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2019年10月01日

ニュース:日米貿易交渉 遺伝子組み換えコーン、大量購入!

先月26日、日米貿易交渉が妥結し、安倍首相は「両国にとってウィンウィンの合意となった」と胸を張ったが、日本の負けであり、米国産トウモロコシの追加購入というおまけまでもらいました。

 

「ウィンウィン」とは、両者とも勝者ということですが、「日本は、牛肉や豚肉など米国産農産物への関税を環太平洋経済連携協定(TPP)の水準に引き下げる一方、米側は、検討中の米通商拡大法232条に基づく輸入車への追加関税を発動するせず、乗用車や自動車部品に課す関税の削減は継続交渉した」ことを言っているようです。また、コメと乳製品については、新たな輸入枠等を設けないことになりました。

 

中身をもう少し詳細にみてみると、交渉は、アメリカが脱退したTPP交渉の内容を二国間で実現しようとするものでした。

 

<日本⇒アメリカ>

対米輸出額の約35%を占める自動車関連の関税について、TPP合意では、乗用車の関税率(2・5%)は15年目から削減を始め、自動車部品(主に2・5%)は8割以上の品目で即時に撤廃することになっていました。しかし、今回の合意では、関税率をまとめた米側の表に「さらなる交渉による関税撤廃」を記すにとどめられました。

 

今回の交渉では、TPP合意に基づいて、乗用車の関税撤廃に向けた話し合いが行われたのではなく、アメリカは関税撤廃どころか、米通商拡大法232条に基づく輸入車へ追加の高関税を発動すると強圧的な態度で臨んできたのです。安倍政権は、現段階での関税削減を事実上、断念し、関税引き上げを防いだことを「成果」としたのです。

 

<アメリカ⇒日本>

牛肉や豚肉への日本側の関税については、TPP水準まで引き下げられることになりました。牛肉では、現状の38・5%から段階的に削減し、最終的に9%とされます。豚肉は、価格の安い肉にかけている1キロ当たり最大482円の関税が最終的に50円になります。さらに、緊急輸入制限措置(セーフガード)による高関税がかからない事実上の低関税枠を約24万トンにします。

 

また、小麦もTPP交渉時の合意内容を踏襲し、アメリカ産の小麦には最大15万トンの輸入枠を設けます。その一方、コメは、TPP交渉で日本がアメリカに設定した年間7万トンの無関税の輸入枠は設けられないことになり、乳製品も、バターや脱脂粉乳などの新たな輸入枠は設けないことになりました。

 

さて、今回の投稿で私が問題にしたいのは、協定と別に日本企業が、250万トン以上の米国産トウモロコシを大量購入すること安倍総理が約束したことです。

トランプ大統領が、「中国が約束を守らないから(実際は米国が高関税を課したから)、米国ではトウモロコシが余っている。その全てを日本が買ってくれ、農家はとても幸せだ」と、満足感を示すと、安倍首相は「日本では害虫被害に悩まされており、民間に追加購入需要がある」と応じたシーンがテレビで放映されました。日本のトウモロコシ輸入は「数億ドル(数百億円)規模」に上ると言われています。

 

この件についての東京新聞の記事(8/27)から一部引用します。

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農林水産省によると、害虫被害とは、「ツマジロクサヨトウ」というガの幼虫による食害を指す。7月3日に国内で初めて鹿児島県内で確認されて以来、9県52市町村で飼料用トウモロコシの葉が食べられる被害が出ている。

 

ただ、被害はそれほど広がっていない。飼料用トウモロコシは年間約1100万トンを米国などから輸入。国内では約450万トンを生産しているが、食害はごく一部で発生が確認されているだけ。農水省は「現時点では通常の営農活動に支障はない」(植物防疫課)としており、米国に約束した275万トンは必要量に比べ過大になる公算がある。

 

また、食害は葉や茎も砕いて飼料にするトウモロコシで起きており、米国から追加購入する実を用いるトウモロコシとは栄養価などが異なる。仮に被害が拡大しても米国産では単純に代替できない。飼料メーカーや商社の購入を税金を基にした補助金で支える方針とみられる。購入を無理に増やすために多額の補助金投入を迫られる可能性がある。

