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2019年06月28日

神道:山の神を怒らせるな!

6月15日の投稿に、「種子、水に続いて森林も…」と題して、国民の共有財産である日本の森林が、政府主導で伐採され、また、外資を含む民間業者に破壊される恐れがあることを紹介しました。その時、民俗学の立場から思ったことは、日本の森林が適切に管理されなければ、山の神々の怒りに触れないかということでした。

 

「山の神」といえば、大学生の箱根駅伝で、箱根の山登り区間で最強の選手にマスコミが贈る「称号」ですが、民俗信仰としての山の神は、大山祇神(大山津見神)(おおやまづみのかみ)です。日本の山岳信仰を考えます。

 

山と神

 

日本は、山および山地が占める面積が国全体の76%に達する山がちの国土(山国)で、ほぼどこへ行っても、山を見ることができます。そして、日本の高い山にはほとんど(その頂上に)すべて神社があります。奈良の三輪山や、青森の岩木山のように山そのものがご神体となっている山もあり、こうした信仰の対象となっている霊山は、全国に満遍なく点在し、約350座もあるとされています。これは、山には神様がいて、そこに信仰(山岳信仰)が根付いているという事実の裏返しでもあります。

 

山の神とは、山に宿る神のことと総称されます。木樵(きこり)、猟師、鋳物師など山の民にとっては木地や鍛冶の神、農業を生業としていれば田の神のような農神、その山の周辺に暮らす人々にとっては先祖霊であるように、日本の山神信仰は様々です。こうして山民が信仰する山の神は、山の草木や動物、鉱物を支配し、山民の生業に恵みをもたらしてくれます。神は山だけでなく、峠にもいると考えられ、峠の神は、旅行者も含めて山に入る人々を誘導してくれます。このため、山の口、山中、山頂には、神社だけでなく、大木、岩、小祠、石塔など山の神の祭場が随所にできました。

 

また、山の神は、山と里のあいだを去来するとされています。すなわち、山の神は、山にとどまるだけでなく、春に山から里に下り、田の神となって稲作と守り、秋には収穫をもたらして山に帰ると考えられています。その節目に感謝の祭りが行われ、神と人と一体になって五穀豊穣と生活の安寧が願われています。このように、山の神は、人間の生死をも左右する大きな力を持ち、山で暮らす人々の生活に深く関わっています。

 

 

山の神:大山祇神

 

こうした山の神の総元締め的な存在として、日本の山岳信仰の世界に君臨している神さ様が、大山祇神(おおやまづみのかみ)で、大山津見神または大山積神とも表記されます。大山祇神は、伊邪那岐命(イザナギ命)、伊邪那美命(イザナミ命)の子とされ、記紀神話(天孫降臨)で、初めて地上に降り立ったニニギノミコトの妻となった、木花咲耶姫神(コノハナサクヤヒメ命、富士山の神)と、磐長姫命(イワナガヒメ命、岩の神)は、大山祇神の娘神に当たります。

 

前述したように、山の神はその山の周辺に暮らす人々にとっての神であり、そこで農業に従事するものとっての神(田の神、農耕神)であり、また、木こりや鉱山労働者、鍛冶者にとっての神でもあるように、様々な山神信仰の要素をひとつに体現しているのが大山祇神(オオヤマヅミ神)です。ですから、山の神の山の木を伐採したり、山を削ったり開けたりする時や、谷を塞いでダムを作る時などは、山の神の精霊の怒りを鎮めるために、オオヤマヅミ神を祀っていることが多いそうです。

 

 

海の神:大山祇神

 

一方、大山祇神(オオヤマヅミ神)は、別名「渡司大神(ワタシオオカミ)」とも言われ、海の神の性格も持ちます。ワタは海神、綿積神(ワタツミ神)のワタ(=うみ)のことで、シは司(つかさどる)ことを意味していることが語源上の背景にあります。もともと、河川は、高い山地に源を発し、平野を貫き流れて海に注がれます。山の神が、山から清涼な流れを発する水の神でもあることは頷けます。

 

大山祇神が鎮座する神社(大山祗神神社)の本社の一つは、愛媛県三島町の大三島(おおみしま)という瀬戸内海の芸予諸島にあります。その芸予海峡は古くから西日本と近畿を結ぶ水運交通の要で、漁師や瀬戸内水軍にとって、海上交易の守護神、戦いの際の武神、軍神として、大山祇神が崇敬されていたのです。特に戦国時代にかけて、大山祇神は、「武運長久」の神として、広く武士の崇敬を獲得したことが、この神の神威を全国に広げる大きなきっかけとなったと言われています。

 

 

酒造りの神:大山祇神

 

さらに、大山祗神(オオヤマヅミ神)は、酒造の祖神「酒解神」として信仰されています。これは、大山祗神の娘「木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)」が、天孫「邇邇芸命(ニニギ尊)」と結婚して、「日子補穂出見命(ヒコホホデ命)」を生んとき、大山祗神は大いに喜んで佐(狭)奈田(さなだ)の茂穂(よく実った米)で、お酒(アメノタムケ酒)を作って、天地の神々に振る舞った、という故事が酒造のはじめ(穀物から酒を醸造した始まり)と伝えられていることに由来しています。

 

山の神は里に降りれば田の神であり、穀物の実りを司る神であり、また水の神でもあることから、穀物から造られる酒の精霊は、山の神の分身という神話が生まれたのでした。こうして、酒造業の守護神としての大山祇神は、酒解神(さけとけのかみ)、娘の木花咲耶姫命は酒解子神(さけとけこのかみ)と呼ばれるようになったそうです。

 

このように、日本の山の神の総元締といわれる大山祇神(オオヤマヅミ神)は、山と海を司る神(山と海の守護神)として、その神威は、農業、漁業、商工業(酒造りを含む)などの諸産業や、軍事的な領域まで幅広く及んでいます。

 

 

三島・大山祇信仰

 

大山祇神に対する信仰は、神道では「三島・大山祇信仰」として知られ、全国に広がっています。大山祇神社(愛媛県今治市)と三嶋大社(静岡県三島市)を本社として、三島・山祇系の神社は、全国で少なくとも700社以上あるとされています。神社名の「三島(三嶋)」は、大山祇神社の所在地(今治市大三島)の大三島(おおみしま)にちなんで名づけられています(大山祇神社を大三島神社と呼ぶこともある)。

 

「三島・大山祇信仰」に関連し、大山祇神(おおやまづみのかみ)を祭神とする神社は、全国にある「三島」や「山祇」を社名とする神社(三島神社や山祇神社)だけでなく、次の神社も含まれます。

 

岩木山神社(青森県弘前市)

湯殿山神社(山形県鶴岡市)

大山阿夫利神社(おおやまあふりじんじゃ)(神奈川県伊勢原市)

梅宮大社(京都市 右京区)

丹生川上神社上社(奈良県吉野郡)

 

安倍政権の森林政策を、大山祇神がどう見ているでしょうか?

