日本農業の再生

鹿児島銀が農業参入 30日に新会社、後継者不足解消に一役 
(2016/9/26 日本経済新聞)

 

鹿児島銀行は30日に地元の卸売業者などと新会社を設立し、農業分野に参入する。10月からタマネギの栽培を始め、来年春にも出荷する。九州の最南端にある温暖な気候を生かし、供給量が増える旬の時期よりも前に商品を出荷することで需要を確保する。収益性の高い生産管理モデルをつくり、農畜産業者の休日確保や農業の後継者不足の解消にも役立てる。

 

福岡県の北九州青果、鹿児島県の鹿児島中央青果、鹿児島共同倉庫、園田陸運と共同で設立。生産から販売までを手がける農業法人になる。九州フィナンシャルグループ(FG)のKFGアグリファンドも出資する予定。29日に発表する。県内の露地栽培から始めて生産品目を増やし、将来は植物工場での栽培を検討する。農業生産法人への転換も視野に入れる。

 

鹿児島銀行内で新会社への希望者を募ったところ、女性を含めた10人超が応募した。このうち数人が出向し、将来は地元で40~50人の雇用を目指す。農業は鹿児島県の基幹産業。上村基宏頭取は「観光と農業をセットにしたり、IT(情報技術)を使った生産・管理システムを構築して東南アジアに売り込んだりしていきたい」と意気込む。三井住友銀行がコメの生産を手がける新会社を今年設立しているが、地方銀行の農業参入は珍しい。

 

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三井住友銀が農業参入 コメ生産で新会社
(2016/6/15 日本経済新聞)

三井住友銀行が農業に参入する。7月に秋田県の農業法人や秋田銀行、NECグループと新会社を設立し、コメの生産を始める。2018年度以降は他県に広げる。資金や情報を持つ大手銀行が農業経営に参加することで、農地の大規模化や生産の効率化につながる可能性がある。

 

新会社は自ら農地を保有して農業を営む「農業生産法人(農地所有適格法人)」として活動する。コメ生産や加工を手がける農業法人の「大潟村あきたこまち生産者協会」(秋田県大潟村)に株式の過半を保有してもらう。三井住友銀は秋田銀と同じく銀行法の上限の5%しか持てないが、事業全体を主導する。リース会社のNECキャピタルソリューションと三井住友ファイナンス&リースも出資する。

 

まず今秋にも高齢化で刈り取りや精米などの農作業が困難になった農家から作業を請け負う。来春以降は農家から土地を借りてコメ生産を開始する。離農者が農地を手放す場合には買い取る。農作業の担い手は近隣農家への委託や地域住民の臨時雇用で確保する。

 

10年後には秋田県内で東京ドーム約210個分に相当する1000ヘクタールまで生産面積を広げる計画だ。生産したコメはあきたこまち生産者協会を通じ、個人やホテルなどに販売する。

 

三井住友銀は秋田県内の取り組みが軌道に乗れば、他県でも地元の有力農業法人や地銀などと共同出資会社を設立しコメ生産を始める。コメづくりが盛んな新潟県や山形県などが対象になる見通し。中長期的には司令塔役の持ち株会社をつくり複数の共同出資会社を束ね、農業機械の共同購入によるコスト削減や販路開拓で連携することも視野に入れる。

 

三井住友銀が農業参入を決めたのは、4月の改正農地法の施行で農地を所有できる法人の要件が緩和され、銀行の出資が可能になったためだ。09年の法改正で農地を賃借すれば一般企業が農業をできるようになったが、これまではイオンやローソンなど小売りや食品などの業種が中心だった。

 

18年のコメの生産調整(減反)政策の廃止や環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意など政府の農業改革も追い風だ。農地の集約や大型化が進み不動産売買や農機などの設備投資が活発になれば、銀行の融資機会も増えるとの読みがある。

 

日本の農業向け融資は約5兆円だが、9割近くを農協(JA)関連や政府系金融機関が占める。メガ銀の本格参入で資金供給ルートも増える。三井住友銀は豊富な顧客基盤を生かして農作物の輸出を支援したり、農業法人と企業をつないだりすることも検討しており、農業の競争力底上げを後押しする。