2020年08月15日

仏教:「戒名」ってどんなもの?

最近、身内に不幸があり、「戒名」について考える機会がありました。意外にも仏教の奥深い世界を理解できました。

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  • 戒名とは?

 

仏式の葬儀は、日本の葬儀の9割を占めているとされています。その葬儀になくてはならないのが戒名で、一般的に、遺影とともに、葬儀の祭壇の中央に置かれている白木の位牌(いはい)の正面に記されています。位牌は「あの世」と故人を結ぶ接点です。戒名は、葬儀の際に用いる白木位牌や仏壇に納める本位牌(黒塗りの位牌)だけでなく、お墓の石碑や卒塔婆(そとば)(供養のために用いる細長い木の板)などにも記されています。

 

その戒名とは、「仏の弟子となった証として故人に送られる名前の総称」などと定義される故人の霊名です。仏式の葬儀では、一般的に、生前の名前(俗名)ではなく、死後にいただいた戒名が使われます。ただし、本来の戒名とは、亡くなってから葬儀の時に付けられるのではなく、俗世を離れて、仏の弟子になった証として出家の際に与えられるものでした。

 

具体的には、僧侶の「戒律」(菩薩行の道を生きていくための行動の規則)を、修行によって守ることを条件に、「戒名」が授けられたのでした。ですから、戒名とは、師匠が弟子に授けるもので、本来は生前に授かっておくべきものだったのです。実際、戒名を受ける際には、必ず「授戒(じゅかい)」と呼ばれる儀式が行われ、仏教の戒律(約束事)を守ることを誓い、仏弟子として認められます。

 

しかし、後に、出家をしない俗人であっても、生前のうちから、授戒会(じゅかいえ)と呼ばれる法会に参加することで、戒名を受けられるようになりました。さらに生前、戒名を受けていない人も、現在の仏式の葬儀では、出家の有無にかかわらず、戒名を必ず授かるのが一般的です。

 

 

  • 戒名を受けるときの手順

 

一般的に戒名は菩提寺(先祖代々のお墓のあるお寺)に依頼をして授かります。形式的には、菩提寺の住職が師匠、戒名を授けられる人が弟子という関係になり、住職を通じて仏さまの門下に入ります。

 

生前に戒名を受けてない人は、死亡時点で、戒名を授かるためには、家族がすぐに菩提寺の僧侶へ依頼します。そうすると、大概は、枕勤め(故人の枕元でお坊さんに読経をしてもらうこと)の際や、通夜の前に授かることができます。葬儀前に戒名を授かることで仏教徒として葬儀を行うのです(仏式で葬儀を営むには、仏教徒でなくてはならないので、授戒をし、仏教徒としての体裁を整える)。

 

もっとも、戒名はお葬式のときに絶対に必要なものではなく、寺院が決まっていない場合は、生前の俗名のままでもお葬式を行うこともできます。ただし、その場合でも、遅くとも納骨までに、戒名をつけてもらうそうです。

 

戒名は、ある程度の希望は反映されますが、すべて、本人や家族が好きなようにつけられるものではないとされています。特に、戒名の位(等級、格付け)については、原則、住職が決めるものだそうです。

 

戒名(の位)は、寺院に対する日頃からの功績や社会的に大きな功績を残した事柄など、生前の故人の評価が大きく反映されて、住職の判断でが決められます。また、これ以外に、すでに亡くなっている家族や先祖が授けられた戒名の位に合わせる場合もあるとされています。

 

さらに、御布施の金額によって戒名の位が考慮されるのも事実です。現代において多くの方は、生前のうちに仏教や寺院に関わることが少なくなっているため、寺院への貢献度は御布施という金品にとって代わり、その金額の大小が戒名の位に影響していると説明されています。

 

 

  • 戒名の構成

 

戒名は、日本人の「名字+名前」とは異なり、一般的に、「院(院殿)号+道号+戒名+位号」(通常は、「道号+戒名+位号」)という構造から成り立ちます。戒名そのものは、身分に関係なく仏の世界では平等であるということから、どんな人でも2文字で表されます。「戒名」以外につけられる「院号」「道号」「位号」は、仏弟子としての位階や性別を表わしています。

 

現在、一般に「戒名」といわれているのは、本来の「戒名」だけでなく、「院号」「道号」「位号」といった一連の文字構成を総称したものを戒名と呼んでいます(本来の「戒名」の部分を法号と呼ぶことがある)。

 

