日本の内閣と行政⑥:行政改革・小さな政府への試み

 

「日本の内閣と行政」について、シリーズで解説しています。第6回目のテーマは、行政改革です。1980年代にさかのぼって、日本の行政改革の歴史をたどりながら、日本の行政組織がどのように改革されていったのかをみていきます。はたして、実施された行政改革によって、日本は「小さな政府」を実現したのでしょうか?

 

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1980年代に入り、先進国では、70年代までの積極財政による福祉国家政策の結果、財政赤字の問題が露呈してくると、「小さな政府」をスローガンとした行政改革が、イギリスではサッチャー政権(1979〜90)のサッチャリズム、アメリカではレーガン政権(1981〜89.1)のレーガノミクスと呼ばれる政策のなかで実施されました。日本でも、中曽根政権(1982〜87)のとき、審議会を活用した行政改革が断行されました。

 

 

<三公社民営化>

 

1981年に設置された第2次臨時行政調査会(第2臨調)は、経団連会長の土光敏夫の下、「増税なき財政再建」を旗印に、日本国有鉄道(国鉄)、日本電信電話会社(電電公社)、日本専売公社(たばこと塩の専売)のいわゆる3公社の民営化を実現させました。三公社はそれぞれJR、NTT(日本電信電話株式会社)、JT(日本たばこ産業)となりました。

 

*臨時行政調査会(臨調

行政改革の審議を行うために、臨時行政調査会設置法を根拠に、旧総理府に設置された審議会で、1961~64年まで置かれた第1次臨調と81~83年の第2次臨調とがある。

 

◆ 三公社五現業とは?

このとき民営化された3公社は、かつて、政府系8事業の「三公社五現業」のなかの3公社に該当します。五現業とは、郵便 ・国有林野 ・紙幣等印刷 ・造幣 ・アルコール事業の国営事業をさしました。

 

三公社五現業のなかの公社とは、公共性の高い事業を経営する公共企業体のことで、国や地方公共団体が出資して設立した企業のことをいいます(後述)。これに対して、5つの現業事業は政府直轄事業で、国営官庁企業とも総称されます。

 

三公社五現業が生まれた背景

三公社五現業は、第二次世界大戦後のGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)による占領政策の結果、誕生しました。GHQは、公務員への団体交渉権の付与の観点から、公務員を現業公職員(生産・通信・運輸など直接労務に携わる公務員)と非現業公務員(事務・管理・研究職の一般公務員)と区別することにしました。

 

その結果、戦前、国が運営していた郵政、営林、印刷、造幣、アルコール専売の5つを引き続き国営事業とし、鉄道・煙草等の専売・逓信(電信電話)の事業についてアメリカのパブリック・コーポレーションを参考に公社となったのです。

 

これによって、公社職員には、団体交渉権が与えられ、その後、五現業の国家公務員にも適用され、三公社五現業体制が確立しました。なお、非現業の公務員(一般の公務員)には団体交渉権はありません。

 

◆ 三公社の現在

 

NTTNTTグループ)

民営化後、日本電信電話株式会社(通称NTT)は、NTTグループとして持株会社体制へと移行し、1999年7月、持株会社NTT (日本電信電話会社)を親会社として、地域通信事業のNTT東日本(東日本電信電話)とNTT西日本(西日本電信電話)、長距離・国際通信事業を担うNTTコミュニケーションズ(NTTコム)に分割されました。

 

1990年2月には、政府によってNTTの「移動体通信業務の分離」が決定され、翌91年8月、NTT移動通信企画株式会社を設立、92年7月より「NTTドコモ」として、NTTグループの1社(持株会社NTTの子会社)となっています。

 

なお、NTTコミュニケーションズは、2020年、持株会社NTTが、現NTTドコモ(91年設立)の完全子会社化を発表した際、組織上は、株式会社NTTドコモの子会社という形となっています。

 

 

JR(JRグループ)

国鉄(日本国有鉄道)は、JRとして、以下の6つの旅客鉄道会社と1つの貨物鉄道会社に分割されました。

東日本旅客鉄道(JR東日本)      東海旅客鉄道(JR東海)

西日本旅客鉄道(JR西日本)      九州旅客鉄道(JR九州)

北海道旅客鉄道(JR北海道)      四国旅客鉄道(JR四国)

日本貨物鉄道(JR貨物)

