2020年05月18日

皇室:コロナ危機と陛下の「自粛」

緊急事態宣言下、皇室行事も様々な制約を受けてしまっています。また、メディアが、天皇皇后両陛下や皇室方々について報じなくなった感があり、両陛下や皇族方のご動静も気になります。さらに、この先に対する不安が募る中、陛下のメッセージをお聞きしたいと思っている人たちも多いと思われます。

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 2020月5月は、天皇陛下のご即位から1年を迎えた節目の月ですが、新型コロナウイルスの感染拡大により、皇室では、2月23日の天皇誕生日の一般参賀中止以降、行事の取りやめや延期が続いています。コロナウイルスの影響で取り止めなどになった主な皇室の行事としては以下のご予定がありました。

 

  • 英国訪問

天皇皇かn后両陛下の即位後、初めての外国訪問となる予定だった英国訪問が延期となりました。

 

  • 秋篠宮さまの「立皇嗣の礼

4月19日に予定されていた、秋篠宮さまが皇位継承順位1位の「皇嗣(こうし)」になられたことを内外に広く伝える「立皇嗣の礼(りっこうしのれい)」は延期となりました。これに関連して、天皇陛下の使者を伊勢神宮などに派遣する儀式や、天皇皇后両陛下や秋篠宮ご夫妻が皇居の宮中三殿に参拝される儀式なども延期されることになりました。「立皇嗣の礼」は、2019年5月の天皇代替(だいが)わりに伴って国が行ってきた一連の儀式の締めくくりの行事となる予定でした。

 

  • 春の園遊会

園遊会とは、天皇皇后両陛下が主催される、毎年春と秋に各界の功績者ら東京・元赤坂の赤坂御苑に招いて開催される社交の場です。予定通り行われていれば、2018年11月以来で、天皇陛下の即位後初となるはずでしたが、中止となりました。

 

  • 全国植樹祭

両陛下ご臨席の下、5月に島根県で開催予定でした。全国植樹祭を含めて、国民と直接触れ合う機会として皇室が重視してきた地方訪問も中止または延期されています。

 

これら以外にも、日々の外国賓客との接見予定も取り止めが相次いでいます。

 

それでも、天皇陛下は、新型コロナウイルスの感染の拡大で活動が大幅に縮小する中、宮中祭祀や、政府から送られてきた書類に署名や押印を行う国事行為を続けながら、感染拡大の状況や影響について、さまざまな専門家から説明を受けられています。なお、宮中祭祀については、4月3日の「神武天皇祭」と、5月1日の月初めの「旬祭(しゅんさい)」は滞りなく行われました。

 

そうした中、「現代ビジネス」が「なぜコロナ禍に天皇からの「語り掛け」がないのか、皇室記者の考え」というの記事を5月13日に配信しました。記事では、感染拡大を「人類の危機」ととらえる見方もでているなか、陛下がこれまで、国民に向けてビデオなどで直接のメッセージを発していないことから、「それなのになぜ…」という気持ちを抱いている国民は決して少なくはないのではないかと問いかけています。

 

こうした疑問に対して、専門家の間では、「政府がさまざまな対策を講じる中で、天皇の発言は国政に影響を与えかねない」といった趣旨の発言が多く聞かれます。現在の日本国憲法において、天皇が国政に影響が出るような政治的な発言をすることは禁じられています。そこで、陛下は「挨拶」という形をとりながら、間接的に「尽力者へのねぎらい」などの言葉を慎重に選ばれながら国民に対してメッセージを発せられています。

 

例えば、2月の誕生日会見で、「感染の拡大ができるだけ早期に収まることを願っております」と言及されました。また3月、長女の敬宮(としのみや)愛子さまの高等科ご卒業に際して寄せた文書では、「多くの人々が直面している様々な困難や苦労に深く思いを致しています」と綴られていたそうです。さらに、4月には、両陛下は専門家会議の尾身茂氏から進講を受けられた際に、宮内庁は「天皇陛下からの冒頭ご発言要旨」と題して、陛下の発言を紹介する文書と、進講を受けられる写真を公表していました。

 

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尾身茂新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長 御進講

令和2年4月10日

今日はお忙しいところ時間をとっていただきありがとうございます。尾身さんが,新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の副座長として,新型コロナウイルス対策に大変尽力されていることに深く敬意と感謝の意を表します。また,これまで,日夜,現場で医療などに携わってこられている多くの関係者のご努力を深く多としています。

 

現在,世界各地で新型コロナウイルスが猛威をふるっています。我が国でも,人々の努力と協力により,爆発的な感染がなんとか抑えられてきましたが,このところ東京などを中心に感染拡大の速度が速まってきていることなど事態の深刻化が懸念されております。医療提供体制のひっ迫が現れ始めていると聞き,先日は,政府による緊急事態宣言も出されました。

 

この度の感染症の拡大は,人類にとって大きな試練であり,我が国でも数多くの命が危険にさらされたり,多くの人々が様々な困難に直面したりしていることを深く案じています。今後,私たち皆がなお一層心を一つにして力を合わせながら,この感染症を抑え込み,現在の難しい状況を乗り越えていくことを心から願っています。(宮内庁HPより)

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これは、まさに国民向けのメッセージに等しいと言えますが、当初、宮内庁は、公表する趣旨について説明を何もせず、ただ紙が張り出されただけだったそうです。その後、4月28日に宮内庁ホームページにも全文が掲載されました。この経緯について、宮内庁側は「国民にも伝えることが良いだろうと考えた」と、遠回りな趣旨を説明しました。

 

今回のコロナ危機のような緊急事態が発生した際、天皇陛下が、励ましメッセージすら国民にストーレートに呼びかけられない憲法の制約があるのです。天皇と日本国憲法について考えさせられます。

 

<参考>

「両陛下、コロナの試練に寄り添われ」(2020.5.1、産経新聞)

「なぜコロナ禍に天皇からの「語り掛け」がないのか」
(2020年5月13日、現代ビジネス)

宮内庁ホームページなど