「〇〇院▲▲□□居士」と戒名を授けられた場合、〇〇院の部分が院号、▲▲の部分が道号、□□の部分が戒名、居士の部分が位号と呼ばれます。

 

例えば、慶応大学の創始者、福沢諭吉の戒名は「竜徳院宏文有明居士」です。この場合、「竜徳院」が院号、「宏文」が道号、「有明」が戒名、「居士」が位号となります。

 

通常の戒名:「道号・戒名 ・位号」の六文字

特別な戒名:「院号(院殿号)・道号・戒名・位号」の九文字

 

 

  • 院号と院殿号

 

「院号(院殿号)」は、通常、大臣や知事・市長など社会的地位のある人、寺院、国・地域社会に貢献をした人、仏教の信仰心の厚い信者などに対して特別につけられる称号です(経済力や家柄も考慮される)。

 

院殿号、院号ともに、戒名としては最上位ですが、両者をさらに区別すると、現在、「院殿号」が戒名での最高ランク、これに次いで「院号」となります。

 

 

院号(いんごう)

 

もともと、立派な屋敷のこと(高貴な人の住まい)を表す「院」という名称は、天皇を退位し、太上天皇(上皇)になった場合や、皇后、皇太后、太皇太后の三后に対して贈られました。

 

院号そのものは、平安時代の嵯峨天皇(786~842)が譲位の後、離宮を造営し移り住んだ御所を「嵯峨院」と名付けたことこから始まりました。以来、天皇が退位隠居された御所を○○院と称し、後にその人そのものを表すようになっていきました。

 

ですから、院号はもともと戒名とは別個のものでした。それが、やがて寺院を建立(寄進)した貴族(公家)、皇族、武将などの敬称にも院号が用いられるようになったことから、院号は戒名に使われることになったのだそうです。

 

現在でも、院号の使用は、生前にお寺を建立するほど寺院に貢献した人や、社会に多大な功績のあった人、政治家など社会的地位の高い人に限られるので、一般庶民の葬儀において、院(殿)号を目にする機会は少ないとされます。

 

なお、川端康成の「文鏡院殿」、谷崎潤一郎の「安楽寿院」のように、多くの作家には院号がつけられています。これは、江戸時代の文人にも院号がつけられていたことを反映しているようです。

 

 

院殿号

 

院殿号(いんでんごう)は、室町幕府を開いた足利尊氏(1305~1358)が、皇族にならって、院号を使用しようと、「等持院殿」を戒名の上につけて使用したことがきっかけとされ、以後、院殿号は武士や大名などでも多く用いられるようになりました。「等持院殿」は、もともと等持寺と呼ばれ、足利尊氏が建立したお寺でしたが、尊氏亡き後、等持院と名を改めたものだそうです。

 

ちなみに、足利尊氏の戒名は「等持院殿仁山妙義大居士」で、「等持院殿」が院殿号、「仁山」が道号、「妙義」が本来の戒名、「大居士」が位号となります。

 

明治時代(明治13年7月)になると、それまで、武士の身分以上の有位の人に限定されていた院殿号の使用が、平民でも国家に勲労があれば許されることになりました。現在、院殿号は、院号と同様、仏教に対して相当な寄進や尽力をした人で、さらに高徳の人に対して与えられる尊称とされています。

 

院殿号は、本来、院号より下位に位置していましたが、「院号」は天皇や三后(皇后、皇太后、太皇太后)に対しての尊称に当たるため、武家が「院号」を使おうとする際、天皇・皇族と全く同じにすることをはばかり、「院殿」が多く付けられたという説があります。しかし、院殿は、文字数が多く(2文字)、豪華な印象を与えることから、現在では、院殿が院号より上位とされるようになったと言われています。

 

 

寺号・軒号・斎号・庵号など

 

また、院号に準ずる尊号として、「寺号」や、その人の住んでいた場所などを表す「軒号」、「斎号」、「庵号」などがあります。

 

寺号(じごう)

寺の正式な名称で、寺の建立者やこれに準ずるものに付けられます。

 

軒号(けんごう)

軒とは建物の意で、屋号や雅号(画家・文筆家などが、本名の他につける風流な別名)などが軒号として用いられます。

 

斎号(さいごう)

斎とは居室、部屋のことで、転じて書斎、居間の意味で、多くは医者、芸術家に与えられます。

 

庵号(あんごう)

庵とは、文字通り「いおり」のことで、大寺に属した建物、草庵、茶室に当たります。

 