 

現在、JRグループと呼ばれ、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州は完全民営化を実現した純粋民間会社(上場会社)で、JR北海道、JR四国、JR貨物は、独立行政法人JRTT(鉄道・運輸機構)が全株式を保有する特殊会社となっています。

 

 

日本たばこ(JTグループ)

日本専売公社は、1985年、日本たばこ産業株式会社法(JT法)に基づき、財務省が所管する特殊会社、日本たばこ産業株式会社(略: JT)となりました(政府が株式を常時2分の1以上所有することとされた)。

 

日本専売公社の事業である、たばこ専売事業と塩専売事業を引き継ぎましたが、1997年4月に塩専売法は廃止(塩専売制度は終了)したことから、現在は、たばこを中心に(JTは日本では唯一のたばこメーカー)、医薬品、加工食品など多角的経営を行っています。

 

 

◆ 五現業の現在

 

郵政事業   (郵便・貯金・保険の事業) は、01年1月の中央省庁再編により、最終的に07年10月、日本郵政公社は民営化され、日本郵政株式会社法に基づき設立された特殊会社、日本郵政株式会社を持株会社とする日本郵政グループが誕生しました(後に詳細)。

 

印刷事業(日本銀行券、国債、収入印紙、郵便切手、郵便はがき等の印刷)は、2003 年4月、財務省の所属から、行政執行法人である独立行政法人 国立印刷局へ組織変更された。(独立行政法人については後述)

 

造幣事業(硬貨・賞はい等の製造)は、2003年4月、財務省の所属から、行政執行法人たる独立行政法人 造幣局(03年4月)へ組織変更されました。

 

アルコール専売事業は、1982年に新エネルギー総合開発機構(後の新エネルギー・産業技術総合開発機構(88年に改称))に移管され、2006年、酒税法で規定されている酒類ではない発酵アルコール(工業用アルコール)の製造販売等を行う特殊会社、日本アルコール産業(J.alco/ジェー・アルコ)となりました。

 

国有林野事業(治山事業等)は、国の唯一の国営事業であるとされます。2012年、同事業の独立採算の企業的運営が廃止され、それまで、国有林野事業特別会計(特定の事業のために特別に設けられる会計)において行われていた事業は一般会計の事業、つまり国の財政全体の一部として統合されることなりました。

 

 

三公社五現業

 

日本国有鉄道(国鉄)(運輸省の外郭団体)⇒  JR  (ジェー・アール)

日本電信電話会社(電電公社)(郵政省の外郭団体)⇒ NTT(日本電信電話株式会社)

日本専売公社(専売公社)(大蔵省の外郭団体)⇒JT(日本たばこ産業株式会社)

 

郵便事業  (郵政省)  ⇒ 日本郵政株式会社(総務省)

国有林野事業  (農林水産省の外局林野庁)   ⇒  国有林野事業(農林水産省)

紙幣等印刷事業  (大蔵省)   ⇒  独立行政法人印刷局(財務省)

造幣事業  (大蔵省)   ⇒  独立行政法人 国立印刷局(財務省)

アルコール事業  (通産省)   ⇒  日本アルコール産業(一部財務省)

 

 

 

<中央省庁の再編>

 

1996年11月に旧総理府に設置された行政改革会議(〜98.6)は、会長を務めた橋本龍太郎首相の下、「縦割り行政による弊害をなくし、内閣機能の強化、事務および事業の減量、効率化すること」などを目的に、内閣府の創設、独立行政法人制度の創設、省庁再編、政策評価制度と情報公開制度の導入等を盛り込んだ最終報告を取りまとめました。

 

これに従い、1998年に中央省庁等改革基本法が成立し、2001年の森喜朗内閣の時、中央省庁再編が行われ、1府22省庁体制から1府12省庁体制へ移行しました。

 

中央省庁再編前の122省庁

府(1):総理府

 

省(12)

法務省、外務省、大蔵省、文部省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、郵政省、労働省、建設省、自治省

 

庁(10)

国家公安委員会、金融再生委員会、総務庁、北海道開発庁、防衛庁、経済企画庁、科学技術庁、環境庁、沖縄開発庁、国土庁

 

 

中央省庁再編後の112省庁(2001年1月時点)

府(1)

内閣府

総理府、経済企画庁、 沖縄開発庁 、総務庁・科学技術庁・国土庁の一部が統合

 

