(旧)皇室典範

皇室典範(戦前)

 

第一章 皇位継承

 

第1条

大日本国皇位ハ祖宗ノ皇統ニシテ男系ノ男子之ヲ継承ス

大日本国皇位は祖宗の皇統にして男系の男子之を継承する

大日本国の皇位は祖宗の皇統であり、男系の男子がこれを継承する

 

第2条

皇位ハ皇長子ニ伝フ

皇位は皇長子に伝ふ

皇位は天皇の長男に伝える

 

第3条

皇長子在ラサルトキハ皇長孫ニ伝フ皇長子及其ノ子孫皆在ラサルトキハ皇次子及其ノ子孫ニ伝フ以下皆之ニ例ス

皇長子在らざるときは皇長孫に伝ふ。皇長子及びその子孫在らざるときは皇次子及びその子孫に伝ふ。以下皆之に例す

 

天皇の長男がいない時は、長男の子に伝える。長男及びその子孫がいない時は、天皇の次男及びその子孫に伝える。以下すべて之を例とする。

 

 

第4条

皇子孫ノ皇位ヲ継承スルハ嫡出ヲ先ニス皇庶子孫ノ皇位ヲ継承スルハ皇嫡子孫皆在ラサルトキニ限ル

皇子孫の皇位を継承するは嫡出を先にす。皇庶子孫の皇位を継承するは皇嫡子孫皆在らざるときに限る

 

皇子孫が行為を継承するのは、嫡出子が優先される。皇庶子孫が皇位を継承するのは、皇嫡子孫が絶えた時に限る。

 

 

第5条

皇子孫皆在ラサルトキハ皇兄弟及其ノ子孫ニ伝フ

皇子孫皆在らざるときは皇兄弟及び其の子孫に伝ふ

皇子孫が絶えた時は、皇兄弟及び其の子孫に伝える

 

第6条

皇兄弟及其ノ子孫皆在ラサルトキハ皇伯叔父及其ノ子孫ニ伝フ

皇兄弟及び其の子孫皆在らざるときは皇伯叔父及び其の子孫に伝ふ

皇兄弟及び其の子孫が絶えた時は、皇伯叔父及び其の子孫に伝える

 

第7条 

皇伯叔父及其ノ子孫皆在ラサルトキハ其ノ以上ニ於テ最近親ノ皇族ニ伝フ

皇伯叔父及び其の子孫皆在らざるときは其の以上に於いて最近親の皇族に伝ふ

皇伯叔父及び其の子孫が絶えた時は、それ以外の最も近親の皇族に伝える。

 

第8条

皇兄弟以上ハ同等内ニ於テ嫡ヲ先ニシ庶ヲ後ニシ長ヲ先ニシ幼ヲ後ニス

皇兄弟以上は同等内において嫡を先にし庶を後にし長を先にし幼を後にする

皇兄弟以上は同等内において嫡子を優先し庶子を後にし、年長者を先に年下を後にする

 

第9条

皇嗣精神若ハ身体ノ不治ノ重患アリ又ハ重大ノ事故アルトキハ皇族会議及枢密顧問ニ諮詢シ前数条ニ依リ継承ノ順序ヲ換フルコトヲ得

皇嗣精神若は身体の不治の重患あり又は重大の事故ある時は皇族会議及び枢密顧問に諮問し前数条により継承の順序を換ふることを得

 

皇嗣に精神もしくは身体に不治の重患があり、又は重大な事故がある時は、皇族会議及び枢密顧問に諮問し、前数条により継承の順序を換えることが出来る。

 

 

 

第二章 践祚(せんそ)即位(そくい)(天皇の位を受け継ぐこと)

 

第10条

天皇崩スルトキハ皇嗣即チ践祚シ祖宗ノ神器ヲ承ク

天皇崩ずるときは皇嗣即ち践祚し祖宗の神器を承く

天皇が崩御されたときは皇嗣は、直ちに践祚し祖宗の神器を継承する。

 

第11条

即位ノ礼及大嘗祭ハ京都ニ於テ之ヲ行フ

即位の礼及び大嘗祭は京都に於いて之を行う

即位の礼及び大嘗祭は京都で行う

 

第12条

践祚(せんそ)ノ後元号ヲ建テ一世ノ間ニ再ヒ改メサルコト明治元年ノ定制ニ従フ

践祚の後元号を建て一世の間に再び改めざること明治元年の定制に従ふ

践祚の後に元号を建てて、一世の間に再び改めない事は、明治元年の定制に従う

 

 

第三章 成年立后立太子

 