この他にも、場所、空間、処を表わす「房」「舎」「堂」「園」などが、院号に次ぐものと考案され用いられました。例えば、江戸時代後期の作家、曲亭(滝沢)馬琴の戒名は「著作堂隠誉蓑笠居士」で、院号に該当する「著作堂」がつけられました。

 

 

  • 道号(どうごう)

 

道号は、本来の「戒名」のすぐ上(「院号」の下)に、戒名と調和するように付けられます。本名に対する「別名」と考えればよいでしょう。道号には、一般的に、人柄や性格、生前の功績、趣味や特技など、故人を讃える意味の文字を選ぶのが習わしとなっています。また地名や家名を入れることもあります。特に、歌人や俳人であれば、雅号(がごう)や俳号といった生前のペンネーム等が用いられることが多くあるようです。なお、未成年者や幼児、水子には、道号は使われません。

 

道号の起源は、中国仏教にあり、元々中国の皇帝が道教修行者(仙人)に下賜した称号だと言われています。中国でこの道号が使われるようになって、日本にも伝わり、本来は、仏道を極めた位の高い僧侶に使われる尊称とだったそうです。

 

皆さんご存じの「一休さん」の本来の名前は、一休宗純(そうじゅん)(1394~1481)ですが、「一休」が道号で、「宗純」は戒名(出家名)です。この時代、本名(出家名)を避けて呼ぶという習慣があったとされ、道号である「一休」の名前が知られるようになったと言われています。道号も本来は、亡くなった方に対してつけられるのが一般的ですが、中に生前から道号をつける例もありました。

 

仏教の宗派によっては、道号ではなく、誉号、釋号、日号を用います。誉号(よごう)は浄土宗、釋号(しゃくごう)は浄土真宗、日号(にちごう)は日蓮宗の僧侶や信者に用いられます(後述)。

 

 

  • 戒名

 

道号の下が本来「戒名」と呼ばれるものです。歴史上、著名な僧侶の名前は、空海、法然、道元などすべて戒名で、前述したように、皆、平等に2文字です。生前の故人の俗名(本名)の一部、故人にちなむ文字、さらには経典から取られた文字などを付けるのが一般的です。

 

赤穂浪士で有名な大石内蔵助、堀部安兵衛の戒名は、それぞれ「浄劔」、「輝劔」でともに「剣」の字がついています。なお、道号をみると、それぞれ「刃空」「刃雲」でともに「刀」の文字が与えられました。2人に限らず、47剣士にはほぼ全員、道号に「刀」、戒名に「剣」の文字が用いられています。

 

大石良雄:忠誠院刃空浄劔居士

堀部安兵衛:刃雲輝劔信士

 

 

  • 位号(いごう)

 

位号は、戒名の一番下につける尊称で、俗名でいえば「~様」にあたります。性別や年齢によって違いがあるほか、社会貢献度や信仰の篤さによっても異なる位号が使われるなど、戒名の位によって使われる位号が異なります。

 

通常、男性は「居士(こじ)、信士(しんし)」、女性は「大姉(たいし)、信女(しんにょ)」が用いられます。

 

信士・信女

信士(しんし)と信女(しんにょ)は、「仏教を信仰している人」を意味していて、もともと、武家や庶民に付けられる称号でした。現在、戒名の位の中では標準的な位号で、ほとんどの方はこの戒名です。

 

なお、信士、信女と同じ枠組みですが、「清」の文字が入り、「清信士」、「清信女」となると、信士、信女より位が高くなります。

 

 

居士・大姉

居士(こじ)とは、もともとサンスクリット語で長者(長老)、または長老として仏教に厚く信仰していたという意味があります。古代インドにおいて、居士とは、僧侶にならず、俗世において、熱心に仏道に励む学徳にすぐれた男性または裕富な資産家をさしました。インドでは、商人の維摩居士(ゆいまこじ)が有名です。居士は後に広く在家の弟子のことを指しました。一方、女性の場合が大姉(だいし)で、男性の居士と同格の尊称です。

 

居士、大姉の方が、信士・信女よりも、位(ランク)は高く、かつては、貴族や武家など上流階級の家柄の方のみが対象とされました。現在では、信仰心があり宗教活動に貢献する人や、寺院や社会の貢献度が高かった成人男女などに対して授けられる位号です。

 