省(10)

総務省:総務庁・自治省・郵政省が統合

法務省

外務省

財務省:大蔵省の後継省。旧大蔵省から金融庁と証券取引等監視委員会が分離。

文部科学省:文部省・科学技術庁が統合。

厚生労働省:厚生省・労働省が統合。

農林水産省

経済産業省:通商産業省(通産省)の後継省。

国土交通省:国土庁・運輸省・建設省・北海道開発庁が統合。

環境省:中央省庁再編で環境庁から格上げ。

 

庁(2)

国家公安委員会

防衛庁:2007年1月、内閣府の外局から防衛省に昇格

 

 

 

<特殊法人改革>

 

◆ 特殊法人とその種類

 

特殊法人とは、国の行政を補完・代行し、公共の利益または国の政策上の特殊な事業を遂行するために、特別の法律(特別法)により設立される法人のことで、通常の行政機関に担当させても能率的な経営を期待できず、かつ、民間企業にはできない特定の公共的な事業を行います。法律によりその業務内容は規定されており、予算や事業計画などは主務大臣の認可が必要となります。

 

特殊法人は、通常、公社、公団、事業団、公庫、特殊会社(一部)などの形態をとります。

 

公社

公共企業体のことで、現代国家の行政機能の拡大や多様化などを背景に、公共性の高い事業や国の事務を経営するため、特別の法律にもとづき、国の全額出資によって設立される特殊法人です。予算については国会の議決を要し、決算も国会に提出する必要がありました。

 

公社の代表は、前述したように、三公社(公共企業体)の電電公社(日本電信電話公社)、専売公社(日本専売公社)、国鉄(日本国有鉄道)でした。しかし、三公社は、1985年4月からNTT(日本電信電話株式会社)、JT(日本たばこ産業株式会社)、1987年4月よりJR(ジェイアール)にそれぞれ改組民営化されています。

 

これら三公社以外に、連合国軍人等住宅公社(1950~52)、特別鉱害復旧公社(1950~58)、原子燃料公社(1956~67)がありましたが、前二者は廃止され、原子燃料公社は、最終的に2005年に、国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構に改組され、現在に至っています。

 

公団

政府や地方治体、民間からの出資によって、公共事業や公的な事務を担うために設立された公共法人です。独立採算性で、事業規模が大きいことを特徴としています。日本道路公団など。

 

事業団

国の経済政策や社会政策を実施するために設立された公共法人で、公団同様、政府、地方自治体などが出資しますが、事業規模は公団より小さく、独立採算性は求められていません。宇宙開発事業団(現JAXA)や、国際協力事業団(現JICA)など。

 

公社と公団・事業団の違い

なお、法律上の定義として、公社が法律により直接に設立される法人であるのに対して、公団と事業団は、政府が設立することを命じる特別の法律によって、また、特別な設立行為(通常の設立手続きとは別に、特別に定められた手続きや要件をクリアすること)をもって設立される法人という違いがあります。

 

 

営団(経営財団

第二次世界大戦中、国策事業を行うために設置された、公的企業でも私的企業でもない中間形態の特殊法人をいいます。現在、東京メトロ(東京地下鉄株式会社)のみ。

 

公庫

全額政府出資の金融機関(政府系金融機関)で、国の経済政策・社会政策を実現するために設立されました。比較的小規模で中小企業,農業,住宅建設など特殊の分野へ低利、長期の融資を行います。日本政策金融公庫など。

 

特殊会社

目的や営業活動などの範囲を規定した特別法によって設立される会社で、規模が大きく、国策上必要な公共性の高い事業を行い、国の監督や保護も求められます。後に完全に民営化させる可能性もあることから、「株式会社」形態で設立されます。

 

なお、特殊会社はすべて、特殊法人というわけではなく、「認可法人である特殊会社」(後述)、「特別民間法人(特別の法律により設立される民間法人)(後述)である特殊会社」などもあります。

 

 

◆ 特殊法人改革の実際

 

2000年代に入り、官僚の天下り先、利権の温床、業務効率の低さなど、特殊法人に対して批判が高まりました。そこで、2000年6月の特殊法人等改革基本法で、特殊法人の整理合理化が図られることとなり、特殊法人などの形で行われている国の事業の廃止か、民営化する、または、独立行政法人、、特殊会社、特別民間法人などへの移行が求められました。

