天皇の外交的地位

天皇とは?

世界の国家論の観点から、日本は「帝国」と位置づけられ、天皇は、帝国の支配者である皇帝と同義とされます。辞書的には、複数の国家とそこに住む複数の民族の支配者を「皇帝」と言います(その領域が「帝国」)。複数の国家を支配することを帝国という意味は、領域内にあった国々を一つに統一してできた場合をいい、そういう国は帝国と呼ばれます。

 

日本の場合はそうなのかと疑問がでてくると思いますが、古代の日本は、大和朝廷(帝を国王とする国)が各地域の豪族(地方の国の国王)を束ねて出来上がったと解されています。実際、後世においても、東京はかつて武蔵国(むさしのくに)、京都は山城国(やましろのくに)というように、日本の地域は、現在のように「○○県」ではなく、「○○国」と呼ばれていました(〇〇国の支配者は国王と位置づけられる)。この観点から、日本の天皇は皇帝と同じだと見られています。

 

一方、イギリス・オランダ・スペインなどは、国々の国王を服属させてできた国ではないので、元首は皇帝ではなく、一つの国を支配している国王です。このため、例えば国王が皇帝になりたくても、国の成り立ちを変えることはできないのでできません。日本の天皇は、明治以降の歴史の中で、世界的に「エンペラー(皇帝)」として認知されています。英語のemperorは皇帝と和訳される一方、天皇の英訳もemperorですね。

 

かつて、古代のローマ帝国や、その後継者を任じた神聖ローマ帝国やナポレオンのフランス、帝政ロシア、ドイツ帝国、秦から清までの中国の王朝など多くの帝国が成立し、これらの国々の元首は「皇帝」と呼ばれていました、ところが、これまで世界にあった皇帝が国々を治めていた帝国のほとんど全てが、市民革命、戦争、民主化運動などによって崩壊しまいました。近年でも、1970年代にエチオピア帝国とイラン帝国が軍事クーデターと革命によってそれぞれ打倒されました。

 

その結果、現在、世界にたくさんの「王(king)」は存在しますが、現在の世界でEmperor(皇帝)は、日本の天皇ただお一人です。ですから、天皇陛下は、現在世界で唯一「エンペラー」と称される人で、日本の天皇家は、現存する世界最古の皇室(王室)なのです。しかも、そうした日本が2600年以上の歴史を持ち、今日も続いています。

 

外交儀礼(プロトコール)上の観点から、天皇(皇帝)は最も高い称号とされています。「emperor」という称号は、「king国王」よりも上にあり、エリザベス女王が天皇陛下と握手する際に自ら一歩踏み出されるそうです。ですから、外交儀礼上、権威の秩序としての順位は、現在、慣例で以下のようになっています。

天皇⇒国王(女王)⇒皇太子(王妃)⇒大統領⇒首相⇒大使

 

この順位は、政治的な地位ではなく、権威の順位です。精神的な権威者が、世俗の権力者の上座に位置するのは古今東西変わりません。その意味で、イエス・キリストの後継者としてキリスト教(カトリック教会)の中心に位置するローマ法王も天皇(皇帝)と同位とされています。

 

そうすると、天皇陛下は、現行憲法にいう「日本国と日本国民統合の象徴」というだけでは済まされないご存在であるような気がします。