2020年08月19日

仏教:「法要」人は死んだらどうなる?

前回の投稿では、葬儀において重要な役割を担う「戒名」についてまとめました。お葬式が済むと、仏教では初七日、49日、3回忌…の法要・法事が行われます。

 

もともと仏教では、仏法(釈迦の教え)を知るために集まる席のことを「法要」「法事」と呼んでいたそうですが、現在、法要(法事)とは、死者の冥福を祈るために、人々が集まって執り行う儀式のことで、葬儀(通夜・葬式)の後に行われる仏教の行事全般をいいます(なお、法事とは、法要とその後の会食を含む行事の事)。では、葬儀後、具体的にどのような法要(法事)が行われるのか、またその背景にある考え方をみてみましょう。

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  • 輪廻転生

 

仏教では、輪廻転生(りんねてんしょう)という考え方があり、命日から四十九日の間に、故人が次に生まれ変わる世界(来世)が決まるとされています。輪廻転生とは、車輪が回るように、人は何度も生死を繰り返し、死んでも新しい生命に生まれ変わることをいいます(輪廻:車輪が回る様子、転生:生まれ変わり)。現世での行いが来世に影響を及ぼすと言われており、仏教では、死者は、六道(りくどう/ろくどう)という6つの世界(境遇)のいずれかに生まれ落ちるとされています(これを六道輪廻と呼ぶ)。

 

6つの世界(来世)とは、地獄道(じこくどう)、餓鬼道(がきどう)、畜生道(ちくしょうどう)、修羅堂(しゅらどう)、人間道(にんげんどう)、天道(てんどう)をいいます。この六道の世界は、どこへ行っても煩悩の苦しみがあり、それを超越した世界が極楽浄土です。

 

人が死ぬと、閻魔大王(えんまだいおう)に裁かれ、天国に行くか地獄に行くかが決まるなどという話しは聞いたことがあるかもしれません。実際、中国には、人が亡くなると、冥界(あの世)にいる10人の王(閻魔大王もその一人)によって、死後七日目から七日ごとに七回、審判を受けるという考え方があります(これを「十王思想」という)。

 

七回のうち五回目の審判(死後35日)を行うのが閻魔大王(えんまだいおう)で、これが最終審判となり、ここで死者の行方が、ほぼ決定されると伝えられています。(これを引導と呼び、「引導を渡す」という慣用句の語源となった)。審判は、閻魔王の宮殿にある「浄玻璃鏡」と呼ばれる「鏡」に映し出される「生前の善悪」を証拠に、間違いなく進められるそうです。では、「裁判」の結果、人が死後、落ちていく六道が、どういう世界なのかをみてみましょう。

 

  • 六道輪廻の世界

 

天上(てんじょう)

天上界とは、六道の中では苦が少なく楽の多い世界ですが、迷いの世界であることは間違いなく、悲しみもあります。また、寿命もあり、年をとってくると、それまで楽しかった分、苦しみを受けます。その意味で、天上界は極楽浄土とは異なります。

 

人間界

人間界とは、生病老死の四苦八苦がある私たちが今生きている世界です。ただし、六道の中で、唯一仏の教えを学べる場であり、輪廻転生の枠から逃れられる(解脱)可能性もあります。

 

修羅(しゅら)

修羅界とは、争いの絶えない世界で、ここでは、欲望を抑えることができず、怒りに我を忘れ、戦いを繰り返します。生前、喧嘩や争いばかりしていた人がいく世界です。

 

畜生(ちくしょう)

畜生界とは、動物の世界のように、弱肉強食が繰り返され、互いに殺傷しあう世界です。自分より強い生き物に突然襲われて食われてしまう世界なので、常に不安に怯えなければなりません。そうすると、人を蹴落としてでも、自分だけここから抜け出そうとして、殺し合いを繰り返すことになってしまいます。生き物を殺してきた人、そうでなくても、幸せな人を妬み、他人の不幸を喜ぶ、愚痴ばかり言っている人が落ちる世界と言われています。

 

餓鬼(がき)

餓鬼界は、飢えと渇きによって苦しみを味わう世界です。そこは、食べ物や飲み物があったとしても、それを口に運ぼうとした瞬間に青白い炎となって消えてしまい情景でよく説明されます。結果的に、食べたい物も食べられず、飲みたい物も飲めず、ガリガリにやせ細り、最後は骨と皮だけになってしまいます。生前、食べ物を粗末に扱った人、そうでなくも、欲深く、ケチだった人が餓鬼道に落ちていくそうです。

 

地獄界

地獄界は、六道のなかで最も苦しい世界です。「この世の溶鉱炉の火を地獄に持って行くと、霜か雪のようになってしまう」、「この世の一番の苦しみを一滴の水とするなら、地獄は海の水のような苦しみ」と説かれるほど、その苦しさは言葉では言い表せず、その期間も果てしないと言われいます。

 

殺人、強盗、窃盗、淫行など犯罪を犯せば、地獄に生まれるとされています。その地獄にも、生前の行為によって、5つの種類に分かれているそうです。

 