 

道路4公団の民営化

2004年6月、日本道路公団など高速道路を所管する4つの公団(日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団)を民営化するための道路公団民営化関連4法が成立し、翌2005年10月に4公団の民営化が実現しました。

 

まず、日本道路公団は、地域ごとに以下の3会社に分割民営化されました。

 

東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)

中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)

西日本高速道路株式会社(NEXCO西日本)

 

NEXCO(ネクスコ)とは、日本道路公団の分割民営化により発足した3会社の統一的名称です。

 

また、他の3公団も次のように民営化されました。

首都高速道路公団  ⇒ 首都高速道路株式会社、

阪神高速道路公団  ⇒ 阪神高速道路株式会社

本州四国連絡橋公団  ⇒ 本州四国連絡高速道路株式会社(JB本四高速)

 

さらに、この民営化された6会社とともに、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構が設立され、高速道路の保有ならびに公団時代の債務返済が行われることとなりました。

 

 

郵政民営化

五現業の一つであった郵政事業 (郵便・貯金・保険の事業) は、2001年1月の中央省庁再編により、総務省郵政事業庁に所属し、2003年4月、日本郵政公社が発足、132年続いた国営の郵政事業は公社化されました。

 

さらに、小泉郵政選挙後の2007年10月、日本郵政公社は民営化(郵政民営化)され、日本郵政グループが誕生、日本郵政株式会社を持株会社(親会社)として、郵政関連事業である郵便事業株式会社、郵便局株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険に4分割・改組されました。その後、2012年10月には、郵便局株式会社(郵便局)が郵便事業株式会社(郵便事業)を吸収合併し、新会社、日本郵便株式会社(日本郵便)となっています。

 

日本郵政グループの持株会社である日本郵政株式会社は、日本郵政株式会社法に基づき設立された、総務省所管の特殊会社で、特殊会社である特殊法人に分類されます。また、日本郵便を完全子会社化しており、日本郵便もまた特殊会社である特殊法人に位置づけられています。

 

ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、特殊会社としての設立形態をとっておらず、日本郵政グループの子会社として、それぞれ通常の銀行、保険業務を行う民営企業として運営されています。よって、政府から、特定の法的規制や制度が適用されることはありません。

 

 

最後の営団、「営団地下鉄」

営団は、戦後の占領政策によって、大半の営団が解散もしくは公団へと再編されていった中、地下鉄を運行させる営団地下鉄(帝都高速度交通営団だけは存続していましたが、2004年に改組民営化され、東京メトロ(東京地下鉄株式会社)として、現在に至っています。

 

なお、戦前は、営団地下鉄(鉄道省)以外に、労務者向けの住宅を供給した住宅営団(厚生省)、食糧増産政策を目的とした農地開発営団(農林水産省)の「三営団」などがありました。

 

 

これらの結果、公団・営団は、もはや特殊法人としては存在していません。また、事業団も、他の公団、事業団と統廃合されて、独立行政法人や特殊法人になるなど、日本私立学校振興・共済事業団など一部を除いて、ほぼ姿を消しました。

 

すでにみたように、特殊法人としての国の公社も、存在していませんが、地方住宅供給公社や土地開発公社のように,地方公共団体の出資等によって設立された地方公社は現存していいます。

 

この結果、かつて2008年には92あった特殊法人も、2025年4月1日現在、その数は、NHK(日本放送協会)、日本年金機構、日本中央競馬会など35法人です。

 

随分、数が減り、改革が進んだ感はありますが、改革の対象となった特殊法人の多くは、「廃止か民営化がすぐにはできない事業で、国の関与の必要性が高い事業である」というのが理由で独立行政法人(後述)へ移行しました。このため、改革とは名ばかりで、単なる看板の架け替えとの批判もなされました。

 

 

◆ 現在の特殊法人

現在特殊法人が存続している35の特殊法人は、個別法で運用される特殊法人、学校法人である特殊法人、特殊会社である特殊法人に分類されます。

 

個別法で運用される特殊法人

日本放送協会 (NHK)(総務省)(根拠法:放送法)

沖縄振興開発金融公庫(内閣府)

日本年金機構 (厚労省)

国立健康危機管理研究機構(厚労省)

日本中央競馬会(JRA)(農林水産省)

日本私立学校振興・共済事業団(文科省)

