イギリス貴族の爵位と敬称:公爵から男爵まで

 

イギリスのヘンリー王子夫妻が、2020年3月31日で、イギリス王室の高位メンバーから正式に抜けましたが、ヘンリー王子の爵位はサセックス公爵で、高位メンバーを抜けても、公爵の称号は失わない・・・・など何かと話題を呼びました。今回は、イギリス貴族の爵位と敬称についてまとめました。2022年エリザベス女王の逝去にともない爵位の変更がありました。

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イギリスの貴族>

 

一般的に、イギリスにおいて、貴族とは、生まれ(血縁)や功績によって、貴族院の議員になれるなどの社会的特権を認められた人や一族をさします。いわゆる上流社会を形成し、他の社会階級の人々からは区別されたエリート集団です。

 

イギリスの貴族は、その歴史的な経緯から、イングランド貴族、スコットランド貴族、グレートブリテン貴族、連合王国貴族に分類されます。

 

イングランド貴族は、1707年以前にイングランド王国で創設された全ての貴族で構成され、同様にスコットランド貴族 も、1707年以前にスコットランド王国で創設された貴族の総称です。1707年に、スコットランド王国がイングランド王国と合同し、「グレートブリテン王国」が成立すると、その年から授爵された貴族はイングランド貴族とスコットランド貴族に替わりグレートブリテン貴族と呼ばれました。その後、1801年に「グレートブリテン及びアイルランド連合王国」が成立して、連合王国貴族が新設されました。このため、イングランド貴族が最も古い貴族となるので、同じ爵位の場合、他の貴族よりも序列では上位となります。

 

なお、中世以来、イギリスの君主によって叙されたアイルランド貴族は存在し、1801年以降も新たなアイルランド貴族は創設できましたが、1898年を最後に創設されていません。

 

イギリスの貴族の分類

イングランド貴族Peerage of England (~1706)

スコットランド貴族(~1706)

グレートブリテン貴族Peerage of Great Britain1707~1800

連合王国貴族(Peerage of the United Kingdom)(1801~)

 

 

イギリスの爵位(title/peerage)>

 

貴族は、国王・皇帝から認められた爵位(しゃくい)によってランク付けされます。爵位とは、貴族にだけ与えられる称号で、イギリスの爵位には、上から序列順に、公爵(Duke)・侯爵(Marquess)・伯爵(Earl)・子爵(Viscount)・男爵(Baron)までの各階位があります(これを五爵または五等爵と呼ぶ)。公爵から伯爵までが上位貴族、子爵と男爵を下位貴族とする分類もあります。

 

 

  • 公爵((Dukeデューク)

 

公爵(こうしゃく)は、爵位の最高位で、王族や大貴族に与えられた称号です。現在も王族に属する「王族公爵」(8家)と、功績のあった臣民(貴族)に授爵される「臣民公爵」(24家)があります。

 

王族公爵といえば当然、エリザベス女王一家を思い浮かべることができるでしょう。王族は、慣例で結婚時に公爵の称号が、これまで、エリザベス女王から与えられてきました。エリザベス女王の時代、女王自身も含めて、チャールズ皇太子、孫のウイリアム王子とヘンリー(ハリー)王子はそれぞれ以下のような公爵位を持っていました(なお、イギリスでは一人で複数の爵位を保持できる)。

 

ランカスター公爵(Duke of Lancaster)(エリザベス女王)

コーンウォール公爵(Duke of Cornwall)(チャールズ皇太子)

ロスシー公爵(Duke of Rothesay)(チャールズ皇太子)

ケンブリッジ公爵(Duke of Cambridge)(ウィリアム王子)

サセックス公爵(Duke of Sussex)(ヘンリー王子)

 

女王の死後、チャールズ皇太子が新国王に即位したことで、慣例に従い、

チャールズ国王はランカスター公爵位を、また、新たに皇太子となったウィリアム王子がコーンウォールとロスシーの称号を引き継がれました。

 

 

公爵の敬称は「Durk of ○○」で、○○の部分には、姓ではなく、「爵位名」が入ります。爵位名には、王室の歴史に所縁(ゆかり)のある場所や、比較的伝統的な場所などの地名がつけられます。上の例では、コーンウォール、ロスシー、ケンブリッジ、サッセクスがそうです。

 

では、本人とその地名とは関係があるのかというと、その必要はありません。例えば、エジンバラ公爵という爵位があります。エジンバラ公爵は、スコットランドのエジンバラ出身でなくてもいいのです。実際、エジンバラ公爵は、エリザベス女王の王配(配偶者)で、フィリップ王配(故人)はギリシャの王族出身でした。

