これから仏教について、ともに学びましょう。
<仏教講座①「平泉から学ぶ仏教」①>
現在、読んでいる書物に、世界遺産「平泉」の中尊寺について書かれていました。本日はこれを題材にしてみます。
中尊寺の落慶に際して、藤原清衡が読み上げた供養願文
五色の旗で飾った仏堂に釈迦三尊を、三重塔に大日如来と弥勒菩薩を安置しました。瓦葺きの蔵には、紺の紙に金と銀とで経を写した一切経を納めました。鐘をつき堂を造り、梵鐘を吊るました。その鐘の音は、世界のあらゆる人のもとに届き、苦しみをやわらげ、心を清らかにするでしょう。(中略)
平泉は、東に青龍、西に白虎、南に朱雀、北に玄武、四方を神仏が守護する理想に地です。平泉を都とし、陸奥は恩寵あらたかなる国になりました。(後略)
(「東北・蝦夷の魂」高橋克彦著より、抜粋)
🔶釈迦三尊、大日如来、弥勒菩薩とは何でしょうか?
釈迦三尊
釈迦如来像を中央に、その左右に2つの脇侍(きょうじ)像を配した造像・安置形式を言います。脇侍像には、文殊菩薩と普賢菩薩や、薬王(やくおう)菩薩や薬上(やくじょう)菩薩などが配されています。
また、釈迦如来とは、仏教の開祖、釈迦(本名はゴータマ=シッダールタ)を仏として敬う呼び名で、釈迦如来とはその釈迦が悟りを得た姿をあらしています。
大日如来
『大日経』や『金剛頂経』などに説かれる仏で、「毘盧遮那仏」ともいわれ、生きとし生けるものの根本となる仏様です。
密教(真言宗)では、大日如来は、宇宙の真理を現し、宇宙そのものを指す仏の中の最高の仏とされています。すなわち、すべての命あるものは大日如来から生まれたとされ、すべての仏は大日如来の化身と考えられています。
もっとも、一般的には仏教では、多くの仏様の中で一番上の仏様は、阿弥陀如来とされています。『般舟経』には、すべての仏は、阿弥陀如来のお力によって仏のさとりを開かれたと説かれているからです。そうすると、釈迦も、大日如来も薬師如来も阿弥陀如来の弟子ということになります。(「仏像ワールド」「仏教ウェブ入門」などより)
弥勒菩薩
遠い未来に人々を救うことが約束されている釈迦を継ぐ者。弥勒とは古代インドではマイトレーヤと呼ばれ、慈悲から生まれた者を意味しています。釈迦が亡くなられてから56億7千万年後に仏となりこの世に現れ、釈迦の教えで救われなかった人々を救済するといわれています。(「仏像ワールド」より)
◇ 如来と菩薩の違い
如来とは、仏と同じ意味で、最高の段階。「真理に目覚めた者」のことを言います。菩薩とは、人々を救いつつ、仏(如来)になることを目指して修行する人のことだとされています。
🔶 青龍、白虎、朱雀、玄武とは?
天の四神獣(しじんじゅう)と言われ、天の四方の方角を司る、中国の神話に基づく霊獣です。また、この四神は季節も表わしています。
東方の守護神 青龍神(せいりゅうしん)⇒龍⇒春
南方の守護神 朱雀神(すざくしん) ⇒鳥⇒夏
西方の守護神 白虎神(びゃっこしん) ⇒虎⇒秋
北方の守護神 玄武神(げんぶしん) ⇒亀⇒冬
(令和元年5月8日)
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<仏教講座②:四神と四天王>
前回、後半で、中国の四神獣について紹介しましたが、この中国の四神は、日本の国技、「相撲」と密接な関係があります。大相撲の土俵の上には、「吊り屋根」と呼ばれる大きな屋根が釣り下がっていますが、その吊屋根の四隅に4色の房(四房しぶさ)が垂れ下がっていますね。
その四房の色は青、白、赤、黒で、時計回りに、正面は黒、東は青、向正面は赤、西は白となっています。大相撲の放送で、「向正面 赤房下 審判〇〇」なんて、アナウンサーが言ってますよね。この4色は方角も表し、黒は北、青は東、赤は南、白は西を示し、さらに、天の四神獣を表しているのです。
青:青龍神 (東)
白:白虎神 (西)
赤:朱雀神 (南)
黒:玄武神 (北)
土俵には神様がいて、四神獣が、四隅から土俵を守っています。相撲は神事なんですね。では、相撲は中国発祥かというと、全くそうではなく、相撲は、古事記に遡った日本の神話に由来します。(ここは仏教を学ぶサイトなので、神道サイトで相撲の起源について、後に取り上げます)。
一方、仏教の観点から、もう少し掘り下げてみましょう。仏教においても、東西南北を守る四天王が、次のように、天界の4守護神(仏法の守護神)といわれて、存在しています。
東方守護:持国天
西方守護:広目天
南方守護:増長天
北方守護:多聞天 (毘沙門天)
四天王は、それぞれ、戦闘用の甲冑に身を固め、仏法の敵である邪鬼を踏みつけています。平泉の中尊寺にも、持国天と増長天が配置されています。
もともと、四天王は、密教の曼陀羅の須弥山に描かれていますが、この後、密教や曼陀羅についても学んでいくことにしましょう。
(令和元年5月10日)