2020年01月24日

英王室:ロイヤルハイネスと公爵の称号

イギリスのヘンリー王子とメーガン妃は、1月上旬、王室の中心的な「高位(主要)メンバー」から外れ、経済的に独立する意向を示しました。ただし、「女王を支え、女王に対する義務を守り続ける」とも強調、王室の一員として「半公半民」の立場で活動したい考えを表明しました。

 

(参考記事)

英ハリー王子、王族辞める?

ヘンリー英王子、王室離脱へ

 

これを受けて英国王室(バッキンガム宮殿)は、今月18日、ヘンリー王子夫妻が今春、王室の「高位(主要)メンバー」から外れ、公務には参加せず、王族への敬称である「ロイヤルハイネス(殿下および妃殿下)」の称号(肩書)を失うと発表しました。これは、夫妻が王室から実質的に離脱するという合意であり、公務に参加しないということは、公式に女王の代理もできないということも意味します。しかし、結婚時に与えられたサセックス公爵(ヘンリー王子)およびサセックス公爵夫人(メーガン妃)の称号は、王室離脱後も継続して使用するとされています。

 

一方、今回の決定では、夫妻の当初からの求めに応じて、今後は経済的に自立することが認められたことになります。このことは、これまで受けていた王室助成金などには頼らないことを意味し、例えば、夫妻がイギリスでの生活の拠点にしているフロッグモア・コテージの改修にかかった費用、約3億4,000万円も返済するそうです。

 

この決定に対して、ヘンリー王子は、「私たちの望みは、公費を受けることなく、女王と英連邦への奉仕を続けることだった。残念ながらそれは不可能だった」と発言しており、今回の決定が本意ではなかったことを示唆しました。

 

そこで、今回の投稿では、この王室の決定について考えてみたいと思います。まず、「ロイヤルハイネス(殿下および妃殿下)の称号を失う」と、「サセックス公爵及びサセックス公爵夫人の称号は、王室離脱後も継続して使用する」というのはどういうことなのでしょうか。

(参考投稿:ハリー王子と「王室高位メンバー」)

 

  • ハイネスと公爵

ハイネス(Highness)は、マジェスティ―(Majesty)、エクセレンシー(Excellency)と同様に、地位の高い人への敬称で、「殿下または妃殿下」と訳されます。イギリスでは、ロイヤルハイネス(Royal Highnessといい、王族(王室メンバー)で、国王(現在はエリザベス女王)の子孫や、子孫に嫁ぐ女性に対して使われる尊称(称号)です。英語では、その対象者が男子ならば、「His Royal Highness」(殿下)、それが女子ならば「Her Royal Highness」(妃殿下)となります。つまり、ロイヤルハイネスの称号(尊称)を保持していることは、「イギリス王室」の高位(主要)メンバーであることを指しています。

 

ヘンリー王子もメーガン妃も、このロイヤルハイネス(Royal Highness)の尊称(称号)をエリザベス女王から受けていますが、今回、お二人は、自らが求めた経済的独立の代償として、この「His Royal Highness」(殿下)と「Her Royal Highness」(妃殿下)の尊称(称号)を失うことになるのです。

 

一方、ヘンリー王子とメーガン妃は、結婚を機に、エリザべス女王より、「公爵」の称号を受けています。公爵とは、貴族としての称号である爵位の一つです。爵位には、公爵(こうしゃく)、侯爵(こうしゃく)、伯爵(はくしゃく)、子爵(ししゃく)、男爵(だんしゃく)とありますが、公爵はその中で最高位の爵位です。報道では、ヘンリー王子夫妻は、この公爵の称号は失わないとされています。

 

この内容の理解のために、ヘンリー王子夫妻の結婚時の以下の報道記事が参考になるかと思いますので一読してみて下さい。

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ハリー王子&メーガン妃に与えられた新たな称号を解説

(2018/05/23、Bazaar、一部抜粋)

バッキンガム宮殿は先日、エリザベス女王が孫のハリー王子に「サセックス公爵」の称号を与えたと発表。それにともない、花嫁メーガン・マークルは「サセックス公爵夫人」となり、妃殿下(Her Royal Highness)の称号も授与されることになる。発表によると、「エリザベス女王は本日、ハリー王子に公爵の位を授与しました。王子の称号は、『サセックス公爵』となります」と報じている。そして「ハリー王子は『殿下(His Royal Highness)サセックス公爵』となり、メーガン・マークルは結婚により、『妃殿下(Her Royal Highness)サセックス公爵夫人』となります」と続けた。