 

 

<参考>

山岳信仰 山と神 山の神 – BIGLOBE

三島・大山祇信仰/三島神社ー城めぐり

大山祇神

など

 

2019年06月26日

宗教:大河ドラマ「いだてん」はインドの神様!

6月23日のNHK大河ドラマ「いだてん(韋駄天)〜東京オリムピック噺(ばなし)」の中で、韋駄天の意味を「足の速い神様のことだ」とか「だから御馳走様という」というなどドラマの中で、説明していました。日本人初のオリンピック選手、主人公金栗四三(マラソン)のニックネーム「いだてん」が、「いだてん」が神様の名前だったことを今になって知りました。自分の勉強不足を反省(よくよく考えれば韋駄天の天は仏教の天部を指している!)すると同時に、韋駄天がヒンズー教の神が由来であったことに驚きとある意味新鮮な気持ちになれました。

 

☆★☆★☆★☆

韋駄天、その由来と意味

 

「韋駄天(いだてん)」とは、「足の速い神様」のことを指します。「韋駄天(いだてん) 」は、もともと古代インドの宗教バラモン教の神で、バラモン教がヒンドゥー教に継承された際には、破壊神・シヴァ(シヴァ神)の次男、軍神・スカンダとされました(兄の名は歓喜天だとか)。

 

韋駄天は、その後、お釈迦様が、仏教を興したとき、仏教の守護神として迎えられ、仏法と寺院を護る守護神とされました。インド仏教では、世界の中心にそびえるという聖なる山(須弥山)を四方に守る守護神がいて、それぞれ8人(計32人)の神様が仕えているという教えがあります。韋駄天はその四方(東西南北)を守る四天王のうち南を守る増長天に従う八大将軍の一人(三十二神将のリーダー)として信仰されるようになりました。

 

元々ヒンドゥー教の神様であった韋駄天(いだてん)が、仏教に取り込まれ、さらにインドから中国に伝えられる際、最初は「塞建陀(スカンダ)天」と音写で漢訳されました。それが何度も書き写される内に、一文字省略されたり、書き間違いが起きたり、さらには、道教の神様である韋将軍(いしょうぐん)とも混同されたりしながら、「韋駄天」となったと言われています。こうして、韋駄天は、仏教の神様となって、現在に至っています。

 

また、インドの伝承によると、お釈迦様がお亡くなりになられた日、捷疾鬼(しょうしつき:足の速い鬼)という鬼が、お釈迦様の御遺体から「仏舎利(ぶっしゃり:釈迦の遺骨・歯)」を盗んで、須弥山に逃げていきました。慌てた弟子たちが、韋駄天(いだてん) に仏舎利を取り返してほしいと頼むと、韋駄天は一瞬で、1280万キロともいわれる距離を駆け抜け、鬼(夜叉)を捕まえ、お釈迦様の歯を取り返したそうです。

 

この逸話から韋駄天は「速く走る神」とされ、それが由来となって、足の速い人を「韋駄天」と呼ばれたり、早い走り方、またとても速く走ることを「韋駄天走り(いだてんばしり)」と比喩表現したりするようになったそうです(韋駄天は「俊足の代名詞!」、身体健全(特に足腰)のご利益があるとも)。さらに「盗難・火難除けの神」ともされ、修行を妨げる魔障を走ってきて取り除いてくれるとして、寺院や僧侶の住居の守り神となっています。

 

さらに、インドの伝承では、韋駄天はその足の速さを生かし、釈尊(お釈迦様のこと)や、修行中の僧侶のために、東西を駆け巡って食べ物を集めて回って振舞ったことが、「ご馳走」という言葉の由来となりました。また、食後の挨拶の「ご馳走さま」という言葉も「足の速い神・韋駄天さま」からきています。こうして、今も、韋駄天は食卓を守る神様として慕われ、韋駄天を拝めば、食に不自由をしないという功徳があるとされています。寺院の厨房に祀られることも多いそうです。

 

<参考>

いだてん(韋駄天)とは?その意味と大河ドラマモデル金栗四三との関係

(2019年3月17日 ファンファンズ・カフェ)

 

歴史-文化 日本文化と今をつなぐ(2018/11/15、Japaaan記事)

仏像ワールド 韋駄天

2019年06月25日

ニュース:トランプ、日米安保条約破棄を検討!?

トランプ大統領、日米安保条約破棄の考え側近に示していた-関係者

(2019/06/25、ブルームバーグ)

 

トランプ米大統領が最近、日本との安全保障条約を破棄する可能性についての考えを側近に示していたことが分かった。事情に詳しい関係者3人が明らかにした。トランプ大統領は日米安保条約が米国にとって不公平だと考えている。関係者によれば、トランプ氏は同条約について、日本が攻撃されれば米国が援助することを約束しているが、米国が攻撃された場合に日本の自衛隊が支援することは義務付けられていないことから、あまりにも一方的だと感じている。約60年前に調印された同条約は、第二次世界大戦後の日米同盟の基盤となっている。

 

大統領は条約破棄に向けて実際に措置を取ったわけではなく、政権当局者らもそのような動きは極めてありそうもないことだと話している。トランプ氏の個人的な会話の内容だとして関係者らはいずれも匿名を条件に語った。万が一条約破棄となればアジア太平洋地域の安全保障に役立ってきた日米同盟を危うくする。日本が中国および北朝鮮からの脅威に対して防衛するため別の方法を見つける必要が生じ、新たな核軍備競争につながるリスクもある。

2019年06月24日

農林業:日本の種子を守ろう!

先日、「水、種子に続き森林も…」と題して投稿しましたが、今回、「森林」から遡って「種子」についてまとめてみました。日本の食料自給率の低さが問題となっていますが、仮に食料自給率が100%になったとしても、その種子が国産でなければ意味がありません。ましてやその種子が遺伝子組み換えの種子であったら、私たちの食の安全は根底から崩壊してしまいます。

 

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安倍政権は、2018年3月31日、種子法(主要農作物種子法)を廃止しました。この蛮行が次世代にいかなる悪影響を与えることになるのかを、種子法廃止から1年以上たった今、改めて考えてみましょう。

 

種子法ができた背景

第二次世界大戦中、日本は食糧不足に見舞われ、農家は強制的にコメを供出させられ、種子も政府の統制下にありました。戦後、復興が進み、人々の生活が安定し始め、コメの統制は解除されましたが、日本人の主食であるコメの源となる種子は、国(道府県)が優良な種子を農家に供給しようと、1952年5月、種子法(正式名称は「主要農作物種子法」)が制定されました。

 