第13条

天皇及皇太子皇太孫ハ満18年ヲ以テ成年トス

天皇及び皇太子皇太孫は満十八年を以て成年とす

天皇及び皇太子・皇太孫は、満十八歳で成年とする。

 

第14条

前条ノ外ノ皇族ハ満20年ヲ以テ成年トス

前条の外の皇族は満二十年を以て成年とす

前条以外の皇族は、満二十歳を成年とする。

 

第15条

儲嗣タル皇子ヲ皇太子トス皇太子在ラサルトキハ儲嗣タル皇孫ヲ皇太孫トス

儲嗣たる皇子を皇太子とす皇太子在らざるときは儲嗣たる皇孫を皇太孫とす

世継ぎである皇子を皇太子とする。皇太子がいない時は、世継ぎである皇孫を皇太孫とする

 

第16条 

皇后皇太子皇太孫ヲ立ツルトキハ詔書ヲ以テ之ヲ公布ス

皇后皇太子皇太孫を立つるときは詔書を以て之を公布す

皇后・皇太子・皇太孫を立てる時は、詔書をもってこれを公布する。

 

 

 

第四章 敬称

 

第17条

天皇太皇太后皇太后皇后ノ敬称ハ陛下トス

天皇太皇太后皇太后皇后の敬称は陛下とす

天皇・太皇太后・皇太后・皇后の敬称は陛下とする。

 

第18条

皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃親王親王妃内親王王王妃女王ノ敬称ハ殿下トス

皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃親王親王妃内親王王王妃女王の敬称は殿下とす

皇太子・皇太子妃・皇太孫・皇太孫妃・親王・親王妃・内親王・王・王妃・女王の敬称は殿下とする

 

 

第五章 摂政

 

第19条

1 天皇未タ成年ニ達セサルトキハ摂政ヲ置ク

天皇未だ成年に達せざるときは摂政を置く

天皇が成人に達しない時は摂政を置く

 

2 天皇久キニ亙ルノ故障ニ由リ大政ヲ親ラスルコト能ハサルトキハ皇族会議及枢密顧問ノ議ヲ経テ摂政ヲ置ク

天皇久きに亘るの故障に由り大政を親らすること能はざるときは皇族会議及び枢密顧問の議を経て摂政を置く

天皇が長期間に亘る故障によって、大政を自ら行う事が出来ない時は、皇族会議及び枢密顧問の議を経て摂政を置く

 

 

第20条

摂政ハ成年ニ達シタル皇太子又ハ皇太孫之ニ任ス

摂政は成年に達したる皇太子又は皇太孫之に任ず

摂政は、成年に達した皇太子又は皇太孫をこれに任命する

 

第21条

皇太子皇太孫在ラサルカ又ハ未タ成年ニ達セサルトキハ左ノ順序ニ依リ摂政ニ任ス

皇太子皇太孫在らざるか又は未だ成年に達せざるときは左の順序により摂政に任ず。

皇太子・皇太孫がいない場合、又は未成年である時は左の順序により摂政に任命する。

 

第1 親王及王

第2 皇后

第3 皇太后

第4 太皇太后

第5 内親王及女王

 

 

第22条

皇族男子ノ摂政ニ任スルハ皇位継承ノ順序ニ従フ其ノ女子ニ於ケルモ亦之ニ準ス

皇族男子の摂政に任ずるは皇位継承の順序に従う其の女子に於けるも亦之に準ず

皇族男子を摂政に任じるのは、皇位継承の順序に従う。それは女子に於いても之に準じる

 

第23条

皇族女子ノ摂政ニ任スルハ其ノ配偶アラサル者ニ限ル

皇族女子の摂政に任ずるは其の配偶あらざる者に限る

皇族女子を摂政に任ずる場合、配偶者がいない者に限る。

 

第24条

最近親ノ皇族未タ成年ニ達セサルカ又ハ其ノ他ノ事故ニ由リ他ノ皇族摂政ニ任シタルトキハ後来最近親ノ皇族成年ニ達シ又ハ其ノ事故既ニ除クト雖皇太子及皇太孫ニ対スルノ外其ノ任ヲ譲ルコトナシ

最近親の皇族未だ成年に達せざるか又は其の他の事故に由り他の皇族摂政に任じたるときは後来最近親の皇族成年に達し又はその事故既に除くと雖皇太子及び皇太孫に対する外其の任を譲ることなし

 

最近親の皇族が未だ成年に達しないか、又はその他の事故により他の皇族を摂政に任じた時は、後に最近親の皇族が成年に達し又は事故が既に除かれても、皇太子及び皇太孫に対する以外は、摂政の任を譲る事はない。

 

 