福島国際研究教育機構(F-REI(エフレイ))(復興庁)

 

日本年金機構

公的年金に係る運営業務を担う非公務員型の特殊法人で、日本年金機構法に基づいて、社会保険庁が廃止された後の10年1月に発足しました。厚生労働省が所管し、保険料の徴収や年金給付などの年金事業を行っています。また、公的年金の運用は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が複数の金融機関に委託して実施されています。

 

 

学校法人である特殊法人

放送大学学園(放送大学)(文科省)

沖縄科学技術大学院大学学園(沖縄科学技術大学院大学)(内閣府)

 

 

特殊会社である特殊法人

NTTグループ(総務省)

日本電信電話株式会社(NTTグループの持株会社)(NTT)

東日本電信電話株式会社(NTT東日本)

西日本電信電話株式会社(NTT西日本)

 

なお、株式会社NTTドコモとNTTコミュニケーションズ株式会社(NTTコム)は、持株会社NTTの完全子会社という位置づけで、「日本電信電話株式会社等に関する法律」(通称: NTT法)の適用を受けていないので特殊会社ではなく、純粋民間会社です。

 

日本郵政グループ(総務省)

日本郵政株式会社(日本郵政グループの持株会社)

日本郵便株式会社

 

JRグループ(国土交通省)

北海道旅客鉄道株式会社(JR北海道)

四国旅客鉄道株式会社(JR四国)

日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)

 

日本道路公団関連(国土交通省)

NEXCO東日本                 EXCO中日本        NEXCO西日本

首都高速道路株式会社      阪神高速道路株式会社

JB本四高速(JBはJapan Bridgeの略)

 

政府系金融機関)

日本政策金融公庫(財務省)          日本政策投資銀行(財務省)

国際協力銀行(JBIC)(財務省)   商工組合中央金庫(経済産業省)

 

他の特殊会社である特殊法人

日本たばこ産業(財務省)

輸出入・港湾関連情報処理センター(財務省)

日本アルコール産業株式会社(経産省)

日本貿易保険(経産省)

成田国際空港株式会社(国土交通省)

新関西国際空港株式会社(国土交通省)

東京地下鉄株式会社(東京メトロ)(国土交通省)

中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)(環境省)

 

 

 

認可法人改革>

 

◆ 認可法人とその種類

 

特殊法人と間違いやすい組織に認可法人があります。認可法人とは、特別の法律に基づき、主務大臣の認可の下、民間の発意により設立される法人で、、日本銀行(日銀)や日本赤十字(日赤)など、現在20近く存在します。

 

認可法人には、規定通りの特別法で運用される認可法人と、特別法で運用されつつ特殊会社形態をとる認可法人の2つに分類されます。後者と区別するために前者は「専ら特別法で運用される認可法人」といった区分記載が用いられます。

 

専ら特別法で運用される認可法人

*日本銀行(日本銀行法)(所管:財務省)

預金保険機構(預金保険機構)(監督官庁:財務省と金融庁)

日本赤十字(日本赤十字法)(所管:厚生労働省)

外国人技能実習機構(外国人技能実習法)(所管:厚労省と法務省)など

 

*日本銀行(日銀)

(資本金は1億円、そのうち55%を政府、45%を民間が出資している(出資の半額以上が政府出資でなければならないことと定められている)。日銀は株式会社ではないので、株式を発行していないが、出資証券と呼ばれる日銀に対する出資の持ち分を表す有価証券を発行しており、東京証券取引所(東証)のジャスダック市場で売買されていた(東証再編後、所属は不明)。

 

認可法人である特殊会社

産業革新投資機構(産業競争力強化法)(所管:経済産業省)

地域経済活性化支援機構(略称:REVIC)(株式会社地域経済活性化支援機構法)

(監督官庁:内閣府・金融庁・総務省・財務省・経済産業省)

 

認可法人の表現方法ですが、たとえば、日銀であれば、日本銀行法に基づき財務省が所管する日本銀行、預金保険機構の場合は、預金保険法に基づき金融庁及び財務省を監督官庁として運営される預金保険機構という言い方をします。

 

所管と監督官庁

どちらも組織や事務をどのように管理するのかをさす言葉で、担当する(所管)のか、監督する(監督官庁)のかという役割の観点で区別されます。たとえば、厚生労働省は、医療に関する法律を所管していますが、医療関係機関がその法律を遵守しているかを監督している監督官庁としての役割を担う場合もあります。