もし、戦時中の統制を完全に解除して、農家に種子栽培を委ねてしまえば、農家は、農作物の栽培とは別に、種子を採取するために「育成」をしなければなりません。農家が自ら生産した作物から種子を「採取」することもできますが、品質を維持し、品種の改良、優良な種子の「育成」が求められるのです。一つの種子を開発・育成するには、約10年、増殖には約4年かかると言われるなど、膨大な時間と多額な費用が必要です。具体的には、大元の原原種、その子どもの代の原種を経て選別され後、種子となります。

 

そこで、政府は、優良な種子は国民の食糧確保に不可欠であり、とりわけ国民が生きるために欠かせないコメ、麦、大豆の種子を供給するのは国や自治体としての責任であるという理念から、税金を投入してでも守り、主要な農産物の種子を国が管理することを義務づけました。

 

 

種子法に基づく種子の供給システム

この目的遂行のために、政府が予算を確保する役割を担う一方、生産する品種の認定は地方自治体が行います。原原種→原種→種子と約3年かけて作られた品種を選別して、種子の保証書を発行します。その後、農家が種子を栽培していきます。実際に、種子の生産に携わるのは、各都道府県の農業協同組合(JA)、農業試験場などの研究機関です(後者は、原・原種、原種を保持)。それから、その種子を地方自治体が指定する各県の採種農家(種子農家=種づくり農家)が、販売普及用に栽培(委託生産)し、ようやく、各農家に供給されるという体制が敷かれていました。

 

近年はこのシステムに基づいて、各県は、地域の地理や気候条件に適した品種改良が継続的に行われ、地域性や食味の追求で競合し、結果として、新潟県の「コシヒカリ」や北海道の「ユメピリカ」などの「優良銘柄」や、「あきたこまち」などの「奨励品種」のコメを多数誕生させてきました。

 

なぜ種子法を廃止しないといけなかったのか?

しかし、安倍政権は、このシステムを止めて、政府や自治体が長年担ってきたコメの種子開発と供給を民間企業に任せようと、種子法の廃止をめざしたのでした。この戦後の日本の食と農を支えてきた種子法が、わずか半年の議論で、2018年3月31日に、廃止してしまったのです。

 

種子法を突如廃止した理由として、安倍政権は、「都道府県が開発しているコメ、麦、大豆の品種(種子)の販売価格は安すぎる。これでは民間企業が種子開発事業に参入できない」と、種子の販売価格が不当に安く、民間企業が参入できないことを問題視しました。その一方で、肥料、農薬、機械、飼料など生産資材価格が高いので、これを低減させる、とも言っています。

 

通常、種子を作るためにかかる生産資材の価格が下がれば、その分、種子の価格は下がる余地がでてくるので、安倍政権がいう「不当に安い」種子価格を自らさらに下げることになってしまいます。ということは種子価格や資材価格が高い安いは余り問題ではなく、安倍政権の目的が民間企業を参入させることが主眼であることが透けて見えます。

 

農林水産省も、「都道府県と民間企業の競争条件は対等になっておらず、公的機関の開発品種が独占的になっている」ことを種子法廃止の理由の一つにしていますが、これも民間企業を参入させてと言っていることに等しいですね。民間企業による種子の開発、流通、販売への参入については、種子法廃止以前に、安倍政権が成立させた、農業競争力支援化法に、すでにその趣旨が色濃く打ち出されていました。

 

知的財産を売り渡す農業競争力支援化法

農業競争力支援化法は、「良質で低廉な農業資材の供給」や「農産物流通等の合理化」といった構造的な問題を解決していくことを目的として、2017年5月に制定されました。種子に関しても、同法8条の4項に次のような恐るべき規定があります。

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種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること。

ーーーーーーーー

これは、民間企業が種子の市場に参入できるように、彼らを支援するだけでなく、公的機関が長年培ってきた種子開発・生産に関するノウハウを民間企業に渡せと言っているのです。2018年2月に開催された韓国のピョンチャン五輪の際に、日本のイチゴの苗が勝手に使われていたことが発覚して大騒ぎになりましたが、コメの種子は「企業に提供しなさい」とわざわざ法律まで作った命令する徹底ぶりです。

 

前述したように、現在、良質なコメの種子からできたおいしいおコメが各地域で生産されて、私たちの食卓を賑わせています。つまり、すでに適切な競争がなされている種子市場に、国の支援で、民間企業を強引に参入させようとしている観が否めません。しかも、公的機関の蓄積した知的財産まで譲れと民間企業側に肩入れまでしています。

 

さらに問題なことは、民間企業の参入といっても、参入したがっている民間企業は、グローバル種子メーカーなど大手企業です。現在世界の種子市場は、米モンサントを買収した独バイエル、米ダウ・デュポン、そして中国化工集団に買収された世界最大のスイスの農薬会社シンジェンタの3社に握られています(3社の市場占有率は7割)。グローバル種子メーカーが、安倍政権の後押しで、参入してきたら、日本の種子もやがてこうした多国籍企業に押さえられ、日本の食料が彼らに支配されることになることが懸念されます。

 

 

種子法廃止の背後にいた未来投資会議とグローバル種子メーカー

このように、種子法が廃止される前に、農業競争力支援化法が制定され、その道筋が敷かれていたといえます。しかし、さらにそれ以前の2016年10月、規制改革推進会議農業ワーキング・グループと、あの竹中平蔵氏などをメンバーとする未来投資会議の合同会合の場で、種子法廃止が提起されたと言われています。もちろん、種子法が「民間の品種開発意欲を阻害している」ことを問題視したのです。加えて、この背後には、ウォール街の金融投資家、グローバル種子メーカー・製薬企業などの要求をうけた「アメリカ政府」の力が働いていたと見られています。

 

つまり、種子法の廃止は、米国の意向(「TPP日米合意文書」)に沿う形で、日本の「規制改革推進会議」を通じて「自主的」に承認されたものであるという見方が根強くあります。実際、京都大学の久野秀二教授は、今回の種子法廃止の背景に、「『公共種子・農民種子』をグローバル企業開発の特許種子に置き換えようとする世界的な種子ビジネスの攻勢がある」と指摘しています。

 

これまで、コメと麦と大豆は、種子法によって政府が種子を管理してきたので、国産100%でした。しかも、伝統的な固定種です(固定種とは、親から子、子から孫へと代々同じ形質が受け継がれている種で、味や形が固定されたものが育つ)。一方、モンサント(現バイエル)などのグローバル種子メーカーは、大豆やとうもろこしの遺伝子組み換え(GM)化を世界的に実現してきました。現在、彼らが狙っているのは、コメや小麦という主要食料の種子の遺伝子組み換え(GM)化です。

 

特に日本において、コメ・麦・大豆の市場規模は野菜の7倍あります。彼らが種子法廃止を後押しして狙ったのは、この日本の市場です。しかも、コメや小麦などの種子の大半が固定種なので、これを遺伝子組み換えによって、一代限りのF1に置き換えようというのです。F1と固定種ではどう違ってくるといいますと、固定種なら一つの種で栽培して、そこでできた種を使い…式に種を継承させていくことができますが、F1の場合、一代雑種と呼ばれるように、購入した種は一度栽培に使用されたら二度と使うことはできません。つまり、農家は必ず種を買い続けなければなりません。