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日本の飼料用トウモロコシ(濃厚飼料)は99.9%(総量1131万トン)を輸入に頼っており、その内の約95%(1075万トン)はアメリカから輸入しているそうです。そこに今回、約250万トンを追加輸入することになるのですが、害虫被害を受けているという日本産のトウモロコシはアメリカ産のものとは別の種類であるため、代替にはならないとの意見は専門家の間で一致しています。

 

安倍総理が適当な理由を見つけ出してきて、米産とうもろこし購入の理由を説明したことも遺憾ですが、何より、米国産とうもろこしが遺伝子組換え作物であるということが問題です(これこそが今回、このテーマを本HPで取り上げた理由)。この米国産トウモロコシについて書かれた日刊ゲンダイ(2019/08/27)の記事です(一部抜粋)。

 

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米国のトウモロコシは、雑草を除去する「除草剤」の耐性を持たせるため、遺伝子組み換えが大半だという。農業問題に詳しいジャーナリストの天笠啓祐氏は、「米国産トウモロコシの約9割が遺伝子組み換え」と日刊ゲンダイに語った。

 

食べると動物や人体に悪影響を及ぼす恐れがある。フランスの大学教授の実験だと、組み換えエサを2年間、食べ続けたマウスの50~80%ががんを発症。米国環境医学会は09年、「アレルギーや免疫機能、妊娠や出産に関する健康」に悪影響を及ぼすと発表したほどだ。日本では基本的に、食品や飼料の原料に遺伝子組み換えの農作物を使用する場合、商品に明記することが義務付けられている。消費者庁は公式HPで〈健康や環境に対しての問題を引き起こすことがあってはなりません〉とうたっている。

 

米国から大量に入ってくる危険なエサで育った牛や豚を、ヒトが食べて大丈夫なのか。

「間接摂取については研究が進んでおらず、詳細は不明。しかし、危険性がないとは言い切れないでしょう。多くの消費者から不安の声が上がっています」(天笠啓祐氏)

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今後は、飼料用だけでなく、食用トウモロコシなどヒトが直接食べる農産品の遺伝子組み換え作物が大量流入してくる恐れがあります。遺伝子組み換え作物についてはトウモロコシの他、大豆、菜種、ワタの種子が流通しています。米中貿易摩擦で中国は買わない、欧州も敬遠している中、トランプ大統領は今後、余った組み換え農作物の受け入れを日本に迫ってくる可能性があります。今回、受け入れに応じてしまった代償は大きいかもしれません。

 

さらに、今回のトウモロコシを大量購入について、日本側の思惑をある識者は「日米貿易交渉の歴史の中で、アメリカは理不尽なことも強く言ってくるが、日本にとってはいかに頭を下げて風をやり過ごすかということが重要。今までそうしてきたことを、今回トウモロコシでやっている」と述べています。つまり、トウモロコシの購入は、本筋の牛肉や豚肉、自動車の交渉を日本にとってプラスにするための取引材料のようなもので、アメリカのご機嫌を取りに利用されたというわけです。とくに、米中貿易摩擦で対中とうもろこし輸出が落ち込み、次の大統領選で農業州で苦戦が予想されるトランプ大統領に対して、日本が肩代わりすることで、トランプ大統領に最大の助け舟を出した形となりました。

 

「自動車で譲歩を勝ち取る、ひいては貿易交渉を大きく痛むことなく無事に終わらせたい…」、もし、こういう理由で、安倍政権がトウモロコシの購入を決めたのであれば、その引き換えに、国民の健康を売ったとしか言いようがありません。

 

 

<参照>

安倍首相「両国にとってウィンウィン」日米貿易交渉合意

( 2019年9月26日、朝日新聞)

日米首脳 貿易交渉の最終合意を確認 共同声明に署名

(2019年9月26日、NHKニュースweb)

日米貿易協定の合意 ウィンウィンとは言えない

(2019年9月27日、毎日新聞社説)

トウモロコシ追加購入に補助金 日米貿易首脳会談

(2019年8月27日 東京新聞)

米余剰トウモロコシ輸入決定 日本に“危険食品”大流入危機

(2019/08/27 日刊ゲンダイ)

安倍総理「害虫対策」でトウモロコシ250万トン購入

(ニコニコニュースAbemaTIMES)