 

王室メンバーの結婚に際して、君主(女王)は新しい称号を与える慣習がある。昨年、ハリー王子とメーガン・マークルの婚約が発表されると、王位継承順が第6位であるハリー王子には、英国貴族の称号としては最高位である「公爵」の称号が与えられると予想されていた。なかでも、「アルバニー」や「クラレンス」と並んで空いていた「サセックス」が最有力候補だったのだ。

 

ハリー王子は出生時に、父の「プリンス・オブ・ウェールズ」という称号を反映させて「ウェールズ」の名を与えられた(「プリンス・ヘンリー・オブ・ウェールズ」)。規則としては今後「サセックス」を用いることになり、メーガン妃も「メーガン・サセックス」となる。メーガン妃も夫の称号と名前を名乗ることになる。つまり、女王が彼女に与えた称号と並び、「妃殿下(Her Royal Highness)プリンセス・ヘンリー・オブ・ウェールズ」となる。自分の名前とともに「王子(プリンス)」や「王女(プリンセス)」の称号を使うことができるのは、ロイヤルファミリーに生まれた人だけなのだ。とはいえ、メーガン妃は苗字を使う必要はない。実際、「殿下(His Royal Highness)」、「王子(Prince)」や「妃殿下(Her Royal Highness)」、「王女(Princess)」の称号を持っている王室メンバーは誰も、姓を使う必要がまったくないのだ。

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なお、マジェスティー(Majesty)は、国王(女王)に対する尊称で、エリザベス女王は「Her Majesty」(女王陛下)と呼ばれます。

 

では次に、「王室助成金などに頼らない経済的に自立した生活」について改めてみてみましょう。先日の投稿(ハリー王子と「王室高位メンバー」)で、「ヘンリー王子の資産は、約43億7000万円と試算されている」と書きました。今回は、資産ではなく、王室助成金など日々の公務や生活のための資金の流れや、今後についてみてみます。

 

  • サセックス公爵夫妻の収入

 

コーンウォール公領からの収入

ヘンリー王子夫妻は、チャールズ皇太子が保有する「コーンウォール公領」の収入の一部を供与されています。コーンウォール収入とは、コーンウォール公爵(チャールズ皇太子の称号)が持つ、イギリス23郡にまたがる約530平方キロメートルに及ぶ広大な土地からの収入で、主に、領地から生じる地代などです。

 

コーンウォール公領は、1337年に、当時の国王エドワード3世が王位継承者の財政をまかなうために創設され、チャールズ皇太子の収入源となっているそうです。年収、約2000万ポンド(約30億円)とも言われています。チャールズ皇太子は、このコーンウォール公爵領の収入の一部を、ウイリアム王子(ケンブリッジ公爵)一家や、ヘンリー王子(サセックス公爵)一家を含む皇太子の家族に、公務やチャリティ活動、プライベートな出費に充てるための資金として配分しています。ヘンリー王子は、年推定196万ポンド(約2億8000万円)を受け取っているそうです。

 

王室助成金

コーンウォール公領からの収入以外にも、ヘンリー王子は、兄ウィリアム王子とともに、エリザベス女王からの女王の王室助成金の資金援助を受けています。二人の王子は、エリザベス女王から王室活動費として年500万ポンドを受け取り、このうちヘンリー王子とメーガン妃には約200万ポンド(約2億8600万円)が割り当てられていると言われています。この女王が王室メンバーに分配する「ソブリングラント」と呼ばれる王室活動費は、主に、公務旅行や財産管理の補助に使われているそうです。

 

こうした王室のメンバーとして受けとっているお金が今後、入ってこなくなったとすると、ヘンリー王子夫妻は、どうやって「稼ぐ」のでしょうか?