 

 

◆ 認可法人改革の実際

 

特殊法人等改革基本法(平成13年)では、認可法人の改革も指向され、同法に基づく特殊法人等整理合理化計画[2]に基づき、認可法人の多くが独立行政法人・特別民間法人や、通常の民間法人などに改編されました。

 

独立行政法人化された認可法人

海洋科学技術センター  ⇒ 国立研究開発法人 海洋研究開発機構  (文科省)

空港周辺整備機構  ⇒ 同名の独立行政法人  空港周辺整備機構 (国交省)  など

 

特別民間法人化された認可法人

(認可法人から特別民間法人に移行しても名称は変わらす)

 

日本商工会議所(商工会議所法)(経済産業省)

危険物保安技術協会(消防法)(総務省)

自動車安全運転センター(自動車安全運転センター法)(警察庁)

日本公認会計士協会(公認会計士法)(金融庁)

日本税理士会連合会(税理士法)(財務省)など

 

なお、特別民間法人とは、公共的な事業を行うために特別の法律によって設立される民間法人で、国が出資したり、役員を任命したりしないのが特徴です

 

 

<独立行政法人の創設と改革>

 

◆ 独立行政法人とは?

独立行政法人(独法)は、「国の行政活動のうち、公共上の見地から実施される必要があるものの、国が自ら主体として実施する必要はないが、民間にゆだねると実施されないおそれのある事務・事業を分離し、効率的かつ効果的に行わせることを目的として創設された独立の法人」です。

 

1996年の行政改革会議での提言の後、中央省庁再編の一環として、1998年の中央省庁等改革基本法で導入が決まり、2001年に発足しました。現在、87の独立行政法人が存在しています(2024年4月1日現在)

 

独立行政法人の業務運営は、主務大臣が与える目標に基づき各法人の自主性・自律性の下に行われます。国が原則として出資しますが、国とは別の独自の法人格を持たせ、競争原理を導入することで、業務の効率化や透明化をはかります。

 

具体的に、各独法は、予算などを運営するなかで、貸借対照表など企業会計原則にのっとった財務諸表を作成し、第三者が業績評価するなど民間の経営手法を行政に取り入れています。

 

 

◆ 独立行政法人の由来

独立行政法人は、イギリスの「エージェンシー」と呼ばれる政府省庁から独立した、特定の業務を担う機関を参考として構築されました。両者とも、政府の政策目的を実現するための政策実施機関であり、政策の執行機能の一部が委譲されています。

 

ただし、イギリスのエージェンシー制度は、政策の執行・実施に当たる部門が外局化されてエージェンシーとなり、ここに大幅な裁量権が付与されていますが、外局である以上、エージェンシーは、政府内の組織の一つとして位置づけられています。

 

これに対して、日本の独立行政法人制度は、独立行政法人が独立した法人格を持ち、政府から組織的に独立した「法人」として運営されます。

 

 

◆ 独立行政法人の事例

 

新設された独立行政法人ですが、実際は、2000年に、特殊法人改革が実施された際、事業の見直しを行った特殊法人の多くは、不採算・非効率事業などを廃止しつつ、残る事業を独立行政法人に承継または移管、改組するなど、以下のような独法化した特殊法人が相次ぎました。

 

国民生活センター  ⇒  独立行政法人国民生活センター(消費者庁)

国際協力事業団  ⇒  独立行政法人 国際協力機構(JICA(外務省)

国際交流基金   ⇒  独立行政法人 国際交流基金(外務省)

理化学研究所  ⇒   (現)  国立研究開発法人理化学研究所(文科省

宇宙開発事業団  ⇒(現) 国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)(文科省)

日本貿易振興会  ⇒  独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)(経産省)

雇用・能力開発機構  ⇒  独立行政法人 雇用・能力開発機構

⇒ 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED(厚労省)

 

日本貿易振興機構(JETRO)

ジェトロは、日本企業の海外展開支援、外国企業の日本への誘致、在外日本企業の支援を行うとともに、海外経済に関する情報の収集を行っています。外務省の特別な機関である在外公館に次いで幅広い海外ネットワークを持つとされています。また、地方企業の海外進出・輸出や、地方への外資誘致を支援するため、全都道府県51か所に窓口を設けています。1998年7月には、当時の通商産業省所管の特殊法人アジア経済研究所と統合しました。