 

むしろ、その地名のついた公爵位と、王室における地位とつながっています。王族であるランカスター家と密接に結びついたランカスター公(Duke of Lancaster)は、現在はイングランド王位保持者の称号の一つとなっています。また、イギリスの国王の長男には、コーンウォール公とロスシー公の爵位が与えられることが慣例となっています。

 

なお、冒頭でイギリスの貴族は、歴史的にイングランド貴族スコットランド貴族、グレートブリテン貴族、連合王国貴族、アイルランド貴族に分けられると説明しました。これまで、チャールズ皇太子、ウィリアム王子とヘンリー王子が保持する公爵位も、この分類に当てはめてみれば以下のようになります。

 

コーンウォール公爵⇒イングランド公位(イングランド貴族の公爵)

ロスシー公爵⇒スコットランド公位(スコットランド貴族の公爵)

ケンブリッジ公爵⇒連合王国公位(連合王国貴族の公爵)

サセックス公爵⇒連合王国公位(同上)

 

そうすると、例えば、ウィリアム皇太子は、イングランド公爵のひとつである「コーンウォール公爵」と連合王国貴族としての「ケンブリッジ公爵」の爵位を叙爵されているという言い方ができます。

 

イギリスで、公爵(デューク)と言うタイトルは、エドワード3世が、1337年に、自分の長男、エドワード・ブラック・プリンス(エドワード黒太子)に、コーンウォール公の位を授けたのが初めとされます。エドワード3世には、男子だけで5人の子どもがいて、全員、公爵となりました。また、王太子(おうたいし)(=長男)だけでなく、次男以下の子ども達や、自分の弟などに地方の領地を治めさせる際に、国王が公爵の地位を叙爵したというケースも数多く見られます。

 

一方、臣民公爵については、近年、王族以外で、新しく公爵の称号を受ける事はほとんどありませんが、歴史的には、地方の領地を軍事的に統治した大諸侯(中世の時代では封建君主)が公爵の称号を保持していました。現在も、1483年から世襲しているハワード家のノーフォーク公爵をはじめ、リッチモンド公爵、レノックス公爵、ゴードン公爵が伝統的な臣民公爵として知られています。

 

臣民貴族も王族同様に、イングランド貴族、スコットランド貴族、グレートブリテン貴族、アイルランド貴族公爵、連合王国貴族に分類できます。そこで、公爵内の序列をまとめると、まず王族公爵が別格で上位で、その下におかれる臣民公爵たちはイングランド貴族公爵以下、連合王国貴族公爵まで上記の順序で序列化されます。

 

イングランド貴族公爵

スコットランド貴族公爵

グレートブリテン貴族公爵

連合王国貴族公爵

 

大公Grand Duke

ところで、歴史書などに接すると、公爵とは別に、大公という称号を目にすることがあるでしょう。大公とは大公爵の略称で、グランドデューク(Grand Duke)の訳語です。公爵の中でも、国を治める王に匹敵するほどの権力を持った人物に対して用いられます。実際は、王以外の王族(王の息子や弟など)や分家の長などに適用されることがあります。公爵を大公爵(大公)とすることで、他の王族公爵や臣民公爵(duke)と区別し、公爵よりも上位であることを示す狙いがあるとされています。イギリスでは、かつてチャールズ皇太子を大公と呼ぶ場合がありました。また、歴史的には、大公が国を治めるとそこは大公国と呼ばれ、一つの国家となります。

 

 

  • 侯爵(Marquessマーキス/マークィス)

 

侯爵(こうしゃく)は、ヨーロッパ大陸(特にドイツ)において、国境付近など重要な地域を領地として任せられた諸侯が受けることができる爵位でした。そもそも、諸侯とは、主君である君主の権威の範囲内で一定の領域を支配することを許された貴族のことを言いますが、君主から侯爵の称号を与えられた諸侯は、確固とした軍事力を保持しており、有事の際には戦果を挙げることが期待されました。逆に言えば、王族ではない諸侯が戦果をあげて公爵に上り詰めるのはかなり至難の業だと言われており、かつて侯爵は、王族以外で実質的に最高位とされていました。

 

イギリスにおいて、侯爵の称号は、非嫡出子を含む国王にとって遠縁の血族者に爵位を与えるために創設されたと言われています(正当な嫡出子や血筋の近い王族には公爵が与えられた)。侯爵は、1385年にオックスフォード伯爵ロバート・ド・ヴィアーがダブリン侯爵(Marquess of Dublin)に叙されたのが始まりとされ、現在は、約35の侯爵家が存在しています。その中では、1551年に初代が叙爵したポーレット家のウィンチェスター侯爵が有名です(現当主のナイシェル・ポーレットは、18代目に当たる)。