 

このように、海外資本の企業(外資)の参入を許せば、日本から国産の良質なコメ(農産物)が消え、外国産の遺伝子組み換えの種子に取って代えられることが想定されます。前述したよに、コメの種子は、原原種から原種という開発栽培の過程を経て、数年かかえて作られてきました。しかし、種子法廃止で、原原種や原種がなくなり、農家は企業が権利を持つ種子を使わざるを得なくなります。そうすると、私たちは遺伝子組み換えのコメ(農産物)を食べることを強いられることにもなりかなません。

 

東京大学大学院の鈴木宣弘教授も、「グローバルGM種子企業にとって、今回の日本の種子法廃止と種子の関連情報の譲渡命令は「濡れ手で粟」です。「払い下げ」で手に入れた種をベースにGM種子に変え、特許化して独占し、それを買い続けない限り、コメの生産が継続できなくなってしまいます」と指摘しています。

 

さらに、種子市場がこのように寡占化(少数の巨大企業で市場を支配すること)してくると、種子価格も、農薬や機械などの資材価格もつり上げられていくことも必定で、そうなれば、種子法廃止や農業競争力支援化法が、名目上目指したこととは逆の結果になってしまいます。

 

日本は食料自給率が異常に低い国ですが、それでも最後の砦として、米をはじめとする主要農産物を守ってきましが、種子法の廃止で、主食である米の種子を売り渡してしまえば、例えば、新潟で採れたコメと言っても、種が外国産であれば、もやは国産とは言えなくなる可能性もでてきます。いざというとき日本がまず確保しなければならないのは、コメ、麦、大豆ですが、その種子供給を民間企業に依存するとなると、私たちの生命の源をグローバル種子企業に握られかねないことなってしまいます。ですから、今回の種子法の廃止は、ある意味、食糧安全保障の観点からも看過できない事態です。

 

グローバル種子企業の世界戦略は、「種を制するものは世界を制する」のスローガンに従って、種子を握ることです。種を独占して、農家は作物を栽培するために、彼から種を買わなければならないような仕組みを作ろうとしています。加えて、その種子を遺伝子組み換え、さらには、F1(一代雑種)化して普及させれば、彼らから買わざるをえない状況は永遠に続きます。グローバル種子メーカーはこうしたビジネスを世界中で広げ、巨万の富を築いています。今回、それを日本でやりたいとしているのです。

 

 

国会と地方自治体の抵抗

こうした重大な問題点の指摘や反対の声を受け、国会では、種子法廃止が可決された際に附帯決議を採択して廃止法案に縛りをかけました。さらに、種子法そのものを復活させたりする動きがあります。また、条例によって種子法の内容を定めようという自治体もでてきています。

 

国会による付帯決議

  • 種子の品質確保のため、種苗法に基づき、適切な基準を定め、運用する。
  • 優良な種の安価な供給には、従来通りの都道府県による体制が維持できるように措置をとる。
  • 都道府県の取り組みの財源となる地方交付税を確保し、都道府県の財政部局をふくめ周知徹底に努める
  • 都道府県の育種素材を民間に提供するなど連携にあたっては種子の海外流出を防ぐ
  • 「特定の事業者」が種子を独占し弊害が生じないよう努める。

 

種子法復活法案

さらに、種子法廃止法案成立後、2018年6月、野党は、種子法の復活法案を提案するまでに至りました。

 

条例制定の動き

種子法に基づいて米などの品種改良と種子供給を行ってきた各都道府県は、事業の継続を目指して、種子法と同じ内容の条例制定に動き出しました。種子法廃止から約2年経った2019年2月、新潟県で種子条例案が議会が可決したのを皮切りに、兵庫県、埼玉県、山形県、富山県、北海道と続き、岐阜、長野、福井、宮崎、滋賀、宮城、鳥取の各県も条例制定を決定または検討を表明しています。これは、「民間企業の参入を妨げる」という理由で種子法を廃止してしまった安倍内閣に対する「地方の反乱」と言えます。

 

 

種苗法の改正でとどめか?

これに対して、安倍政権(農水省)は、2019年の通常国会で、農家による種子の自家採種を禁止することを付記する種苗法の改正案を提出する構えを見せていました(農林水産省は、2004年から自家採種原則禁止を目指していたと言われている)。仮に外資(グローバル種子メーカー)に種子市場を席捲されたとしても、農家が自ら生産した作物から種子を採取する「自家採種」によって、国産の安全な種子を守り抜くことはできます(F1品種以外ならという前提つきだが)。

 

しかし、農家による種子の自家採種が禁止されると、伝統作物や方限定の農産物などの生産を継続することが不可能になっていき、ますます企業による農業への介入が進むのは間違いないでしょう。具体的には、農家が自分で種を取って栽培する自家採取が禁止されると、農家はどんな種子も買わなければならなくなりますが、東京大学大学院の鈴木宣弘教授は、この点について次のように分析されています。

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代々自分の農地で自家採取した種子で栽培していた作物であっても、品種登録していなければ、自分のものではないとされてしまう。その作物を栽培農家より早くに民間企業が登録してしまえば、その農家は特許権に侵害で告訴され、損害賠償を求められることにもなりかねない。

グローバル種子企業は自社の特許権が侵害されるのを防ぐため、独自の「ポリス」(監視組織)の目を張り巡らせているとされ、その監視網で証拠をつかんで訴えを起こす。さらに農家への攻撃は様々な手口で進められ、カナダなどでは在来種を栽培していた農家の作物とGMが交雑し、被害を受けたのは農家であったにもかかわらず、「当社の品種を勝手に栽培した」と農家をGM開発企業が特許権侵害で告訴するという問題が実際に起こった。

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幸い、安倍政権は、2019年の通常国会に種苗法改正案の提出を見送りました。しかし、種苗法改定は、農業競争力支援化法から始まったグローバル種子メーカーの世界戦略の一環に合致したものです。

 

農業競争力支援化法で国と県がつくったコメの種の情報を企業に譲渡させ、種子法廃止で日本の公共の種子事業をやめさせ(つまり民間企業がとって変わる)、種苗法改定で自家採種は禁止する…。グローバる種子メーカーからすれば、種子法廃止で種を手に入れたら、自家採取を禁止して手に入れた種の登録者としての権利を強化してもらうことは、まさに彼らが望むところです。従って、政府も、遅かれ早かれ種苗法改定を国会にかけてくるでしょう。種苗法改定は、彼らが日本の種子を抑える最後の仕上げであり、日本の農家からすれば、種苗法の改定でとどめを刺させるほどのインパクトを伴います。

 