 

また、以下のような特殊法人は、他の公団や事業団などと統合しながら独立行政法人に改組しました。

 

日本住宅公団  ⇒  独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)(国交省)

石油公団  ⇒ 独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構) (JOGMEC) (経産省)

日本育英会  ⇒ 独立行政法人日本学生支援機構(文科省)など

 

加えて、特殊法人改革の際、いくつかの認可法人も独法へ改組しています。

 

海洋科学技術センター  ⇒  国立研究開発法人  海洋研究開発機構  (文科省)

空港周辺整備機構  ⇒ 同名の独立行政法人  空港周辺整備機構 (国交省) など

 

 

◆ 独立行政法人の制度改革

 

行政改革の観点から、独立行政法人もスリム化が図られ、かつて100以上あった独法の数は、現在87となっています(2025年4月1日現在)。

 

独立行政法人は、当初、国家公務員の身分として扱われるか、民間企業と同等の扱いになるかで、特定独立行政法人(「公務員型」)と非特定独立行政法人(「非公務員型」)の2種類に区分されていました。特定独立行政法人の方が圧倒的に少なく、国立公文書館や造幣局、国立病院機構など8法人でした(2015年3月末)

 

その後、2015年4月以降、独立行政法人は、その業務の特性によって中期目標管理法人、国立研究開発法人、行政執行法人の3つに区分されています。ただし、法人名称を記載する際には、中期目標管理法人と行政執行法人は「独立行政法人」が使用され、国立研究開発法人だけ「国立研究開発法人」がつけられます。

 

2025年4月1日現在、中期目標管理法人は53、国立研究開発法人は26、行政執行法人は7となっています。

 

中期目標管理法人は、中期的な視点に立って執行することが求められる独法で、3~5年の中期目標・計画に基づいて公共上の事務・事業を行います。

 

独立行政法人  国際協力機構(JICA)(外務省)

独立行政法人  日本貿易振興機構(JETRO)(経済産業省)

独立行政法人  国民生活センター(消費者庁)

年金積立金管理運用 独立行政法人(GPIF)(厚生労働省) など

 

国立研究開発法人は、科学技術に関する試験・研究開発にかかわる業務を5~7年ごとの中長期目標・計画に基づいて行う独法です。

 

国立研究開発法人  理化学研究所(文部科学省)

国立研究開発法人  宇宙航空研究開発機構JAXA)(文部科学省)

国立研究開発法人  産業技術総合研究所(経済産業省)

国立研究開発法人  国立がん研究センター(厚生労働省)など

 

行政執行法人 (7) は、国の行政事務と密接に関連した公共上の事務・事業を、国の相当な関与のもとで、単年度ごとの目標・計画に基づいて行います。行政執行法人は従前の特定独立行政法人であり、その役職員は国家公務員です。

 

独立行政法人  国立公文書館(内閣府)

独立行政法人  統計センター(総務省)

独立行政法人  国立印刷局(財務省)

独立行政法人  造幣局(財務省)

独立行政法人  農林水産消費安全技術センター(農林水産省)

独立行政法人  製品評価技術基盤機構(経済産業省)

独立行政法人  駐留軍等労働者労務管理機構(防衛省)

 

地方独立行政法人制度

国の独立行政法人制度と同様の仕組みとして、地方にも、地方独立行政法人制度が設けられています。その多くは大学や病院ですが、試験研究機関や博物館なども地方独立行政法人化されています。

 

 

 

<国立大学法人の導入>

 

国立大学法人は、大学改革の一環として導入された制度で、独立行政法人の一形態です。2003年、国立大学を設置することを目的とした国立大学法人法が制定され、国立大学は、翌4月から「国立大学法人の設置する大学」となりました。

 

それまで、文部科学省の内部組織であった国立大学は、文科省が設置する国の行政機関から、各大学が独立した法人格をもつ「国立大学法人」に移行したのです。たとえば、京都大学なら「国立大学法人京都大学」が設置・運営する大学と位置付けられます。

 

これにより、各大学が特性を活かして自主的・自律的な大学運営を行うことが可能となります。たとえば、国が財政的に責任を持つものの、予算面での規制が緩和され、大学の責任で決定できるようになりました。また、文部科学大臣が学長の任命や中期目標の策定を行いますが、その際も大学の意見が十分に反映されることになります。

 

加えて、法人化によって役員・職員は公務員ではなくなった(みなし公務員=非公務員)ことで、国家公務員法や人事院規則等の規定が適用されず、各国立大学法人が、兼業規制の緩和など自主的に就業規則を定めたり、産学連携等を容易に行ったりできるようになったのです。

 

国立大学法人等とは?