 

 

  • 伯爵(Earlアール)

 

伯爵(はくしゃく)という称号は、ウィリアム1世が1066年にイングランドを征服する以前、エドワード懺悔王(在1042~1066年)が、イングランドを四分割して、それぞれを治める豪族に与えたことに始まります。伯爵(アール)は、ヴァイキングのデーン人が使っていた名称に由来するそうです。五爵位の中で最も古い創設で、数世紀にわたり、最高位の爵位でありました。

 

その後、伯爵は、王族の側近で、地方へ派遣されてその地を治めている地方領主のことを指すようになりました。爵位が上の侯爵よりも、支配している領土は狭く、権限が小さいのが特徴です。こうした伯爵の中で、土着の諸侯を監視したり、その力を抑えるために派遣されたりした伯爵の場合、彼らとの争いの中で没落していく場合が多かったようです。逆に勝利すればその領地を手に入れ、王に意見できるような権力を持った伯爵も出たそうです。現存する伯爵家は190を超え、ダイアナ妃のスペンサー家や、ヘンリー8世の妃アンのブーリン家が有名です。

 

 

  • 子爵(Viscountヴァイカウント)

 

子爵(ししゃく)は、伯爵の副官(補佐)の地位にあたる貴族で、爵位の中でも最後に創設されました。1440年に、ボーモント男爵ジョン・ボーモントにボーモント子爵(Viscount Beaumont)位が与えられたのが始まりですが、地方領主たる伯爵に任せられた小都市や城の管理など地方行政の官僚としての役割を担いました。後に、子爵は、伯爵の嫡男が伯爵位を継ぐまでに名乗る暫定的な爵位として利用されるようになったと言われています。現存する子爵家は112あります。

 

 

  • 男爵(Baronバロン)

 

男爵は、貴族の中で最も下位の爵位で(男爵までが貴族)、爵位が自分より上の諸侯が治める領地内にある村や町などの小領地を治めました。また、子爵以上の爵位を持たない領主が治めていた村や町を、君主から与えられたりもしました。イングランドでは、13世紀頃までバロン(baron)という言葉は、貴族の称号ではなく、国王から直接に封土を受ける臣下を意味していたそうです。

 

貴族は一般的に世襲で生涯、貴族でいられますが、イギリスには一代貴族、法服(法律)貴族、聖職貴族など世襲制でない貴族もあります(それゆえ、世襲貴族hereditary peerという言い方もある)。

 

一代貴族(life peerage)は文字通り、一代限りで貴族に叙されるもの(爵位が有効なのは本人一代限り)で、男爵が一代貴族に当たります。つまり一代貴族と言えば、それはすべて男爵でした。男爵位は、イギリス国家への貢献度の高い人に対して、出身階級にかかわりなく授与されます。現存する男爵家は450近くあるとされ(600人前後)、サッチャー元首相も一代貴族として女男爵(Baroness、バロネス)になっています。

 

なお、世襲貴族(公爵から子爵と准男爵)において、継承されていく爵位は男女の性に関係なく、直系の一族の長子が受け継いでいきます。また爵位を持つ人物の妻は、例えば公爵夫人(Duchess)として、爵位を授与されます。

 

 

準貴族

さて、イギリスには、法律上は貴族として扱われませんが、独自に、準男爵(バロネット)と騎士(ナイト)の爵位制があります(準男爵が騎士の上位)。この称号(爵位)は、貴族ではないので、身分ではなく、勲位であり肩書なので、「○○準男爵」「○○ナイト爵」という形では与えられません。

 

 

  • 准男爵(baronetバロネット)

 

准男爵(バロネット)は、イギリスの爵位制度において、世襲称号ではありますが、その中では最下位です。貴族ではなく平民で、貴族院にも議席を有しません。

 

准(準)男爵の称号は、17世紀、イングランド王のジェームズ1世が、アイルランド征服・開拓のための資金を集めるために、新しく創設した爵位です。具体的には、兵士30人を3年間養える費用を献納した地主に与えられたと言われています。現在では、国家に大きな功績ではありませんが、評価に値する人物、逆に功績をあげたものの貴族にさせたくない人物に与えられているという指摘もあります。

 