院号を持たない通常の戒名の場合には、位号は「信士」となる一方、院号を持つ戒名の場合には位号として「居士」を付けます。また、夫婦の場合、位号の格は揃えるのが一般的で、例えばご主人が居士であれば妻は大姉、ご主人が信士であれば妻は信女となります。

 

 

大居士・清大姉

なお、「居士」と「大姉」に、「大」の字と「清」の字がそれぞれ冠せられると、「大居士(だいこじ)」、「清大姉(せいたいし)」となり、在俗者のものとしては最も格の高い位号であることを意味します。

 

「院殿号」を持つ戒名の場合には、位号は「大居士(清大姉)」となります。例えば、作家の川端康成の戒名、「文鏡院殿孤山康成大居士」をみると、院殿号の「文鏡院殿」に対して、位号が「大居士」となっています(なお、孤山が「道号」、康成が「戒名」)。

 

さらに、「居士、大姉」と同じ枠組みですが、「院」、「院殿」の文字が冠せられると、「院居士(いんこじ)・院大姉(いんたいし)」、「院殿居士(いんでんこじ)・院殿大姉(いんでんたいし)」となり、「居士、大姉」より位が高くなります。

 

 

院居士院大姉

もともとは、皇族かその関係者に対してのみ授けられた位号で、現在は、本堂建立に多大な貢献を行うに匹敵するような功績があった人に授けられます(この場合の「院」は、出家した皇族が寺院に付属して建てた住居を意味している)。

 

院殿居士院殿大姉

院居士・院大姉よりも更に寺院に対する大きな貢献があった方、または宗派の枠を超え仏教会全体、さらには社会全体に功績があった方にも授けられます。滅多に見ることのない位号です。

 

加えて、「居士・大姉」より下位で、「信士(清信士)・信女(清信女)」より上位とされる位号に、禅定門と禅定尼もあります。

 

禅定門・禅定尼

禅定とは悟りの境地を意味し、仏門に入って剃髪した男女をそれぞれ禅定門(ぜんじょうもん)、禅定尼(ぜんじょうに)といい、そのまま位号として用いられています。また、両者に「大」の字が冠せられると、それぞれ大禅定門大禅定尼となり、院殿号が併用されることが多くなります。

 

平等を解く仏教の教義上には、戒名の位(等級、格付け、順位、階位)はありませんが、前述したように、実際は、故人の生前の信仰の深さや、寺院や地域社会への貢献度によって、戒名にも等級が決められます。また、死亡後、戒名を授かるときに、納める御布施の金額も戒名の等級によって異なると言われています。

 

参考までに各位号を授けていただく場合の御布施の相場は以下の通りです。

 

信士・信女:約20万円~30万円

居士・大姉:約40万円~60万円

院居士・院大姉:約80万円~100万円

院殿居士・院殿大姉:約100万円~300万円

 

もっとも、中には位号とは無関係に5万以下で請け負われている僧侶に方もいらっしゃいます。

 

 

  • 子どもの戒名

 

未成年の子どもに戒名をつける際、以下のように年齢によって呼び名が変わります。

 

嬰児(嬰子)(えいじ、えいし)/嬰女(えいにょ)
1歳以下の赤ちゃんのための位号です。

 

孩児(がいじ、がいし)・孩女(がいにょ)
1歳~2歳の乳幼児のための位号です。

 

幼子(ようじ)、幼女(ようにょ)

3歳から小学校に入る前の7歳までの幼児に用いられます。

 

童子(どうじ)・童女(どうにょ)
15歳未満の子供に付けられますが、おおよそ満3歳~14歳までとされることもあります。さらに男の子なら「大童子」「禅童子」、女の子の場合、「大童女」「禅童女」などの尊号が用いられる場合もあります。

 

水子(すいじ、すいし)
流産・死産した胎児のための位号。男女の性別は問いません。「みずこ」とよく呼ばれますが、位号としては「すいし」と呼ぶことが多いとされています。

 

 

  • 各宗派の戒名

 

例えば、戒名という呼び方も、浄土真宗や日蓮宗ではそれぞれ「法名」「法号」と呼ぶように、戒名は、それそれの宗派の教えや考え方の違いによって、付け方に特徴があります。それぞれの宗派の戒名の特徴を見ていきましょう。

 

 

<天台宗>

 

戒名は、「院号+道号+戒名+位号」(または「道号+戒名+位号」)で構成され、天台宗では、二字法名の上に二字の道号を付けて四字名とするのが通例となっているそうです。