国立大学法人等という言い方をすることがあります。この場合は、文字通りの国立大学だけでなく、国立高等専門学校大学入試センター、独法の国立西洋美術館や、放送大学学園(公設民営大学/特殊法人)、さらに、国立天文台(大学共同利用機関法人)なども含まれます。国立大学法人「等」とは、現在、全国で208機関あります。

 

 

 

公益法人改革>

 

◆ 公益法人とその種類

公益法人とは、営利法人に対する概念で、広義には、学校法人、医療法人、社会福祉法人、宗教法人など、社会公共の利益をはかることを目的として,営利を目的としない(非営利)法人をいいます。この目的の下、特に主務官庁の許可を得て設立される公益法人を、かつて社団法人財団法人に区分していました。

 

社団法人は、人(社員)の集まりに、法人格を与えたもので、社員総会が最高意思決定機関となり、社員からの会費が主な財源となります。NPO(法人特定非営利活動法人)は、98年の制定当時、社団法人の一種です。

 

財団法人は、財産の集まりに、法人格を与えたもので、設立にあたっては、300万円以上の財産を拠出しなければなりません。当該財産の運用益などが主な財源となります。

 

なお、日本では許認可事務の多くは、担当官庁が直接処理するか、公益法人や審議会を設立して処理されていました。

 

◆ 公益法人改革

これまで、公益法人は、「官庁の外側」に位置しているものの、事実上、所管官庁に人事権や財政資金(補助金)、認可などの面で依存していました。結果的に、公益法人は、公務員の主要な天下り先となっていました(3人に1人が公益法人に再就職と批判された)。

 

そこで、2006年5月、約110年ぶりに公益法人制度改正が行われた結果(08年に全面施行)、従来の管轄省庁の設立許可制の公益法人などは廃止され、現在、公益法人は、一般社団法人・一般財団法人と、公益社団法人・公益財団法人からなる制度に変更されました。

 

一般社団法人」と「一般財団法人」とは、一般法に基づいて設立された法人で、登記だけで法人格を得られるなど容易に設立でき、事業内容も特段制限もありません。公益性の有無も問われず、設立後も行政からの監督・指導を受けません。

 

これに対して、「公益社団法人」と「公益財団法人」は、一般社団法人・一般財団法人の中で、有識者でつくる公益認定委員会が「公益性がある」と認定された法人をいい、従来通り税制優遇を受けられるようになるだけでなく、自由な活動分野や柔軟な組織再編が可能となりました。なお、新制度において、公益法人といえば「公益社団法人」と「公益財団法人」のことを指す場合が多くあります。

 

◆ 公益法人の例

公益社団法人:日本医師会、経済同友会、シルバー人材センターなど

公益財団法人:日本相撲協会、全日本柔道連盟、日本野鳥の会など

 

参考までに言えば、経済同友会とともに「経済3団体」と称される日本経済団体連合会(経団連)は、内閣府所管の一般社団法人で、日本商工会議所は特別の法律により設立される民間法人(特別民間法人)です。

 

当初2万4千法人あった公益法人は、2013年11月末までに公益認定か一般法人への移行を申請し、結果として約9千法人が公益(財団・社団)法人に移行し、残り約1万1千法人が一般(財団・社団)法人へ移行しました。

 

公益法人の数20213月現在)

公益財団法人5600・公益社団法人4200

一般財団法人7700・一般社団法人67000

 

 

<関連記事>

日本の内閣と行政①:内閣の機能と仕組み

日本の内閣と行政②:内閣の組織

日本の内閣と行政③:内閣府と内閣官房

日本の内閣と行政④:委員会と審議会

日本の内閣と行政⑤:日本の官僚制

 

<参照>

本稿は、拙著「『なぜ?』がわかる政治・経済」で取り上げた内容を、加筆・修正して、まとめたものです。

 

(投稿日:2025.4.28)

むらおの歴史情報サイト「レムリア」