 

 

  • 経済的に独立した場合

前回の投稿でも紹介した内容と一部重複しますが、年間約100億円ともとも試算される次のような膨大な収入が期待されています。

 

・テレビ出演や講演活動

・グローバル企業のアンバサダー

・インスタグラムからの広告収入

・商標の「サセックスロイヤル」からの収入

 

ヘンリー王子は2019年12月に自らの爵位にちなんだ「サセックスロイヤル」の商標登録を行いました。「サセックスロイヤル」の商標がついた服飾品や書籍類など100を超える登録項目から収入が期待されています。

 

 

  • メーガン妃と王室

今回の「騒動」は、「王族メンバーとしてメディアからの厳しい視線に耐えられなくなったメーガン妃を守るために、ヘンリー王子が決断した模様」などと報じられました。そうであるなら、今回の英王室(バッキンガム宮殿)の対応は、王族メンバーとして厳しい監視下にあった生活から離れることができるので、この点に関して言えば、夫妻にとってはよかったのではないかと思われますが、それだけではないようです。

 

イギリス王族は、「子宮の中にいる時にしかプライバシーはない」と言われるほど、国内外のメディアの注目度も高く、特に、「タブロイド」と呼ばれる英大衆紙は、王室のスキャンダルを好んで暴こうとします。イギリスの社会においては、伝統的に倹約精神というのが美点としてあるそうです。エリザベス女王もストッキングが伝線すると繕いに出していたという逸話もあるほどです。ですから、イギリス国民は、王族に対しても当然そうした価値観の継承をある程度は期待するわけですが、メーガン妃は真逆です。

 

アメリカ人のメーガン妃は、ハリウッド女優で、派手で華やかタイプ、しかも離婚経験もあるなど、これまでのイギリス王室にはいなかった女性です。当然、そんなメーガン妃の行動は、こうした大衆紙の格好のターゲットとなります。実際、メーガン妃の父親への私信が違法に報じられたり、携帯電話の音声メッセージを盗聴されたりしました(ヘンリー王子はこの件で訴訟を起こした)。しかし、こうした報道に対して、市民は眉をひそめるのではなく、受け入れている文化がイギリスにはあります。王室も、開かれた王室のイメージを定着させるためにもこれを容認しているようです。英王室は、7紙と独占的に公務取材を行える取り決めをしているそうですが、その中にはゴシップネタを追う大衆紙も含まれているのです。

 

メーガン妃は、「王室の高位メンバー」から抜けることで、「御用メディア」の監視下から離れたいと考えたのではないかとの見方が一般的です。ただし、それは自分と家族のプライバシーを守るためという理由だけでなく、自らのビジネスプランの実現に支障がでると考えたのでないかと見られています。

 

前回の投稿記事でも指摘しましたが、ヘンリー王子夫妻は、仮に収入が入らなくても、生活していける資産を持っています。しかし、そのような生活に満足できるメーガン妃ではないようです。妃は昨年、英民放ITVのドキュメンタリー番組で「生き抜くだけでは十分ではなく、成功して幸せを感じなければならない。それが人生だ」と発言しました。もっとも、メーガン妃も王室の一員に成りきろうとしたことも事実です。「感情を抑えるというイギリス流の繊細さに適応しようと努力した」と妃自身が告白しています。ただ、セレブ志向のメーガン妃にとっては無理だったようです。

 

今回、王室の一員として、可能な公務を行うことで、エリザベス女王を支えつつも、「高位ロイヤル」の立場からは離脱し、一年をイギリスとカナダで半分づつ過ごすと発表しました。メーガン妃からすれば、それは、王室の高位メンバーを執拗に追いかける大衆紙を避けつつ、経済的な成功を求めるための理想的な提案であったに違いありあません。

 

しかし、王族の象徴ともいえる「ロイヤルハイネス(殿下および妃殿下)」の称号(肩書)を失うことは、英王室というブランドを最大限に利用してセレブであり続けようとするメーガン妃にとっては大きな誤算であったかもしれません。もっとも、サセックス公爵の称号は失わないとされているので、胸をなでおろしているかもしれません。

 

 

<参照>

ウィリアム王子の資産は54億円超!、一体どこから来ている?

(Jun.28.2019、CELEB)

ハリー王子&メーガン妃に与えられた新たな称号を解説

(2018/05/23、BAZAAR)

英国王室は、あなたが考えているよりも多くの収入源を持っている

(2019/11/29、BAZAAR)

ヘンリー王子とメーガン妃、年間収入100億円になるか

(2020/01/18、女性セブン2020年1月30日号)

メーガン妃とヘンリー王子が英王室を離脱する 年の半分カナダに移住

(2020年1月9日 yahooニュース)

宗教と風習―貴族の世界(欧州編)(So-net)

Wikipediaなど