2020年05月02日

神話:「天の岩戸」のものがたり

本HP「レムリア」では、戦後教育で排除された日本の神話を紹介しています。今回は、天照大御神が「天の岩戸(あまのいわと)」にお隠れになるお話しです。なお、その前後のストーリーについては、「日本の神話・伝承」を参照下さい。

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  • 天照大神と須左之男命の誓約

 

イザナギノミコト(イザナギ)の指示で、海を治めることになった建速須左之男命(タケハヤスサノオ)(以下スサノオ)でしたが、亡くなった母のイザナミノミコト(イザナミ)のいる黄泉の国(よみのくに)(=根の国)に行きたいと泣いてばかりです。そこで、イザナギは、言うことをきかない須左之男命(スサノオノミコト)を地上から追放してしまいました。

 

追われたスサノオは、天上界にいる姉の天照大神(あまてらすおおみかみ)に別れを告げてから、母(イザナミ)に会いに行くと行って、高天原(たかまのはら)(=天照大神が支配する天の国)におもむきます。ところが、向かっている途中、スサノオの勢いが凄まじく、草木はざわめき、地を揺らしてやって来たため、天照大神はスサノオが高天原を奪いに来たと勘違いして武装をして天安河(あまのやすかわ)という河原で待ち受けました。

 

天照大神は、やってきたスサノオに対峙して「何をしに来たのだ」と問いただすと、スサノオは、「単に別れを言いに来ただけだ」と答えますが、信じてもらえません。天照大神が言いました。「ならば、あなたの心が清く正しいことはどうやって証明するのですか?」するとスサノオが答えます。「誓約(うけい)(≒占い)をして子供を生みましょう」

スサノオは、アマテラスの国を奪おうとは考えていないので、自分の心の内を誓約(うけい)によって明らかにしようとしたのです。こうして、二柱は、天安河を間に挟んで誓約をします。天照大神は、スサノオが持っていた「十拳の剣(とつかのつるぎ)」を受け取って、三つに折り、清らかな水が湧く天真名井(あまのまない)で清めてから噛み砕き、吹き捨てました。すると、その息吹から、美しい三柱の女神が生まれました。これが宗像三女神(むなかたさんじょしん)です。

 

宗像三女神
多紀理毘売命(タキリヒメノミコト)

多岐都比売命(タキツヒメノミコト)

市寸嶋比売命(イチキシマヒメノミコト)

 

続いて、スサノオは、天照大神の身に着けていた八尺勾玉(やさかのまがたま)を、同じように清めると、吹き捨てる息が霧になった時に五柱の男神が現れました。

 

天忍穂耳命(アメノオシホミミノミコト)

天菩卑能命(アメノホヒノミコト)

天津日子根命(アマツヒコネノミコト)

活津日子根命(イクツヒコネノミコト)

熊野久須毘命(クマノクスビノミコト)

 

この誓約(占い)で、心優しい3女神が、スサノオの持っていた剣から生まれたということは、スサノオの心が清らかだとして、スサノオノミコトが誓約(うけい)に勝ったことになりました。こうして、スサノオは高天原にしばらく滞在することが許されました。

 

 

  • スサノオの粗暴

 

ところが、須左之男命(スサノオノミコト)は、元々荒っぽい神である為、高天原に滞在中、たんぼの畦道は壊したり、神殿に糞はするなど乱暴な行ないを続けます。最初は天照大神も弟のことをかばっていましたが、スサノオの乱暴な行為は止むことはありませんでした。そうした中、天照大神に仕える機織の娘が、作業中に機織の道具板に当たり死してしまうという事故が起きてしまいました。これも、スサノオが馬の死体を機織場に投げ込んだことに娘が驚いた当たってしまったのでした。

 

※スサノオが数々の粗暴な行為をしたという話しは誤解釈という説があります。

 

これには、さすがの天照大神も、恐ろしくなって(怒り)、天の岩屋戸(=天の岩戸)(とびらが大きな岩で作られた洞窟)の中に引き籠り、岩戸を閉じて隠れてしまいました。太陽神・天照大神に隠れられては大変です。高天原の天の国も葦原の中国(あしはらのなかつくに)(=地上の世界)も真っ暗になり、世の中は闇に包まれてしまいました。同時に、多くの邪神の声が、夏の蝿のように満ちて響き、あらゆる災いが溢れかえりました。

 

そこで、困り果てた八百万(やおよろず)の神々は、「(高天原の)天の安河」の川原に集まり相談します。会議では、天照大御神がどうしたら岩戸から出てこられるかを真剣に討議し、造化三神の一柱である高御産巣日神(タカミムスビノカミ)の子の思金神(オモイカネノカミ)が対応策を考えることになりました。思金神の策は、祭り(=宴)を開くというものでした。

 

まず、鋳物の神様、金属加工の神様として知られる女性神、伊斯許理度売命(イシコリドメノミコト)に、八咫鏡(やたのかがみ)を作らせました。次に、宝石の神、玉祖命(タマノオヤノミコト)に八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)を連ねた玉緒を作らせました。それから、天の香具山のサカキの木を一本抜いてきて、上に玉緒(八尺瓊勾玉)を、中段に八咫鏡を、下段には白と青の布を垂らしました。

 

その飾ったサカキを布刀玉命(フトダマノミコト)が持ち、天児屋命(アメノコヤネノミコト)が祝詞を唱える役を担いました。そして、天手力男(アメノタヂカラオノミコト)が岩戸のそばに隠れて立って準備が完了しました。

 

宴の主役は、女神の天宇受売命天鈿女命(アメノウズメノミコト)でした。ヒカゲカズラという植物をたすきがけにし、マサキカズラを髪に飾ったアメノウズメは、手には笹の葉を束ねて持ち、岩戸の前に桶を伏せて踏み鳴らし、踊り出しました。その踊り方があまりにも滑稽だったので、八百万の神々はどっと吹き出し、その笑い声が高天原全体に響き渡りました。

 

その声を聞いた天照大神は「いったい何事ですか」と、天の石屋戸を少しだけ開いて、「自分が岩戸に篭って闇になっているのに、なぜ、(アメノウズメは)楽しそうに舞い、八百万の神々は笑っているのか」と尋ねました。すると、天宇受売が「あなた様より高貴な神様がお出ましになったので、みんな嬉しくてはしゃいでおります」と答え、その間に、天児屋命(アメノコヤネノミコト)と布刀玉命(フトダマノミコト)が鏡を差し出しました。天照大神は、岩戸から覗きこむと、そこに映った輝く自分の姿をその貴い神だと思い、その姿をもう少しよく見ようと岩戸をさらに開けました。その時、側に隠れていた天手力男神(アメノタヂカラオノミコト)がグイと天照大神の手を引いて岩戸から引出しました。そしてすぐに、布刀玉命(フトダマノミコト)が尻久米縄(しくりめなわ=しめ縄)を天照大神の後方に掛けて、中に戻れないようにしました。

 

こうして、天照大神が岩戸から出てきたので、高天原も葦原中つ国にも、光が舞い戻り、世界は明るくなりました。