 

第25条

摂政又ハ摂政タルヘキ者精神若ハ身体ノ重患アリ又ハ重大ノ事故アルトキハ皇族会議及枢密顧問ノ議ヲ経テ其ノ順序ヲ換フルコトヲ得

摂政又は摂政たるべき者精神若しくは身体の重患あり又は重大の事故あるときは皇族会議及び枢密顧問の議を経て其の順序を換ふることを得

 

摂政又は摂政たるべき者が精神もしくは身体に重大な病気があり、又は重大な事故のある時は、皇族会議及び枢密顧問の議を経て其の順序を換える事が出来る。

 

 

第6章 太傅(たいふ)

(天皇が成人に達しないとき、その養育にあたる職)

 

第26条

天皇未タ成年ニ達セサルトキハ太傅ヲ置キ保育ヲ掌ラシム

天皇未だ成年に達せざるときは太傅を置き保育を掌らしむ

天皇が成年に達しないときは、太傅を置き保育を掌らせる。

 

第27条

先帝遺命ヲ以て太傅ヲ任セサリシトキハ摂政ヨリ皇族会議及枢密顧問ニ諮詢シ之ヲ選任ス

先帝遺命を以って太傅を任ぜざりしときは摂政より皇族会議及び枢密顧問に諮詢し之を選任す

先帝が遺命により太傅を任命しないときは、摂政が皇族会議及び枢密顧問に諮詢し、これを選任する。

 

第28条

太傅ハ摂政及其ノ子孫之ニ任スルコトヲ得ス

太傅は摂政及びその子孫之に任ずることを得ず

太傅は摂政及びその子孫をこれに任ずることは出来ない

 

第29条

摂政ハ皇族会議及枢密顧問ニ諮詢シタル後ニ非サレハ太傅ヲ退職セシムルコトヲ得ス

摂政は皇族会議及び枢密顧問に諮詢したる後に非ざれば太傅を退職せしむることを得

摂政は皇族会議及び枢密顧問に諮詢した後で無ければ、太傅を退職させることが出来ない。

 

 

第7章 皇族

 

第30条

皇族ト称フルハ太皇太后皇太后皇后皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃親王親王妃内親王王王妃女王ヲ謂フ

皇族と称ふるは太皇太后皇太后皇后皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃親王親王妃内親王王王妃女王を謂う

皇族と称するのは、太皇太后・皇太后・皇后・皇太子・皇太子妃・皇太孫・皇太孫妃・親王・親王妃・内親王・王・王妃・女王をいう。

 

第31条

皇子ヨリ皇玄孫ニ至ルマテハ男ヲ親王女ヲ内親王トシ五世以下ハ男ヲ王女ヲ女王トス

皇子より皇玄孫に至るまでは男を親王女を内親王とし五世以下は男を王女を女王とす

皇子より皇玄孫に至るまでは、男を親王、女を内親王とし、五世以下は男を王、女を女王とする

 

第32条

天皇支系ヨリ入テ大統ヲ承クルトキハ皇兄弟姉妹ノ王女王タル者ニ特ニ親王内親王ノ号ヲ宣賜ス

天皇支系より入て大統を承くるときは皇兄弟姉妹の王女王たる者に特に親王内親王の号を宣賜す

天皇が支系より入って大統を受け継いだ時は、天皇の皇兄弟姉妹の王・王女は特に親王・内親王の号を宣賜する

 

第33条

皇族ノ誕生命名婚嫁薨去ハ宮内大臣之ヲ公告ス

皇族の誕生命名婚嫁薨去は宮内大臣之を公告す

皇族の誕生・命名・婚嫁・薨去は宮内大臣がこれを公告する

 

第34条

皇統譜及前条ニ関ル記録ハ図書寮ニ於テ尚蔵ス

皇統譜及前条に関る記録は図書寮に於て尚蔵す

皇統譜及び前条に関する記録は、図書寮に於いて保管する

 

第35条

皇族ハ天皇之ヲ監督ス

皇族は天皇之を監督す

皇族は天皇がこれを監督する

 

第36条

摂政在任ノ時ハ前条ノ事ヲ摂行ス

摂政在任の時は前条の事を摂行す

摂政在任の時は、前条の事を摂行する

 

第37条

皇族男女幼年ニシテ父ナキ者ハ宮内ノ官僚ニ命シ保育ヲ掌ラシム事宜ニ依リ天皇ハ其ノ父母ノ選挙セル後見人ヲ認可シ又ハ之ヲ勅選スヘシ

皇族男女幼年にして父なき者は宮内の官僚に命じ保育を掌らしむ事宣に依り天皇は其の父母の選挙せる後見人を認可し又は之を勅撰すべし

皇族男女が幼年で父親が居ない者に対して、宮内の官僚に命じて保育を掌らせることは宣下により、天皇は其の父母の選挙する後見人を認可し又はこれを勅撰すべし

 