米は、ただ単に食材、食料というにとどまらず、日本の食文化を超えて文化そのものをつくり上げてきた重要なものだです。TPPをはじめとする国境を超えた自由化の波の中で、世界に誇る日本食文化の象徴ともいえる「日本のコメ」を、ひいては、日本の食文化を守り、育てるための法整備が必要です。

 

 

<参考文献>

種子法廃止は誰のためか──日本の農作物への影響と今後の課題

(2018年12月18日、スマート・アグリ)

 

安倍政権の種子法廃止に“地方の反乱”拡大…独自に条例制定、国の農業政策に反抗(2019.06.03、ビジネス・ジャーナル)

 

安倍政権の種子法廃止で、日本の「種子」が外資に乗っ取られる…価格50倍に高騰(2018.12.26、ビジネス・ジャーナル)

 

すぐにできる、正しい食、間違った食(2018.6.18、ビジネス・ジャーナル)

 

安倍政権、日本の農業を根絶せしめる愚行…ひっそり種子法廃止で

(2018.03.15、ビジネス・ジャーナル)

 

種苗法改正と農業競争力強化法の3点セット「種子法」廃止の真の狙いは

(2019年2月15日、生活クラブ・webレポート )

 

 

 

2019年06月15日

農林業:水、種子に続き森林も…

6月5日の投稿で、国有林が民間開放される改正国有林法が成立したニュースを載せました(「国有林、民間開放へ」)。そこで、今回、安倍政権の森林政策とその問題点などを、各種報道や専門家の意見をまとめてみました。

 

日本の森林は大丈夫か?

 

日本の林業の現状

日本では、戦後や高度経済成長期に植林されたスギやヒノキなどの人工林が大きく成長していることから、政府は伐採量を増やす政策を進めようとしています。これにともない国内で生産される木材も増加し、木材自給率は現在、35%を超え、過去30年間で最高水準となっています。国内の森林資源は、「伐って、使って、植える」という森林を循環的に利用することが求められていますが、現実はどうなのでしょうか?

 

木材生産が増加している一方で、皆伐や過度な間伐で木を伐りすぎたために山が荒れ、伐採した後に植林がされない山も多いとされています。林野庁の森林・林業白書によると、「伐採された山の面積の約6~7割が、再造林されないままとなっている」そうです。森林の管理が適切に行われないのは、日本の森林の所有は小規模・分散的で、森林所有者の世代交代等により森林所有者への森林への関心が薄れているからだとされています。

 

また、国有林についても、政府が過去に経営に失敗して巨額損失を出し、管理する人員を大幅に減らしたため、雑木の除去や間伐などの手入れが行き届いていないとされています。83%の市町村が、管内の民有林の手入れが不足していると考えているとの統計結果もあります。森林の適切な経営管理が行われないと、「災害防止や地球温暖化防止など森林の公益的機能の維持増進にも支障が生じることになる」と政府は将来的な懸念を強めています。加えて、所有者不明や境界不明確等の課題もあると指摘されており、今後、森林の管理に非常に多くの労力が必要になってくることは必然との見方が支配的です。

 

こうした現状と問題を解決し、新たな森林管理制度を確立させるために、安倍政権は昨年来、森林管理に関する2つの法案を成立させました。それが、森林経営管理法と改正国有林野管理経営法です。

 

 

森林経営管理法


森林経営管理法は、平成30年5月25日に可決(翌31年4月1日施行)され、「森林経営管理制度」が始まりました。同法は、個人が所有する森林(民有林)に関する法律で、所有者に適切な森林管理を促すことを目的としています。具体的には、民有林の所有権と管理権を分離し、森林整備を進めやすくするものです。そのための具体的な仕組みは以下の通りです。

 

・経済ベースにのる森林については、市町村が仲立ちとなって意欲と能力のある林業経営者に森林経営を再委託する。

・森林所有者自らが森林管理できない場合には、その森林を市町村に委ねる。

・自然的条件などから見て経済ベースでの森林管理を行うことが困難な森林等については、市町村が公的に管理を行う。

 

また、同法は、森林の所有者に「伐採の責務」を課しており、自治体は、森林所有者の経営状況をチェックし、「きちんと管理する意思がない」と見なすと、市町村が伐採計画を立て、企業に委託して伐採することができるとまで規定されています。一方、森林整備を行うにあたって、森林環境税・譲与税を使うこともできます。長年放置されていたり、所有者不明でいつ崩れるかもしれない森林を整備するには有効だと見られていいます。

 

森林経営管理法を一言でまとめると、森林(民有林)の伐採を促す法律です。安倍首相も、年頭の施政方針演説で「長期間、担い手に国有林の伐採・植林を委ねることで、安定した事業を可能にします」と発言しています。そうすると、次のような問題点が指摘されています。

 

・所有者の意に反して木が伐採される。

・利益のある森林にのみ業者が関心を示す。

・本来は天然林に戻したほうがよい奥山のような森林も伐採される

・公益性への配慮が行われない。

 

こうした懸念が出ることを意識してか、安倍総理の発言です。「森林バンクも活用し、森林整備をしっかりと加速させてまいります。その際、地域の自然条件等に応じて、針葉樹だけでなく、広葉樹が交じった森づくりも進めます」。実際、今後15年の森林の維持・管理の方向性を決める全国森林計画案では、針葉樹と広葉樹の複層林化を進めるとは記載されています。しかし、放置人工林を天然林に戻していくという方向性は、打ち出されておらず、逆に、2035年には天然林は今よりさらに57万ヘクタール減る計画となっていると指摘されています。

 

 

国有林野管理経営法改正

日本の国土面積の7割は森林で、そのうち3割の758万ヘクタールを国有林が占め、国有林のなかで人工林だけは222万ヘクタールを占めていると試算されています。今回の改正は、伐採可能な人工林が対象です。

 

森林経営管理法が、民有林を対象としたことに対して、同法は全国の森林の約3割を占める国有林を対象にした森林管理に関する法律です。すでに、6月5日の投稿記事にあったように、同改正法は、国有林を、最長50年にわたって、大規模に伐採・販売する権利を、外資を含む民間業者に与えることを定めています。これは、いはゆる国有林の運営権を民間に売却するというコンセッションを定めたもので、同法は「国有林売却法」と揶揄されています。

 

趣旨

合板製造技術の飛躍的進歩などもあり、国産の安価な木材の需要は増えていると指摘されている中、安倍政権は、国有林を活用して原木の供給能力を拡大し、住宅などへの国産材利用を促して、林業の成長産業化を目指しています。

 

具体的内容

国有林を、最長50年にわたって、大規模に伐採・販売する権利(樹木採取権)を、公募入札によって、有償で独占的に、外資を含む民間業者に与えるられます。伐採期間は10~50年間(現状は数年)で、伐採面積は1カ所当たり数百ヘクタール(現状数ヘクタールから拡大)。

