2020年07月23日

憲法:13条(幸福追求権)はいかにしてできたか?

前回、日本国憲法第13条を解説しました。押しつけ憲法とも批判される日本国憲法にあって、この13条がどういう経緯で完成したかをみてみたいと思います。本文でも軽く説明はしますが、初めて読まれる方は、以下の投稿を読まれてから、本文に入っていただくとよりわかりやすいと思います。

 

日本国憲法:まじめな解説 幸福追求権(13条)

日本国憲法制定の経緯

 

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第13条 (個人の尊重・幸福追求権)

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

本条は、個人主義の精神を謳い、国民の生命・自由・幸福追求という基本的人権の尊重を規定しています。

 

個人主義は、欧米社会の基本理念です。日本国憲法が、その個人主義の思想に立脚し、「生命、自由、幸福追求の権利」が国民に与えられたということは、13条はアメリカからの影響が大きいことが予想されます。実際、「生命、自由及び幸福追求の権利」は、アメリカ独立宣言から採られたと断言できます。

 

アメリカ独立宣言(抜粋)

われわれは、自明の真理として、すべての人は平等に造られ、造物主によって、一定の奪いがたい天賦の権利を付与され、そのなかに生命、自由および幸福の追求が含まれることを信ずる

 

戦前の日本は、「個人」よりも「家」を重んじた時代でした。従って、本条のような個人の尊厳や幸福追求権のような包括的な権利を規定した13条のような条文は帝国憲法にはありませんでした。

 

GHQ(連合国軍総司令部)は、マッカーサー3原則の三番目の趣旨に従って、日本の封建的な家制度の解体と、欧米流の個人主義を日本に定着させようとしたと想定されます。

 

マッカーサー三原則

〔1〕天皇は国家元首の地位にある。(象徴天皇制)

〔2〕国家の主権としての戦争は廃止される。

〔3〕日本の封建制度は廃止される。

 

GHQは、当初、本条に関して、日本の封建制を廃止させるべく、以下のような草案を作りました。

 

GHQ(総司令部)案

日本国の封建制度は終止すべし。一切の日本人はその人類たることにより個人として尊敬せらるべし。一般の福祉の限度内において生命、自由および幸福探求に対するその権利は、一切の法律および一切の政治的行為の至上考慮たるべし。

 

 

これに対して、総司令部案に基づき日本側が起草した政府案(「3月2日案」とも呼ばれる)では、封建制度の廃止に関する部分は不必要であるとして削除しました。

 

日本政府案

すべての国民は個人として尊重せらるべく、その生命、自由および幸福の追求に対する権利は公共の福祉に抵触せざる限り、立法その他諸般の国政の上において最大の考慮を払はるべし。

 

その後、再度、GHQとの協議の結果、文言調整されて、現行の13条となりました。

 

 

改憲を目指す人々からすれば、13条は、まさにアメリカから導入された考え方の典型です。当時、個人主義の思想は日本を含めたアジアの国々にはあまり馴染まない考え方でした。日本の伝統的な価値観からすれば、個人と同様に、家族や社会も重んじられます。保守層には、個人主義を憲法の根本原理とする考えには違和感を覚えるでしょう。

 

これに対して、護憲派は、日本国憲法がアメリカから与えられ、アメリカの思想が色濃く反映されていたとしても、個人の尊重を擁護、推進することは、人類として目指す共通の理念だと反論しています。

 

 

<参考投稿>

憲法;21条(表現の自由)はいかにしてできたか?