2017年07月21日

ニュース:もはや明白、アベノミクスの失敗

物価にデフレ心理の壁 日銀、2%達成6回目先送り 
(2017/7/21、日経)

 

日銀は20日の金融政策決定会合で景気判断を前進させる一方で、物価目標の達成時期を「2019年度ごろ」へ再び先送りした。個人消費の回復や雇用の逼迫で物価が上昇する条件が整いつつあるにもかかわらず物価上昇率は0%台に低迷したまま。その最大の「犯人」を巡り日銀は企業や家計に巣くうデフレ心理だとの分析を示した。追加緩和の手立ても限られる中、2%の目標達成は見通しづらくなっている。「残念だ」。黒田東彦総裁は20日午後の記者会見で達成時期先送りに渋い顔をみせた。経営者らの間では価格転嫁の機運も出ているが、春先の値上げの動きは日銀の想定よりはるかに鈍く、目標達成時期を「2018年度ごろ」から「19年度ごろ」へとずらした。

 

 

日本の景気は悪くないのになぜ物価は無反応なのか。日銀はこの1~2カ月、この難題と格闘してきた。企業収益、設備投資、個人消費と景気のパーツはいずれも上向き、20日の経済・物価情勢の展望(展望リポート)での総括判断も一歩前進させた。世界経済の緩やかな回復で鉱工業生産は堅調で企業収益は過去最高水準だ。0%台の潜在成長率を大きく上回る成長で日本経済はほぼ完全雇用といわれる状態にあり、労働の需給は一段と引き締まっている。日銀の望む「好循環」が機能し始め物価が上向いてもおかしくないのに、なぜかセオリー通りに点火しない。

 

実際、政府がデフレ脱却の4条件として重視する需要と供給のバランス(GDPギャップ)や消費者物価指数、貿易も加味した物価の動き(GDPデフレーター)などをみると、一部は改善しているがおおむね前年比0%近辺で低迷し、デフレ圏からの脱出速度は遅い。黒田氏はこの背景を「賃金や物価が上がりにくいことを前提にした考え方が企業や家計に根強く残っている」と指摘した。たとえば賃上げはパートで目立つ一方、正社員は賃金より雇用安定を優先する分、遅れがちだ。物価の面では企業がコスト上昇分を省力化投資や営業時間縮小などで吸収しているため、価格転嫁の段階に至ってない。長いデフレ期に染みついた慎重姿勢を「十分に勘案していなかった」(黒田総裁)という。

 

展望リポートでも日本人が将来のインフレ率を予想する際、とくに過去の物価動向に引きずられやすい傾向があると指摘。「適合的な期待形成」と呼ばれるこうした経済理論を引用し、物価上昇に時間がかかることを認めた。それでも黒田氏は「この状況がずっと続くことはありえない」と強調。生産性向上だけで賃金や原材料コストの上昇を吸収するのにもおのずと限界があるとみているからだ。足元の物価の弱さを認めつつも「物価上昇のモメンタム(勢い)は維持されている」という理屈を示し、追加緩和は「現時点で必要ない」ことで一致した。現行の長短金利操作付き量的・質的緩和策については「企業や家計の予想物価が上昇すれば実質金利がさらに下がり、緩和効果が強まる」ともアピールした。すでに長期金利は0%程度にまで下がっている。長短金利の誘導目標をさらに引き下げることもできなくはないが、景気刺激効果が見えづらい上、金融機関の収益圧迫など副作用が大きい。国債購入の増額も難しい。日銀内では「サプライズを起こしてまで緩和する状況ではない」(幹部)との声も増え、追加緩和しようにも動けないというのが現実だ。

 

物価上昇のストーリーを堅持している日銀だが、達成時期の先送りは今回で6回目だ。東短リサーチの加藤出氏は「19年度に目標を達成したとしても異次元緩和から6年。当初の2年とはほど遠い」と見通しの甘さを指摘。大和総研の熊谷亮丸氏は「企業が積極的に値上げする可能性は日銀が描くほどには高くない」といい、18年度の物価上昇率は1%に達しないとみる。景気回復局面はすでに5年近くになり、戦後3番目の長さだ。BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「19年には世界景気が減速してくる。出口の道筋を付けておかないと、不況時の政策手段が限られる」という。海外発でショックが起これば、日銀のシナリオは崩れる。

 

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