 

問題点と懸念

第一に、最長50年の伐採期間は世界的にも例がないことから、国民の共有財産である国有林が切り売りされる可能性があります。

 

第二に、国内の林業者の9割は小規模・零細で、大規模伐採を手掛けるのは難しいとされていることから、外資を含む大企業の参入のみ進む可能性が高いとされています。実際、森林の経営規模の拡大には巨額の投資が必要で、改正の意図するところは、外資を含む大手の参入促進にあるとの批判は根強くあります。そうすると、木材利用の目的も、木材の付加価値を高める加工品の生産という小規模な林業者のアプローチではなく、大企業や外資だと原木をバイオマス発電の燃料目的に大量に伐採されていくようなことになりかねません(勿論、発電利用目的が悪いというのではない)。

 

第三に、国有林にある木をすべて伐ってしまう「皆伐」が広がるのは確実とされ、しかも、木を伐った後の再造林は伐採業者に義務づけられておらず、罰則もありません。運営権が切れて業者が撤退したときに「ハゲ山」だけが残る懸念もあります。現状の数ヘクタール程度の再造林でも、苗木がシカに食われ、育たなくなった「ハゲ山」があちこちにあります。そうなると、再造林費用はすべて国民の負担になってしまいます。

 

経済優先でいいのか?

これらが、民間コンセッションの問題で、国有林のコンセッションは、発展途上国の森林ではよく見られますが、失敗も多いと指摘されています。例えば、国有林の伐採権を企業に与えたフィリピンでは、大規模なラワン材の切り出しが行われ、運営権の期限が切れたのちに、禿山が国に返されたという事例があります。

 

農林水産省は大規模伐採を解禁しても「最終的に国の責任で森林を再生する」と強調しているようですが、同省は、国有林で、どれほど再造林されているのかとか、再造林の失敗例がどれだけあるかなども把握できていないそうです。そもそも、林野庁は国有林事業の失敗で1兆円以上の負債を抱えているらしく、信頼をえているとは言えません。

 

今回の国有林野経営管理法改正案は、森林経営管理法と同様に、「伐る・植える・育てる」の循環によって経営が成り立つ林業のうち、「伐る」ことだけに重点が置かれています。国有林は水源の涵養や、二酸化炭素の吸収、生物の多様性確保、防災、景観維持など多面的な機能を果たしているとは、誰もが認めるところです。しかし、安倍首相は、「わが国の森林は、戦後植林されたものが本格的な利用期を迎えていますが、十分に利用されず」と述べるなど、「木を切って利用する」ということにしか関心がないように思います。

 

森林はバイオマスなど化石燃料に代わる巨大な国産エネルギー資源にもなり得るなど、国民共有の財産です。この「宝の山」が目先の利益で乱伐されれば、森林の持続可能性を保てなくなってしまいます。確かに、稼ぐ産業としての林業がないと地域は疲弊し、山も荒れっぱなしなのかもしれません。しかし、単に民間に委ねる式の経済優先の論理で扱うことには疑問を呈する向きが多くあります。森林の持続可能性を守ることこそが最優先されなければなりません。

 

国有林は水源の涵養(かんよう)や、二酸化炭素の吸収、生物の多様性確保、防災、景観維持など多面的な機能を果たしています。その機能を果たせなくなるような乱伐に対しての警戒感が強まっています。森林は、儲ける林業だけのものではなく、防災、生態系保全、地球温暖化、観光の面からも管理されなければなりませんが、それらについて、具体的な言及はなされていないと批判されています。森林経営は100年の計、目先の利益に踊らされない管理が求められます。

 

水、種子に続き森林が…

2012年の政権発足から(特に2018年来)、安倍政権は、農水産業への企業参入促進や、水道民営化など公共インフラの民間開放を拡大する法整備を相次いで進めています。今回の国有林もその一環です。

 

国有林の民間開放を提唱した国有林野管理経営法改正は、2018年5月、政府の成長戦略を検討する未来投資会議(議長・安倍晋三首相)で、民間議員の竹中平蔵東洋大教授が音頭をとって、国有林事業の運営権を民間業者に委託する「コンセッション方式」の導入を提案した模様です。竹中氏は、これまでの農水産業への企業参入促進や、水道民営化など公共インフラの民間開放だけでなく、雇用の流動性を可能にする労働法制の改革など様々な規制緩和政策を提唱してきました。ただ、竹中氏は、バイオマス発電事業を手がけるオリックスの社外取締役で、人材派遣大手のパソナ会長も務めていることから、利益誘導との批判が絶えません。

 

いずれにしても、コンセッションによる「民間開放」に問題解決を頼る発想は、種子や水にも適用され、主要農作物種子法の廃止や、改正漁業法などの形で実行されました。コンセッションされた後の推移を私たちは監視しなければなりませんね。

 

<参考>

国有林伐採の民間開放 かえって森を荒らす恐れ(2019年6月3日 毎日新聞)

国有林法改正案 「宝の山」を守れるか (2019年5月25日、東京新聞)

水道の次は国有林コンセッション。日本の森林はどうなる?(2019年2月27日、Yahoo!ニュース)

林野庁ホームページなど

2019年06月13日

皇室:天皇・皇族のお名前

令和の新時代に入ったことをきっかけに、皇室についての正しい理解や、日本人として皇室に関して知っておくべき、教養的な知識を身につけようという趣旨で、皇室に関する情報を提供をしております。今回は、天皇陛下や皇族方の「お名前」です。

 

そもそも、皇族とは、天皇を除く天皇家の人たちのことで、天皇を含める場合は皇室となります。

 

🔹実名(諱)と御称号

一般国民には姓名(苗字と名前)がありますが、皇室の方々には苗字はありません。新天皇陛下も、苗字はなく、お名前(実名)は徳仁(なるひと)(様)です。お名前(実名)は(いみな)ともいいます。ただし、天皇陛下には、苗字がない代わりに「御称号」があます。陛下は、幼少時、「浩宮」(ひろのみや)様と呼ばれていたことをご存知の方も多いでしょう。この「○宮」というのが御称号でミドルネームに相当します。なお、御称号は、皇太子という地位に就かれるときに使われなくなります。

 

御称号は、天皇と皇太子の子女にのみに与えられます。そうすると現在、御称号をお持ちなのは、愛子さまお一人です。愛子さまの御称号は敬宮(としのみや)で、敬宮愛子内親王と呼ばれます。

 

歴代の天皇の「お名前」

・明治天皇 祐宮 睦仁(さちのみや むつひと)
・大正天皇 明宮 嘉仁(はるのみや よしひと)
・昭和天皇 迪宮 裕仁(みちのみや ひろひと)
・明仁上皇 継宮 明仁(つぐのみや あきひと)
・今上天皇 浩宮 徳仁(ひろのみや なるひと)

 

