健康」といった表現は、科学的根拠が不十分なまま、過度の安心感を与えるリスクがあるので、新ルールでは、健康や安全性を直接訴求する場合は、裏付けのある情報を提示しない限り、安易な結びつけは禁じられることとなりました。

 

禁止される表現

「無添加で安心・安全!」

適切な表現

「保存料無添加(※健康への効果を断定するものではありません)」

 

7.健康、安全以外と関連付ける表示

 

「無添加=環境にやさしい」「不使用=高品質」「商品が変色=着色料不使用」といった、直接の因果関係が証明されていない内容を強調する事例がありましたが、新ガイドラインでは、添加物不使用と別メリットの関連付け表示には慎重になることを求めています。

 

禁止される表現

「無添加だから環境に優しい商品」

適切な表現

「保存料無添加(製造過程の環境負荷は個別に異なります)」

 

8.食品添加物の使用が予期されていない食品への表示

 

ミネラルウォーターに「保存料不使用」と表示するなど、本来、食品添加物を使わない製品や工程であるにもかかわらず、「添加物不使用」を大きく書くことで特別感を出す表示がありましたが、新ガイドラインでは、そもそも使用が想定されない食品には不使用表示を安易に行わないことが求められています。

 

禁止される表現

「100%果汁ジュースやミネラルウォーター、保存料不使用」

適切な表現

表示しない

 

9.原材料には保存料を使用しているのに、加工時に使わなかったことから「保存料不使用」と表示すること

 

これまで、食品添加物(加工助剤)として、製造工程で用いた酵素や原材料由来の微量成分が最終的にどう残るか不明なのに「完全不使用」と書かれていたケースがありました。新ルールでは、加工助剤などの残留可能性を理解したうえで表示し、断定的な「不使用」表記は避けなければなりません。

 

禁止される表現

「一切添加物なし!」

適切な表現

「添加物を意図的に加えていません(加工助剤等の残留は確認中)

 

10. 「無添加、不使用」の文字が過度に強調された表示

 

「100%無添加」「一切食品添加物ゼロ」といった極端な表現は、誤解を招くだけでなく、他製品との不当比較につながる場合もありましたので、新ガイドラインでは、過度な断定や大げさな強調を避け、事実を正確に伝える表示へと改めることが求められます。

 

禁止された表現

「究極の無添加!添加物ゼロ!」

適切な表現

「保存料・着色料 不使用(加工助剤は使用)」

 

 

<食品添加物の不使用表示による弊害>

 

このように、2024年以降、食品表示基準やガイドラインの見直しが進み、あいまいな表現の「無添加表示」「無使用表示」は禁止・制限され、具体的に「何が不使用なのか」などが明確に示すことが求められるようになりました。

 

これによって、消費者は、 判断材料が増加し、誤認リスクを低減させ、安心感の向上につながるとみられています。企業も、より正しく商品を手に取れるように、ガイドラインに沿った表示を行い、消費者に提供する必要があります。

 

◆ 無添加・無使用表示は減る!?

 

しかし、これまで、消費者に安全な食品を届けようと「無添加」「無使用」のために努力してきた企業にとっては、今回の無添加、無使用ルールの改定で、結果的に、無添加などの表示は大幅に減る懸念があります。

 

今みてきた1~10の表示ルールを守れば、「無添加、不使用」表示は可能ということですが、これは、かなり厳しいガイドラインと言え、実質的に一律禁止に近い規制強化になるとみられています。

 

しかも、ガイドラインを守らなければ、食品表示法違反に問われ罰則を受けることから、今後、無添加・不使用表示は確実に減っていくことが予想されます。無添加のために努力してきた企業にとって、表示できないとなれば、無添加をやめてしまうことを十分考えられます。

 

 消費者に向いていない消費者庁

 

そうすると、2024年の消費者庁が定めた新ルールは、健康志向の高まる現代社会にあって、時代に逆行するガイドラインと言えます。

 

そもそも、国が安全性を認めた添加物であれば、添加物を入れた食品は、添加物を使用しない食品と同じくらい安全という国の見解を、国民は全面的に信頼しているわけではありません。逆に、一部の消費者の食品添加物に対する嫌悪感や不信感は根深いものがあります。

 

現代社会において、食品添加物は、加工食品の品質と安全性を安定させ、広域流通を可能にしているという意味で、私たちはその恩恵を受けていますが、食品添加物が入っているものと、入っていない自然なものを選べるとしたら、食品添加物が含まれない食品を選ぶのは、「自然の情」として当たり前のことで、「食品添加物が入っていない食品の方が健康によい」というのはイメージでも何でもなく、事実です。

 

実際、国が認める食品添加物は、安全性が確認されているとの建前ですが、世界各国で添加物の危険性が続々と報告されており、鵜呑みにできません。例えば、健康目的で人気のゼロカロリー飲料には、甘さを出すため糖類に代えて人工甘味料が添加されています(人工甘味料は砂糖と比べて最大約4万倍の甘みを持つとされる)が、最近、人工甘味料の発がんリスクを指摘する調査結果が公表されています。

 

それによると、日本では認可されている、人工甘味料の「アスパルテーム」と「アセスルファムK」の摂取量が多いと、大腸がんと乳がんのリスク(フランスの国立保健医学研究所調査)だけでなく、糖尿病(米テキサス大学)や、うつ病、腎機能障害、脳卒中、心筋梗塞、血管系疾患などの発症リスク(米国立衛生研究所)を高めることがわかっています。

 

そういう意味でも、今回の消費者庁の決定は、消費者目線ではなく、国が認めた食品添加物入りの「安全な」食品を売っている大手の食品メーカーを保護することが目的ではないかと疑わざるをえません。

 

ただし、新ルールによって、食品表示そのものがなくなるわけではありません。パッケージの表側に表示されなくなっても、裏側の表示を読めば、何が使われ、何が使われていないかを正確に知ることができます。ですから、食品添加物が入っていない(できるだけ少ない)食品を選択する私たち消費者の声が大きくなって、消費者庁が消費者に向いた政策をとらざるを得なくなるような地道の消費行動を、私たちが続けるしかありません。

 

 

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(参照)

食品添加物表示制度の変更で「無添加」表記が不可に

(2022/5/11、マネーポストWEB)

食品添加物の「無添加」「不使用」表示、これからどうなる?

(2022/4/27、Yahoo News)

消費者庁が制度大改正 食品から「無添加」表示が激減する

(2022年3月14日、エコノミストOnline

新たな食品表示ルール 4月1日スタート

(2022年3月31日 NetIB News)

2024年4月から「無添加」表示が禁止に?食品添加物の不使用表示ガイドライン

(2025.3.28、(生協アイチョイス)

 

(投稿日:2025.8.28)

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