 

天璋院(てんしょういん)/篤姫の戒名、「天璋院殿従三位敬順貞静大姉」をみると、「天璋院殿」が院殿号、「敬順」が道号、「貞静」が戒名、「大姉」が位号です。

 

(◆)〇〇院▲▲□□居士((◆)▲▲□□信士)

(◆梵字、○○院号、▲▲道号、□□戒名)

また、位牌には、戒名の初めに、梵字(ぼんじ)(インドの文字)1字、具体的には、大日如来を意味する梵字の「ア」字、阿弥陀如来を意味する「キリーク」、地蔵菩薩の「カ」字が入ることがあります。

 

 

<真言宗>

 

戒名は、「院号+道号+戒名+位号」で構成されます。真言宗の位牌には、戒名の初めにア字の「梵字」を記して、等しく大日如来の仏弟子となったことを表します。「ア」は梵字の中でも特別で、すべては「ア」、即ち大日如来から始まったことを意味するそうです。

 

◆〇〇院▲▲□□居士(◆▲▲□□信士)

(◆:梵字、○○:院号、▲▲:道号、□□:戒名)

 

真言宗の戒名には、「真」が使われる場合が多くみられ、また、山川草木や日月星花など、あらゆる事物の名称が使われるとされています。島崎藤村の戒名「文樹院静屋藤村居士」を見ると、院号の「文樹院」、道号の「静屋」にもその傾向が伺えます。

 

 

<浄土宗>

 

浄土宗の場合、道号ではなく、誉号(よごう)と呼ばれる尊号が入ることが多くあり、その場合、戒名は、「院号+誉号(道号)+戒名+位号」で構成されます。誉号とは、「五重相伝」という特別な法要を受けた人に授与されます(もっとも、現在では受けていない人にも与えられている)。

 

杉田玄白の戒名、「九幸院仁誉義真居士」にも示されているように、「仁誉」が誉号で、誉号の部分は、○誉と、「一文字(○)+「誉」」の形となります。

 

また、斎藤茂吉の戒名「赤光院仁誉遊阿暁寂清居士」のように、道号の上にさらに誉号が付く形もあります(「遊阿」が道号、「暁寂」が戒名、「清居士」が位号)。

 

また、位牌の一番上に梵字の「キリーク」(=阿弥陀如来を表す)が1文字付くこともあります。

 

◆〇〇院▽誉(▲▲)□□居士(または、◆▽誉(▲▲)□□信士)

(◆:梵字、▽:誉号、▲:道号)

 

 

<浄土真宗>

 

浄土真宗では、戒律がないため、「戒名」とはいわず「法名(ほうみょう)」を用います。浄土真宗を開いた親鸞聖人は、「何一つとして『戒』を守れない凡夫(私たちのこと)は、弥陀の誓願によってのみ救われる」と教えました。浄土真宗は、阿弥陀如来を絶対的なものとして尊重し、真の救いは、仏によってのみ得られるとします。戒名は、そもそも「戒」を受けた者に与えられるものですが、浄土真宗の信者は「戒」を受けないので、死後の名を「戒名」と呼ばす、(阿弥陀)仏から賜る名前である「法名」と言うのです。

 

戒名をもらって仏弟子になることを「授戒(じゅかい)」といいますが、浄土真宗では「おかみそり」と言います。

 

また、浄土真宗では、他宗派の「道号」にあたる部分がなく、「釈号(しゃくごう)」をつけます。男性の法名には「釋(しゃく)(釋○○)」)、女性は「釋尼(しゃくに)(釋○○尼、または、釋尼○○)」という字が入ります(ただし、昨今は男女平等の観点から女性も「釋○○」とするケースもある)。

 

「釈」をつけるのは、お釈迦様の弟子になるという意味で、かつて東晋の高僧、道安が「仏弟子となれば、みな釈迦の姓を唱えるべきである」として自ら「釈道安」と号したのが始まりだとされています。

 

加えて、浄土真宗では、「阿弥陀如来のもとでは全ての人は平等」という考え方があるため、階位を示す「信士」などの位号は用いません(もっとも、地域的な慣習や寺院によっては、位号を用いる場合もある)。

 

浄土真宗における法名(戒名)の構成は、「院号+釋号+法号」(または「釋号+法号」)となります。

 

男性:「△△院釋○○、または「釋○○」、

女性:「△△院釋尼○○」または「釋尼○○」

(△△:院号、○○:法名)

 