今上天皇(きんじょうてんのう)」とは、在位中の天皇のことを言います。ですから、現在の陛下は、「天皇陛下」という呼称や、この「今上天皇」、またはお名前とともに「徳仁(なるひと)天皇」と呼ばれたり、表記されたりします。

 

また、「上皇(太上天皇の略)」は退位した天皇のことで、今回の天皇退位特例法では、退位された(明仁)天皇の称号を「上皇」、敬称は「陛下」と定められました。実際は、天皇陛下と区別するために「上皇陛下」、お名前とともに「明仁上皇」と呼ばれます。

 

なお、明仁天皇が上皇になられたことに伴い、美智子さまは「上皇后」になられます。ただし、上皇后という称号は、歴史上使われたことがない新規の言葉です。歴史的には、譲位後の天皇の皇后は、「皇太后」という敬称がありましたが、皇室典範特例法によって、「上皇」「上皇后」という身分(称号、敬称)が新たに定められました。

 

 

🔹諡(諡号追号

さて、明治天皇、大正天皇、昭和天皇の「明治」、「大正」、「昭和」という名前は、諡(おくりな)といって死後に前の功績をたたえて贈られるお名前で、現在は、元号が諡にそのまま用いられるようになりました。諡は、仏教の僧侶に死後つけてもらう法名(ほうみょう)(「○○院」)と同じです。諡(おくりな)や法名が使用されるのは、死後も名前で呼ぶのは失礼にあたるからですね。

 

なお、諡(おくりな)は、厳密には諡号(しごう)と追号(ついごう)に分かれます。追号は天皇のゆかりの地名や建物などに由来し、諡号は天皇を顕彰する名前で、生前にゆかりのある地名や業績とは無関係に命名されます。前者の例では、院政で知られる白河天皇の「白河」は別邸の地名から取られました。ただし、明治天皇以降は、元号が「一世一代」(天皇の在位につき一つの元号)となり、元号がそのまま諡(追号)とされています。ですから、上皇陛下を間違っても「平成天皇」と呼んではなりません。

 

 

🔹宮号と宮家

皇室には、御称号とは別に、宮号(きゅうごう)というものもあります。宮号とは、男性皇族がご成婚や成年によって独立して生計を営む場合に、天皇陛下から賜る称号です。その宮号を天皇から賜った一家を宮家といい、現在、三笠宮、常陸宮、高円宮、秋篠宮の4家があります。

 

宮家の当主が有する「○○宮」の称号は、宮家の当主個人の称号(宮号)とされており、苗字には当たらないので、その家族は用いません。例えば、秋篠宮と言えば、秋篠宮文仁皇嗣殿下、ご本人をさします。なお、宮家は、1990年に秋篠宮家を最後もこれまで創設されていません。しかも、その秋篠宮家を除く宮家は、当主を除いて皇族男子が存続しないため、皇室典範が改正されない限り、断家が余儀なくされる状況です。

 

🔹皇族の身位(身分・地位)

・皇后(こうごう):天皇の配偶者、天皇の正妃

・太皇太后(たいこうたいごう):天皇の祖母。先々代の皇后の地位にあった人をいう

・皇太后(こうたいごう):天皇の母で、皇后であった人

・親王(しんのう):嫡出の皇族男子および嫡男系嫡出の皇孫の男子をいう

・親王妃(しんのうひ):親王の正妃(配偶さ)

・内親王(ないしんのう):嫡出の皇女および嫡男系嫡出の皇孫である女子

・王(おう):天皇の嫡男系嫡出で親王以外の皇族男子

・王妃(おうひ):王の正妃(配偶者)

・女王(じょおう):天皇の嫡男系嫡出で内親王以外の皇族の女子

 

陛下と殿下

皇室典範によれば、陛下という敬称は、「天皇と三后」へ使うと規定されています。三后とは、太皇太后(先先代の天皇の皇后)、皇太后(先代の天皇の皇后)、皇后のことを言います。また、今回の退位に伴い施行された「天皇の退位等に関する特例法」は、明仁上皇さまと、美智子上皇后さまに対しても敬称を「陛下」とすると規定しました。

 

そうすると、現在、「陛下」と呼べるお方は、明仁上皇、美智子上皇后、徳仁天皇、雅子皇后です。そのほかの皇室の方の敬称については、すべて「殿下」となります。具体的には、皇太子・皇太子妃・皇太孫・皇太孫妃・親王・親王妃・内親王・王・王妃・女王の皇族が対象です。

 

 

親王と内親王

今の陛下も、皇太子時代、徳仁親王(なるひと しんのう)と呼ばれていました。親王とはどういう称号でしょうか?

 

現在の皇室典範によれば、天皇の嫡出の男子、および、天皇の嫡男系の嫡出の男子である者を親王(しんのう)といいます。親王の妃は親王妃です。内親王(ないしんのう)は、女性の親王号で、嫡出の皇女および嫡男系嫡出の皇孫である女子をいいます。

 

現在、親王は、秋篠宮文仁親王、悠仁親王、常陸宮正仁親王(昭和天皇第二皇男子)の3人で、内親王には、愛子内親王、眞子内親王、佳子内親王がその身位にあります。

 

 

王と女王

王や女王という称号は、イギリスやデンマークなど海外の王国のものという印象がありますが、日本の皇族に賜与される称号でもあります。

 

王は、天皇の嫡男系嫡出で三親等(ひ孫)以上離れた皇族男子を指す(同様の皇族女子を女王という)。現在、「王」は、戦後直後、初の皇族内閣を組閣した東久邇稔彦(ひがしくに なるひこ)元首相など戦前は多数存在したが、大半が皇籍離脱を強いられたこともあり、一人も存在していません。

 

女王は、三笠宮家(みかさのみやけ)の彬子(あきこ)さまと瑶子(ようこ)さま、高円宮家(たかまどのみやけ)の承子(つぐこ)さまの三方がいらっしゃいます。なお、王妃は王のお妃のことです。

 

 

皇太子と皇嗣

令和元年5月1日、皇太子殿下(徳仁親王)が即位され、天皇になられました。では、次の皇太子はどなたなのでしょうか?