等活(とうかつ)地獄:生き物を殺す殺生罪の場合
黒縄(こくじょう)地獄:殺生罪に加えて、他人の物を盗む偸盗(ちゅうとう)罪の場合
衆合(しゅうごう)地獄:殺生・偸盗罪に加えて、淫らなことを行う邪婬(じゃいん)の罪をもつ場合
叫喚(きょうかん)地獄:殺生・偸盗・邪婬の罪に加えて、飲酒の罪をもつ場合
大叫喚(だいきょうかん)地獄:殺生・偸盗・邪婬・飲酒の罪に加えて、嘘をつく妄語の罪をもつ場合

 

 

  • 追善法要

 

そこで、故人が少しでも良い世界に生まれ変わるようにと、故人が裁きを受ける七日ごとに、残された家族が代わって供養をします。死者に代ってあとを「追う」ように「善徳」を積むことから、これを追善法要(ついぜんほうよう)と呼ばれます。

 

これは、インドでは亡くなった人への供養として、死亡した日から七日目ごとに7回の法要が行われていたという風習によります。(7×7=49日が過ぎると死者は他の生を受けると考え方もここからきている。)

 

さらに、この法要が七日ごとに7回あるのは、7回の審理のたびに十王に対し死者への減罪の嘆願のためだと言われています。冥界での「裁判」においては、遺された家族が行なう追善法要も、故人へ下される審判の「参考」になるそうです。ですから、故人は、初七日から三十三回忌までの合わせて13回の法要を受けます。

 

この時、13の仏様に守られながら、極楽浄土に導かれて成仏するとされています(13の仏様を十三仏と呼ぶ)。十三仏は、三十三回忌までの13回の法要のそれぞれに守護仏として存在します。仏教では、私たちは自力で浄土へ行くことはできないので、十三仏に導いてもらうことで、極楽浄土への道が開かれると教えています。

 

こうして、13体の仏に向けて供養を行う事で、故人の生前の罪悪を消すことができるとされています。四十九日目に最後の裁きが終わった後、来世の生まれ変わり先が決まり、たとえ地獄に落ちた故人であったも、百日忌、一周忌から三十三回忌まで、各々の法要を司る仏に祈り、感謝し導いていただくことで、浄土にも行くことが可能となるとされています。

 

追善法要のうち、死後七日ごとに四十九日まで行う法要を「中陰法要(ちゅういんほうよう)」または「忌日法要(きにちほうよう)」、それ以降、一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌、三十三回忌の法要を「年忌法要(ねんきほうよう)」と呼びます。

 

幽界(あの世)では、六つの世界で苦しむ人達を救うため、観音様やお地蔵様が特別に配置され、休む暇もなく六道を巡っているそうです。

 

 

<中陰法要>

 

初七日(しょなぬか):不動明王(ふどうみょうおう)

二七日(ふたなぬか): 釈迦如来(しゃかにょらい)

三七日 (みみぬか):文殊菩薩(もんじゅぼさつ)

四七日 (よなぬか):普賢菩薩(ふげんぼさつ)

五七日 (いつなのか):地蔵菩薩(じぞうぼさつ)

六七日 (むなのか):弥勒菩薩(みろくぼさつ)

七七日忌 (しちしちにちき):薬師如来(やくしにょらい)

 

死後四十九日間は、まだ故人があの世とこの世の間をさまよっているとされています。それが終わるのが、「七七日忌(四十九日)」の法要で、「忌明け(きあけ)」とも呼ばれます。この四十九日を境に、「死霊(故人)」は「祖霊(仏)」となるとされています。遺族が喪に服す期間も終わり、この日までに本位牌(黒塗りの位牌)や仏壇が用意されるのが慣例です。

 

 

<年忌法要>

 

百カ日 (ひゃっかにち):観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)

一周忌 (いっしゅうき):勢至菩薩(せいしぼさつ)

三回忌 (さんかいき):阿弥陀如来(あみだにょらい)

七回忌 (ななかいき):阿閦如来(あしゅくにょらい)

十三回忌 (じゅうさんかいき):大日如来(だいにちにょらい)

三十三回忌 (さんじゅうさんかいき):虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)

 

 

年忌法要は、極楽浄土に行った故人がさらなる精進の道へと導くため、または、閻魔大王の裁きの結果、地獄道や修羅道などに落ちてしまった故人の救われのために営まれます。一周忌、三回忌、十三回忌と続き、三十三回忌で、故人(祖霊)は、神霊(氏神=ご先祖さま)となって、自然に還り、菩薩(ぼさつ)の道に入ることが期待されます。家庭では、三十三回忌以降は個別の先祖としてではなく、その家の「先祖代々」として祀られます。

 

仏教では、宗派によっては、三十三回忌の前に七回忌、十七回忌、二十三回忌を催したり、また三十三回忌以降もさらに五十回忌、百回忌と続けるお寺もあります。ただし、一般には三十三回忌をもって、故人としては修行の締めくくり、遺族としては法事の締めくくりとされます。

 

なお、亡くなった年は、命日の翌年を「一周忌」とし、翌年を「三回忌」」とします。これは、亡くなった日が1回目の忌日、丸1年目が2回目の忌日、丸2年目が3回目の忌日であることによります。ですから、死後2年目に「三回忌」、7年目に「八回忌」…という具合に計算していきます。

 

*十三仏と十王思想については、改めて投稿したいと思います。

 

<参照>

法事と法要の違いがわかる!種類・日にちの数え方・流れまでを全解説

法事・法要・四十九日がよくわかる

やさしい仏教入門:十三仏・十王

やさしい仏像のはなし – 閻魔様と十王思想

Wikipediaなど