準男爵を授与された有名人はビールメーカーのベンジャミン・ギネスやロールスロイスの創設者のヘンリー・ロイス、作曲家 エドワード・エドガーがおり、古くは、世界的科学者、アイザック・ニュートンもいます。

 

なお、当主である女性が凖男爵を叙爵されると、バロネテス(baronetess)となり、女準男爵と呼ばれます。バロネット(baronet)の短縮形はBtまたはBartで、バロネテス(baronetess)はBtssで表記されます。

 

 

  • ナイト爵(Knight騎士

 

ナイトは中世の騎士階級に由来した称号で、騎士とは、中世ヨーロッパにおいて、国家や君主に尽くした功績に対して褒美として与えられた名誉的称号でした。これにちなんで、主に文化・学術・芸能・スポーツ面で著しい功績があった人に与えられる称号です。ナイトの称号は、一代限りで、世襲することはできません。

 

ナイト(騎士)の称号を受けた有名人には、チャ―リー・チャップリン、ポール・マッカートニー(ビートルズ)、エルトンジョン、ミック・ジャガー(ローリング・ストーンズ)、ボノ、さらには、マイクロソフト創設者のビル・ゲイツなどが含まれています。また、長崎出身でイギリスに在住、2017年にノーベル文学賞を受賞した作家のカズオ・イグロ氏も、イギリス王室からナイトの爵位が授与されました。

 

なお、ナイトは等級があり、王室から受ける勲章に応じて一等から五等に分類され、一等はナイト・グランドクロス、二等はナイト・コマンダーなどの名称が付いています。これに対して、民間団体が「ナイト」を模した民間称号を与える場合もあるそうです。

 

 

イギリス貴族に対する敬称>

 

では、イギリスの貴族(公爵から男爵まで)や準貴族(準男爵とナイト爵)はどのように呼ばれるのでしょうか?

 

  • 公爵

公爵に対する敬称は、「Your Grace(ユア・グレース)(閣下)」で、正式な呼び方は、〇〇公爵(Duke of 〇〇)、〇〇には名前や姓ではなく、爵位名(号)が入ります。

 

例えば、王族貴族のサセックス公爵の称号を持つヘンリー王子であれば、ヘンリー公爵ではなく、サセックス公爵(Duke of Sussex)と呼ばれます。名前を入れる場合は、サッセクス公(爵)ヘンリー王子(Prince Henry, Duke of Sussex)となります。また妻であるメーガン妃は、サッセクス公爵夫人の肩書を得ています。

 

一方、臣民公爵のハワード家のノーフォーク公爵(当主トーマス・ハワード)の場合、ノーフォーク公爵(Duke of Norfolk)または、ノーフォーク公トーマス・ハワード(Thomas Howard, Duke of Norfolk)となります。

 

公爵を正式な場で呼びかける場合は、「Your Grace(ユア・グレース)」「閣下」で、通常のパーティのような場所では「Duke(デューク)(公爵)」と呼びかけることになります。

 

一方、公爵夫人に対する敬称には、Duchess(ダッチェス)が使われ、「Duchess of 〇〇(爵位号)」で、ハワード家のノーフォーク公爵夫人であれば、Duchess of Norfolkとなります。公爵夫人を正式な場で呼びかける時は、「Your Grace(ユア・グレース)」、少しくだけた場所では「Duchess(ダッチェス)」を用います。

 

「Your Grace」(閣下)」は、貴族の中で公爵だけに使わる尊称で、侯爵から男爵まで他の貴族の敬称は、「Lord(ロード)(卿)」です。

 

 

  • 侯爵

正式な呼び方は、〇〇侯爵(マーキス)(Marquess of 〇〇)、○○には名前や苗字ではなく、爵位名が入ります。

 

ポートレット家のウィンチェスター侯爵(当主ウィリアム・ポーレット)であれば、ウィンチェスター侯爵(Marquess of Winchester)で、ポートレット侯爵(Marquess of Paulet)や、ウィリアム侯爵(Marquess of William)ではありません。個人名を入れる場合は、ウィンチェスター侯爵ウィリアム・ポーレット(William Paulet, Marquess of Winchester)となります。

 

正式な場で呼びかける時は、「My Lord(マイ・ロード)(閣下)」、それ以外の場では、「Lord Winchester(ロード・ウィンチェスター)(ウィンチェスター卿)」と呼びます。

 

 

  • 伯爵

正式な呼び方は、〇〇伯爵(アール)(Earl of 〇〇)です。

 

スペンサー家のスペンサー伯爵(当主エドワード・スペンサー)であれば、スペンサー伯爵 (Earl Spencer)で、名前を入れる場合は、スペンサー伯(爵)エドワード・スペンサー(Edward John Spencer, Earl Spencer)となります。