 

皇太子(Crown Prince)は、「皇位継承の第一順位にある皇子を指す称号」で、皇室典範第1条には「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」とあります。このため、天皇陛下のご息女の愛子さまに皇位継承権はなく、陛下のご令弟の秋篠宮さまが皇位継承の第一になられます。

 

ただし、皇室典範(8条)には「皇嗣たる皇子(天皇の男の子)を皇太子という…」とあるように、皇太子になる方は、天皇のご子息(男子)でないといけないので、秋篠宮殿下は皇太子にはなれません。また、悠仁親王は皇太孫(皇位継承第一位で天皇の孫)ではなく、天皇の甥なので、やはり皇太子にはなりません

 

そうすると、新天皇陛下即位に伴い、天皇の直系男子が就く「皇太子」の地位は86年ぶりに空位となります。「皇太子」の空位は愛子内親王を予定しているためで、女性天皇・女系天皇の道筋をつけようとしているとの批判的な見解もあります。

 

秋篠宮さま秋篠宮さまは、「皇太子」と同等(皇太子待遇)とされましたが、内廷皇族(宮家を持たない宮廷内部の皇族)ではなく、「秋篠宮家」は維持されました。

 

皇位継承の第1位で皇弟(天皇の弟)の呼称である皇太弟という呼び方があるのですが、政府は、皇太弟という呼称を認めませんでした。ただ、これだと「秋篠宮殿下」のままとなるため、他の皇族より格が上であると明確にするために、「皇嗣(こうし)」という身位(身分)が与えられました。「皇嗣」とは、「皇位継承の第一順位にある者(天皇の世継ぎ)」を意味です。

 

秋篠宮さまの敬称は「殿下」で、呼称は「秋篠宮皇嗣(こうし)殿下」となります。また、次の天皇であることを示すため、英訳は皇太子を意味する「Crown Prince」となりました。

 

紀子さまは「秋篠宮皇嗣妃殿下」となられ、秋篠宮家の眞子(まこ)さま、佳子(かこ)さま、悠仁(ひさひと)さまの呼称については、眞子内親王殿下、佳子内親王殿下、悠仁親王殿下で変更はありません。(身位の後に敬称がくる)。

 

なお、今上天皇(徳仁天皇)が皇太子の時代の呼び名は、皇太子殿下(皇太子徳仁親王殿下)で、雅子さまは、皇太子妃殿下(皇太子妃雅子殿下、雅子妃殿下、雅子殿下)でした。

 

2019年06月12日

ニュース、上皇上皇后両陛下、退位関連行事終了

上皇ご夫妻が孝明・明治天皇陵で拝礼 退位の行事終える

( 2019年6月12日、朝日新聞、抜粋)

 

京都に滞在中の上皇ご夫妻は12日、京都市内にある孝明天皇と明治天皇の各陵を訪れ、拝礼した。上皇ご夫妻はこの行事をもって、在位中の3月12日から始まった退位に伴う一連の行事を終えた。

 

ご夫妻はこの日午前に同市東山区の泉沸寺を訪れ、境内の南東にある孝明天皇の後月輪東山陵(のちのつきのわのひがしのみささぎ)に、上皇さま、上皇后美智子さまの順でお一人ずつ向かった。上皇さまはモーニング姿、美智子さまはロングドレスの参拝服姿で、門から陵までの120メートルほどの坂道を歩いて上り、陵の前で玉串を捧げて拝礼した。その後、同市伏見区にある明治天皇の伏見桃山陵(ふしみのももやまのみささぎ)でも順次拝礼した。宮内庁幹部によると、お二人は一連の儀式が終了したことに安堵(あんど)した様子で、職員へのねぎらいもあったという。

 

退位後初の地方訪問。退位に伴う行事のための訪問だが、退位したことに伴い、車は、退位前の同様の儀式に用いた大型のセンチュリーロイヤルではなく、通常のセンチュリーに乗り、天皇旗ではなく新たに製作した上皇旗を立てた。前日に東京を出発した際には、三権の長の代表による見送りも無かった。宮内庁は、退位に伴う皇室行事にも公費を支出できると整理したが、上皇さまのお気持ちに沿い、天皇家の私費を充てた。

 

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上皇ご夫妻が大正天皇陵に退位を報告

(毎日新聞2019年6月6日)

 

上皇ご夫妻は6日、東京都八王子市の大正天皇陵を参拝し、上皇さまの退位を報告する「親謁(しんえつ)の儀」に臨まれた。上皇さまはモーニング姿、上皇后美智子さまは洋装で参拝。移動の車には「上皇旗」が初めて取り付けられた。在位中、重要な儀式などに向かう際に使っていた「天皇旗」と同じ菊の紋章があしらわれ、地の赤色は天皇旗よりも濃いデザイン。

 

ご夫妻は3~4月、初代天皇とされる神武天皇の陵(奈良県橿原市)、皇室の祖とされる天照(あまてらす)大神(おおみかみ)を祭る伊勢神宮(三重県伊勢市)、昭和天皇陵(八王子市)で親謁の儀に臨んだ。孝明、明治、大正の3天皇陵は日程を確保できず、退位後の参拝が決まっていた。孝明、明治の両天皇陵(京都市)は12日に訪れる。

 

*上皇さまの退位に関する一連の儀式では、日本書紀などで初代の天皇とされる神武天皇と、昭和天皇までの4代の天皇陵に参拝し、それぞれ退位を伝えられることになっていました(NHKニュース)。

2019年06月05日

ニュース:国有林、民間開放へ

改正国有林法が成立 大規模伐採を民間開放

(毎日新聞2019年6月5日)

 

全国の国有林を最長50年間、大規模に伐採・販売する権利を民間業者に与える改正国有林野管理経営法が、5日の参院本会議で、自民、公明両党や国民民主党、日本維新の会などの賛成多数で可決・成立した。立憲民主、共産両党などは反対した。安倍政権は国有林伐採を民間に大きく開放して林業の成長産業化を掲げるが、植え直し(再造林)の失敗による森林の荒廃や、中小業者が淘汰(とうた)される懸念を残したまま、改正法は来年4月に施行される。

 

改正法は、政府が「樹木採取区」に指定した国有林で伐採業者を公募。業者に与える「樹木採取権」の期間は50年以内と明記し、対価として樹木料などを徴収する。再造林の実施は農相が業者に申し入れるが、業者への義務規定はない。

 

改正法では明文化されず今後の運用に委ねられた部分が多い。政府は当面全国で10カ所程度、計数千ヘクタールの樹木採取区を想定。「伐採期間は10年が基本」(吉川貴盛農相)と強調し、再造林は伐採業者との契約にも盛り込んで担保すると繰り返した。ただ、林野庁は現行の小規模な伐採でも、再造林の成功率などを示す全国のデータを把握していない。5日の採決に先立つ反対討論で、共産党の紙智子氏は「数ヘクタールの再造林で苗木が育たない山があるのに、数百ヘクタールを伐採すれば荒廃しかねない」と強調した。

 

また改正法は中小業者の育成を掲げ、政府は業者の選定で財務基盤や取引先の優劣のほか、雇用増加などの地域貢献も「総合的に評価」すると答弁している。だが具体的な基準は明示されず、立憲民主党の川田龍平氏は討論で「超長期のリスクを取るのは中小業者には不可能だ。特定企業のみに50年の権利を設定するのでは、という疑念がぬぐえない」と批判した。改正法に賛成した与野党からも慎重な運用を求める声が続出し、政府は来春までに運用のガイドラインを作ってパブリックコメント(国民の意見公募)を実施する方針だ。