遺伝子組み換え種子・作物

遺伝子組み換え作物は「安全」 米科学アカデミーが報告書
(2016年5月18日、日経)

 

米科学アカデミーは17日、遺伝子組み換え作物は人間や動物が食べても安全だと結論づける報告書をまとめた。過去20年間の約900件におよぶ研究成果をもとに包括的に評価した結果、がんや肥満、胃腸や腎臓の疾患、自閉症、アレルギーなどの増加を引き起こす証拠はないとした。

 

報告書によると、遺伝子組み換え作物は収量には影響しないが、害虫や雑草から収穫物を守り、農薬の削減や農家の収入向上などの効果がある。遺伝子組み換え作物と野生種の交配による危険性は確認されなかった。

 

日本や欧州では食品に遺伝子組み換え作物を使う際に表示義務を課しているが、報告書では「表示義務化は国民の健康を守るために正当化されるとは思われない」と指摘。ただ「製品表示には食品の安全性を超える意味がある」として、社会的、経済的に幅広く検討する必要があるとした。

 

遺伝子組み換え作物は遺伝子を人工的に改変し、害虫や病害への抵抗や生産量などを高めたもの。1990年代から米国などで栽培が本格化し、現在は米でつくる大豆やトウモロコシ、綿の9割超が遺伝子組み換えとなっている。消費者の「健康への影響が不透明だ」との声を踏まえ、米の一部の州でも表示義務化を法制化する動きが広がっていた。

 

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独バイエル、米モンサントを買収 6.8兆円で

(2016/9/14、日経)

 

ドイツの医薬・農薬大手バイエルは14日、遺伝子組み換え種子の世界最大手、米モンサントの買収で合意したと発表した。買収額は約660億ドル(約6兆8000億円)。両社合算の農業部門の売上高は約270億ドルに達し、農薬・種子の圧倒的な巨人になる。食糧需要の拡大で農業生産の効率化の必要が迫られる中、欧米大手は規模拡大で一気に集約に動く。両社は、バイエルがモンサント1株当たり128ドルで全株を現金で取得し、負債も引き受けることで合意。7月に提示していた125ドルから上積みした。2017年末までの買収完了を見込む。買収には各国・地域の独禁当局の承認が必要で、承認を得られず破談になった場合はバイエルがモンサントに20億ドルの違約金を支払う。

 

バイエルは農薬が強く、モンサントは種子を主力とする。新興国の人口増などで農薬と種子の需要が拡大する一方、企業側では生産効率向上に向けた製品の研究開発負担が増しており、業界再編が加速している。モンサントは昨年、農薬首位のシンジェンタ(スイス)の買収に動いたが、シンジェンタの反対にあい断念。逆に今年5月からバイエルからの買収提案を受けていた。モンサントは提案を拒否しながら、両社の交渉は続きバイエルが条件を見直してきた。

 

業界では、昨年12月に米化学大手のダウ・ケミカルとデュポンが経営統合で合意し、農業関連事業を統合した新会社(売上高約160億ドル)を設立する予定だ。今年2月には中国国有化学大手の中国化工集団がシンジェンタの買収で合意した。