例えば、作家の司馬遼太郎の法名(戒名)は「遼望院釋浄定」で、「遼望」が院号で、「釋浄定」が法名に相当します。また、作家の樋口一葉の場合、法名は「智相院釋妙葉信女」です(「釋妙葉」が法名で、信女と位号が用いられている)。

 

さらに、浄土真宗では、位牌に魂が宿るとする考え方がないため、位牌を祀らず、過去帳を仏壇に飾ります。過去帳とは、代々の、亡くなった方の戒名や俗名、死亡年月日、享年などを記しておく仏具です。(もっとも、地域や寺院によって対応は異なり、手を合わせる対象として、位牌を準備するケースもある)。

 

 

<臨済宗・曹洞宗>

 

臨済宗、曹洞宗の戒名は、「院号+道号+戒名+位号」で構成されます。

「〇〇院▲▲□□居士(大姉)」、または「▲▲□□信士(信女)」

 

臨済宗と曹洞宗の著名人には、それぞれ、西郷隆盛、井伊直助があげられ、西郷の戒名は、「南洲寺殿威徳隆盛大居士」、井伊の戒名は「宗観院殿柳暁覚翁大居士」です。

 

臨済宗と曹洞宗の戒名の構成は基本的に同じですが、曹洞宗の場合、位牌の戒名の初めに、釈迦如来を意味する梵字「パク」が入る場合があります。

 

 

<日蓮宗>

 

日蓮宗では、「日蓮上人の教え」を尊ぶという意味から、また「法華信者は、(死後に)霊山浄土に生まれる」とされるため、死後のみ名は、「戒名」ではなく「法号」が用いられます。

 

また、「道号」の部分について、男性は「」、女性は「」という1文字が入ります。加えて、他宗派で本来の「戒名」にあたる部分は、日蓮宗では「日号」と言い、日蓮の「日」の1文字が入る形式が一般的です。「日号」はお寺や宗派に貢献した人、最近は社会的に功績のあった人にも与えられています(日号がつかなければ「法号」という)。

 

日蓮宗の法号(戒名)は「院号+道号+日号(法号)+位号」で構成されます。

男性:○○院法○日□居士

女性:○○院妙○日□大姉

 

例えば、プロレスラーのジャイアント馬場の法名は、「顕峰院日剛大居士」で、道号に「法正」、日号に「日剛」がつけられています。また、女優の夏目雅子さんの法名「芳蓮院日雅大姉」をみると、道号が「妙優」、日号が「日雅」となっています。

 

 

  • 白木の位牌から本位牌へ

 

仏式の葬儀では、戒名が書かれた白木の位牌が使用されます(戒名を書くのは寺院の住職)。葬儀後、白木の位牌は四十九日法要を目途に、本位牌(戒名が刻印された黒塗りの位牌)に代えられます。これは、死者が仏、あるいは先祖の仲間入りを果たしたことを意味します。仏教では、四十九日で死者は新しい世界に生まれ変わると考えられているからです(日本の民俗では四十九日で死者は祖霊になるとされる)。

 

白木のお位牌の表書きには、通常、一番下に「霊位」と書かれています。これは、亡くなってから49日までの間、故人は霊として「この世」に存在し、「あの世」と故人を結ぶ接点の役割をしているお位牌を依り代としているからだと解されています。

 

49日の法要を境に、故人は霊から仏弟子となり、仏の世界に行くことができるので、本位牌には「霊位」を除いて作ります(または、「霊位」から「霊」の字を消して「位」とする場合もある)。

 

ただし、ご先祖様のお位牌を1つにまとめる場合、「○○家先祖代々之霊位」と表記します。また、あまり好ましいことではありませんが、無宗教の人など俗名や個人名で位牌をつくる場合も「~之霊位」とします。霊位と入れる事で戒名を授かる事と同じ意味をなすと言われています。

 

 

<参照>

戒名の話 – Welcome to web.sanin.jp!

戒名とその値段 – 東洋石材

戒名とは/生前戒名普及会

戒名の意味について詳しく解説!戒名にはランクがある

位牌についてのあれこれ

宗派別に戒名を位の高い順に並べてみると?

戒名の意味や歴史とは 付け方やお布施の相場も紹介

戒名の意味やつけ方 値段による違いはある?

戒名について詳しく解説 | 安心葬儀

知っておきたい!戒名についての基礎知識

戒名の構成と種類(戒名.jp)

Wikipediaなど