第38条

皇族ノ後見人ハ成年以上ノ皇族ニ限ル

皇族の後見人は成年以上の皇族に限る

皇族の後見人は、成年以上の皇族に限る

 

第39条

皇族ノ婚嫁ハ同族又ハ勅旨ニ由リ特ニ認許セラレタル華族ニ限ル

皇族の婚嫁は同族又は勅旨に由り特に認許せられたる華族に限る

皇族の結婚相手は、同族又は勅旨により特に認許された華族に限る

 

第40条

皇族ノ婚嫁ハ勅許ニ由ル

皇族の婚嫁は勅許に由る

皇族の結婚は、勅許による

 

第41条

皇族ノ婚嫁ヲ許可スルノ勅書ハ宮内大臣之ニ副書ス

皇族の婚嫁を許可するの勅書は宮内大臣之に副署す

皇族の結婚を許可する勅書は、宮内大臣がこれに副署をする

 

第42条

皇族ハ養子ヲ為スコトヲ得ス

皇族は養子を為すことを得ず

皇族は養子を取る事が出来ない

 

第43条

皇族国彊ノ外ニ旅行セムトスルトキハ勅許ヲ請フヘシ

皇族国境の外に旅行せむとするときは勅許を請ふへし

皇族が国外に旅行しようとする時は、勅許を請わなければならない

 

第44条

皇族女子ノ臣籍ニ嫁シタル者ハ皇族ノ列ニ在ラス但シ特旨ニ依リ仍内親王女王ノ称ヲ有セシムルコトアルヘシ

皇族女子の臣籍に嫁したる者は皇族の列に在らず但し特旨によりその内親王女王の称を有せしむることあるべし

皇族女子が臣籍の者と結婚した場合は、皇族の列から外れる。但し、特旨により、その内親王・女王の呼称を持つ場合がある。

 

 

 

第8章 世伝御料

 

第45条

土地物件ノ世伝御料ト定メタルモノハ分割譲与スルコトヲ得ス

土地物件の世伝御料と定めたるものは分割譲与することを得ず

土地・物件で世伝御料と定めた物は、分割・譲与する事は出来ない。

 

第46条

世伝御料ニ編入スル土地物件ハ枢密顧問ニ諮詢シ勅書ヲ以テ之ヲ定メ宮内大臣之ヲ公告ス

世伝御料に編入する土地物件は枢密顧問に諮詢し勅書を以て之を定め宮内大臣之を公告す

世伝御料に編入する土地・物件は枢密顧問に諮詢し、勅書を以てこれを定め、宮内大臣がこれを公告する

 

 

第9章 皇室経費

 

第47条

皇室諸般ノ経費ハ特ニ常額ヲ定メ国庫ヨリ支出セシム

皇室諸般の経費は特に常額を定め国庫より支出せしむ

皇室における諸般の経費は、特に常額を定めて国庫より支出させる

 

第48条

皇室経費ノ予算決算検査及其ノ他ノ規則ハ皇室会計法ノ定ムル所ニ依ル

皇室経費の予算決算検査及びその他の規則は皇室会計法の定むる所に依る

皇室経費の予算・決算・検査及びその他の規則は、皇室会計法の定める所による。

 

 

第10章 皇族訴訟及懲戒

 

第49条

皇族相互ノ民事ノ訴訟ハ勅旨ニ依リ宮内省ニ於テ裁判員ヲ命シ裁判セシメ勅裁ヲ経テ之ヲ執行ス

皇族相互の民事の訴訟は勅旨に依り宮内省に於いて裁判員を命じ裁判せしめ勅裁を経て之を執行す

皇族相互の民事訴訟は、勅旨により宮内省において裁判員を命じ裁判をさせ、勅裁を経てこれを執行する。

 

第50条

人民ヨリ皇族ニ対スル民事ノ訴訟ハ東京控訴院ニ於テ之ヲ裁判ス但シ皇族ハ代人ヲ以テ訴訟ニ当ラシメ自ラ訟廷ニ出ルヲ要セス

人民より皇族に対する民事の訴訟は東京控訴院に於いて之を裁判す但し皇族は代人を以て訴訟に当たらしめ自ら訴廷に出るを要せず

人民より皇族に対する民事の訴訟は、東京控訴院でこれを裁判する、但し皇族は、代人を立てて訴訟に当たらせ、自ら裁判に出る必要は無い。

 