 

正式な場で呼びかける時の敬称は、同様に「My Lord(マイ・ロード)(閣下)で、それ以外の場では、「スペンサー卿」(「Lord Spencer(ロード・スペンサー)と呼ばれます。

 

 

  • 子爵・男爵

 

子爵の正式な呼び方は、○○子爵(ヴァイカウント)(Viscount 〇〇)で、

男爵の正式な呼び方も、〇〇男爵(バロン)(Baron 〇〇))となり、〇〇にはそれぞれ爵位名が入ります。

 

アスター家のアスター子爵(当主ウィリアム・アスター)の場合、

アスター子爵(Viscount Astor)、名前を入れるなら、アスター子爵ウィリアム・アスター(William Astor, Viscount Astor)となります。

 

ベアリング家のノースブルック男爵(当主フランシス・ベアリング)なら、

ノースブルック男爵(Baron Northbrook)

ノースブルック男爵フランシス・ベアリング(Francis Baring, Baron Northbrook)

 

正式な場で呼びかける時の敬称は、それぞれ同様に「My Lord(マイ・ロード)(閣下)で、それ以外の場所では、「アスター卿(Lord Astor)」、「ノースブルック卿(Lord Northbrook)」と呼びかけます。

 

一方、侯爵以下の貴族の妻は、侯爵夫人、伯爵夫人、子爵夫人、男爵夫人となり、Lady(レディ)が敬称として使われます(「Lady +爵位号」)。例えば、ノースブルック男爵(Baron Northbrook)夫人は、Lady Northbrookとなります。

 

 

  • 准男爵・ナイト爵

 

侯爵から男爵までの貴族の敬称が「Lord(ロード)」であるのに対して、准男爵(バロネット)ナイトの場合、「Sir」(サー)(卿)が使われ、名前(ファーストネームあるいはファーストネーム+苗字)の前に、「Sir」を付けて呼ばれます。

 

例えば、准男爵であるサッチャー元首相の夫、デニス・サッチャーの場合サー・サッチャーではなく、サー・デニス・サッチャー(Sir Denis Thatcher)(デニス・サッチャー卿)、または、サー・デニス(デニス卿)となります。

 

「ナイト」の称号を受けたノーベル文学賞を受賞者のカズオ・イシグロ氏も、叙爵前なら、ミスター・イシグロ(Mr. Ishiguro)だったのが、現在は、サー・カズオ・イシグロ(Sir Kazuo Ishiguro)またはサー・カズオ(Sir Kazuo)と呼ばれます。Sir Ishiguro(イシグロ卿)とはならないことに気をつけましょう。

 

准男爵・ナイト爵の称号を持った人、例えばデニス・サッチャー卿を呼びかける時は、場所を問わず、「Sir Denis(サー・デニス)(デニス卿)」となります。

 

このように、侯爵から男爵まで貴族の称号が「Lord(ロード)+爵位名」であるのに対して、准(準)男爵やナイトの呼称は「Sir(サー)+名前」となります。

 

なお、準男爵やナイトの妻なら、侯爵以下の夫人と同様に、Ladyの敬称が使われます。例えば、カズオ・イシグロ卿の奥様であれば、「Lady Isiguro(レディ・イシグロ)」となります。呼びかける場合も同様です。侯爵から男爵の夫人であれば、「Lady+爵位名」でしたが、準男爵と騎士の夫人の場合は「Lady+姓」となります。

 

まとめ

貴族・準貴族の敬称

公爵(Duke)⇒Your Grace(ユア・グレース)

侯爵(Marquess) ⇒ Lord(ロード)

伯爵(Earl) ⇒ Lord(ロード)

子爵(Viscount) ⇒ Lord(ロード)

男爵(baron)⇒ Lord(ロード)

准男爵(Baronet)⇒Sir (サー)

ナイト(爵)(Knight)⇒Sir (サー)

 

 

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<参考>

むらおの歴史情報サイト「レムリア」

 

<参照>

イギリス貴族階級の爵位と名前(世界雑学ノート)

知られざるイギリス貴族の真実(イギリス・All About)

「爵位」の意味とは?日本とイギリスの爵位制度・序列も解説(Tran.biz)

公爵、侯爵、男爵って?イギリス爵位の一覧

貴族制度と呼び方について解説。最低限これだけは押さえておきたい要素とは?

Wikipediaなど

 

(2020年3月21日、最終更新日2022年9月17日)