第51条

皇族ハ勅許ヲ得ルニ非サレハ勾引シ又ハ裁判ニ召喚スルコトヲ得ス

皇族は勅許を得るに非ざれば拘引し又は裁判所に召喚することを得ず

皇族は勅許を得るので無ければ、拘引し又は裁判所に召喚する事は出来ない。

 

第52条

皇族其ノ品位ヲ辱ムルノ所行アリ又ハ皇室ニ対シ忠順ヲ欠クトキハ勅旨ヲ以テ之ヲ懲戒シ其ノ重キ者ハ皇族特権ノ一部又ハ全部ヲ停止シ若ハハク奪スヘシ

皇族其の品位を辱むるの所行あり又は皇室に対し忠順を欠くときは勅旨を以て之を懲戒し其の重き者は皇族特権の一部又は全部を停止し若しくは剥奪すべし

皇族に其の品位を辱める所行があり、又は皇室に対し忠順を欠く時は、勅旨を以てこれを懲戒し、その懲戒の重い者は皇族特権の一部、又は全部を停止若しくは剥奪すべし。

 

第53条

皇族蕩産ノ所行アルトキハ勅旨以テ治産ノ禁ヲ宣告シ其ノ管財者ヲ任スヘシ

皇族蕩産の所行あるときは勅旨を以て治産の禁を宣告し其の管財者を任ずべし

皇族に蕩産(財産を使い果たすこと)の所行がある時は、勅旨を以て治産の禁止を宣告し、その管財者を任ずべし

 

第54条

前2条ハ皇族会議ニ諮詢シタル後之ヲ勅裁ス

前二条は皇族会議に諮詢したる後之を勅裁す

前二条は皇族会議に諮詢した後に、これを勅裁する

 

 

第11章 皇族会議

 

第55条

皇族会議ハ成年以上ノ皇族男子ヲ以テ組織シ内大臣枢密院議長宮内大臣司法大臣大審院長ヲ以テ参列セシム

皇族会議は成年以上の皇族男子を以て組織し内大臣枢密院議長宮内大臣司法大臣大審院長を以て参列せしむ

皇族会議は成年以上の皇族男子で組織し、内大臣・枢密院議長・宮内大臣・司法大臣・大審院長を参列させる。

 

第56条

天皇ハ皇族会議ニ親臨シ又ハ皇族中ノ一員ニ命シテ議長タラシム

天皇は皇族会議に親臨し又は皇族中の一員に命じて議長たらしむ

天皇は皇族会議に親臨し、又は皇族の中の一員に命じて議長にさせる。

 

 

第12章 補則

 

第57条

現在ノ皇族五世以下親王ノ号ヲ宣賜シタル者ハ旧ニ依ル

現在の皇族五世以下親王の号を宣賜したる者は旧に依る

現在の皇族五世以下で親王の号を宣賜した者は、旧による。

 

第58条

皇位継承ノ順序ハ総テ実系ニ依ル現在皇養子皇猶子又ハ他ノ継嗣タルノ故ヲ以テ之ヲ混スルコトナシ

皇位継承の順序は総て実系による現在皇養子皇猶子又は他の継嗣たるの故を以て之を混ずることなし

皇位継承の順序は、総て実系による。現在、皇養子・皇猶子又は他の継嗣であることをもって、これが混乱する事は無い。

 

第59条

親王内親王王女王ノ品位ハ之ヲ廃ス

親王内親王王女王の品位は之を廃す

親王・内親王・王・女王の品位(ほんい)(位階)は、これを廃止する

 

第60条

親王ノ家格及其ノ他此ノ典範ニ牴触スル例規ハ総テ之ヲ廃ス

親王の家格及びその他此の典範に抵触する例規は総て之を廃す

親王の家格、及びその他この典範に抵触する例規は、総てこれを廃止する。

 

第61条

皇族ノ財産歳費及諸規則ハ別ニ之ヲ定ムヘシ

皇族の財産歳費及び諸規則は別にこれを定べし

皇族の財産・歳費・諸規則は、別にこれを定める。

 

第62条

将来此ノ典範ノ条項ヲ改正シ又ハ増補スヘキノ必要アルニ当テハ皇族会議及枢密顧問ニ諮詢シテ之ヲ勅定スヘシ

将来此の典範の条項を改正し又は増補すべきの必要あるに当ては皇族会議及び枢密顧問に諮詢してこれを勅定すべし

将来、この典範の条項を改正し、又は増補すべき必要がある時は、皇族会議及び枢密顧問に諮詢してこれを勅定する。